14:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:09:23.99 ID:3RPf7FsGO
「今日は何時くらいから出かける?」
「んー、昼ごはんが家にあるし……昼食べてからにしようか。島を回るだけなら、たぶんそれくらいでちょうど良いし」
「ん、了解。それまでは何するの?」
15:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:10:51.74 ID:3RPf7FsGO
そんな彼女に気を取られていたせいか、予定していたページの7割程度しか進むことは無かった。決してこれは言い訳ではない。仕方ないことだ。緊張するって、そりゃ。
宿題を片付けて、昨晩の残り物で昼ごはんを済ませると、いよいよ出発することになった。出る間際になってちょっと待ってと言われ、何事かと思うと、これでもかと言うほど隈なく日焼け止めを塗り始めた。そして、島では滅多に見ることの無い日傘を構えた。
とは言え、それで暑さを凌げるわけではない。
16:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:11:48.12 ID:3RPf7FsGO
二階からばたばた音がして、階段を下りてきた水原は学校とは少し様子が違った。校則違反のメイクを軽くして、服もどこかにお出かけするかのような小奇麗なワンピース姿だった。
「昨日は幽霊出なかったぞ」
「そ、そっか。ところで、えーっと、後ろの人は?」
17:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:13:20.97 ID:3RPf7FsGO
島を一周する頃には、瑞穂も水沢もすっかり仲良しになっていた。恐るべし、女子のコミュ力。
どうやら、明日は水沢がうちに遊びに来る約束までしてしまったらしい。帰り際に、明日は寝坊しないようにねと注意されてしまった。
「仲良くなるの早くない?」
18:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:14:16.53 ID:3RPf7FsGO
三人で声と手を合わせた。今日はよく歩いたし、お腹が空いている。美味しい、美味しいと箸が止まることなくどんどん皿の上の料理が消化されていって、気がつけば山もりだった皿が空になっていた。
母さんはその様子、を嬉しそうに眺め、時折「美味しい?」「今日は何をしたの?」と問いかけていた。
「娘ができたみたいで嬉しいわぁ」
19:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:23:43.81 ID:3RPf7FsGO
食事を終えると瑞穂、母さん、俺の順番で風呂に入った。
浴槽に張ったお湯を抜いて、軽く掃除をしてから寝支度を済ませ、自室に向かうと今日も瑞穂はまだ起きているようだった。
「おやすみ」
20:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:30:04.87 ID:3RPf7FsGO
夜の港に瑞穂が立っていた。
「私は幽霊なの。カズくんを海の底に導く幽霊」
そう言って微笑んだ。今までに見た、子どもっぽい笑顔とは違う、暗い笑みだった。
21:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:31:19.50 ID:3RPf7FsGO
エラー起きまくってスレ3つも立ててしまってました……すみません。
このスレを更新していきます。
22:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 23:20:33.13 ID:YmYytpA6O
「カズくん! 起きろ〜!」
目の前には、水原の顔がアップで映り込んでいた。昨日といい今日といい、聞きなれない声で目覚めるものだ。
水原の後ろには瑞穂が立っていて、彼女は今日もしっかりとよそ行きの格好になっていた。
23:名無しNIPPER[saga]
2019/08/15(木) 22:09:20.22 ID:whXTmqj1O
そんなことはない、と二人の声が重なって、愉快そうに瑞穂はもう一度声を出して笑った。その笑顔からは、とても昨日の夢で見たようなことをしでかすようには思えなかった。
朝ご飯を食べ終えて、水原に急かされて家の外に出た。
「で、今日はどうすんの」
24:名無しNIPPER[saga]
2019/08/15(木) 22:27:06.62 ID:whXTmqj1O
「佐々部ぇー、いるー?」
「あー……水原ぁ?」
だらけた返事が家の中から聞こえてきた。夏休み二日目にして自堕落な生活を過ごしているのは俺だけじゃないらしい。
25:名無しNIPPER[saga]
2019/08/15(木) 23:46:46.13 ID:whXTmqj1O
「そう、その尾関」
「何で? ていうか、え、お前らは何、どういうこと、何なの」
いきなり落ち着きのなくなった佐々部に、訳が分からなくなった俺たち二人は、三人そろって瑞穂に視線を送った。
26:名無しNIPPER[saga]
2019/08/15(木) 23:59:39.15 ID:whXTmqj1O
「つまり、幽霊探し中にカズが観光目当ての瑞穂ちゃんを見つけたと。で、お前んちに泊まっている?」
やけに説明調で、どうにか平静を取り戻した佐々部が言葉にした。
「そういうこと」
27:名無しNIPPER[saga]
2019/08/16(金) 00:14:15.25 ID:doqPoyp4O
ただ、芸能人だというのであれば、彼女の美貌も何となく納得がいく。少なくとも、島外でもこの美しさが平均的なものであるということではないらしい。
「何だよ、幽霊なんかよりよっぽど楽しい思いしやがって」
拗ねたようにぼやく佐々部に、水原が「あんたのとこにも紹介しに来てあげたでしょ」とあやすように話しかけていた。まるで母親みたいだ。
28:名無しNIPPER[saga]
2019/08/16(金) 02:15:01.52 ID:doqPoyp4O
なるほど、と感心する二人を横目に、改めて疑問が浮かんできた。
瑞穂は母さんに言われるまで祭の存在を知らなかったはずだ。なのに、それを目当てとは一体。
頭に浮かんだそれは口にせずにしまっておいた。
29:名無しNIPPER[saga]
2019/08/16(金) 03:11:25.72 ID:doqPoyp4O
「いつまでも尾関さん、じゃ何だし。瑞穂で良いよ」
横から覗き込むように瑞穂が言った。
「えーと、うん、わかった」
30:名無しNIPPER[saga]
2019/08/17(土) 07:58:27.67 ID:fvsgqT2JO
家に帰ると昨日と同じく食事の準備ができていて、瑞穂はすっかり我が家の一員になったかのように過ごした。
まるでそうであったことが生まれたときからそうであったように、瑞穂は違和感なく我が家の一員になっていた。
「お父さんも戻ってきたら驚くだろうねぇ」
31:名無しNIPPER
2019/08/17(土) 08:32:30.75 ID:fvsgqT2JO
まだあまり、考えたことはなかった。
実家か漁師の佐々部のように、継ぐような家業は特にない。一方で、水原のように島外の大学に憧れを持ってもいない。
「うーん、まだ未定かな」
32:名無しNIPPER
2019/08/18(日) 00:33:09.93 ID:dFRsY6OS0
?昨日と同じく瑞穂におやすみと声をかけて自室に戻ると、今晩は机に向かうことにした。?
?寝坊したうえに、一日佐々部と水原に捕まってたせいで宿題に手をつけていなかったからだ。自分の性格上、一日でもサボってしまうとそれが癖になってしまうことは自分で分かっていた。?
?数学の教科書を開いて、二次関数がなんだ数列がなんだと羅列された文字と数字を追いかけていく。?
33:名無しNIPPER[saga]
2019/08/18(日) 10:45:03.45 ID:kTZG2sIxO
そんなことを考え始めると、今度は課題のことが頭に入らなくなってきた。ダメだな、今すべきは将来を悩むより目前の数学のはずなのに。分かってはいても、漠然とした悩みを優先してしまう。
プリントの上にペンを放り、天井を向いてため息をついた。
そのまま思考をリセットするためにぼーっと天井を眺めていると、ドアをノックする音がした。
34:名無しNIPPER
2019/08/18(日) 13:11:14.44 ID:kTZG2sIxO
自分が好きと言われたわけではないけれど、その言葉には少しドキッとしてしまう。
「そっか。それなら良かった」
「カズくんは? 好きじゃないの?」
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