【シャニマス】ゼンマイリピート 七草にちか
1- 20
1:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:04:41.06 ID:laNpeqI/0
5thライブ良かったですね。昂りが凄いです。
その思いを性癖にのせて書きました。

結構長いです。28000文字ぐらいです。

初めての二次創作なので至らない点もあると思います。

よろしくお願いします。

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2:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:09:22.69 ID:laNpeqI/0
宝石《ダイヤ》はひとたび砕けてしまえば、もう二度とその輝きは発しない。
 EはTに。カットはpoor。透明度? I2。ブルーに光るなんて醜い。
 アイドルもそうだ。
 幸せもそうだ。
 砕けたものは、輝かない。
以下略 AAS



3:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:10:20.57 ID:laNpeqI/0
 朝、書類を整理していたら、「おはようございまーす!」の一言と同時に突き付けられた一冊の雑誌。それは流行りのアーティストなどについて業界人やアーティスト当人にインタビューするといった内容のものだった。
 そこで有名なアーティストの一人が「今気になっているアーティストは?」という問いに、283プロの、SHHisの、七草にちかを答えたのだ。
 知らなかった。知らされていなかった。タイアップなどがなかったため、こちらに連絡が無かったのだろう。
 最初雑誌を見せられ「どうした?」と答えたときは「はぁ!? ありえないんですけどー!」と酷く叱責された。該当ページを広げて見せられたときは感動のあまり声を失ってしまった。
「どうですか? どうですかっ!? ど〜うで〜すか〜?」などと何とも誇らしげに胸を張る彼女を横目に、インタビュー記事を何往復もし、言葉一つ一つを反芻する。
以下略 AAS



4:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:10:48.84 ID:laNpeqI/0
にちかは足で上手くステップをとり、俺は両手をあげて海藻のように腰を左右に振った。二人でアカペラでwow wowとSHHisの一曲『Fashionable』のワンフレーズを繰り返した。
 以前、にちかの仕事がうまく行ったときに「嬉しいなら嬉しいで、それなりに表現してくださいよー」と言われ、それ以来お互いに嬉しい時は小踊りするのが決まりのようになっていた。
「ふふ、二人とも、楽しそうだね」「みっ、美琴さん!」美琴がにちかの背後から声をかけると、にちかはピタリと踊るのをやめた。流石に美琴に見られるのは恥ずかしいのか、「プロデューサーさんにどーーしても! 嬉しいから踊らないかて誘われたので、仕方なく! はい、仕方なく、もう頼まれちゃ仕方ないな〜と思ったので! ね! プロデューサーさん! ね!?」と必死に弁明している。別にそんなことを美琴は気にはしてないだろうけど。
「そうなんだ。……何かあったの、プロデューサー」
「ああ、この雑誌の——「この雑誌でSHHisについて語ってくれてるんですよ〜! もう美琴さんの魅力分かってんなーてぐらいしっかり話してくれてるんですよ! やばくないですか!?」
以下略 AAS



5:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:11:16.31 ID:laNpeqI/0
最近はにちかと美琴の仲も良いように見える。以前にはない友情というか、付き合い方が生まれていた。二人ともお互いの力量をカバーし合う仲間として、力量を認め自分の経験値になるよう切磋琢磨し合うライバルとして良い関係を築けていた。仕事も順調だ。SHHisでのロケや雑誌撮影も増え、数ヶ月後にはまだまだ小さなステージだが、ライブもある。
 そんな折、こんなにも彼女達をよく見て、良く言ってくれるインタビューがあるのは、二人のモチベーションに強く響いただろう。
 SHHisはこれからだ。ここからだ。更なる飛躍がきっとある。
 まだまだ彼女たちが目指す限り、もっと強く輝いていける! 
 
以下略 AAS



6:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:11:48.10 ID:laNpeqI/0
RRR RRR RRr...
『はい。美琴です。どうしたの、プロデューサー』
「あ、いや! レッスン、終わった頃かなと思ってさ。その、怪我とかなかったかて確認の連絡」
『そう。うん、大丈夫。私もにちかちゃんも特に何もなかったかな』
 それは何よりだ。——と言いたかったが。美琴の声がやや反響して聞こえる。まさかとは思うが。
以下略 AAS



7:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:12:38.26 ID:laNpeqI/0
RRR r...
『はい、にちかです』
「今日はお疲れ、にちか。もう家か?」
『えー、なんですか? プロデューサーさんて束縛系ですかー? プライバシーなので答えたくないんですけどー』
 おいおい、確認するて前もって伝えてただろ。
以下略 AAS



8:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:13:14.30 ID:laNpeqI/0
 朝起き、ホテルの備えテレビを付けると、関東で事故があったとニュースがあった。雨でスリップした車両が、横断歩道で信号を待つ人々に突っ込んだという悲惨な事故だった。
 ざわ。胸が萎んだ。
 嫌な予感がした。
(ここ、昨日にちかが言ってたスーパーの近くだよな)
 何度も彼女に連れられて行ったから、道路の感じをよく覚えていた。
以下略 AAS



9:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:13:51.33 ID:laNpeqI/0
愕然とした。ベッドに倒れ込み、天井を仰ぎ見ることしかできなかった。
 自分のアイドルを、心配しないプロデューサーが何処にいるのか。社長やはづきさんの言葉が理解できないわけではない。だが割り切れと言うのはあまりにも残酷ではないか。
 年甲斐もなく、わんわんと涙と声をあげて悲しみを吐き出したくなった。
「プロデューサー!? 大丈夫?」
 戸を叩く音と共に聞こえたのは夏葉の声だった。
以下略 AAS



10:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:14:44.89 ID:laNpeqI/0
『お疲れ様です。無事、イベントは終わり、放クラの皆んなを送り届けました。あれから、にちかの容態はいかがでしょうか』18:23 既読
 返事はなかった。不在だった際のメールや連絡をチェックする。
『再三のご連絡失礼します。容態が心配です。ご返事をいただけますと幸いです』20:16 既読
 返事がない。書類整理と報告書の作成。経費計算などを行った。
『書類整理を終えたので、明日の朝、時間を作り、にちかの見舞いに行きたいと思います。病院と部屋を教えていただけますでしょうか』23:27 既読
以下略 AAS



11:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:15:12.47 ID:laNpeqI/0
地下駐車場に車を停め、関係者口より手続きをする。既に社長が手回しをしてくれていたようで、思っていたより手続きはスムーズだった。
 受付を済ませ、入院病棟まで歩いていると病院特有の清潔感と薬品の匂いが鼻をついた。
 院内の空調が暑いのか、はたまた自分の熱が上がっているからか、やけに汗が出てくる。羽織っていたジャケットを脱ぎ、手に持つ。袖をまくり、ネクタイを緩めてようやく涼しさを感じた。
 入院病棟で自動扉を通ると、すぐにナースステーションがあった。朝の書類を整理しているのか、受付の前に立っても妙齢の看護師はこちらには気付いてはいなかった。
「あの……七草、にちかさんの病室は」と声をかけると、看護師はじろりと目だけを上げて、こちらを見てきた。そして、首から吊るした、受付でもらった許可証を見ると「ああ、はい。連絡にあった方ですね。今、案内させますので」と一人の看護師を呼びつけた。
以下略 AAS



12:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:15:40.72 ID:laNpeqI/0
「なん、て?」
 違和感。沈む。深く。
 手をついたにちかのベッドに、強い違和感を感じた。
 にちかの下半身を覆うベッドの掛け布団に身を乗せているのだ。そこに乗せている手のひらで感じているものが、やけに柔らかい。手が体の重みでやけに沈む。
 本来ならば、そこにあるべき質感、固さ、柔らかさが、無い。
以下略 AAS



13:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:16:09.79 ID:laNpeqI/0
何も返せなかった。自身に恨み辛みをぶつけてスッキリするならばそれが一番だと居座るつもりだったが、彼女が流した僅かな涙に、心の奥底まで自分には救えないと思い知らされたのだ。
 俺はただただ黙って、にちかに一礼をした。
 深く深く、深く。
 長く長く、長く。
 できればこのまま、贖罪のまま時が止まればと願うほどに。
以下略 AAS



14:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:16:38.32 ID:laNpeqI/0
 次の日。美琴とは事務所にて待ち合わせをした。
「おはよう、美琴」「うん、おはよう」とだけがにちかの病室に着くまでの間に美琴と交わした会話だった。
 最早自ら何か声をかけることができなくなっていた。美琴がどう思っているのか、今の俺にはわからなかった。
 病室内は静寂としていた。
 じっとにちかを見つめる美琴。
以下略 AAS



15:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:17:09.13 ID:laNpeqI/0
それから毎日とはいかなかったが、二日に一度は必ずにちかの元を伺った。行ける時は週六度ほど、同日に二回行ったこともあった。
 はづきさんは断らず、にちかも口では何も言わなかった。
 いつも彼女は笑顔を浮かべて、1時間ほど俺が一方的に話すだけ。だが、だからといって何かが改善するわけじゃなかった。
 にちかの脚が生えるわけでもない。彼女がアイドル引退を撤回するわけでもない。
 ただ、ただにちかが居なくなるのが嫌だから、居なくなってないのを確認するためだけの訪問だった。
以下略 AAS



16:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:17:40.06 ID:laNpeqI/0
いいや、違う。
 俺はただ諦めているだけだ。
 いつかにちかの心が変わるかも、なんてありもしない未来を望んでいるだけだ。
 臆病な狂信者だ。
 俺は誰だ? 何者なんだ?
以下略 AAS



17:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:18:08.66 ID:laNpeqI/0
何度も通っているうちに看護師の中で俺の顔を知らない者は居なくなった。ご苦労様ですと労いの言葉ををかける者もいた。
 今日はいつもよりも大きな荷物を持ってきた。肩から下げたトートバッグは時折持つ腕を変えなければ辛くなってしまう。
 いつもならば、開けるのを躊躇う病室の扉も今日ばかりは少しも重みを感じなかった。
「おはよう、にちか」
 朝食を済ませたにちかは、はづきさんが暇つぶしにと持ってきた雑誌を読んでいた。
以下略 AAS



18:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:18:36.13 ID:laNpeqI/0
その日は書類整理が忙しい日だった。SHHisが空けた穴を埋めるように、多忙になった283プロの皆んなの仕事が増えれば増えるほど、やらねばならないことは必然的に増えていた。
 デスクに向かってPCのキーボードを叩く。目が霞む感覚はあるが、それでも体はよく動く。
「プロデューサー。少し、いいかな」
 PCの向こう側から美琴が声をかけてきた。
「ああ、いいぞ。どうした」
以下略 AAS



19:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:19:21.13 ID:laNpeqI/0
「そん、な……そんなの」
 美琴は諦めている。にちかはそれを疑わないでいた。きっと自分のような、未熟者が更に半端になってしまえば美琴の足手まといになってしまうと思っていた。だからこそ、美琴の言葉に涙を流していた。
「社長にはグロテスクだと言われたよ。あまりにも無謀で、にちかのことを何も考えていないんじゃないかと。けど……俺はこのままにちかにさよならで終わりだなんてしたくない」
「確かに、これまでのようなダンスは踊れない。けどにちかが最初にアイドルを始めた時だって、一からダンスを学んだじゃないか。踊ることには変わらない。もう一度……もちろん出来ることには差がある。また覚え直すのは辛いかもしれない。けれど」
「100人に見せて、100人が受け入れてくれる、とは俺も思ってない……。ひどい言葉をかけてくる様な人も、いるかもしれない。だから、全ての責任は俺に投げればいい。そのためのプロデューサーなんだ。そのための俺だから。にちかは……にちかが輝けるように用意するのが俺なんだ——それに、諦めてほしくないのは俺と美琴だけじゃない」
以下略 AAS



20:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:19:49.74 ID:laNpeqI/0
映っていたのは先日、とある雑誌でSHHisに、にちかについて語っていた、あのアーティストだった。トレードマークの特徴的なサングラスと肩まで伸びたウェーブかかったロン毛で一目に彼だと分かった。
 録画では、既に番組は中盤に差し掛かっているようだった。
「いやぁ、だけどねぇ、ほんとねぇ。○○くんは凄いねぇ。これを一人でねぇ、やってしまうんだから」歳を食った年配の司会者がねちっこい話し方で、褒めているのか皮肉っているのか、嫌な意味で心に残りやすい話し方をする。
「そんなことはないですよ。そういう道を選んでるので」ドライな答え方をする。彼はそういうアーティストだからだ。
「いやぁ、しかしねぇ? 話は変わるけどさぁ。シーズ、残念だよねぇ。七草にちかちゃん」
以下略 AAS



21:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:20:17.22 ID:laNpeqI/0
この後SNSでは阿鼻叫喚の騒ぎだった。彼の話に同調する者もいれば、成功した人だから言える事だと反対を唱える者も居た。様々な意見があったが、それでも彼の言葉を信じ、七草にちかの復活を望み、信じ、夢見る者たちは多く声をあげ出した。
「にちか……」
 彼女はずっとスマートフォンを眺め、握りしめていた。SNSに挙がった彼女を応援する言葉に強く心を打たれていた。目からは熱い、熱い涙が溢れていた。
 彼女の心にはさっきのアーティストの言葉が反響していた。
 見る夢がないなら、夢を見せよう。それが、|彼の夢《アーティスト》。
以下略 AAS



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