【シャニマス】ゼンマイリピート 七草にちか
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9:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:13:51.33 ID:laNpeqI/0
愕然とした。ベッドに倒れ込み、天井を仰ぎ見ることしかできなかった。
 自分のアイドルを、心配しないプロデューサーが何処にいるのか。社長やはづきさんの言葉が理解できないわけではない。だが割り切れと言うのはあまりにも残酷ではないか。
 年甲斐もなく、わんわんと涙と声をあげて悲しみを吐き出したくなった。
「プロデューサー!? 大丈夫?」
 戸を叩く音と共に聞こえたのは夏葉の声だった。
 時間を見ると既に朝食が始まっている時刻だった。十分前には声をかけに行くよと昨日伝えており、来ない自分を心配してくれたのだろう。優しいノックがしばらく続いた。
「プロデューサーさーん! 朝ですよー! お寝坊さんですか?」「ちょちょ、果穂〜。プロデューサーさんまだ寝てるのかもだし」「果穂、その調子だ。自分一人ゆっくり寝てるやつなんて叩き起こそうぜ!」「ふふ、プロデューサーさま。朝でございますよー」
 どうやら夏葉以外にも皆んなが自分を心配して集まってくれているようだった。
 ……そうだ。社長の言う通りだ。今、彼女たちには俺しかいないのだ。
 俺が今やらねばならないことは、彼女たちとイベントを盛り上げ無事に終え、彼女たちをしっかりと何一つ問題なく帰すことだ。
 パンと両手で頬を叩き、ベッドから飛び起きる。
 慌てた素振りの演技をして「すまん! 遅くなった!」と扉を開けると、彼女たちは安心した表情で出迎えてくれた。
 イベントは彼女たちの頑張りが強く表れ、見事成功を収めた。帰りの席では、成功の熱も冷める前に次はどういうパフォーマンスをするかという話になっていた。凄まじい向上心だ。
 果穂と智代子を家に送り、樹里と凛世を寮の前で降ろした。あとは夏葉を送るだけだった。
 すると後部座席から夏葉が声をかけてきた。
「プロデューサー?」
「ん? どうした」
「貴方、大丈夫?」
 心を見透かされているようだった。その言葉一言で、何万と言葉をかわす必要もなく、また言い訳も意味をなさないことを理解した。
 態度や言葉の節から自分がおかしい事に気付いていたのだろう。そしてそれは他の四人も同様であったことを物語っていた。
 であれば、それを知った上で、俺に知られまいとし、最大限の成功を収めた彼女たちに涙が出そうだった。
 俺はぐっと堪えた。涙も、悲しさも。腹の底にまで落とし込んで、笑って見せた。
「大丈夫だ。ああ、大丈夫だよ、夏葉」
「そう……ならいいわ」
 夏葉をマンションまで送り届けると、「プロデューサー……貴方はみんなのプロデューサーなのだから、無茶だけはしないで」と釘を刺されてしまった。
 大丈夫。大丈夫だから。
 そう夏葉には応えた。
 だが、正直気が気ではなかった。あれから社長やはづきさんから連絡はなく、またこちらから連絡をするのも、また彼らに気を遣わせてしまうと思い、こちらに帰ってくるまでは控えていた。
 だがしかし、帰ってきた今、業務報告もある。それをついでに、にちかの容態を聞くのは何ら不自然ではない。
 急いで事務所に戻っても既に誰も居なかったため、ソファに腰掛け、社長に連絡を入れてみた。


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