16:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:17:40.06 ID:laNpeqI/0
いいや、違う。
俺はただ諦めているだけだ。
いつかにちかの心が変わるかも、なんてありもしない未来を望んでいるだけだ。
臆病な狂信者だ。
俺は誰だ? 何者なんだ?
辞めなくてもいいんじゃないか。そんな残酷さを俺は言葉にしておきながら、具体的に彼女をどうすれば繋ぎ止めれるのか。そんなことは一切考えようとしなかった。浮かばないんじゃない、考えていないんだ。
彼女が輝くのをただ見ていたいだけの傍観者。
俺はどうしたいんだ? 俺は何をすべきだ?
苦し紛れの言い訳、どうにかなるだろうという虚無への願望。それは先延ばしにすればするだけ、にちかの人生を奪い、彼女を苦しめるだけだ。
ならば、ここで彼女の考えを全て鵜呑みにし、そうだなと切り捨てるのが正しいのか。ラッキーは終わり、不運な少女として夢は終わりだと告げるのが、俺の仕事なのか。
俺は何だ? 俺は誰だ?
俺は。
283プロの。
断じて違う。
彼女がアイドルを辞めたい、なんて望んでいるわけがない。それは美琴が教えてくれたじゃないか。
もし、万が一結果として、彼女がそう望み、それを選択したとしても、否定し、縋りつき、嘘と偽りと甘い言葉と魔法で彼女に夢を与えるのが、俺の仕事なのだ。
現ににちかが足を失ったのは自分の責任だ。
あの時、こうしておけば。そんなことを考えても今が変わるわけじゃない。
だから。
例え恨まれてもいい。憎まれてもいい。殺意や罵倒を浴びることとなっても構わない。
だが彼女の残りの人生を光から逸脱した暗い世界に送ることなど、決してあってはならない。
俺はどんな事をしてでも、彼女を——七草にちかをアイドルにする。
俺は七草にちかのプロデューサーだから。
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