19:吹き矢[sage saga]
2023/04/07(金) 15:19:21.13 ID:laNpeqI/0
「そん、な……そんなの」
美琴は諦めている。にちかはそれを疑わないでいた。きっと自分のような、未熟者が更に半端になってしまえば美琴の足手まといになってしまうと思っていた。だからこそ、美琴の言葉に涙を流していた。
「社長にはグロテスクだと言われたよ。あまりにも無謀で、にちかのことを何も考えていないんじゃないかと。けど……俺はこのままにちかにさよならで終わりだなんてしたくない」
「確かに、これまでのようなダンスは踊れない。けどにちかが最初にアイドルを始めた時だって、一からダンスを学んだじゃないか。踊ることには変わらない。もう一度……もちろん出来ることには差がある。また覚え直すのは辛いかもしれない。けれど」
「100人に見せて、100人が受け入れてくれる、とは俺も思ってない……。ひどい言葉をかけてくる様な人も、いるかもしれない。だから、全ての責任は俺に投げればいい。そのためのプロデューサーなんだ。そのための俺だから。にちかは……にちかが輝けるように用意するのが俺なんだ——それに、諦めてほしくないのは俺と美琴だけじゃない」
俺はジャケットの内ポケットから自分のスマートフォンを取り出した。そして一つの動画ファイルを選択し、再生し、それをにちかに手渡した。
内容は数日前にテレビで行っていた音楽番組だ。毎回一組のアーティストをゲストとして呼び、司会者や視聴者がさまざまな質問を投げ、それに答えるという番組だ。
ここに283プロの誰かが出ている。にちかは最初そう思った。
仲間が激励しているぞと臭いセリフを吐きたいのかと鋭い目つきでプロデューサーを睨んだ。
だが手渡されたスマートフォンには283プロの誰も映ってはいなかった。
「え、なんで」
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