高森藍子「加蓮ちゃんたちと」北条加蓮「生まれたてのカフェで」
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名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:41:58.19 ID:mOMWMpAw0
――ちいさな建物の前――
車が止まり、エンジン音が切れた途端に私の右隣でずっと足をバタバタさせていた子――入院中の子その3・そーちゃんは扉へとタックルを仕掛けて飛び出した。
慌てて追いかけようとしたら、それよりも早く運転席の看護師さんが飛び出していた。ドアの閉まる風圧が二重に起きたと思うとあっという間に首根っこを掴んでいて、お説教を始める怖い顔と、知らん顔でそっぽを向くそーちゃん。
普段の関係がなんとなく見えてきて、それは私の中で知らないと知ってるがゴチャ混ぜになる物で。
変なの、
と笑ったら、私の左隣にて膝と手を合わせて行儀よく座っていた子――入院中の子その2・しろちゃんが、ぼんやりと私の顔を見上げた。
「ううん、なんでもない。さ、行こっか」
今日は12月25日。ポケットの招待状に導かれて、ちいさな祝福の元へ。
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:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:42:37.07 ID:mOMWMpAw0
レンアイカフェテラスシリーズ第147話です。
<過去作一覧>
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
以下略
AAS
3
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:43:06.85 ID:mOMWMpAw0
「じゃあ私、先に入って藍子に知らせてくるから――」
と言ったら、看護師さんが左手で私の額をはたいた。
「った……。何よ」
以下略
AAS
4
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:43:38.79 ID:mOMWMpAw0
「かれんちゃん、かれんちゃん!」
一通り暴れた後、ようやく看護師さんの手から脱出したそーちゃんは短い歩幅を目一杯に駆使し、私の後ろへと駆け込んだ。
ぎゅー
以下略
AAS
5
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:44:06.86 ID:mOMWMpAw0
「…………」
私がそーちゃんへと笑い返してあげるのと、ほぼ同時に。
後ろから、くいくい、とロングスカートの端を摘まれる。あ、この格好はビターチョコ風コーデって私が勝手に呼んでるスタイルだよ。しっとりカカオ色のスカートを基本にして、アクセとか髪飾りとかも合わせていくの。ちょっぴりしっとり気味な大人の味。でも、こうしていると私もちびっこになっちゃった気分だから、少し失敗しちゃったかな?
以下略
AAS
6
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:44:36.88 ID:mOMWMpAw0
住宅地をお散歩すれば10秒に1回くらいは発見できそうな、どこにでもある外観の建物。真っ白な壁と、私のスカートよりは少し甘みのかかった色のドア。そんな建物にも両側のちびっこ2人は歓声を合わせて、今から訪れるクリスマス・タイムに胸を高鳴らせる。
私も、少しだけ楽しみになってきちゃった。
藍子によると、びっくりするほどじゃないけど色々準備してるみたいだし?
何が待ってるのかな、って思うと、気付いたら私が先頭に立ってドアノブを回していた。
以下略
AAS
7
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:45:06.83 ID:mOMWMpAw0
「いらっしゃいませ♪ 藍子のちいさな世界へ、ようこそっ」
髪の結び目をいつもより大きく作り、落ち着いた仕草に加えて普段より優しい声。
一応、お仕事扱いってことで目元と唇には軽いメイクを施している。おそらくだけど、この部屋のどこかには録画中のカメラが設置されている筈。と言ってもどこかに公開する予定もないみたいだけどね。
そんなナチュラルメイクは、前掛けに描かれた白ひげおじさんのイラストとトナカイ柄のスリッパによって、遠くから見ていたいと思わせる雰囲気を良い意味で台無しにしていた。
以下略
AAS
8
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:45:36.94 ID:mOMWMpAw0
ちびっこ'sの興味は壁際の飾り付けからレンガのインテリアへと移り、暖炉の形に組み立てられた中を不思議そうに覗き込む。お尻をふりふり揺らしながらどうにか入り込もうとするそーちゃんを、しろちゃんが一歩離れた位置からぼんやりと、だけどはっきり好奇心を表情に出して眺めていた。
「いつものカフェのマネ?」
「はい。やっぱり、思いつくのはいつもの場所でしたから……。あっ。店員さんには、真似してもいいですか? って、ちゃんと許可をもらったんですよ」
「いやそこは気にしてないから……。でも、こっち側はちょっと違う雰囲気だよね」
以下略
AAS
9
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:46:07.30 ID:mOMWMpAw0
「あたっ」
「加蓮ちゃんは、本当、すぐに自分の世界に入っちゃうんだから。藍子ちゃんも、苦労させられてるんじゃない?」
「……はいっ。実は、そうなんです。加蓮ちゃん、いつもマイペースで、自分の世界を大切にしていて――」
「それは藍子でしょうがっ」
以下略
AAS
10
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:46:40.30 ID:mOMWMpAw0
心の中でそう唱えていると……ジト目が、2人分。
だからなんで私の周りにいる人達はこう、Pさんもだし、最近はアイドル仲間もそうなんだけどっ。人が内心で思ったことを、簡単に見透かしてくるかな!
「そーちゃん、しろちゃん」
以下略
AAS
11
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名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:47:08.07 ID:mOMWMpAw0
□ ■ □ ■ □
以下略
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12
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名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:47:37.79 ID:mOMWMpAw0
「…………」
あいこちゃん、という名前を聞き、しろちゃんが顔を上げた。半歩ほど前に出たと思ったら1歩下がり、私の足へとしがみつく。
「そうです!」
以下略
AAS
13
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:48:07.17 ID:mOMWMpAw0
「そ、そうなんだ……」
藍子もまた、瞳に困惑を滲ませ私を窺う。何の気まずさなのか分かっていないそーちゃんだけが、私達の顔を交互に見ていた。
「……藍子ちゃんがテレビに映ると、ずっとそこから離れなくなるのよねぇ。どこかぼんやりしているのはいつもなんだけど――」
以下略
AAS
14
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:48:36.99 ID:mOMWMpAw0
「では、そーちゃん、しろちゃん」
前掛けの白ひげおじさんをスプラッターにしないよう気をつけながら、藍子が2人へと目線を合わせた。
「こちらへどうぞ。今日は、クリスマスですから。おいしいジュースを用意しているんですよ。ほら、こっちに座って……。加蓮ちゃんも、看護師さんもっ」
以下略
AAS
15
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:49:07.30 ID:mOMWMpAw0
「じゃあ、わたしはわくわくジュースにするので、しろちゃんとは、後で分けっこしよう!」
「……いいの?」
「だから、かんごしさんは大人のドリンクね! だって、かんごしさんは大人だから!」
「ふふ、そうしましょうか」
「しろちゃんは、クリスマスのジュース! ……あれっ? かれんちゃんのジュースがないよ!?」
以下略
AAS
16
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:49:37.04 ID:mOMWMpAw0
「お待たせしました♪ ……そ、それはなんのポーズでしょうか」
3種類、4人分のドリンクを運んできた藍子が、ぱちくりと瞬きする。
「はい! のポーズっ」「……ですっ」
以下略
AAS
17
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:50:06.61 ID:mOMWMpAw0
「これ……。見た目より、甘い味なのね」
唇の先を濡らすように啜った看護師さんが、少しだけ目を見開いた。
「そうなんです。大人でも、今日は子どもの……クリスマスに、わくわくしたり、サンタクロースを心待ちにしていた頃に戻れるように。そんな想いを込めて、入れさせてもらいました」
以下略
AAS
18
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:51:38.10 ID:mOMWMpAw0
>>17
下から5行目の一部誤字を訂正させてください。
誤:そう言って手拭きを渡してあげた藍子は、以外にもあまり焦っているようには見えなかった。
正:そう言って手拭きを渡してあげた藍子は、意外にもあまり焦っているようには見えなかった。
以下略
AAS
19
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名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:52:07.88 ID:mOMWMpAw0
□ ■ □ ■ □
以下略
AAS
20
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:52:36.68 ID:mOMWMpAw0
「さて……」
これまでずっと後ろで見守ってくれていた看護師さんが、いつの間にか私のすぐ後ろにまで迫っていた。座っている私の上から、子供に絵本を読んであげる母親のような高い目線でメニュー表を見下ろす。
「そういえば、加蓮ちゃんの好きな食べ物を聞いていなかったわね」
以下略
AAS
21
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:53:07.28 ID:mOMWMpAw0
ホットケーキやパンケーキといったメニューには、すべて「みに」という言葉がついていた。
たぶん、しろちゃんが渡してもらったフォークと同じくらいの、私なら一口で食べれてしまうサイズ。
そーちゃんとしろちゃんは、まだどれを選ぶか迷っているみたい……というより、ほとんどが知らない名前っぽい。
入院患者にとって、カフェのメニューは全部テレビの向こうの物だもんね。
藍子もそこをちょっと気にしているみたいで、テーブルの下でこっそりメモを取っているようだった。
以下略
AAS
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