高森藍子「加蓮ちゃんたちと」北条加蓮「生まれたてのカフェで」
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名無しNIPPER
[sage saga]
2020/12/25(金) 20:45:06.83 ID:mOMWMpAw0
「いらっしゃいませ♪ 藍子のちいさな世界へ、ようこそっ」
髪の結び目をいつもより大きく作り、落ち着いた仕草に加えて普段より優しい声。
一応、お仕事扱いってことで目元と唇には軽いメイクを施している。おそらくだけど、この部屋のどこかには録画中のカメラが設置されている筈。と言ってもどこかに公開する予定もないみたいだけどね。
そんなナチュラルメイクは、前掛けに描かれた白ひげおじさんのイラストとトナカイ柄のスリッパによって、遠くから見ていたいと思わせる雰囲気を良い意味で台無しにしていた。
「加蓮ちゃん。それから、そーちゃんに、しろちゃん。看護師さんも。ようこそ、いらっしゃいました♪」
「しょうたいじょうだよ!」「……じ、じょう」
「ふふ、持ってきてくれたんですね。ささやかな場所ですけれど、今日は、ゆっくり楽しんでいってください」
靴を脱ぐのすら惜しげにそーちゃんが駆け込んでいく。自分の身長の2倍くらいは高いモミの木を見上げたと思うと壁際へ走っていき、ひとつひとつの花柄やリースを見る度に胸の奥から気持ちを取り出すような息をつく。
その後を、しろちゃんがちょっぴり必死そうに、小走りで追いかけようとしていた。
まず、靴を――靴紐の部分にちいさなリボンが2つ施されていて、だけど履いてみるとすごく歩きやすく疲れにくい、寿命も長いことで有名なブランドの靴を、ていねいに脱ぐ。
ちなみに元は藍子が教えてくれたブランドのなんだよ。リボンは1つだけどね。もう1つは……ふふっ。さあ、なんでしょうか?
靴を脱いだら、靴下越しにぺたぺたと足音を立てながら、そーちゃんを追っかけていく。でもそ―ちゃんの方が好奇心の移り変わりが早くて、次から次へと新しい物を見つけては走って行っちゃうから、歩幅がより狭いしろちゃんでは追いつけない。頑張って、ぺたぺた、ぺたぺた、と追いかけていって。息を荒くしたところで、ようやくそーちゃんが立ち止まった。
「しろちゃん、みてみて! すごいねっ」
「……で、ですっ」
今度はそーちゃんから、しろちゃんへ駆け寄ってあげる。壁の飾りを指差してゆきながら、2人で頷き合う。
「ふふ♪」
そんな2人を見守っていた藍子は、ふと、視線をゆっくりこちらへ戻した。こちら……というよりは、私の斜め向かい側へ。
「看護師さんも、どうぞ。入ってください」
「え、あぁ……そうだったわね。お邪魔します、藍子ちゃん」
「はいっ」
「……どしたの? らしくもなくポカーンとして」
「ついつい、2人のことを見ちゃってたから……。加蓮ちゃんのこと、あれこれ言えないわね。今日は私も、招待状をもらった身だってこと、すっかり忘れちゃってたわ」
肩をすくめる看護師さんへと、藍子は嬉しそうに頬を緩めた。
私もたぶん、同じように笑っていて、そして同じように、招待状をポケットに入れていることを半分忘れて、そーちゃんとしろちゃんのことを見守っていた。
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