高森藍子「加蓮ちゃんたちと」北条加蓮「生まれたてのカフェで」
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5:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 20:44:06.86 ID:mOMWMpAw0
「…………」

私がそーちゃんへと笑い返してあげるのと、ほぼ同時に。
後ろから、くいくい、とロングスカートの端を摘まれる。あ、この格好はビターチョコ風コーデって私が勝手に呼んでるスタイルだよ。しっとりカカオ色のスカートを基本にして、アクセとか髪飾りとかも合わせていくの。ちょっぴりしっとり気味な大人の味。でも、こうしていると私もちびっこになっちゃった気分だから、少し失敗しちゃったかな?

「…………」

振り返ると、そーちゃん以上のもこもこ姿なしろちゃんが、じ、と私のことを見上げてた。
ニット帽は髪を覆うのみならず、おでこを半分くらい隠しちゃってる。
口元まで隠すマフラーと、名前通りの真っ白なセーター。雪でも降れば、妖精に見えちゃうかもしれないね。

瞳の色は、濁った灰色。現実世界に膜をかけて視界をぼやかしたような細目は、中の着色を忘れてしまったガラス細工のようだった。
……彼女は昔の私と同じ。世界の隅にて神様に嫌われて、寂しく生きている。
今日だって、一時退院の許可がギリギリ降りるか降りないか、くらいの不安定な状態だったみたい。
外気温があと2度低ければ許可がもらえなかった、なんて車内で看護師さんが言ってたっけ。

「わたし……」

周りの人達も同情しちゃうのかな。病院の人達が、逆に優しくなってしまったからこそ……。
でもね、私には分かるの。そんなしろちゃんだって、ちゃんと気持ちを持ってる子だってこと。

「わたし、は……はやく、行きたい、ですっ」

右手で私のスカートを摘んだまま、左手を建物の方へと向ける。そのまま腕ごとぶんぶん振り、「あの、あのっ……」と繰り返そうとした。

「うん、そうだね。ほら、そーちゃんも行こっか。今日は、藍子ちゃんがサンタクロースになって、待ってくれてるよ」

私達のやりとりを不思議そうに見つめていたそーちゃんは、やっぱり自信なさげに首を傾げながらも、うんっ、と大きく頷いた。

右手の小指を、しろちゃんにぎゅっと握られ。左手は、先を急かすそーちゃんに引っ張られる。
そんな私の後ろで、看護師さんが小さく笑った。
わざわざ振り返ったりしなかったけど、なんだか優しい表情を浮かべているような、そんな気がした。


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