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真・恋姫無双【凡将伝Re】4
412 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/27(月) 22:08:21.59 ID:z2f4tQkH0 ◆◆◆ 「一刀、済まなかったな」 詫びる言葉。歩み寄りの言葉。 いくらか湿り気のある言葉。 「いや、いいんだ。それより、よかったな。霞と翠が仲直りできて、さ」 ……一触即発、紆余曲折あったものの、馬超の、張遼との面会は最上の結果であったと言っていいだろう。 「お蔭で、父上の言葉を聞けた。そりゃ、さ。霞には思う所がないわけじゃない。でも、一刀が言った通り、父上はきっとそんなことを望んでないと思うんだ」 ――万里を駆けよ。 その、馬騰の遺言はようやく愛娘に伝わったのである。 「一刀が言った、さ。憎しみは何も生まないって、こういうことなのかな。 一刀の言う通り、確かに霞が死んでも父上が帰ってくるわけじゃあないし……」 未だ煩悶としている馬超だが、それでいいと北郷一刀は思うのである。だって。 「うん、そうだな。翠はそうやって笑ってる方が可愛いよ」 こんなにも馬超は輝いているのだ。鬱屈としていた先刻とはまるで別人がごとく。 「な、なななな!そ、か、可愛いとか、何を言うんだ!」 慌てふためく馬超を見て北郷一刀は思うのである。馬家軍を率いると言っても、やはりというか、年頃の少女なのだなあ、と。 そして思うのだ。きっと彼女の父たる馬騰もそのように、笑っている姿をこそ願っていたのではないか、と。 色々と抗議の声を上げる馬超と戯れながら、思う。皆がこのように笑えるならば、それはきっと素敵なことだろう、と。 ◆◆◆
413 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/27(月) 22:33:46.99 ID:z2f4tQkH0 洛陽まであと二日ほど。虎牢関より先は遮るものもない。陣を構えて諸侯軍の集結を待つ。いやさ、流石に今いる兵力で突入というわけにもいかん。洛陽を舞台に手柄争いとかされたらかなわんからな。 専(もっぱ)ら最近は、逸る諸侯とか春蘭とか春蘭とか春蘭をなだめるのがお仕事なのである。あと春蘭な。 ええい、無思慮に洛陽につっかけて禁軍と遣り合うつもりかよ! だが、そんな忍耐の日々もこれまでだ。 「うし、張郃ご苦労さん」 俺は張郃が持ち帰った報に内心胸をなでおろしていた。 「どうやら禁軍と相対することは避けられたようですね」 背後に控えていた稟ちゃんさんの言う通り、風がやってくれました。これはファインプレーです。 押し寄せる反董卓連合軍に対して洛陽を、禁裏を守護する禁軍。その兵権を握っている――その兵権のありかは風がつきとめたものである――皇甫嵩と風が極秘裏に会談を行った成果だ。 見事無血開城をとりつけてくれた風には流石の一言である。 「禁軍とやりあうつもりはないし、洛陽を攻めて花の都を灰塵とするつもりもないからね。 というかそんなこと間違っても起こってほしくないっての」 俺が今一番恐れているのは洛陽が戦場となり、荒廃してしまうことだ。 史実……と言っていいか分からんが、俺の知る歴史的なものでは董卓が洛陽を焼き払った。長安への遷都と併せての焦土作戦は見事の一言だ。 荒廃した洛陽の再建は曹操も諦め、許昌に帝を招くこととなった。 だが、と思うのだ。果たして董卓の焦土戦術のみでそんなにも荒廃するものか。と。 そして、反董卓連合は収穫なく洛陽を後にするのだが、それまでの戦費の回収はどうしたのだろうか、と。 ぶっちゃけ、洛陽からの略奪で補填したんじゃないかなあなんて思ったりするわけである。そりゃまあそうであっても史書には残らんさね。 歴史は勝者が作るものだから。それはいい。俺の妄想である可能性も高い、が。 既に洛陽近辺に於いて諸侯軍の脱走兵と思われる奴らが略奪暴行をしているという報告も上がっている。そりゃ常備軍として給与が支払われている袁家軍とかと違って徴兵された奴らはなあ。 それはいい。そこいらへんの治安活動は手柄を必死に上げようとしていた義勇軍に任せている。単発で兵卒が起こすそんな事件に対応しきれるならばまあ、たいした求心力である。むしろ義勇軍内部からそういった不逞の輩が出ないかなあなどと思うほどだ。 そんときゃこれ幸いと処分してやるんだがね。 そんな風に暫し思考に耽溺していた俺なのだが。張郃は、にまり、と口を歪めながらとんでもないことを言ってくる。風の差配らしいのだが。マジか。 マジかぁ。 「まあ、洛陽の内実に関してはお詳しい方から聞くがよかろうと思いますな」 そして張郃の手振りでその人物を招き入れる。そして、その名前、その姿に自分の正気を疑う。背後で稟ちゃんの息をのむ音に辛うじてこれが夢ではないのだ、と思い知る。そう、張郃が招き入れたその人物―――。 「賈駆殿です」 緑の黒髪、狷介そうに見えてたまに見せる柔らかい笑顔を彩る鋭い双眸。董卓軍の軍師たる詠ちゃんその人が、そこに、いた。 ◆◆◆
414 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/27(月) 22:34:56.93 ID:z2f4tQkH0 張郃に招き入れられ、賈駆はその場に身を晒す。 突き刺すような視線は郭嘉のもの。 それによって、却って賈駆は落ち着きを取り戻す。その顔に微笑みすら浮かべられるほどに。 「――久しぶり、だな」 無表情で、なおかつ鋭い視線を寄越す郭嘉と違って紀霊の言葉には様々な思いが込められている。それを嬉しく感じてしまうのはきっと人として駄目なことなんだろうな、などと賈駆は思う。 「ええ、ほんと。 ほんとに久しぶりね、二郎……」 ややもすると万感の思いを込めそうになるその言を、はたして。無味無臭に自分は発せられただろうか? くしゃり、と刹那歪む彼の貌(かお)に自分はどう映っているのだろうか?みっともなく、荒れた顔で彼の前には立ちたくなかった。 ――正直頬はこけ、目の下にはくっきりと隈が現れている。肌はかさつき、唇はひび割れて。 それを補うために慣れない化粧を今日は念入りに仕立て上げている。おつきの女官には保障されているが、佳人に囲まれている男にすれば見え透いているだろう。 漂う沈黙。それに身体の奥底から込み上げる激情に飲まれないよう、賈駆は懐より書を取り出す。 「洛陽、それと禁裏の見取り図、それに警備の配置図よ」 「な――」 絶句する紀霊と言葉を交わさずに畳み掛ける。 「洛陽の門扉を守る兵は皇甫嵩に掌握されてるわ。禁裏は言うに及ばないわね。でも、これがあればある程度渡り合えるはずよ」 その言葉に紀霊は瞑目する。 くすり、と漏れそうになる笑みを噛み殺す。思えば、目の前の青年の浮かべるこの表情が賈駆は嫌いではなかった。 自分や、配下の軍師には到底及ばないと苦笑する彼は。それでもこの表情をするたびに、自分では思いつかない案を――突飛過ぎて現実的でない時もままあったが――提示したものだ。そんな彼をからかい、彼と語らう時間は賈駆にとってもかけがえのないものであったはずなのだが。 だから、瞑目している彼に、問うてしまう。 「ねえ、なんで、こうなっちゃったんだろ、ね……」 それは彼女なりの、精一杯の甘えであった。
415 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/27(月) 22:35:23.13 ID:z2f4tQkH0 それを知ってか知らずか、見開いた紀霊の目。いつものようにへらへらとしてくれたらよかったのに。 見据えた目は、真剣そのもの。 だから、甘えてしまう。いつかのように。いつものように。 「ねえ、どうしたらよかったんだろう……」 それを、俺に言うか。今になって俺に言うのか。 そんな心の叫びを感じるくらいに賈駆は紀霊と通じ合っていたのだな、などとぼんやり思う。そして、ひび割れたような、途切れ途切れの叫びに身を引き裂かれる。 「言ってくれりゃ、よかったんだよ!言ってくれれば!なんとでもしたさ!したよ! なんとでも、したさ……」 激した、或いは悲嘆にくれる紀霊の激情に言葉を喪う。なによりその熱さに。 「言ってくれれば、なんとでもしたさ。例えば、何進に内密に打診すりゃあ、月の参内を命じたろうさ。 そうなりゃ、漢朝総出で月の捜索さ。いかに漢朝の闇が深くても、それでも何進はそれをすら制してたんだ。 奴の一言あれば、あの政治的化け物が動けば!」 その叫びは賈駆の全身を打ち据える。 「そっか。そうか……。そうだよね……」 無論、賈駆とてそれは検討した。だが、万が一を考えてできなかった。親友たる董卓の身の安全を思うが故にできなかった。それが正しいと知っていても、できなかったのだ。 「ほんと、ボクって、ほんとに、馬鹿だ……」 その結果がこれだ。 「ボクって、ほんと、馬鹿……」 顔がくしゃりと歪み、嗚咽が湧き出ようとするのを必死に抑えて言葉を継ぐ。せめて、不様は晒したくない、これ以上。 これ以上。だって。 「……執金吾の権でも月の行方は知れなかった。だから、月は、月を浚ったこの度の乱の首謀者は」 畏れ多くもかしこき禁裏に。 それこそが賈駆が自ら足を運んだ理由。せめて、自分たちを陥穽に落とし込んだ首魁くらいは間違えなく伝えたい。 「悔しい。悔しいよ、二郎。 月も、ボクも。一生懸命だったのに。頑張ろうとしてたのに。それでもきっとボク達は世紀の謀反人。悪逆非道の佞臣ってなるのが、悔しいよ」 伝えようとしたことを伝え、やはり甘えてしまう。言わずもがなのことをそれでも言ってしまう。そんな自分を馬鹿だなあと思っても、最早止まらない。それでも。 「それでも……好きだった。ううん、好きよ、二郎。 うん。愛してる……」 閨にて、幾度も囁かれた睦言。けして返さなかった男のそれに応え、こらえきれずに双眸から溢れる涙。 「好きよ、二郎」 だから。 ボクのこと、忘れないで…… 精一杯の笑みを浮かべて賈駆はその場を去る。 くしゃり、としたそれ。柔らかな、透きとおったその顔を。紀霊は生涯忘れることはないだろう。
416 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/27(月) 22:36:19.37 ID:z2f4tQkH0 本日ここまですー感想とかくだしあー 題名募集しまくりんぐですよ本当に! 仮題はなんだろな 「幸福な結末と別離」 もちっとなんとかなりませんか
417 :赤ペン [sage saga]:2020/07/30(木) 12:53:53.12 ID:Y4a+Y6Th0 乙でしたー >>410 >>誰にともなく呟いたその言葉に関羽は柳眉を逆立てる。 間違いではないのですがこの言葉はかなり強い印象を受けます(例えるならもしも二郎が呂布に挑むときに顔良をハブにしたりしたら柳眉を逆立てそうかな ○誰にともなく呟いたその言葉に関羽は諫言を以て応える。 関羽が柳眉を逆立てるような気迫で返答したら一刀がそれに苦笑で返したりできなさそうだし、そもそもご主人様相手に本気で怒れないでしょ(信頼感(笑) >>411 >>教えてほしいことがたくさんあった!あたしが馬家を継ぐに値するだけの武を持っているって、伝えたかった!全部、伝えられなかった!」 【全部】だと既に【馬家を継ぐに値するだけの武を持っている】ように聞こえますが ○教えてほしいことがたくさんあった!あたしが馬家を継ぐに値するだけの武を持っているって、伝えたかった!全然、伝えられなかった!」 【教えてほしいことがたくさんあった】ので自分がまだ未熟だと思ってたようなのでこの方が良いかな? >>馬騰さんの最期を看取ったに違いないからさ、という言に馬超は無言で頷く。 これだと(多分)看取ったはずだ、みたいな意味になるので ○馬騰さんの最期を看取った事には違いないからさ、という言に馬超は無言で頷く。 下手人な事には違いないけど、みたいな意味で言うならこの方が良いと思います >>伝えられる言葉。最期の言葉。 この前の文からするとこれ(馬家の天幕内で)沈黙、(その場にいた張遼から)伝えられる言葉になりそうなので ○一刀と共に張遼のもとを訪ねる。伝えられる言葉。最期の言葉。 どう書くかは置いておいて、張遼に会いに行く描写を入れた方が良いと思います >>412 >>「お蔭で、父上の言葉を聞けた。そりゃ、さ。霞には思う所がないわけじゃない。 待って、ちょっと待とうか?君そんなにあっさりと許した感出すとか本当にどうしよう ○「お蔭で、父上の言葉を聞けた。そりゃ、さ。張遼には思う所がないわけじゃない。 上で「張遼は絶対に許さない」とか言ってたのにもう真名呼びとかもう少しあるだろ?まさか張遼も義勇軍の大将の前で董卓の真実を語るわけないから何故そうしたのかまで話してないだろうし…えっ話したの?(そんなに口が軽いなら)裏切る前に馬騰さんに話して?どうぞ(馬騰→何進の直通ルートを横目に >>413 >>俺は張郃が持ち帰った報に内心胸をなでおろしていた。 まあ実際にそういう動作をすることもありますが慣用句なので ○俺は張郃が持ち帰った報に胸をなでおろしていた。 【内心】を入れなくても問題ないと思います >>既に洛陽近辺に於いて諸侯軍の脱走兵と思われる奴らが略奪暴行をしているという報告も上がっている。 間違い?間違いじゃない?勝ってる側で糧食は袁家が持ってる諸侯軍から脱走兵って…中抜きされて食うや食わずなんて袁家が許さんだろうし ○既に洛陽近辺に於いて諸侯軍の兵と思われる奴らが隠れて略奪暴行をしているという報告も上がっている。 そのあと何食わぬ顔で戻ってくるまでがセットで、な気がしますが >>414 >>ややもすると万感の思いを込めそうになるその言を、はたして。無味無臭に自分は発せられただろうか? 間違いではないですが ○ややもすると万感の思いを込めそうになるその言を。はたして、無味無臭に自分は発せられただろうか? 【果たして】は【発せられただろうか】にかかりますのでこの方が良いと思います >>それでもこの表情をするたびに、自分では思いつかない案を――突飛過ぎて現実的でない時もままあったが――提示したものだ。 ちょっとひと手間 ○それでもこの表情をするたびに、自分では思いもつかない案を――突飛過ぎて現実的でない時もままあったが――提示したものだ。 まあ現代人の持つ視点とかがあるからねえ まあここまでなるとは思ってなかったにしろ…詠ちゃんの未来予想図はどういうものだったんだろう、とは思うね 万が一を恐れて自分だけでなんとかしようとしてたけどそんなことをすれば反董卓連合が組まれるだろうとは思ってただろうしそうなれば信頼できる戦力を外に向けなきゃいけないことも分かってただろうに 洛陽で袁家を襲うときにネームドを派遣しなかったとか、せめても言い含めなかったこととか流されるだけだったから仕方ないっちゃないんだが 天の御使い?あ〜はいはい、すごいね。みんなハッピーにまいしんしてるね
418 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/30(木) 22:08:45.08 ID:EBuKRdwr0 >>417 赤ペン先生いつもありがとうございますー! うむ。今回多いな。精進せんといかんね。 しかしお盆に間に合うかなあ。割とギリギリのスケジュールだなあと思ったり。 >まあここまでなるとは思ってなかったにしろ…詠ちゃんの未来予想図はどういうものだったんだろう、とは思うね それな。 いやほんと、気の毒でしかないですが、目の前のことに一生懸命です そしてもっと言うと、大戦略とかは彼女の不得手なとこじゃないかなって >万が一を恐れて自分だけでなんとかしようとしてたけどそんなことをすれば反董卓連合が組まれるだろうとは思ってただろうしそうなれば信頼できる戦力を外に向けなきゃいけないことも分かってただろうに ここで二郎ちゃんに泣きついてたらねえという董家√ 6レスくらいでハッピーエンドですね(確信) >天の御使い?あ〜はいはい、すごいね。みんなハッピーにまいしんしてるね 猪突猛進dす がんばる
419 :赤ペン [sage saga]:2020/07/31(金) 11:06:04.36 ID:ZXvRgiRN0 まあねえ、所詮はって言い方もアレだけど馬家の下にいた董家の軍師だったからねえ 戦術レベル、うまくいけば戦略レベルまで考えられるとしても国規模の大戦略レベルで考えられるかっていうと、ね 言ってしまえば全国展開してる大企業の一地方の重役レベルがいきなり本社のトップになったようなものだからね…地方レベルで考えても失敗するのは確定的に明らか さて、天の御使いについての感想があまりにも雑だった気もするからもう少し書いてみるか 今回の行動はなにも間違ってないし考え方もとても正しいと思うよ、結果も考えうる中で最良と言ってもいいと思うし素直に凄いと思うよ? 前提が間違ってるはずなのに結果が正解になるという異常性があることだけで…そもそもなんで彼女は一人で鬱屈としてて、その状態で一刀と会おうと思ったのさ 親の敵を討って落ち着いたら喪失感が、とかでもなく。そんな状態の姉に対して妹が気を紛らわせようとするでもなく。こんな精神状態だから仕事じゃとじゃないなら一人にしてくれとお付きの兵に追い返させるでもなく。会うからにはと空元気でも虚勢でも張ることもなく弱弱しい姿を見せて。 どう考えても弱ってるから慰めてほしいというアッピールですね、本当にありがとうございました。
420 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/03(月) 06:24:47.78 ID:3UJ9GBCK0 >>419 >まあねえ、所詮はって言い方もアレだけど馬家の下にいた董家の軍師だったからねえ 州を回すくらいまではともかく流石に国家はね。 経験積めばまた別だったでしょうけど >今回の行動はなにも間違ってないし考え方もとても正しいと思うよ、結果も考えうる中で最良と言ってもいいと思うし素直に凄いと思うよ? からの >前提が間違ってるはずなのに結果が正解になるという異常性があることだけで… 上げて落とす!お見事w >どう考えても弱ってるから慰めてほしいというアッピールですね、本当にありがとうございました。 これには納得です。 なるほどなあ。。。
421 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/05(水) 06:00:01.30 ID:o17giggl0 「愛紗。お疲れ様」 北郷一刀は帰ってきた関羽をねぎらう。彼女は先ほどまで近隣の村落を巡り治安活動に励んできたのである。 「いえ、どうということはありません」 関羽の言は誇張でもなんでもない。あちこちと転戦しているのではあるが疲労の影すらなく平然としている。 いや、むしろ兵卒の群れに関羽という豪傑を宛てるというのが贅沢な話であろう。 「しかし、大忙し、だなあ」 彼の言に偽りはない。ここ最近――虎牢関が陥落し、洛陽まであと数日というところまできての足止め。それから劉備率いる義勇軍は東奔西走している。それまでの閑(ひま)さが嘘のように。 「略奪、暴行。ひどいものです」 関羽は吐き捨てる。彼女の言は嘘ではない。後方にいた諸侯軍が合流してこの方、治安や軍規は乱れる一方なのだ。 そんな彼女に気遣うような視線を送られているのを感じて慌てて取り繕う。 「ご安心ください。彼奴等の性根を叩きなおしてやりましたが……それだけです。命までは奪っておりませんし、致命的な怪我も負わせてはおりません」 数日悶絶する打撲くらいのものだ。骨を折ったりまでは及んでいない。言って聞かない相手にその鉄拳を振るうことに関羽は躊躇しなかった。切り捨ててしまいたいところではあったのだが、主たる劉備や、その軍師たる諸葛亮からも人死には避けるように言明されている。 関羽とて諸侯軍との関係を決定的に悪いようにしたい訳ではない。 例え正義がこちらにあろうとも、人死にが出てしまえばそれを口実に自分たちは不味い立場になるかもしれない。後ろ盾なぞない自分たちなのだ。 故に激発する可能性のある張飛は劉備や北郷一刀という安全弁から離すことは出来ない。 故に関羽のみが劉備一行と離れて行動しているのだが、それが自らに対する信頼の証であると関羽は理解している。 故に、だからこそ軽率なことはできない。例え目の前でどれだけの非道が行われていても、鉄の意志で関羽は激発をすることなく。だが、それでもその憤りは消えることはないのだ。 「どうして、このようなことに……」 関羽には理解できない。どうして同じ漢朝の民にあのようなことができるのか、と。 「――諸侯軍は常備軍ではありません。それが全てです」 静かに諸葛亮は応える。 「――っ。どういうことだ、朱里」 北郷一刀はだから、問いを発する。関羽があのように苦しんでいるのだ。その理由を彼は知らずにはいられない。 「諸侯軍の多くは徴兵された兵です。故に給与は支払われません」 反董卓連合。しかして完全に常備軍なのは袁家くらいのもの。いや、輜重に至るまでにそうである袁家がおかしいのだ。 つまり、袁家軍は真に戦うための集団。戦うが生業。よくもそのような集団を限界せしめたものだと諸葛亮は改めて戦慄を禁じ得ない。 「だったら!さっさと洛陽に入るべきだろう!」 諸葛亮の言葉を受けて北郷一刀は苛立ちを覚える。どうしてこのようなところで足踏みをするのかと。 「おそらく、ですがそのための交渉をしているのではないかと」 未だ洛陽には禁軍がある。そして禁軍との交戦は袁家軍としては何としても避けたいはず。 「此度の反董卓連合。袁家は極めて慎重にその歩を進めています。ええ。持っている影響力からすれば臆病と言っていいほどに……。 あくまで漢朝の臣として。けしてその矩を越えぬよう。越えてはいないと示しながら手を打っています」 いっそ迂遠なほどである。迂闊と言ってもいいかもしれない。 極端な話ではあるが、袁家単独でも洛陽に迫ることは可能であったろうと諸葛亮は思うし、鳳統も同意している。極めて高度に鍛えられた常備軍と、何より攻城兵器群だ。かつて思った通り、事あらば洛陽、とは言わずとも攻城戦を想定していたとしか思えない。
422 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/05(水) 06:00:27.20 ID:o17giggl0 「じゃあ、あの、何進が下したという勅も本物だって朱里は思ってるのか?」 時系列を考えればあからさまに怪しい勅であるのだが。 「はい。極めて怪しいと言わざるを得ませんが、真であると思われます。 あの、紀霊将軍は極めて遵法意識が高いように思われます。 ここで彼が手配したならばそうなのでしょう」 諸葛亮としては、その勅が正規の手続きにより下されたとは考え辛いと思っている。だが、何らかの抜け道によりもたらされたのかもしれない。その仮説も捨てきれない。 「うーん。あれで、やることはきちんとやってるってことか……」 北郷一刀は呟く。好きか嫌いかと言えば嫌いな相手である。 が、やっていることは確かなのだな、というのは認めざるをえない。そしてそれは諸葛亮も大いに頷くところである。 「はい。紀霊将軍。恋さんと立ち会ったような武勇伝には事欠きませんが、真に評価すべきはその卓越した政治力ではないかと」 そう考えるとその手腕は恐るべきものである。 彼が武家筆頭となってから袁胤という不穏分子を除き、袁術という不和の種になりかねない人物を見事に駒として活かしている。 まさか入内させるとは。 袁家の威光はこれまで以上に留まることはないであろう。このままでは、袁家にあらんずば人に非(あら)ずというほどに権勢を誇ることすらありえるだろう。 「なるほどなあ。そんなのに董家軍みんなの命を乞う訳か。なかなか大変だ……」 苦笑する北郷一刀に関羽と諸葛亮は肩に入っていた力が抜けるような感覚を覚える。 見据える目標は困難。それでも気負わずに前を向く彼の言葉に決意を新たにするのだった。 ◆◆◆
423 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/05(水) 06:01:02.52 ID:o17giggl0 詠ちゃんが去ってから数日。洛陽に進駐するスケジュールは皇甫嵩とやりとりし、あらかた固まってきた。 「明後日だ。明後日。日輪が中天に差し掛かるころに洛陽に入る。そう諸侯軍に伝えろ」 そして、けりを、つけよう。 「諸侯軍には前祝として酒を配れ。秘蔵の火酒、全部配って構わん。ありったけを配れ」 そして。 「張郃。配下から選りすぐりをそうだな。百ほど選んどけ」 俺の言葉に張郃はニヤリ、と愉快そうに口を歪める。正しく俺の意図を汲んでくれたようだ。 「ほう。張家からということでよろしいのか?髑髏の面を集めなさるか。出立は?」 「払暁前。もっと言うと、一番鶏の鳴く前」 俺の言葉に稟ちゃんさんが問うてくる。 「それで、よろしいのですか。これまでの名声を地に落とされますか」 幾度か話し合ったことではあるのだが、それでも問うてくる。 「くどい。もう決めたことさ」 別に俺が手を下す必要はないというのはその通りだ。でも、さ。 更に言い募ろうとする稟ちゃんをどこか可笑しげに張郃は眺める。それに構わずに俺は言葉を続ける。 「殴られっぱなしは性に合わんからな。というよりだ。袁家は武家よ。 舐められたままでいられるかよ。このまま矛を収められるものかよ。 ――玉無しどもと同じ空気を吸うのもこれまでだ」 そして。 「これは洛陽にて散った者たちの弔い合戦でもある。袁家に仇なすということの意味を教育してやろうじゃあないか」 なに、禁軍とは話が付いている。後宮に残っている男は宦官のみ。ちょっとしたお掃除。それだけのこと。 宦官の誰が悪くて誰がもっと悪いなんて知る術もないならばまとめてポイするのが合理的な発想というものさ。 「最優先は弘農王……いやさ正当なる皇帝陛下劉弁様の身柄。そして宦官は殲滅だ」 「降伏か、死か、ということですかな?」 「違うね。逃げる奴は宦官だ。 降伏する奴は狡猾な宦官だ。 抵抗するのは訓練された宦官だ。 悉(ことごと)く、殺せ。宦官は悪だ。ゆえに鏖(みなごろし)だ」 悪、即、斬。それを体現するだけのこと。 「承知した。なに。禁裏にて血の雨を降らすことに臆するようなものはおりません」 汚れ仕事は張家の誉。その判断はこの上なく正しいと言わんばかりに、恭しく張郃は一礼し、その身を闇に同化させる。
424 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/05(水) 06:01:34.86 ID:o17giggl0 「何も二郎殿が手を汚すことはないでしょうに」 苦い声に苦笑する。 「怨将軍とか、英雄とか、そういうのは、いいのさ。 もとより身の丈に合ってなかったしな。だから、いいのさ。いいんだよ」 それに。 「そろそろ路線変更しようかなと思ってたとこだ。 そういうのは、もっとちゃんとした英雄が背負った方がボロが出ない。そして袁家、いやさ紀家には正真正銘の英傑がいるし」 一騎当千、趙子龍。 「天下にその名を轟かせるのは星の方が似つかわしい。そうだろう?」 「――貴方は!」 尚も言葉を重ねようとする稟ちゃんさん。 だが刹那の感情の爆発。その後に紡がれた言葉は別方向からのアプローチであった。 「では、譲られたその英雄の座。星はどう思うか。そして十全に槍を振るえるとお思いですか」 「う……」 流石である。そうきましたか。そして困る。 つまり宦官どもを皆殺しにするってのは、半ば俺の私怨と言ってもおかしくないからなあ。そこはまあ、怨将軍だから許してほしいな。 とか愚にもつかないことを考えていたのだが、思わぬところから助け舟が出た。ようそろ。 「稟よ。主をそう苛めるものではない。主には、いやさ男には譲れぬ思いがあるものだ」 そして助け舟を出してくれたのは星でした。いやなんで君ここにいるのん。 「ふ。そう不可思議な顔をすることもないでしょうに。まあ、種明かしをすると簡単ですがな。張郃どのから聞いたからですな。風からの伝言通り護衛を兼ねて控えさせていただいただけのこと。 まあ、主には言いたいこともあるのですが」 それでも、と。ニヤリ、と。 「天下一を目指すというのはこの身が発した志。そのために主はその身を挺してまでも飛将軍と渡り合う機会を作ってくださった。 ――もっとも、それでも。それでも討ち取れなかったわが身には忸怩たる思いがある」 暫し視線を地にやり、改めてこちらを見やる。 「紀家軍の指揮、承りましたとも。 下駄をはかせていただいたとは言え、一騎当千のこの身。けして禁裏、いやさ洛陽に余人を近づけませぬとも」 「……すまんな。星」 「何をおっしゃるか。嬉しいのです。 主に受けた恩は計り知れない。ようやく。 ようやくこの身で、この武で返すことができるのです。喜んで果たしましょうとも。 造られた英雄大いに結構。 もとより流浪の、一介の風来坊のこの身。望外の栄光。 見事果たしてみせましょうとも」 そして。 「それに主よ。それがしが聞きたいのはそのような謝罪の言葉ではない。感謝を、鼓舞をこそほしいものです。 と、女からここまで言わせる御身は相当に罪作りですぞ?」 艶然と笑む星。強張っていた思考が動き出す。そうだな。悲壮ぶるのは俺らしくない。 きっとね。 「星、ありがとう。そして何人たりとも洛陽に立ち入らせるな。 ――頼りにしてるよ」 「承った。なに、はねっかえりを押さえるだけの簡単なお仕事だろう?」 不敵で無敵。一騎当千な星に見送るしかない俺であった。 あ、微かに。微かに苦笑する稟ちゃんさんを見れたのもすごい収穫だなとかなんとか。 うん、ありがとな二人とも。 それはそれとして。 けじめはつけんとな。 まあ、地雷原での綱渡りではあるのだが、ね。 後始末が、はじまる。
425 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/05(水) 06:02:01.65 ID:o17giggl0 寝落ちしておりました ここまですー感想とかくだしあー 今のところ無題でごんす
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/08/05(水) 14:03:00.79 ID:1Cc5hk/D0 面白いからよし
427 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/06(木) 12:39:47.66 ID:C090nCv+0 >>426 ありがとうごぜえやす えっへっへ それはともかく、お盆には間に合いませんでしたね。 前後編に分けるしかないにゃー
428 :赤ペン [sage saga]:2020/08/06(木) 14:12:30.22 ID:fAoB5U7T0 乙でしたー >>421 >>そんな彼女に気遣うような視線を送られているのを感じて慌てて取り繕う。 これだと一刀が関羽に気遣うような視線が向けられてるように読めますね【(一刀が)そんな彼女に〜】 ○そんな彼女は気遣うような視線を送られているのを感じて慌てて取り繕う。 この後の言葉からすると【そんな彼女は(一刀の)気遣う様な〜】だと思うのでこうですね >>故に、だからこそ軽率なことはできない。 意味が重複してますね ○だからこそ軽率なことはできない。 意味を重ねるなら【だから……だからこそ】とかかな、と思いますけどそうする程でもないでしょ >>静かに諸葛亮は応える。 関羽の「どうして」と言う問いに対するものなので ○静かに諸葛亮は答える。 答えを教えるということでこちらですね >>北郷一刀はだから、問いを発する。関羽があのように苦しんでいるのだ。その理由を彼は知らずにはいられない。 これだと【だから】の掛かり先が分かりづらいので ○北郷一刀は問いを発する。関羽があのように苦しんでいるのだ。ならば、その理由を彼は知らずにはいられない。 でどうでしょう >>よくもそのような集団を限界せしめたものだと諸葛亮は改めて戦慄を禁じ得ない。 あ?何が限界だって?(チンピラ風 ○よくもそのような集団を現界せしめたものだと諸葛亮は改めて戦慄を禁じ得ない。 なお最近の造語なので【設立せしめた】の方が良いかな?むしろ袁家の凄さはそれを維持してることだと思うけど >>「おそらく、ですがそのための交渉をしているのではないかと」 ちょっと【おそらく】の意味が伝わりづらいので ○「おそらくですが、そのための交渉をしているのではないかと」 もしくは【「おそらく……ですがそのための】勿体ぶるというか思索してて考えをまとめる感じならこうですね >>422 >>袁家の威光はこれまで以上に留まることはないであろう。 間違いではないですが【これまで以上に留まる】と【ことはない】で分けて読むと違和感が出てしまうので ○袁家の威光はこれまで以上に中華に響き渡るであろう。 書いて思ってけど威光って響くのか?【包み込む】?【照り付ける】?【示される】?いっそ ○袁家の威光はこれまで以上のものとなるであろう。 がすっきりしてて良いかな? >>424 >>つまり宦官どもを皆殺しにするってのは、半ば俺の私怨と言ってもおかしくないからなあ。 間違いではないですがこれだと前の文章に【つまり】がかかってるように読めて《?》となるので ○つまるところ宦官どもを皆殺しにするってのは、半ば俺の私怨と言ってもおかしくないからなあ。 趙雲が槍を十全うんぬんかんぬんにかかると彼女も宦官皆殺しに関わってしまうけどそうじゃないでしょうし >>下駄をはかせていただいたとは言え、 下駄って日本の物っぽいんだよなあ…恋姫世界ならありそうだけど…と言うか星の履いてるのが下駄っぽいっちゃぽいんだよなあ ○嵩上げいただいたとは言え、 もしくは【水増しいただいた】とか?まあ気にしなくても良い事か >>切り捨ててしまいたいところではあったのだが、 劉備に最も近い位置にいるはずの彼女の思考回路が…お前、何で劉備が止めるのか分かってないだろ。あくまでも劉備が止めるからやってないだけだろ >>北郷一刀は呟く。好きか嫌いかと言えば嫌いな相手である。 一応聞くがなんで嫌いなん?自分の物(趙雲)に手を出されたから?義勇軍に糧食しか提供しないから?董卓を助けようとしないから? 【凡人、終わり方を整える】と言うかこの場合は結び方?締め方?それにしても張コウ君が愉しそうだわw 喧嘩なんてのは始めようと思えば結構簡単に始められるけど終わらせようとするといろいろと大変なのよね…それが戦争になったらなおのこと そういや食い詰め略奪して痛めつけられた諸侯軍の一兵卒はその後どうしたんだろ…もともとの諸侯のところに届けたのか袁家に届けたのか自分たちのもとに吸収したのか…
429 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/08(土) 09:47:18.26 ID:UDFWiA2i0 >>428 赤ペン先生いつもありがとうございますー! うほう。 >一応聞くがなんで嫌いなん?自分の物(趙雲)に手を出されたから?義勇軍に糧食しか提供しないから?董卓を助けようとしないから? 熱いマジレスありがとうございますw それもう星ちゃんとの一件から積み上がっている奴でしょうねw >喧嘩なんてのは始めようと思えば結構簡単に始められるけど終わらせようとするといろいろと大変なのよね…それが戦争になったらなおのこと ほんとこれです。 詠ちゃんはもう、このために頑張ってるし、月ちゃんはそれを分かってるから死ぬわけにはいかないのですよね >そういや食い詰め略奪して痛めつけられた諸侯軍の一兵卒はその後どうしたんだろ…もともとの諸侯のところに届けたのか袁家に届けたのか自分たちのもとに吸収したのか… 大体は送り届けて、いくらかは脱走かな 治安が・・・
430 :赤ペン [sage saga]:2020/08/08(土) 09:57:26.88 ID:9ezm9d5b0 高々義勇軍に「お前のところの兵士がチョーシこいて略奪してたから締めといたわwちゃんと見とけよなw」と雑兵を持ってこられた諸侯軍が何を思ったことやら(隙あらばヘイト稼ぎ
431 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/08(土) 10:07:21.45 ID:UDFWiA2i0 >>430 確かにw 「ぐぬぬ」 状況を考えると暗に命令されてた可能性も高いですね。つか、そうだろうなあ。 これはヘイトが充填されますよ!やったぜ!
432 :俯瞰者 ◆e/6HR7WSTU [sage saga]:2020/08/14(金) 12:17:05.49 ID:3kBKbdp20 乙です。残暑お見舞い申し上げます。 うーわー。とうとう血の雨が豪雨のように降るのかぁ。自業自得とはいえ、個人的にはねぇ。でも必要だから、必要だから。 で、こらパシリ。 嫌いなら帰れや。温い異分子が。消毒用アルコールと純粋次亜塩素と界面活性剤で消毒すんぞコラ。 二郎さんは「どうしてこうなった」を知っている側だからお前が董卓軍の助命嘆願しなくても最善をつくすだろうよ(一応オブラート包装) ただけじめをつける、筋を通す。この関係で何らかの処分はするだろうけど。 第一、使える人材を殺すなんて愚はぜったいやらない。ハーレムに引き込まれるヒロインは絶対出てくるけど(断言) だからコラパシリ。黙って消えとけや。コラ。 つうか関羽さんを報いてあげて。劉備込みでも仕方ないからなんか報いてあげて。 おーいチョウコウ君。必殺仕事人の出番だぜい。思い切り目立ってちょうだいよ(応援)つうか大活劇期待。超々期待。 二郎さんを本気で怒らせてしまったようですね。まぁ虎の尾を力いっぱい踏みにじって、逆鱗思い切り殴りつけりゃ、こうなるわな。 つうか趙雲さんが指揮権委譲されること自体紀家軍内部では既定事項のようなような気がするんですが。 幕僚幹部の誰かが文句言ってたとか?
433 :赤ペン [sage saga]:2020/08/14(金) 21:34:20.12 ID:rEb+M6s40 強いて言えば紀霊がそんな簡単に閑職に回されたっていう結果が残るのが問題かな? (えっ!あのPをPだからって理由でひそかにPしてしかもPをPにPしたって?そりゃ責任取るよね)…一応裏ワザというか力業使いまくればあんなことやこんなこともできるけど一ノ瀬さんがどうするのかを邪魔したくないのでP音多めで
434 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/15(土) 07:22:28.12 ID:Bzh9QCmS0 >>432 どもです。 お元気そうでなによりです。 >うーわー。とうとう血の雨が豪雨のように降るのかぁ。自業自得とはいえ、個人的にはねぇ。でも必要だから、必要だから。 屍山血河。まではいかないはず、はずです。 >ただけじめをつける、筋を通す。この関係で何らかの処分はするだろうけど。 はい。とだけ。 >二郎さんを本気で怒らせてしまったようですね。まぁ虎の尾を力いっぱい踏みにじって、逆鱗思い切り殴りつけりゃ、こうなるわな。 二郎ちゃんには辛い展開が続きますが仕方ないっすね。 >つうか趙雲さんが指揮権委譲されること自体紀家軍内部では既定事項のようなような気がするんですが。 まあ、突然あっちこっちほっつき歩いたり、放浪したりするので紀家軍的にはいつものことじゃないかとw >>433 >強いて言えば紀霊がそんな簡単に閑職に回されたっていう結果が残るのが問題かな? か、閑職とか。そんな二郎ちゃんのご希望ルートが通るわけがないですw あっちの更新が一段落しましたら続きやりますので。
435 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/15(土) 17:18:40.87 ID:Bzh9QCmS0 やってもた 書いてたのが消えた(本日1度目累計数えきれない) ぴえん キャストリアが来てくれたら(書き込みはここで終わっている)
436 :俯瞰者 ◆e/6HR7WSTU [sage saga]:2020/08/19(水) 11:25:14.85 ID:ETPb6Xi90 なんとなく浮かんだ。 タイトル案 「収束への助走」 うーん……うーん……
437 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/19(水) 20:32:32.50 ID:cFjFIKet0 >>436 >タイトル案 「収束への助走」 ほむん。刺さる。ちょっと検討させてくださいい。 何案あってもいいので、思いつきレベルでも結構なので投げてみて下しあ あ、麹義さんはこの章のために南皮残留でした。 ここが終わったら完全フリー素材となりますのでよろしくお願いします。 幸せにしてあげてくださいませ。 田豊師匠も同様ですが、どっかで私塾兼道場とか立ち上げてそうですねえ。。。
438 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/25(火) 22:30:13.95 ID:6LwOn5rb0 「なるほど、明日、か」 劉協は嘆息する。 至尊の座に座るのも明日が最後と思えば、ため息の一つも漏れようというものである。 とはいえ、偽帝として討たれるという心配はない。袁家からは内々に陳留王として政務に携わって欲しいという打診を受けている。 まあ、劉弁は愚鈍にして惰弱。そして洛陽に攻め寄せたという後ろめたさもあるのであろう。皇族、それも優秀な皇族が支持するというのは袁家にとっても益があるということである。そしてそれは目の前で持参した美酒を楽しむ男にもあてはまる。 皇甫嵩。清流派の首魁にして禁軍を掌握する重要人物である。彼が禁軍を握っているからこそ、朝廷は平穏を保っていると言ってもいい。 「ま、仕方ないね。想定内の事態ではあるし、ね」 軽く肩をすくめる皇甫嵩。彼も袁家より、内々に三公の座を打診されている。状況が落ち着けば、現状よりもその影響力は大きくなるだろう。 悠然と酒杯を干す。その所作に劉協は湧き起こっていた焦燥を噛み殺す。まだ、皇甫嵩と遣り合うには早い。だが。 「陳留王たるわが身、宦官、そして清流派の首魁たる貴殿、か。 天下三分とはよく言ったものだな」 時さえあれば、皇族たる自分が敵対する二者を圧倒するのは自明の理。劉協にとって時間は味方なのだ。 それを思えば喉を潤す酒精が甘露に思える。いや、実際に銘酒なのであろうが。 「そうだね、僕もそう思う。なるほど、天下を三分にすれば即ち三竦み。容易に動けるものではない。見事、さ。誰が考えたかは知らないけどね」 ぐびり、と皇甫嵩は杯を干して笑う。 「でもね、その一角。宦官は明日未明に誅されるよ」 「なに……? なん、だって……?」 劉協は言葉を喪う。 何を言っているのだ皇甫嵩は。そんなことができるものか。 「どうやら袁家は宦官という存在を許さないみたいだねえ。いやぁ、怖い怖い」 くすくすとした笑みを深める皇甫嵩。 「き、聞いてないぞ!朕は聞いてないぞ!皇甫嵩!」 「そりゃそうさ、言ってないからね。そして朕とか言うなよ見苦しい。 君は結局偽帝さ。それを認めるのがそんなに嫌かい?」 劉協は言葉を失う。これまでそのような無礼な言葉を聞いたことはない。なんとも不敬か! 「貴様――あ、ぐ、ぶぼ?」 ごぽり、と湧き出る真紅の塊に劉協は言葉を喪う。物理的に。 これは、なんだ。何故、どうして。どうして赤く、染まっているのか。 「まあ、そういうことさ。天下を分ける必要はない。乱れたその後は余計にね。だから、ゆっくり休んでくれたまえ。そして天下はきちんと僕が預かるからさ」 くそ、総取りかと劉協は血を吐きながら目の前で悠然としている男を睨む。せめて、呪われてあれ、と。 「ふふ、負け犬が吠えることもできずに倒れ伏すのを見るのは中々いいねえ。それも特等席ならなおのこと、ね」 宦官勢力が撃滅されたならば敵対するは劉協。そしてあの何進が恐れた才能とまともに組み合うほど皇甫嵩は愚かではない。そして、天下三分。そのうち二つが失われたならば。 「くく、そうさ。ようやく天は相応しい人物へと転がり込むのさ」 計画通り、とばかりにその秀麗な顔を歪めて皇甫嵩は笑う。 「ただまあ、駒が足りないというのがねえ」 文武共に配下の人材については物足りないという言葉では全く足りない。 清流派、とは言え実務に耐えうる人材の少ないことよ。 ことに軍を率いることのできる人材なぞ皆無に等しい。 「いいさ、当てはあるしね」 細工は流々。皇甫嵩はにまりと笑い、室を後にする。 残された劉協は虚空を睨み掴もうとして、無念そのものであった。
439 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/25(火) 22:32:31.58 ID:6LwOn5rb0 ◆◆◆ 「陛下、お目覚め下さい。 陛下……」 周泰は穏やかでいながら力強く声をかける。それは目指す相手にしか伝わらないという特殊な発声方法である。そして目の前の、健やかな眠りを貪る少年は不承不承、といった風に応える。 「ううん、なんだい。もう朝なのかい?もうちょっと寝かせてくれよ、まだ暗いじゃないか」 それに、と。 自分は陛下と呼ばれる立場にないから起きる筋合いはないかもね、と軽く主張すると同時に寝息を立て始める。 「ど、どうしましょう……」 禁裏の奥の奥、そして裏の裏。後宮より更に奥にある離れの一室。そこまでの道のり、その厳戒を潜り抜けるよりもこの、今の状況をどうしていいか分からずにあたふたと狼狽(うろた)える。 「なんだ、僕を殺しにきたのじゃあないのか」 不意に目前で寝息を立てていた少年――劉弁――は、のんびりとした声を上げる。 「お、起きていらっしゃったのですか!」 驚くのは周泰である。彼女からしても完全に寝入っていたはず。それが擬態ならば驚くべきものである。 「ううん、そうだね。そうだなあ、寝ていたよ。この上なく安らかにね」 面倒くさげに劉弁はぼそり、と。 曰く、何進が誅されてからこの方、いつ殺されてもおかしくないような空気。その中で過ごしていたというのだ。故に、安らかに眠れたのだ。それら不埒な塵芥を周泰が人知れず駆逐したのを――夜が明けて死体が発見されるまでは露見しないはずであるのだが――この少年はなんとなく感じ取っていたのであろう。 いわば小動物の生存本能にも近しいそれ。だが、それを身に付けてしまうというのがどういう状況下であるのだろうか。 周泰は発する言葉を失ってしまう。 「で、お姉さん。僕は用無しになって殺されるってわけじゃないんだよね?」 その声に周泰は自失していた意識を引き戻して慌てて応える。 「は、はい!勿論です!陛下の御身を守護するべく使わされて参りました。 陛下のご宸襟を騒がせ……」 「なら、それでいいよ。それで、僕はどこかに逃げるのかい?」 「いえ、外に出るのは却って危険です。臣がこの身に代えても御身を守護奉ります」 そうかい、と気安く劉弁は頷き。 「なら、もう少し寝かせてもらうよ。どうにも最近は寝たりなくっていけないからね。 じゃあね、おやすみ」 言い終えるとほぼ同時に湧き起こる健やかな寝息に周泰は目を白黒させる。 周泰は知らない。これが劉弁なりの保身術。それは何進に仕込まれた保身術。 徹底的に無能で、無害であることで魑魅魍魎の跋扈する宮廷をただ、浮揚することで生き残る保身術。それを遣り切る、ある意味での強さ。 そして、日が中天に昇り、すべてが終わり。それでも劉弁は呑気に惰眠を貪っていたのである。 そう、惨劇、阿鼻叫喚。これから起こるそれらを全て認識せず。劉弁はただひたすらに眠るのだった。
440 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/25(火) 22:34:16.02 ID:6LwOn5rb0 はい、再開です。頑張ります。 本日ここまですー感想とかくだしあー 流血の序章 血の前日 タイトル案はこんなとこです いいの欲しいっす。。。
441 :赤ペン [sage saga]:2020/08/27(木) 18:25:24.82 ID:3LtJcBy00 乙でしたー >>438 >>袁家からは内々に陳留王として政務に携わって欲しいという打診を受けている。 【〜して欲しい】は例えば【そのご飯を食べて欲しい】なら違和感が分かりやすいかな ○袁家からは内々に陳留王として政務に携わってほしいという打診を受けている。 形容詞の【欲しい】と補助形容詞の【〜てほしい】の違いらしいですね >>皇族、それも優秀な皇族が支持するというのは袁家にとっても益があるということである。 間違いではないですが好みの問題で ○皇族――それも優秀な――が支持するというのは袁家にとっても益があるということである。 大事な事なので2回言ったのかもしれませんが>>皇族 >>これまでそのような無礼な言葉を聞いたことはない。なんとも不敬か! 言葉は聞いたことあるよね…上偽帝とは呼ばれないって安堵してたし ○これまでそのような無礼な物言いを許したことはない。なんと不敬な! 最後は【何たる不敬か!】の方が良いかな? >>「くく、そうさ。ようやく天は相応しい人物へと転がり込むのさ」 この自尊心の塊みたいな男なら【転がり込む】は使わない気がします ○「くく、そうさ。ようやく天は相応しい人物の下へ収まるのさ」 これを取らぬ狸の三日天下と言います…イメージは偉そうな椅子に足組んで座って掌で玉璽とか転がしてる感じで >>439 >>だが、それを身に付けてしまうというのがどういう状況下であるのだろうか。 接続詞に違和感が ○だが、それを身に付けてしまうというのはどういう状況下であるのだろうか。 それとも【それを身に付けてしまうというのがどれほど異常な状況であるのか。】とかかな? >>言い終えるとほぼ同時に湧き起こる健やかな寝息に周泰は目を白黒させる。 【沸き起こる】って圧力が強くて抑えられないような印象があってちょっと違和感が ○言い終えるとほぼ同時に健やかな寝息を立ち始め、周泰は目を白黒させる。 もしくは【ほぼ同時に漏れだした健やかな寝息】とかどうでしょう…前者は「グーグー」後者は「すやすや」のイメージです >>これが劉弁なりの保身術。それは何進に仕込まれた保身術。 【保身術】って意味は分かるんですが調べても出てこないっぽいんで ○これが劉弁なりの自衛方法。それは何進に仕込まれた護身術。 あと【保身】って身体よりも権力とかの印象が強い気がするので >>無害であることで魑魅魍魎の跋扈する宮廷をただ、浮揚することで生き残る保身術。 【、】の位置に違和感が ○無害であることで魑魅魍魎の跋扈する宮廷を、ただ浮揚することで生き残る自己防衛。 適当に【保身】っぽいものを並べましたのでお好きな言い回しをどうぞ それにしても皇甫嵩は袁家の思惑を潰して「じゃああなたが天下人ですね」と言われると本気で思ってるのかしら 極端なこと言えばかつてやろうとしたように袁家の人材で公職全部埋められるかもしれないのに(今回の件で袁家も人財減ってるからできないかもしれないけど) そもそも天下三分を言い出したのが袁家でその一角を潰す袁家が他をどこまで尊重することやら
442 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/27(木) 21:15:57.14 ID:wTzeDcj70 >>441 赤ペン先生いつもありがとうございますー! 再開でございます。 >これを取らぬ狸の三日天下と言います… 三日もつかな(ぼそり) >それにしても皇甫嵩は袁家の思惑を潰して「じゃああなたが天下人ですね」と言われると本気で思ってるのかしら その座を勝ち取ることができるということを確信していらっしゃりますなw 自分はあいつらとは違う。上手くやれるというやつです。 >極端なこと言えばかつてやろうとしたように袁家の人材で公職全部埋められるかもしれないのに(今回の件で袁家も人財減ってるからできないかもしれないけど) それすら自分の手足として使いこなせるくらいの自信はあるかと >そもそも天下三分を言い出したのが袁家でその一角を潰す袁家が他をどこまで尊重することやら 自分が切り捨てられるとは思わないものです
443 :赤ペン [sage saga]:2020/08/30(日) 22:51:25.34 ID:lva6FZp00 三日持つっていうかそもそもとってすらいないから…
444 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/31(月) 06:03:07.80 ID:RrruOudU0 まあそりゃそうですけどw
445 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/31(月) 21:34:08.46 ID:RrruOudU0 ――夜をこめて、鶏の空音は謀るとも よに逢坂の関はゆるさじ かつて孟嘗君の配下が、虎牢関と並んで難攻不落を誇る函谷関を抜いた時の故事。 この時代、というか一般的に門が開くのは夜明け以降である。 そしてそれを示すのは一番鶏の鳴き声であり、孟嘗君の食客の一人が鶏の鳴き真似が上手かったからなんとかなったとかいう逸話である。 それにちなんで、あたしゃ函谷関よりもお安くないのよ、という清少納言のお言葉である。 いや、口説こうとしてこんなこと言われたらひくわー。間違いなくひくわー。 いや、意味は分かるよ?分かるけどどう答えたらいいのさ、という話である。そんな、普通の会話にそんなレベルの知識とそれを応用させての返答とか無理でしょ。俺は無理だ。 考えたら華琳とかネコミミとかはそこいらへんの要求レベル高そうである。下手な答えをするだけで好感度ダウンしそうな感じ。いまいちこう、俺を見る目が冷たいのはそこかなあ。くそ、文化人(インテリ)め!なんて時代だ! などとぼんやりと考えている目の前で洛陽の門扉は音を立てて開いていく。 払暁にもまだ間がある未明のこと。別に鶏の真似をせんでも根回しさえしとけばこうやって開くということだ。そしてここからは速さが勝負。 ちらり、と振り返ると黒装束の軍団が控えている。彼らは張家の精鋭。そしてそれを率いる当主以外は髑髏の仮面。うむ、禍々しい仮面兵団である。 フフ、怖いか?俺はちょっとだけ怖い。ちょっとだけよ。 「じゃ、いくか」 それを率いる俺はというと紀家軍の将らしく白装束である。黒を率いる白。うん、なんか小洒落たことを思いつくかなと思ったけど、そんなことは全然なかったぜ。俺の暗黒面(ちゅうに)は仕事をサボってるなあ。 見習いたい者である。 じゃなくて。 無言で付き従う髑髏の仮面兵団。うむ。呼んどいてなんだがね。改めて、ものっそい不気味この上ない。 ……率いる俺がそう思うのだからまあ、恐怖というものを振りまくにはちょうどいいであろう。 きっとね、多分。おそらくメイビー。
446 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/31(月) 21:34:43.40 ID:RrruOudU0 ◆◆◆ 屍山血河が築かれていく。それは人の手によってもたらされている。その光景は控え目に言って凄惨、無惨と言えるであろう。 命乞いをする宦官。逃げ惑う宦官。立ち向かってくる宦官。そのすべてが数瞬後は物言わぬ骸と化していく。いくのだ。 髑髏の仮面を纏った黒装束の殺戮。もはや虐殺と言っていい。 それらを睥睨し、ぴくとも表情を変えない紀霊。それをどこか可笑しげに眺めながら、彼は報告する。 「知恵の回る宦官は宮中に逃亡した模様です」 ち、と舌打ち一つ。 「いかがなさる?」 「疑わしきは、殺すべし。 やるなら徹底的にやらんといかん。 汚れは根こそぎ浄化するべし」 逡巡すら見せない。ここで後顧の憂いを断つ、とばかりに紀霊は命を下す。 にまり、と張郃は僅かに唇を歪ませて配下に命じる。 後宮のみならず宮中にも阿鼻叫喚が溢れる。溢れていく。 どれだけの返り血を浴びても張家の黒装束は其の色を変えない。ただ、死臭を纏うのみ。 官吏の幾人もが、ひげが生えていないというだけで冥府への旅路を余儀なくされる。 目端の利く者は、這い寄る死の気配から逃れるために局部を露わにして命を繋いだなどという話も残されているほどだ。 そして。 「な、なによ!私は一介の女官よ。どうして。あ!痛い!放しなさい!」 待ち人、来たる。 「逢いたかったぜ、李儒よ」 ぼそり、と呟く紀霊。そこには万感の思いが込められていても、声は枯れ果てている。 そして深く、ため息を。 その様に李儒は顔色を白くする。悟る。宦官誅滅。それすら欺瞞工作。その真意は宮中の奥にあり、手を出せない自分。それが主眼だと。 「な、なによ。どうするつもり?此度の董卓の暴挙については私のあずかり知らぬことよ。 私を責めるのはお門違いにも……び! ぐ、ふ……。 が……」 容赦なく、幾度も加えられた鉄拳。 李儒は反吐と鮮血を撒き散らす。 「おお赤い赤い。 なんだなあ、中身は思ったより綺麗じゃないか。 もっとこう、どす黒い、名状しがたき何かが出てくると思ってたんだが」 倒れ伏す李儒に軽く――紀霊主観である――蹴りを加えてせせら笑う。
447 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/31(月) 21:35:18.43 ID:RrruOudU0 「な、にを。わた、しは。 漢朝の、た、めに」 抗う李儒の髪を掴み、倒れ伏していた顔を上に上げる。 「そりゃあ、ご立派なことだな。だがな、そんなことはどうでもいいのさ」 吐き捨てる。 「長かった。長かったぞ。こうして、お前と向き合える場。 俺がどれだけ逢いたかったか。少しは分かって欲しいってもんさ、李儒さんよぉ」 くつくつ、と笑う紀霊に不吉なものを感じて李儒は。 「ま、待ちなさい。落ち着きなさい。わ、私を殺しても何も解決しないわよ。 そ、それに私は役に立つわよ。ねえ、それに、何でも言うこと聞くから。だから」 必死に媚を売る李儒に、いっそ穏やかと言っていい口調で紀霊は言う。 「何でも、って言ったか」 暫し瞑目し、食いしばった口からもたらされたのは、ただ一言。 「死、以外に貴様の出来ることはなさそうだな」 「ひ!嫌!死にたくない!逝きたくない! た、助けて!お願い!」 お前が、手にかけた人たちは皆そう思っていたろうよ。 「光射す世界に、汝の闇黒、棲まう場所無し――。 渇かせてやろうか、飢えさせてやろうか。それとも永劫に痛み付けてやろうか。 色々考えていたがな。何も残さず無に還れ」 三尖刀を、一閃。 そしてこの日初めて紀家の白装束が朱く染まる。 「お見事。本懐を果たした気分はいかがかな」 「知るかよ。クソッタレな気分だよ」 だが、それでも。 「姐さんや雷薄。それに気のいいあいつら。みんな、死んだんだ。死んだんだぞ。 みんな死んじまったんだぞ! それなのにさ、彼奴がのうのうと生きているなんて、おかしいだろう? ああ、そうだな。気分爽快ってやつ。それを、多少の泥で濁らせたらこんなもんかな」 これで、前に進めるというもの。 嘯(うそぶ)く紀霊に笑みを一つ。それにしかめ面で紀霊が言う。 「何か文句でもあったら言っとけ。 言いづらいなら七乃なり風にでも言っとけ。 ため込んで、我慢して。それで、いいことなんてあんましないからな」 はあ、と遠い目をする紀霊に張郃は表情を改める。 「いえ、この身。 いかようにも使い潰してくだされば、と思いました、が。 取り敢えず、どのようにお伝えしましょうか」 そうだな、と。暫し考えて。 「今回は、俺の私情で動いたところが大きいからなあ。 まあ、いいや。」 紀霊は、笑う。 「復讐するは、我にあり」 その言葉を伝えられた彼女らは、共に微笑んだ。 その笑みの違いは、対面した張郃のみが知ることである。
448 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/31(月) 21:36:36.22 ID:RrruOudU0 本日ここまですー感想とかくだしあー タイトル案は「復讐するは、我にあり」 もしくは、「朱く染まった日」 ええ感じのやつあったらオナシャス
449 :青ペン [sage]:2020/09/01(火) 10:18:09.65 ID:LkXNlqbvo 更新乙ーい。 また溜め込んじまったので適宜隙見ながら… とりま今回のは 【毒蜘蛛の旅路(さいご)〜死装束を朱に染めて〜】で。
450 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/01(火) 21:29:52.51 ID:yLO5hVFI0 >>449 どもです。 嬉しいやつです。 >また溜め込んじまったので適宜隙見ながら… 心のガソリンです。よろしくお願いします。 >【毒蜘蛛の旅路(さいご)〜死装束を朱に染めて〜】で。 >死装束を朱に染めて これかっこいい。 今回じゃなくてもいつか使いたいです。メモらせてもらいますねっと。
451 :赤ペン [sage saga]:2020/09/02(水) 16:50:09.87 ID:jlFt85q90 乙でしたー >>445 >>彼らは張家の精鋭。そしてそれを率いる当主以外は髑髏の仮面。うむ、禍々しい仮面兵団である。 今この場では率いてるのは二郎ですので ○彼らは張家の精鋭。そしてそれを統べる当主以外は髑髏の仮面。うむ、禍々しい仮面兵団である。 感覚的には(一時的に)二郎の右腕ポジ…あくまで、二郎より全員が下かな、と >>見習いたい者である。 人じゃないので(多分二郎ちゃんが一番見習いたい相手は劉弁君?普通なら位に穴が開きそうだが) ○見習いたいものである。 何らかの物質なら【物である】ですが概念と言うか何かそんな感じなのでひらがなの方が良いと思います >>446 >>そのすべてが数瞬後は物言わぬ骸と化していく。いくのだ。 この状況を印象付けたいのかもですが、ちょっと【いくのだ。】だと変なコミカルさが ○そのすべてが数瞬後には物言わぬ骸と化していくのだから。 前の文章の【凄惨、無残】にかける倒置法を使う感じでどうでしょう >>髑髏の仮面を纏った黒装束の殺戮。 【仮面を纏う】…仮面だと被る感じがしますが ○黒装束を纏った髑髏の面の集団による殺戮。 こんな感じでどうでしょう >>447 >>少しは分かって欲しいってもんさ、李儒さんよぉ」 李儒が欲しいだって?! ○少しは分かってほしいってもんさ、李儒さんよぉ」 補助形容詞なのでひらがなですね >>「光射す世界に、汝の闇黒、棲まう場所無し――。 闇黒(罪)だけ殺して人は憎まない方向で…楽進さんにも人を殺さずその怨念を殺すとか教えてたわけですし ○「光射す世界に、汝ら闇黒、棲まう場所無し――。 (元ネタでは)闇黒そのものなんですね、じゃあ対象外ってことで、お疲れっしたーっす >>それとも永劫に痛み付けてやろうか。 痛みを付ける?傷なら付けるものですが ○それとも永劫に痛め付けてやろうか。 と思ったら一応消えない痛みを残すとかの意味では存在するっぽい?まあ一般的にはこっちの方がなじみ深いかな、と(痛め付けるがなじむとかちょっと怖いなw) >>これで、前に進めるというもの。 これはどっちの言葉か難しいな ○これで、前に進めるというものです。 (泥で濁らせたら云々と)嘯く紀霊に笑みを一つ(しながら言葉をかけた)のか ○これで、前に進めるというものさ。 (と)嘯く紀霊に笑みを一つ(投げかけた)のか…チョウゴウと雷簿の関係とか考えるとどっちのパターンでもそれぞれの言葉を発した感情とそれに対する受け取り方が色々あるから悩ましい >>それで、いいことなんてあんましないからな」 間違いではないですが《あんま、しないからな》と読み間違えそうなので ○それで、いいことなんてあんまりないからな」 の方が良いと思います 死の安らぎは等しく訪れよう、賢人にあらずとも、善人にあらずとも(めがてんかん) 董卓との関わりは知らんが何進の暗殺を防げなかった以上どう繕ってもお前さんは漢朝にとって総合的に+にはならんよ、その程度のこともできない能力ならいらんし、しなかったなら尚のこといらんし 紀霊の言伝を聞いた時の笑みだけでご飯三杯いけそうなチョウゴウさん…一言でいうなら二人ともとってもきれいな笑顔だったんだろうなあ
452 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/02(水) 21:44:09.25 ID:ozDCEB4r0 >>451 赤ペン先生いつもありがとうございますー! いくつもなるほどですた。 じっくり検討させていただきます! >闇黒(罪)だけ殺して人は憎まない方向で…楽進さんにも人を殺さずその怨念を殺すとか教えてたわけですし その場のノリで言っただけな台詞が二郎ちゃんを襲う! >これはどっちの言葉か難しいな 二郎ちゃんと思ってましたが、含みができて、そのままの方がいいかもしれないなと思いました >死の安らぎは等しく訪れよう、賢人にあらずとも、善人にあらずとも(めがてんかん) ああ、これがあったか!これ使おうかな。使ったらやばいかな??? >董卓との関わりは知らんが何進の暗殺を防げなかった以上どう繕ってもお前さんは漢朝にとって総合的に+にはならんよ、その程度のこともできない能力ならいらんし、しなかったなら尚のこといらんし まあ、そうなりますよねえ。 何進は偉大だった >紀霊の言伝を聞いた時の笑みだけでご飯三杯いけそうなチョウゴウさん…一言でいうなら二人ともとってもきれいな笑顔だったんだろうなあ 愉悦というやつですね。 それはともかく、暴れん坊です。彼ら。 ぬ
453 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/02(水) 22:33:59.24 ID:ozDCEB4r0 「やってくれたわね、二郎……」 日輪がその姿を現すかどうか、その未明のことである。 その報せを聞いた曹操はぎり、と歯を噛みしめて呟いた。まさか、という思い。湧き起こる激情。 ――時はしばし遡る。 ◆◆◆ 「華琳様!一大事です!」 曹操がこの日目覚めたのは信頼する参謀の、常になく慌てた声であった。 「何だ、騒がしい」 このとき同衾していたのは夏候惇である。彼女が即座に起き上がり、曹操への道を防ぐように――一糸まとわぬ姿――で応じる。 「あんたはすっこんでなさい!一大事なのよ!」 尚も言い募ろうとする荀ケと夏候惇を、手早く薄布を纏った曹操が制する。 「いいわ、桂花。貴女が一大事だと言うのだもの。よっぽどのことなのでしょう?」 情事の残り香。その色香にどきりとしながら荀ケは言葉を続ける。 「はい!」 そしてもたらされた情報は驚くべきものであった。 「なんと、宦官誅滅とは二郎め。 思い切ったことをするな……」 ふむ、と考え込む夏候惇を糾弾する声が起こる。 「あんた馬鹿? いい?宦官ってのはね。華琳様の宮中におけるこれから政治的な後援者、後ろ盾になるはずだったのよ! それが誅滅されてしまったらどうなるか!」 なんとなれば、曹操の出自は宦官なのである。その宦官は当然子をなすことが出来ない。そうしてとった養子、さらにその子。それが曹操だ。 であるからして、これから漢朝の中枢に食い込むにあたっての足掛かりとしを想定するのは当然のこと。そして曹操陣営は宦官勢力を友好勢力と見なしていたし、宦官にしても魚心あれば水心。他の勢力に比べれば気心もしれていようものであるからして。 「フン、なにをいまさら。これまでその宦官とやらが我らにどれほどのことをしてくれたというのか。第一、そんなもの一切なくとも華琳さまは飛翔なさる! 少なくとも私はそう確信しているぞ」 言い争う配下。文武の要のそのやりとり。それに曹操はくすり、と笑みをこぼす。 ともすれば激発しそうな自分。そして、そうならないのは間違いなく、この二人の股肱のお蔭なのだ。 「落ち着きなさいな、二人とも」 それまでの激しい口論なぞ、毛ほどもなかったように二人は曹操の言葉に集中する。聞き入る。 「桂花、まずはご苦労様。 そして春蘭。貴女の言は薫風が如く心地よいもの。いつも以上に私を楽しませてくれたわ」 有難き幸せとばかりに、二人は曹操の前に膝をつく。 「でもね、桂花。無論、報(しら)せはそれだけではないのでしょう?」 曹操の笑みが深まる。 「は。袁家の一連の動き。夏侯淵将軍に――」 言い終わらぬうちに青い疾風が吹き込む。 「報告いたします。 袁家全軍、および公孫家、孫家が洛陽の城壁外に布陣を始めております。どうやら払暁よりも早くから動き出していた模様。 なお、四半刻もすればその陣構えは完了するかと」
454 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/02(水) 22:34:25.24 ID:ozDCEB4r0 怜悧な口調を崩さぬままに要点のみを主君に伝える。緊急と思えばこそ前口上も不要とばかりに簡潔に述べる。 曹操もそれを褒めこそすれ咎めるなぞしないであろう。それくらいの信頼関係はできている。 そしてその報に、言葉を失う。どういうことだと。 だが、ここにその例外がいる。 「ふむ、抜け駆けもここまでくれば見事なものだ」 誰あろう、夏候惇である。 「アンタね!何を呑気な!」 その言、即座に噛みついたのは荀ケである。これは彼女らの日常を再現しているようなものであろう。それにより、僅かに空気が弛緩する。 「兵は詭道なり。 騙される方が悪いと常々言っているのは貴様だろうに」 ギャンギャンと吠える軍師を半ばあきれたように見下ろして。 夏候惇はむしろ、不思議そうに問うのだ。 それに応える声は涼しく響く。 「まあ、姉者の言う通りではある。 それに、まだ我らはなにもしていないしされてもいない。これから如何様にでもなるだろうさ。 それはそうと姉者。流石に何か着るべきだと思うが」 ふむ、とばかりに頷き今更ながらに身づくろいを始める夏候惇。その様子にくすり、と笑って曹操は口を開く。 「秋蘭、まずはご苦労様。季衣は物見に残しているようね。いいでしょう。 そうね、初動はそれでいいわ。 そして、実際に一杯喰わされてしまったのも確かなことよ」 だが、と曹操は不敵に笑う。 「この程度、窮地でもなんでもないわ。二郎がどのような絵図を描いたとしても私はその上をいきましょう。 桂花、春蘭、秋蘭。まずは陣構えを!」 応とばかりに散る股肱の臣を満足げに見守り、曹操は誰にともなく呟く。 くすり。くすくす。 「ええ、二郎。 私を蚊帳の外においておくなんて――」 ひどいんだから。 薄闇に差し込む陽光を受け、その笑みは輝いていたのであった。
455 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/03(木) 05:57:42.67 ID:ycpGCHS80 ここまですー感想とかくだしあー 題名はなんだろうなあ 覇王の目覚め とかかなあ
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/03(木) 11:12:23.68 ID:MLJ9d+WRo おつしたー 何気に曹操出し抜けてるのつおぃなぁ タイトル案は「覇王のいぬ間に」で
457 :赤ペン [sage saga]:2020/09/03(木) 13:47:12.41 ID:FPs+T2tK0 乙でしたー 歌詞をパクったわけじゃないし使っても良いとは思いますがあれに使うには上等すぎるのではと言うもったいない精神がw >>453 >>日輪がその姿を現すかどうか、その未明のことである。 意味がかぶってるかなあ日が出るか出ないかの時が未明なので ○日輪がその姿を現すかどうかと言った未明のことである。 それとも【喫緊の問題も無く、久方ぶりにたっぷりと褥を楽しんだ、その未明のことである。】とかで曹操にとってまさに一杯食わされた感を出したりなんだり…どういう状況からの【未明】なのかを書くといいと思います >>曹操がこの日目覚めたのは信頼する参謀の、常になく慌てた声であった。 間違いと言うほどではないですが【目覚めたのは〜声であった。】となるので ○曹操がこの日目覚めたのは信頼する参謀の、常になく慌てた声によってであった。 もしくは【曹操のこの日の起床は、信頼する参謀の常になく慌てた声であった。】う〜ん ○曹操のこの日の起床は、信頼する参謀の常になく慌てた声によるものであった。 もしくは【曹操のこの日の目覚めは〜】とかどうでしょう >>曹操への道を防ぐように――一糸まとわぬ姿――で応じる。 【防ぐにようにで応じる。】? ○曹操への道を防ぐように――一糸まとわぬ姿で――応じる。 の方が良いと思います >>尚も言い募ろうとする荀ケと夏候惇を、手早く薄布を纏った曹操が制する。 【一大事】の内容を言い募るなら問題ないと思ったけどこれ【すっこんでなさい】の方か ○尚も言い争いを続けようとする荀ケと夏候惇を、手早く薄布を纏った曹操が制する。 【言い合い】とか【口喧嘩】とか【問答】も考えましたがちょっと違うかな… >>そうしてとった養子、さらにその子。 間違いではないです ○それゆえとった養子、さらにその子。 【そうして】だと動機よりも手段の印象があるのでちょっと変更 >>これから漢朝の中枢に食い込むにあたっての足掛かりとしを想定するのは当然のこと。 久しぶりのケアレスミス ○これから漢朝の中枢に食い込むにあたっての足掛かりとして想定するのは当然のこと。 もしくは【足掛かりとすることを】かな? トンねぇまじトンねぇ…二郎たちとしては何進がいない状態で曹操にブーストとかまじ無理だから少しでも、ね この一刀唐竹割並みの活にして断…自縄自縛とは無縁の闊達さはまさに曹操の右腕よな あとねこみみはお前別に袁家に好意持ってないんだから相手側が自分たちに無条件で好意を向けるわけがないって自覚して、どうぞ 自分だって袁家を怒らせないギリギリのラインで優位立てる状況ならするだろ?
458 :青ペン [sage]:2020/09/03(木) 20:14:22.72 ID:laKH0HKMo >>455 乙ーい。 ちょいとひねって 【尊べ!電光石火】 といってみようかにゃ?
459 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/03(木) 22:03:25.06 ID:ycpGCHS80 >>456 感想ありがとうございますー >何気に曹操出し抜けてるのつおぃなぁ 謀略というか、仕掛けた方が圧倒的に有利なんすよね 先手必勝は真理でございます >タイトル案は「覇王のいぬ間に」で 覇王であったか。。。 覇王になりませんように。。。 >>457 赤ペン先生いつもありがとうございますー! > 歌詞をパクったわけじゃないし使っても良いとは思いますがあれに使うには上等すぎるのではと言うもったいない精神がw わかりみw でも使いたい!ちょっと考えます。 >トンねぇまじトンねぇ…二郎たちとしては何進がいない状態で曹操にブーストとかまじ無理だから少しでも、ね dでもねぇ はおーが覇王になったらえらいこっちゃ祭りです >この一刀唐竹割並みの活にして断…自縄自縛とは無縁の闊達さはまさに曹操の右腕よな まさに曹家の大剣ですわ。ネコミミと仲良く?喧嘩する様は一生書いてられる。。。。 >あとねこみみはお前別に袁家に好意持ってないんだから相手側が自分たちに無条件で好意を向けるわけがないって自覚して、どうぞ はおーからして、自分がうらぎるのはええけど、相手が裏切るのは許さないですからね、多少はね? >>458 どもです。 >【尊べ!電光石火】 ひねった!ひねってきた!その捻りは想定外!
460 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/03(木) 23:03:01.22 ID:ycpGCHS80 「ご主人様!桃香様!お目覚め下さい!一大事です!」 日輪が昇り、人が活動を始めるであろう時間帯。確かに日の出と共に起き、日の入りと共に床に就く生活が一般なこの時代――無論、贅沢に照明を使って夜を楽しむ者もいるが――では寝坊と言っていい時間帯である。 「愛紗、なんだ。まだ早いじゃないか。そんなに慌てているからよっぽど寝過ごしちゃったかと思ったろ」 そう、慌てることはない。洛陽に兵を進めるのは日輪が中天に至ってから。大所帯という訳でもないし、最近は随分と統制も取れてきている。精々半刻もあれば準備は整うであろう。 それに、昨日はまあ、戦勝の前祝ということらしく大盤振る舞いがあった。それまでは散々兵糧の拠出を渋っていた兵站が酒や肴まで――それも兵卒に十分に行き渡るまで――だ! 大いに飲み、食い、騒いだ。そしてまあ、すこしくらいは呑み過ぎてしまったのも確かではあるが。なにせ袁家秘蔵の火酒なるものはそれまでの酒と比べ、明らかに別物といっていいもの。喉を焼く感覚、まさに火酒であった。味見程度とはいえ、関羽もそれを味わっていたはずなのだが――。 「それです!洛陽への道がふさがれております!」 「なんだって?もう、敵はいないんじゃなかったのか!」 一体、誰が、と。 その問いに関羽が応えるより先に口を開くのは諸葛亮。 「袁家、でしょうか。それに追随する軍閥――白蓮さんあたりと見ました」 「そ、その通りだ。それに付け加えて、孫家だった」 牙門旗を確認した限りではだが、と関羽は毒気を抜かれたように呟く。 「もし、敵対する勢力であるならば昨夜、或いは日の出と共に私たちを含む反董卓連合はうち滅ぼされていたでしょう。もしくは、袁家が防衛戦を繰り広げていたはず。 ですから、ことここに至っては袁家のみがそれを可能とするのです」 「え、でもなんでなの?なんで袁紹さんはそんなことするんだろ」 不思議そうに小首を傾げる劉備に諸葛亮は苦笑する。 「勿論、理由はありますし、推論はありますがそれはあやふやなものです。 ですから、行きましょう。私たちが抱くその疑問は他の諸侯軍も持つものです。 きっとその答えがあるはずです」 にこり、と笑う諸葛亮に北郷一刀は安堵を覚える。 なに、絶対無敵の軍師がそう言うならばきっとそうなのだろう、と。
461 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/03(木) 23:03:28.08 ID:ycpGCHS80 ◆◆◆ 「さて、馬家軍か。どうなることやら」 公孫賛はわずかに苦笑する。公孫がその軍を展開するのはちょうど馬家軍の正面あたり。 袁家の差配に馬家が不穏な動きあらば抑えるのが役割となっている。 「……貧乏くじと思っている?」 すぐそばに控える韓浩が問うてくる。 くすり、と笑みが浮かぶのを制せない。なんとなれば戦場でそのような、彼女のような存在が脇にあったことなぞ、ついぞなかったのだから。 「いや、本懐だな」 感慨深く公孫賛は言う。 それは脇に参謀、或いは副将という存在がいるということだけではない。 「だってそうだろう?洛陽の無辜の民。その安寧を守れるのだろう? これほどの喜びがあるもんか」 ――公孫賛は北方の弱小軍閥の出である。 常に匈奴の脅威に晒され、抗い、戦ってきた。 その戦いは常に受け身。侵入する匈奴に対する対処に過ぎない。 ――天高く、馬肥ゆる秋。 それは公孫賛にとって、北方の漢民族にとっては戦慄の季節。匈奴が長城を越えてやってくる季節のことに他ならない。その文句は間違っても豊穣を祝う意味ではないのだ。 そして訪れる災厄。男は殺され、女子供は犯され、浚われる。 その惨状に幾度無念とわが身の無力を嘆いたか。
462 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/03(木) 23:03:58.57 ID:ycpGCHS80 替え馬すら満足に用意できず、幾度取り逃がしたか。幾度民の悲鳴を聞き、悲嘆を聴き、怨恨を背負ったか。 騎射という匈奴の技術を公孫が身に付けたのも、そのためだ。戦利品の財貨や女を背負った匈奴ども。その重荷に、地平の彼方にあったその姿はやがては手の届きそうなところまで追いつめても、その、届きそうなところに用意されている替え馬。単純な機動力では敵わない。だから騎射という匈奴の技術を身に付けた。 だからこそ公孫家は、弱小軍閥としてはありえないほどの躍進を遂げたのだ。 そう、こと対騎馬戦においてはかの馬家軍相手でも譲るつもりはない。 今となっては白馬義従が武威により、公孫の牙門旗がある村落には匈奴は近づきもしないのだから。 「それにしてもなんかこう、落ち着かないなあ」 公孫賛は馬上でそう、誰に聞かせるわけでもなく呟く。 その声に韓浩は無感動に応える。 「いい加減、自分の立ち位置というのを認識するべきと思う。 この戦場において、こと戦闘経験という意味では公孫賛殿はかの馬家軍の令嬢をもはるかに凌ぐ。これは世辞ではない。厳然たる事実。この中華で貴女より歴戦なぞ、そうはいない。しかも、匈奴相手に、だ」 あくまで淡々と韓浩は呟く。 「お、おう」 常になく真正面からのその思いに公孫賛は戸惑い、そして破顔する。 「そうか、そうだな。他でもない韓浩がそうまで言ってくれるならば、白馬義従は無敵さ。そうだろう?」 是、と迷いなく韓浩は頷く。 「なに、母流龍九商会の長弓兵も後詰に来ている。こちらの指示に従ってくれるそうだ。 ……愛されているようでなにより」 「な!」 かあ、と頬を上気させて公孫賛は目を白黒させる。 からかっているのか、揶揄しているのかと思うも韓浩の鉄面皮はぴくりとも動かない。 どうやら、本心からの言葉だったようである。 ……それはそれでなんだかなあ。 何とも言えない表情の公孫賛を韓浩は僅かに首を傾げて怪訝そうにする。 「――何か?」 「いーや、なんでもない!なんでもないったらない!」 まあ、会話が微妙に噛み合わないのはよくあることである。 それでも、確かな絆がそこにはある。これはきっと自分だけの思い込みではないはずだ。 単身で駆けまわっていた頃に比べて、なんと恵まれていることか。 それもこれも。 「結局、二郎のおかげなんだよなあ……」 くす、と薄く笑み、気を引き締める。 絶対に負けられない。彼の為にも。 無論、戦端が開かれるとは決まっていないのだけれども。
463 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/03(木) 23:04:29.68 ID:ycpGCHS80 替え馬すら満足に用意できず、幾度取り逃がしたか。幾度民の悲鳴を聞き、悲嘆を聴き、怨恨を背負ったか。 騎射という匈奴の技術を公孫が身に付けたのも、そのためだ。戦利品の財貨や女を背負った匈奴ども。その重荷に、地平の彼方にあったその姿はやがては手の届きそうなところまで追いつめても、その、届きそうなところに用意されている替え馬。単純な機動力では敵わない。だから騎射という匈奴の技術を身に付けた。 だからこそ公孫家は、弱小軍閥としてはありえないほどの躍進を遂げたのだ。 そう、こと対騎馬戦においてはかの馬家軍相手でも譲るつもりはない。 今となっては白馬義従が武威により、公孫の牙門旗がある村落には匈奴は近づきもしないのだから。 「それにしてもなんかこう、落ち着かないなあ」 公孫賛は馬上でそう、誰に聞かせるわけでもなく呟く。 その声に韓浩は無感動に応える。 「いい加減、自分の立ち位置というのを認識するべきと思う。 この戦場において、こと戦闘経験という意味では公孫賛殿はかの馬家軍の令嬢をもはるかに凌ぐ。これは世辞ではない。厳然たる事実。この中華で貴女より歴戦なぞ、そうはいない。しかも、匈奴相手に、だ」 あくまで淡々と韓浩は呟く。 「お、おう」 常になく真正面からのその思いに公孫賛は戸惑い、そして破顔する。 「そうか、そうだな。他でもない韓浩がそうまで言ってくれるならば、白馬義従は無敵さ。そうだろう?」 是、と迷いなく韓浩は頷く。 「なに、母流龍九商会の長弓兵も後詰に来ている。こちらの指示に従ってくれるそうだ。 ……愛されているようでなにより」 「な!」 かあ、と頬を上気させて公孫賛は目を白黒させる。 からかっているのか、揶揄しているのかと思うも韓浩の鉄面皮はぴくりとも動かない。 どうやら、本心からの言葉だったようである。 ……それはそれでなんだかなあ。 何とも言えない表情の公孫賛を韓浩は僅かに首を傾げて怪訝そうにする。 「――何か?」 「いーや、なんでもない!なんでもないったらない!」 まあ、会話が微妙に噛み合わないのはよくあることである。 それでも、確かな絆がそこにはある。これはきっと自分だけの思い込みではないはずだ。 単身で駆けまわっていた頃に比べて、なんと恵まれていることか。 それもこれも。 「結局、二郎のおかげなんだよなあ……」 くす、と薄く笑み、気を引き締める。 絶対に負けられない。彼の為にも。 無論、戦端が開かれるとは決まっていないのだけれども。
464 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/03(木) 23:05:12.78 ID:ycpGCHS80 本日ここまですー感想とかくだしあー 題名募集しまくりんぐですよ本当に! 案は「地味様の憂鬱、或いは腹心との語らい」 そんな感じです
465 :赤ペン [sage saga]:2020/09/05(土) 16:07:57.62 ID:PTNduLdB0 乙でしたー>>はおーからして、自分がうらぎるのはええけど、相手が裏切るのは許さないですからね、多少はね? はおーはそれでいいけど軍師がそれじゃあかんやろ(マジレス >>460 >>「ご主人様!桃香様!お目覚め下さい!一大事です!」 補助動詞なので ○「ご主人様!桃香様!お目覚めください!一大事です!」 ですね(わかりやすい例文としては【上着を脱いでください】これを漢字にすると上着が欲しいことになります) >>それまでは散々兵糧の拠出を渋っていた兵站が酒や肴まで――それも兵卒に十分に行き渡るまで――だ! ちゃんと仕事ができる程度には出してたと思うんだけど…大食漢の分とか水増し請求して睨まれたんじゃねーの? ○それまでは散々出し渋っていた兵糧のみならず酒や肴まで――それも兵卒に十分に行き渡るまで――だ! 【拠出】だと出し合うことなので(まあ兵力は出してたんでしょうけど)袁家に集ってしかいないのに面の皮厚いっすわ。ちなみに兵糧は必要な食糧なので《食料だけじゃなくて嗜好品まで》って意味でこの方が良いと思います >>その問いに関羽が応えるより先に口を開くのは諸葛亮。 【誰が?】という問いに対しては ○その問いに関羽が答えるより先に口を開くのは諸葛亮。 こうですね《袁家が?》という問いなら《是、と応える》のもありですが >>462 >>「なに、母流龍九商会の長弓兵も後詰に来ている。 反董卓連合に商会が商会として戦力出してるの? ○「なに、袁家の長弓兵も後詰に来ている。 普通に袁家が徴兵した(という建前の)一般兵でいい気がする(賤業の私兵とか諸侯勢力からいらんいちゃもん付けられそうだし) >>463 丸っと重複してますね >>夜を楽しむ者もいる…アッ(察し)モゲレバイイノニ >>そんなに慌てているからよっぽど寝過ごしちゃったかと思ったろ」 【よっぽど】じゃなくても寝過ごしたことを恥じろ。そもそも一大事って言われてんだろ山賊の奇襲報告だったらどうすんだよ 絶対にこいつら(兵卒含む)いつも以上に食って飲んで食い過ぎ、二日酔いの役立たず集団になってるな そういえば韓浩は【公孫瓚殿】呼びなんだな…らしいと言えばらしいけどもっと胸襟を開いて良いのよ?地味様が尊過ぎて…原作だと兵力と領民をNTRされてんだよなあ
466 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/05(土) 16:47:20.14 ID:qvVR2asK0 >>465 赤ペン先生いつもありがとうございますー! ほむ > はおーはそれでいいけど軍師がそれじゃあかんやろ(マジレス ぐうの音も出ない正論ですw でもネコミミの欠点ここなんですよねえ。。どう考えても。。。 はおーが覇王になれない一因ですわこれ 稟ちゃんさんと風ちゃんがいたら問題なく覇王になってたんだろうなあと。 >絶対にこいつら(兵卒含む)いつも以上に食って飲んで食い過ぎ、二日酔いの役立たず集団になってるな 普段飲んでない人間が蒸留酒飲むと頭痛いし吐き気もするしで、ある意味毒を盛ったのと変わらないっしょw >そういえば韓浩は【公孫瓚殿】呼びなんだな…らしいと言えばらしいけどもっと胸襟を開いて良いのよ? 「一理ある。だが新参かつ外様の自分は分をわきまえるのがよかろう」 とのことです。お堅い! >地味様が尊過ぎて…原作だと兵力と領民をNTRされてんだよなあ これはひどい案件ですわw そしてそれを快く送り出す人の良さよ! ねえ。。。
467 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/06(日) 21:55:54.93 ID:PuubI+Mi0 ざわめきが徐々に、だが確実に広がっていく。 日輪が昇り切り、前夜の狂騒の残滓を振り払ってのそりと起き出した諸侯軍は端的に言って戸惑っていた。 これよりは洛陽に進軍するのみ。もはや抵抗勢力はなく、進軍するのみ。だのに。 なぜ洛陽への道は既に陣構えを終えた軍勢によって塞がれているのであろうか、と。 「物流に難がある洛陽では反董卓連合の大軍を受け容れる余地がない」 袁家からはそのような事情を説明する書状が回されてくるが、それで納得する諸侯軍ではない。 「なるほど、確かに凄い人数だもんな。そりゃあ混乱するか。でもそれにしたらものものしくないか?」 北郷一刀は浮かんだ疑問を口にする。 「はい。確かにそうです。あれは、断固として通さないという袁家の意思表示がうかがえます」 「でも、何で袁家軍だけじゃなく諸侯軍も殺気立ってるんだ?」 膠着した状況が暫し続き、諸侯軍からは不穏な気配が立ち上る。そう、諸侯軍としてみたら上前をはねられたようなものである。たまったものではない。 そう、たまったものではないのだ。 「それは……」 そして諸葛亮は口ごもる。果たしてそれを聞かせていいものか。 「朱里、分かっているなら教えてくれないか」 そう、言われてしまえば否やはない。 「……諸侯軍は常備軍ではありません。それが最大の理由です」 「どういうことだい?」 首を傾げる北郷一刀と劉備に鳳統が言葉を続ける。 「諸侯軍の兵力。それは正規の兵ではありません。極端な話、そこいらの農民、流民に武器をもたせただけというのが実態です」 まあ、それは自分たち義勇軍も変わらないのではあるが。 「戸籍のしっかりした民を動員すればするほど手元の領内の収入は減ります。そしてそれは動員された兵も同じく、です」 武具、糧食に費やされた軍費。それは諸侯の財政を圧迫する。誰がこのように大規模な出兵――それも長期間の、だ――を想定なぞしていようか。 「ですから、いえ、だからこそ諸侯軍は洛陽への進軍を待ち構えていたのでしょう」 この時代、進軍に伴う略奪は黙認されている。そして貧しい寒村ならばともかく、これから進軍するのは肥え太った洛陽である。どれだけの富が蓄えられていることか。そしてその富を分捕った後は領地に帰るだけなのだ。
468 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/06(日) 21:56:40.28 ID:PuubI+Mi0 「そんな……ひどい……」 劉備の悲しげな言葉にやはり言うべきではなかったか、と諸葛亮は僅かに後悔する。 「でも、じゃあ、どうして袁家は……あれじゃまるで洛陽を守っているみたいじゃないか」 北郷一刀の言は正しい。正しく袁家は洛陽を守護しようとしているのであろう。なぜならば。 「袁術殿が入内されます。故に洛陽が荒れるのは看過できないということでしょう。そして、兵を蓄えた諸侯軍は実に目障り。あわよくばここで誅滅してしまう心づもりでさえあるかもしれません」 「そんな……乱暴な!」 もっとやり様があるだろうにと北郷一刀は憤慨する。 下手をすれば洛陽は火の海になるだろう。彼の知っている歴史と同じく。 その憤懣、或いは悲嘆。 だが、と思い諸葛亮は傍らの親友に問う。 「……雛里ちゃん、あれ、抜ける?」 こと、千変万化たる戦場の機微に関して諸葛亮は鳳統に一歩も二歩も譲るのを自覚している。 「無理だよ、朱里ちゃん。中央に陣取る顔家軍の重厚さ。左右を固める孫家軍と公孫。どっちも陣構えだけでその歴戦が分かるよ。そこに遊軍として紀家軍。決戦勢力として文家軍がいるんだよ?しかも本陣は更に分厚い袁家旗本。 あれを抜くなら、倍は、欲しいな」 実際、反董卓連合と言ってもその内実は袁家軍単独でも成り立つもの。 そしてその威容があるからこそ大多数の諸侯を前にしても袁家軍は揺るがない。質、量ともに恐るべきものである。将帥も、兵卒も。 「うん。私なら三倍は欲しい。雛里ちゃんの言う通りと思う。 桃香様、ご主人様。恋さんでもいない限り目の前の陣を突破することはまず無理でしょう」 「じゃあ、それが鈴々と愛紗ならどうだろう」 ふと、好奇心で北郷一刀はそう尋ねてみる。 「……何とも言えません。私からはなんとも。雛里ちゃん、どう?」 急に話を振られた鳳統は慌てつつも所見を述べる。 「あわわ……。駄目です。勝ち目はないです。 まずもってお二人を前線に出したならば、敵はこちらの本陣を急襲してくるでしょう。 と言って、どちらかお一人ならば星さんに足止めさせられます」 それに、あの呂布に手傷を負わせた顔良もいる。改めて袁家の分厚い陣容を再認識する。個の武勇でどうこうできるものではない。 いや、そもそも一騎打ちの優劣で戦場を語ってはいけない。そのような偶発的な状況を許すほど袁家は甘くないだろう。 少なくとも、自分たちの手持ちの兵力では如何ともしがたい。そう諸葛亮は内心歯噛みする。質も量もまるで足りない。将帥の優秀さあある故にそれが残念でならない。未だ中華に影響を与える打ち手としてはその前提とする力がまるで足りないのだ。 この場で、一石を投じるとすればせめて馬家軍か曹家軍くらいの武威がないことにはお話にならない。 「あ……!」 そしてその、状況を動かすに足る陣営が動く。 「あれは……?」 北郷一刀の呟き。 そう。 曹家軍きっての猛将夏候惇。それが少数の手勢を率いて、陣取る袁家軍に相対する。 陣頭の夏候惇は高らかに口を開く。 「曹家軍名代夏候惇である!洛陽への道を塞ぐ袁家に問いたいことがある!いざ尋常に応えられたし!」 そして状況を動かすのは曹操。夏候惇の口上を満足げに、不敵に笑いながら見守る。 その根底には怒りがある。 よくも自分をのけものにしてくれたな、と。 やられたままではいられない。それが曹操である。
469 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/06(日) 21:57:06.81 ID:PuubI+Mi0 本日ここまですー感想とかくだしあー 題名未定です
470 :赤ペン [sage saga]:2020/09/07(月) 18:27:43.93 ID:GgWEZK4E0 乙でしたー >>467 >>そう、諸侯軍としてみたら上前をはねられたようなものである。 間違いではないですが ○そう、諸侯軍からすれば上前をはねられたようなものである。 まあ好みの問題かな >>そう、言われてしまえば否やはない。 《そうなってしまえば》と同じような使い方なので ○そう言われてしまえば否やはない。 の方が良いと思います >>「ですから、いえ、だからこそ諸侯軍は洛陽への進軍を待ち構えていたのでしょう」 間違いではないですがこれだと《こっちに来い》感が強いというか罠をはって相手が掛かるのを待ってるような印象があるので ○「ですから、いえ、だからこそ諸侯軍は洛陽への進軍を待ち望んでいたのでしょう」 もっとSAGEしたいなら【進軍を舌なめずりしていた】とか?こいつどっちも糞とか考えてそうだしなあ…【進軍の時を待ちわびていた】とかどうでしょう >>468 >>諸葛亮は鳳統に一歩も二歩も譲るのを自覚している。 【譲る】だと上位者が下位者に。の印象があるのでちょっと違和感が ○諸葛亮は鳳統に一歩も二歩も劣るのを自覚している。 もしくは【鳳統に一歩二歩及ばないのを】だと負けん気の強さが出るかな?【鳳統には引けをとるのを】だとガチで客観視してる感じが出せる…なおご主人様の寵愛を考えるとこうはできないだろうね >>左右を固める孫家軍と公孫。 単騎?軍の体をなしてない寄せ集めの揶揄? ○左右を固める孫家軍と公孫家軍。 (精鋭で)数が少ないから【公孫】呼びなのかな? >>あわよくばここで誅滅してしまう心づもりでさえあるかもしれません」 本気でそれをやるなら食料に毒なり薬なり混ぜるだろうしそんなつもりが無いこと分かって言ってるのかねえ >>「そんな……乱暴な!」 案の定推論を真実にして袁家に怒り向けてるしw董卓の治めてた洛陽を守ってるという事実から見直そうとは…しないんだなあ ちょっとご飯食べてきます
471 :赤ペン [sage saga]:2020/09/07(月) 23:54:57.95 ID:GgWEZK4E0 さて続きを >>468 >>「うん。私なら三倍は欲しい。雛里ちゃんの言う通りと思う。 ちょっと読みづらいような? 〇「うん。私なら三倍は欲しい。雛里ちゃんの言う通りだと思う。 の方が良いと思います >>少なくとも、自分たちの手持ちの兵力では如何ともしがたい。そう諸葛亮は内心歯噛みする。 【歯噛みする】は慣用句なのでこの書き方だと≪内心はらわたが煮えくり返る≫のような…まあそれを知られたくないならありかもですが 〇少なくとも、自分たちの手持ちの兵力では如何ともしがたい。そう諸葛亮は歯噛みする。 敬愛するご主人様に「できるか?」と聞かれて「できない」と答えるなら悔しそうな顔を隠す意味もないでしょうし >>将帥の優秀さあある故にそれが残念でならない。 何かが足りないけど何が足りないのか 〇将帥の優秀さならば引けを取らない自負がある故にそれが残念でならない。 兵の質、量と将の量で大敗してるけどここだけは勝ってると(無い)胸を張ってそう >>馬家軍か曹家軍くらいの武威がないことにはお話にならない。 結構ひっ迫した状況なのに危機感というか緊張感が足りない気がする 〇馬家軍か曹家軍くらいの武威がないことには話にもならない。 【も】を入れることで強調されるので…例えば≪戦いにならない≫と≪戦いにもならない≫だと後者の方が差があるような気がします 袁家の万人の100歩を以て覇王の万歩を阻む。って感じですかね…交渉とは相手に応じないことに不都合があって初めて打てる手であるな そもそも天の御使いは「袁家が洛陽を守ってるよ、よかったね」で済ませとけよ、めんどくせえな。
472 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/09(水) 05:59:08.10 ID:7tRPZSxX0 >>471 赤ペン先生いつもありがとうございますー! >袁家の万人の100歩を以て覇王の万歩を阻む。って感じですかね…交渉とは相手に応じないことに不都合があって初めて打てる手であるな 今のところ、はおーです。まだ。 >そもそも天の御使いは「袁家が洛陽を守ってるよ、よかったね」で済ませとけよ、めんどくせえな。 これには笑いましたw 自分たちが世界の中心であるという万能感。若者の特権的なやつをこじらせてる感じですかね。 ここまであんまりいいところないですからねえ。。。
473 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/10(木) 21:36:18.80 ID:vY1pce2o0 「ご報告申し上げます!今上陛下劉弁様ご無事!並びに紀霊将軍は宦官誅滅したとのことです!」 伝令の声に張りつめていた室の空気が僅かに緩む。 「ご苦労様です。下がってよろしい」 そして平淡に響く郭嘉の声が、盛り上がりかけた場を引き締める。 なんとなれば、まだことが終わったわけではない。この、本営にありて諸侯軍と対峙する彼らにとってはこれからが本番といってもいい。 「ふむ、まずは陛下のご無事を確保できたようですな」 口を開いたのは張魯である。彼が華佗と共にこの本陣にいる意味は極めて大きい。 張魯と華佗以外に袁家以外の人物となると、孫尚香くらいのものである。袁紹と、彼女を補佐する郭嘉。その護衛に楽進。袁術と孫尚香。その二人を典韋が守護している。まあ、袁術と孫尚香については孫家守護獣たる白虎に埋もれて安らかな寝息を立てているのではあるが。 ともかく、この場に五斗米道の二人がいるというのはこの上ない意味を持つ。漢中という要衝に根拠を置く五斗米道。南は劉焉、北は韓遂から有形無形の圧力を受けているその地、この勢力。それを袁家が後ろ盾になるということをわかりやすく表明している。 まあ、袁家の重要人物が負傷した時の備えという意味もある。なにせ、即死でなければどのような傷病であっても治してみせるという神仙の如き奇跡をもたらす、まさに神医なのだ。張魯も華佗も。 「当然ですわ。二郎さんが陣頭指揮されてるのですもの」 くすり、と艶然と笑みを浮かべる袁紹。その背には光輝すら幻視されるほど。 「なるほど。二郎君は随分と信用されているようだ」 あら。これは心外な、と袁紹は異を唱える。 「信頼ですわよ?張魯さん」 「これは一本取られましたな」 ひとしきり笑みを漏らした後に、問う。 「ここからが難しいところですな。諸侯はいずれも洛陽の財貨を当てにしているのでしょう。 果たして、退けと言って退くものですかな?」 常に強大な勢力に脅かされてきた張魯としては疑問を呈さざるをえない。なんとなれば、利害、利益というものは道理や倫理を軽く踏みつぶすものだからして。 「郭嘉さん?」 袁紹はくすり、と笑って傍らの軍師に答えさせる。 「は。確かに諸侯軍は収まらないでしょう。ですが、それでも袁家軍と正面切ってまでの覚悟がある諸侯なぞおりません。 いえ、この戦力差で暴発するような愚物があるのならばこの場で潰してしまうのが最善。 そう、判断しております」 そう言いながらも郭嘉がその動きを読めないでいるのが曹家と馬家である。 前者はその計り知れない智謀において。後者はその果断なる蛮勇において、だ。もっとも、どのように動いても、必要とあらば叩き潰すだけの準備はしている。 郭嘉としてみれば、いっそ諸侯とまとめて始末してもいいのではないかとも思うのではあるのではある。あるのではあるが、抵抗勢力、反抗勢力は顕在化させておいた方がいい、という張勲の言。それを紀霊が容れたことによって、心ならずも。この上なく不本意ではあるのだが、大鉈を振るう機会を逸してしまっている。 それはいい。決まったことである。決まったことだ。 与えられた条件下で最善を尽くすのが軍師の役目、とばかりに郭嘉は思考を切り替える。 これより先において彼女の出番があるとすれば、最悪の事態が起こった時のみであろう。 だが、そうはならない。その確信がある。なんとなれば。 「曹家軍に動きあり!陣頭には夏候惇将軍!後詰に夏侯淵将軍!兵力は五百強!」 やはり。状況を動かすのは曹家軍かと郭嘉は深く頷く。 「郭嘉さん?」 袁紹の問いにも臆することなく応える。何を畏れることがあろうか。なんとなれば郭嘉は、考えうる最良の一手を既に打ってある。 「は。ご心配なく。 なにせ、我が軍には一騎当千たる趙子龍がおります故に」
474 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/10(木) 21:37:16.51 ID:vY1pce2o0 本日ここまですー感想とかくだしあー 題名募集しまくりんぐですよ本当に! でもまあ、前とくっつけた感じにした方がよさそうですね。 次回、趙雲VS夏候惇 ご期待くださいませませ。
475 :青ペン [sage]:2020/09/11(金) 00:27:40.49 ID:WeajKTWzo >>474 乙ーい。 そうねー、繋げた方がしっくり来そう。 んで、【洛陽を血に染めて〜天子の唄〜】とでも。
476 :赤ペン [sage saga]:2020/09/11(金) 11:54:49.72 ID:u6lrHLbC0 乙でしたー >>473 >>この勢力。それを袁家が後ろ盾になるということをわかりやすく表明している。 この場合【それ(この勢力)を袁家が後ろ盾になるということを】となるとちょっと接続詞に違和感が ○この勢力。それに袁家が後ろ盾になるということをわかりやすく表明している。 の方が良いと思います >>いっそ諸侯とまとめて始末してもいいのではないかとも思うのではあるのではある。あるのではあるが、 どんだけ潰したいんだよってくらい【ある】連呼してますがちょっと読みづらいかな ○いっそ諸侯とまとめて始末してもいいのではないかという思いもあるのである。そうではあるのだが、 この場合は郭嘉の心情が《やれるなら積極的にやりたい》のか《やれるならまあやってもいい(あるにはある)》のか《やれるならやりたくはないけどやらざるを得ない(ないではない)》のか 将を信頼するのに理由なんていらないよ、と言いそうな劉備、信頼する相手だから将を任せるのよ、と言いそうな曹操、私が信頼したのですから将くらいできるにきまってます、と言いそうな袁紹…かな 尚史実では信頼して将を任せた相手に裏切られて手痛い敗北をした模様…お前田豊さんのこともう少し信じろよ >>くすり、と艶然と笑みを浮かべる袁紹。 あぁ〜「おーほっほっほ」とか高笑いせずにこんなんヤバいわ、あかんやろ…尊い。
477 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/13(日) 06:12:50.42 ID:+BcfcCX80 >>475 どもです。 >そうねー、繋げた方がしっくり来そう。 やっぱりそうですよねー あっちと繋げていこうそうしよう >んで、【洛陽を血に染めて〜天子の唄〜】とでも。 洛陽入れたいなー血に染めてもいいなー ヨシ! >>476 赤ペン先生いつもありがとうございますー! >将を信頼するのに理由なんていらないよ、と言いそうな劉備、信頼する相手だから将を任せるのよ、と言いそうな曹操、私が信頼したのですから将くらいできるにきまってます、と言いそうな袁紹…かな 言われてみれば確かにそんな感じですね。しかし英傑の対比に袁紹が出てくるのが珍しいことよ。。。普通は孫権だもんで >尚史実では信頼して将を任せた相手に裏切られて手痛い敗北をした模様…お前田豊さんのこともう少し信じろよ 出ると負け軍師。。。 田豊と沮授の派閥が勝ってればなあ。いや、史実で曹操が負けると困るんですけどね >あぁ〜「おーほっほっほ」とか高笑いせずにこんなんヤバいわ、あかんやろ…尊い。 高笑いだけじゃないんです!しっとりできるんです!やはり麗羽様が出ると持って行きますね
478 :赤ペン [sage saga]:2020/09/14(月) 09:22:16.41 ID:pKnfVT8o0 えっ孫権?…こいつならできると知ってるから将を任せる。もし失敗するなら私が知らない何らかの要因があったせいだから私が悪い 多分これを無意識で行ってるタイプ
479 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/14(月) 22:18:15.84 ID:MO/NhoCH0 「な、なんだってんだ……?」 端的に言って馬超は混乱していた。なんとなれば、洛陽を守護するが如く袁家軍は布陣しているのだ。そして士気も高い。見ただけで分かる。あれを抜くとなると苦労しそうだ。そんなことを思うほどに。 「お姉さま、本気でそれ言ってる?」 呆れたような馬岱の台詞に馬超は柳眉を逆立てる。 「当たり前だろう!あれじゃあ、喧嘩を売られているようなものじゃないか!」 はあ。と馬岱はこれ見よがしに、ため息を通常の三倍くらいに増量して吐き出す。 「ええとね、お姉さまが本気でそう言ってるのはさ。たんぽぽも分かったよ。分かりたくなかったけど。 うん。これには流石にたんぽぽもびっくりだよー。ほんとにね。 だってさ、昨日、張勲さんが来てたでしょ?」 じとり、となんとも言えない馬岱の視線にさしもの馬超もたじろぐ。 「そ、それはもちろん覚えてるぞ。酒肴をたっぷりと持ってきてくれたことも」 戦場暮らしには慣れているとはいえ、袁家秘蔵の火酒に、戦場食とは思えない料理の数々であったと馬超は頷く。 「そうだよねー。お姉さま、それで気持ちよく酔っぱらってたもんね。むしろ酔いつぶれてた気配すらあったもんね。 張勲さんの相手とかぜーんぶたんぽぽに押し付けて、さ」 「な、なんだよ」 「ほんと、覚えてないんだなあってさ。 昨日張勲さんが言ってたじゃない。諸侯軍の不埒な動きに対するために洛陽へは入らせないって。 それで、お姉さまが漢朝、官軍と相対するのはいかがなものかって言ったから、馬家軍は静観することになったじゃない」 ちなみにここまでの馬岱の言説は虚実入り混じったものである。 「そ、そうだったか?」 焦り気味の馬超の態度に、上手く思考誘導ができたかと思うが気を緩めるわけにはいかない。 「そうだったよ! ほんとにもー。ひょっとしたらと思ったけど、そこまで前後不覚になったのはまずいんじゃないかなあ。 気を緩めすぎだよ」 尚も言いつのろうとする馬岱が口を開く前に馬超は言葉をかぶせる。 「む、曹家軍が動いたか」 若干以上の後ろめたさを隠すように、必要以上に声高に曹家軍の動きを口にする。 「なんだ。五百もいないぞ。だが、率いるのは夏候惇。それに……兵に混じって夏侯淵もいるな」 流石の眼力だ、と馬岱は内心で従姉を賞賛する。何かを糊塗するかのような態度さえなければ実際大したものだと感銘を受ける者も多かったであろうに。 そして張勲の言説通り、場を動かすのは曹家軍だったかと状況を認識し、覚悟を決める。 なんとなれば、内々に張勲の口から馬家軍は仮想敵として想定されているというロクでもない情報がもたらされているのだ。 これを目の前の従姉が知ったならばどうなるか。いや、普通に暴発するだろうなあと馬岱は思う。 「もー、どうにでもなあれ」 馬岱の本音である。が、状況はそれを許さない。 「あれは、趙雲か」 単騎で曹家軍に対峙する白装束の武将。それは。その人物こそは。 「うん。一騎当千、だね」 ごくり、とさしもの馬岱も生唾を飲み込む。 単騎であの呂布と渡り合い、退かせたのだ。呂布の武勇は涼州にて轡を並べた自分たちが一番よく知っている。あの、呂布だ。呂布なのだ。あの人外と言っていい、いわば化け物と単騎で打ち合い、退かせたなぞ。 実際ありえない。だから、「一騎当千」と急速に異名が広がる趙雲に対して無関心ではいられない。いられないのである。 そして、趙雲に対する思いを清冽な声が引き裂く。 ◆◆◆
480 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/14(月) 22:18:42.63 ID:MO/NhoCH0 「曹家軍名代夏候惇である!洛陽への道を塞ぐ袁家に問いたいことがある! いざ尋常に応えられたし!」 見事な口上である。なにより見事なのはその声量だ。戦場においては声量というのは馬鹿に出来ない。その指示を行き渡らせるに必須の、或いは将としての素質。 「問おう。何故に洛陽への道を閉ざすのか」 朗々と響き渡る夏候惇の声。だが、対する趙雲の声も負けてはいない。玲瓏たる響きは、質こそ違えど敵味方問わず浸透する。 夏候惇が雷鳴ならば趙雲は地鳴り。腹に響き、否応なく認識するそれ。袁家の古参は雷薄を連想した。そしてそれは正しい。 「おや、曹家には伝わっていなかったかな。 数万に及ぶ軍勢を容れる準備なぞ洛陽にはない。無用の混乱は求めるところではないだろう」 その言に夏候惇はにまり、と口をゆがめる。 「笑止!それならばそれで構わんとも!だがな!いささか勝手がすぎるというものだろうが」 趙雲は、それがどうしたとばかりに。 「は、既に諸侯軍のはねっかえりどもが凶行に及んでいるがな。それを知らぬとでも言うのか」 「知らんな。知っているのはそう、貴殿らがこともあろうに禁中にて血を流したことくらいか。宦官誅滅とはまた思い切ったものだ、な」 ◆◆◆ 「何だって!」 驚愕、それが激昂となる直前に馬岱は口を挟む。 「そっかー。二郎様ってば、ようやく仇を討てたんだね。よかったよー」 気勢を逸らされた格好の馬超は馬岱に問いかける。 「ちょっと待て、どういうことだ?」 馬岱は苦笑しつつも言葉を選びつつ宦官と袁家……紀霊との因縁を語る。 それを聞き、馬超はむむむ、と唸る。 「だからね、二郎様は本懐を果たしたんだよ。ようやくね。 うん。ようやっと、だね」 いつになくしおらしく、しんみりとした馬岱。その双眸には、涙すら浮かんでいる。 いつもおちゃらけている態度、へらへらとしている馬岱。だからこそ、その涙は馬超の胸を打つ。 「そうか……。そうだな。それは譲れない、よな」 自分とて父たる馬騰の復讐に燃えていたのだ。その心根は痛いほどに分かる。 そして、願わくばあの青年が、復讐という不毛な感情から解放されて欲しいものだ。 彼女は心の底からそう願う。 「それはそうとして、曹家は収まらんだろう。いや。だからこそ夏候惇が出たのか」 宦官をその支持基盤とする曹家。宦官を誅滅するということは曹家に喧嘩を売るに等しい。 洛陽という果実を目の前にしてお預けを喰らっている諸侯軍の不穏な空気を背負い、仕掛けるつもりかと馬超は訝(いぶか)る。仲間内で争っている場合かよと内心呆れる。 ……この時馬超にこの場をどうこうしようという発想はない。それを認識して馬岱は内心安堵する。 これでよい、とばかりに。やりきった、とばかりに。 そしてこの場を支配する二人がどうこの場を動かすのかと無責任に好奇心を優先させることにする。元来、あれやこれやと思い悩むのは向いてないのだ。 ◆◆◆
481 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/14(月) 22:19:08.80 ID:MO/NhoCH0 「ほう、曹家には順風耳がいるようだ。そしてそれはご不満かね」 あからさまに挑発混じり。 その趙雲の台詞に夏候惇は答える。 「正直、私個人としてはどうでもいい。主たる華琳様に乞うてまでこの場にいるのはな。 一騎当千と謳(うた)われる貴殿と手合せをしたいからよ。かの万夫不当を単身追い返した貴殿と、な。 まさか、否とは言わんだろう?」 ちゃきり、と七星餓狼を構える夏候惇。 「曹家の大剣たる貴殿のお誘い。 無論受けるとも」 くるり、くるりと螺旋を描かせた愛槍龍牙。それを手にして構える。 ざわり、と戸惑う諸侯軍すら魅了せんとばかりに見栄を切る。 「先手は、譲ろう。 いざ、尋常に」 ◆◆◆
482 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/14(月) 22:19:36.05 ID:MO/NhoCH0 「よくぞ言った。では、遠慮せん!」 突風。或いは暴風であろうか。夏候惇の一撃を趙雲は辛うじて躱す。 「おおおおおおおおおおおお!」 雄叫びと共に繰り出される一撃には一見隙がありそうなものだが。 「ちいっ!」 必殺の斬撃が迫る。躱せば続いてまた必殺の一撃が襲いかかる。暴風のような連撃。それはいずれも、掠るだけで致命傷になりかねない。それを趙雲はそれでも躱す。ただし辛うじて、だ。 「なるほど、これは厄介極まりない!」 思わず愚痴と称賛の入り混じったものが漏れる。 自分の武が夏候惇に劣るとは思わない。少なくともここまで一方的に攻められるほどには、だ。それを、この趙雲を追い詰めるのは。 「どうしたどうした!」 必殺の一撃。夏候惇は次々と斬撃を繰り出す。 「なんとぉ!」 心ならずも紙一重で躱す。そして僅かな猶予で反撃を図るも。 ぞくり、と背筋に悪寒が走る。 「おおおおおおお!」 刹那の硬直。それを見逃す夏候惇ではない。次の一撃を繰り出してくる。 「これは下がって、下がりまくるしかないか……」
483 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/14(月) 22:20:21.34 ID:MO/NhoCH0 誰ともなく趙雲は呟き、巧みな運足でその身を隠す。誰あろう夏侯淵から、である。 だが、それでも、だ。夏侯淵の視線は明確な殺意をもって趙雲を視線のみで貫く。 一矢一殺。 その妙技も恐るべきものではある。何せ人馬一体となったあの呂布をして愛馬を喪わせたくらいなのだ。そして趙雲は舌打ちを重ねる。 いっそ可視化できるくらいの殺意。全身を貫く射線。瞬き一つのうちに貫かれるという確信。一歩、二歩と技巧の限りを尽くして距離をとるくらいしか対策はない。 「正直、たまらんな……」 不敵で無敵を本領とする趙雲ですら弱音を吐くほどに、夏候姉妹の連携は完璧であった。これが実戦ならば、と思うと暗鬱としてしまうほどである。 「はっはは!見事。小手調べでは失礼だな!ならば受けよ、必殺の一撃を!」 す、と夏候惇は腕を上げる。 それまで絶えず趙雲を捕捉していた殺気が霧消する。ほ、と息を吐くその瞬間に押し寄せる気迫。 「おおおおおおおおおおお!」 その艶やかな黒髪が逆立つのを幻視すらするほどの気迫。天を衝かんばかりの気迫と共に夏候惇は愛刀である七星餓狼を振りおろす。 「く!」 殺った。その確信をもって振るうその一撃。それを振り下ろそうとするその瞬間。悪寒が夏候惇の背筋を駆けあがる。咄嗟に斬撃の勢いそのままに前方に転げてその悪寒を躱す。 「小癪な!」 再び、必殺の一撃を放とうとするが。 「なんとぉ!」 確かに先手を取ったはずの夏候惇を趙雲の一撃が襲う。無理やりに躱すその動作に頑強な身体が悲鳴を上げ、軋(きし)む。 「面妖な……」 吐き捨てながらも、夏候惇は沸く。纏わりつく死の気配。ここまでの武芸者に会えたという幸運、更には矛を交えているという僥倖。 ニヤリ、と口角を吊り上げてただ目の前の獲物を屠るために全身全霊を特化していく。 我こそは曹家の大剣。ならば断てぬ者はなし。 乾坤一擲。例えこの身が儚くなろうとも、だ。骨を斬らせて命を絶つ。それこそがこの身の在り方。 趙子龍よ。 我が必殺の一撃、受けてみるか。 「姉者!」 そんな夏候惇の思考を断ったのは妹の叫び。窘めるような、それでいて必死な響きが夏候惇の物騒な思考を遮る。 そうだ。そうじゃあなかった。忘れていたわけではないのだが。 残念無念。しかして自分の存念よりも大事なことがある。あるのだ。 「ふ、はは!見事。流石一騎当千の異名は伊達ではないな! 本気で貴公と命のやり取りを楽しむ心算であったわ」 ふう、と一息吐いて趙雲は応える。 「ふむ。ご満足いただけたかな?」 ニヤリ、と双方が笑みを浮かべる。視線は互いに逸らさない。 そして数瞬の火花。だが、口を開いたのは夏候惇であった。 「馳走になった。 いや、かの万夫不当を単騎で退けた武威、確かなり。 いやさ。いずれまた手合せ願いたいものだ」 ほう、と頷きながらも趙雲は構えを崩さない。 「ご満悦のようだが、それでいいのか?」 むしろ趙雲が訝しげに問う。 「なに、あれこれ能書きを垂れたがな。それもこれも貴公と遣り合っていたらどうでもよくなった。 第一、だ。我が主華琳様は賢明なお方だ。 どうして漢朝に弓引くことあろうか」 呵呵大笑して夏候惇は宣言する。 「これより曹家軍は洛陽の守護者となる。聞いたぞ、知ったぞ! 無辜なる民を締め上げて私腹を肥やす、肥やそうとする者ども! この夏候惇の目が黒いうちには好きにはさせんぞ! 命が惜しくないならばかかってこい!」 吠える夏候惇の気迫に圧されたのか、集う諸侯から異議が出されることはなかった。 ――反董卓連合の、勝利が確定したのはこの時であった。というのが通説である。
484 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/14(月) 22:21:47.96 ID:MO/NhoCH0 本日ここまですー感想とかくだしあー 題名募集しまくりんぐですよ本当に! だって「星VS姉者」とかが原案なんすよ ぼすけて ぼすけて
485 :青ペン [sage]:2020/09/15(火) 03:19:53.65 ID:eE1JbzrDo >>484 ほいほい乙乙 【拳で語るは大義名分】といったところ?
486 :赤ペン [sage saga]:2020/09/15(火) 12:43:44.96 ID:dNheb2OA0 乙でしたー >>479 >>だから、「一騎当千」と急速に異名が広がる趙雲に対して無関心ではいられない。いられないのである。 間違いではないですが好みの問題で ○だから、「一騎当千」と急速に異名が広がる趙雲に対して無関心ではいられない。いられるわけがない。 否定からの肯定よりも肯定からの否定の方が印象が強いかな、と >>そして、趙雲に対する思いを清冽な声が引き裂く。 引き裂かれた思いとか失恋っぽいw ○そして、趙雲に対する思考を清冽な声が切り裂く。 【引き裂く】だと《ビリッ》て感じですがこの場合は【切り裂く】で≪スパっ≫て感じの方が合いそうかな >>480 >>復讐という不毛な感情から解放されて欲しいものだ。 復讐は何も生まない…だからお前はそんなものに囚われずに生きろ(親の仇を殺したらその子供がいたので言ってみる) ○復讐という不毛な感情から解放されてほしいものだ。 すっきりしたぜえ〜まるで3日間無かったお通じが出たようによぉ〜 >>481 >>くるり、くるりと螺旋を描かせた愛槍龍牙。 【螺旋】って雑に言うとドリルみたいなものよね?…魔改造した?それともヒュンケルのブラッディ―スクライドみたいな動かし方を手元でしてるのかしら。大穴は螺旋をペイントしてるとか ○くるり、くるりと円を描く愛槍龍牙。 むしろ【くるり、くるりと愛槍龍牙で円を描く。】の方が良いかな?イメージは風車というか新体操のバトンみたいな?合ってるかわかりませんが >>ざわり、と戸惑う諸侯軍すら魅了せんとばかりに見栄を切る。 【見栄】は張るのが一般的かな(虚勢をはる。みたいな意味(見栄っ張り)です)多分感覚的には無いものを有るように見せる? ○ざわり、と戸惑う諸侯軍すら魅了せんとばかりに見得を切る。 歌舞伎とかの《大見得を切る》から来るらしいですが大げさな声や動きで耳目を集めるというか…多分感覚的には大きいものをより大きく? >>482 >>それを趙雲はそれでも躱す。ただし辛うじて、だ。 これ後の方の【それでも】のそれは何に掛かってるんでしょうか? ○それを趙雲は軽やかに躱す。ただし辛うじて、だ。 もしくは【それを趙雲は辛うじて躱す。だがその顔はあくまでも涼やかだ。】先手を譲ったからには内心はどうあれ格好つけるかな?ということでこんな感じでどうでしょう? >>少なくともここまで一方的に攻められるほどには、だ。それを、この趙雲を追い詰めるのは。 これ最後のはちょっと後の夏侯淵の殺気に掛かってますよね ○少なくともここまで一方的に攻められるほどには、だ。それを、この趙雲を追い詰めるのは……。 単純に夏侯惇への称賛に繋がるなら【追い詰めるとは。】が良いと思いますが【……】を付けて含みを持たせて(何かある)と読者に思わせるのが良さそうかな? >>483 >>不敵で無敵を本領とする趙雲ですら弱音を吐くほどに、 【無敵】が本領とか【全知】が本領の伏龍じゃないんだから ○不敵で無敵を自負する趙雲ですら弱音を吐くほどに、 《私は不敵で無敵だ!》と思っててそうあろうとしてる。みたいな印象なので【自負】かなあ? >>無理やりに躱すその動作に頑強な身体が悲鳴を上げ、軋(きし)む。 悲鳴を上げるから軋むんじゃない。軋むから悲鳴を上げるのだ(どやあ) ○無理やりに躱すその動作に頑強な身体が軋(きし)み、悲鳴を上げる。 冗談はともかく実際に《ミシミシ》とか《メキメキ》とか夏侯惇が聞こえたならこうで、前後逆にしないなら【悲鳴を上げるように軋(きし)む】こっちなら(音がしそうだ)と思ってる感じですね 拳っていうか剣で語ってた…で良いのか?(汗)《剣で大義名分を騙り、生き様を語る》…多分交えた二人にしかわからないことが色々あったんでしょうし、そうであることはお互いの主は十二分に知ってそうでもありますが 実際原作でも同じような状況になったら夏侯惇ならやりそうw妹の援護をイランと言いそうな気もするけど…でもそう言いそうな夏侯惇だったら曹操が命令しないか…ばっちょさんは…まあ何というか残念だなあ。復讐心が消えるのと同時に何か大切なものも抜けてってない?
487 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/15(火) 21:37:29.08 ID:1UTVWaR70 >>485 どもです。 >【拳で語るは大義名分】といったところ? やだ、かっこいい。。。 ジャンプとかで連載されてる気分になってしまったのことですわよ。 こういうの、思いつかないのだよなあ。妬ましい。 折角だから熱い感じにしたいですね! >>486 赤ペン先生いつもありがとうございますー!ほんと。 >すっきりしたぜえ〜まるで3日間無かったお通じが出たようによぉ〜 流石に草不可避w > これ後の方の【それでも】のそれは何に掛かってるんでしょうか? これ、わざとぼかしてます。どこがキモかは解釈次第と。分かりやすい方がええかなあ。。。 >)《剣で大義名分を騙り、生き様を語る》…多分交えた二人にしかわからないことが色々あったんでしょうし、そうであることはお互いの主は十二分に知ってそうでもありますが これは、はおーも二郎ちゃんも理解の外じゃないかなあ。。 >実際原作でも同じような状況になったら夏侯惇ならやりそうw妹の援護をイランと言いそうな気もするけど…でもそう言いそうな夏侯惇だったら曹操が命令しないか… これは一騎打ちをどう考えるかという読み手様の解釈次第と思ってます。 まあ、一騎打ちシーンはKOEI三国志で実際テストプレイしてるんですよね。無駄に。 三人まで参戦できるアレです。 >ばっちょさんは…まあ何というか残念だなあ。復讐心が消えるのと同時に何か大切なものも抜けてってない? 当時のダイスロール判定がね。本当にね。 困ったものです
488 :赤ペン [sage saga]:2020/09/15(火) 22:27:51.70 ID:dNheb2OA0 ああいや、この場合の主二人が知ってることっていうのは武人という人種は千の言葉よりもただ一合で分かり合うことがあるんだろうなあ…みたいな、自分とは違う考え方があることを知ってるというかそういう感じで
489 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/15(火) 22:42:09.61 ID:1UTVWaR70 「はいはい、押さないでくださいねー。商品はたっぷりとありますのでー」 洛陽の市街は、端的に言って大混乱であった。これまでの禁足令が解かれ、それまで欠品続きで開店休業であった商店にも商品が溢れているのである。洛陽の民はここぞとばかりに商店におしかけているのだ。 無論、この機に乗じて不埒な暴利を貪る者や、正規の値で買った商品を転売しようとする者もいる。だがそれも徒花(あだばな)というものであろう、そう程立は思うのだ。 なにせ、だ。どうせ物資はふんだんにあるのだからして、いずれは適正価格に落ち着くであろう。そして、不埒な商売をするような商店はしっぺ返しをくらうものである。とはいえ。 「はいはい、ちゃんと並んでね。並んでねってば。この、この!ええい!」 そのような道理なぞどこ吹く風と、店頭で魯粛に絡むような不埒者も出てくる。矮躯(ミニサイズ)な魯粛を与しやすしと見たか、掴みかかって店頭の商品を掻っ攫おうとする者も出てくる。 「てい、てい!てややー!」 掴みかかる巨漢すらを、魯粛は軽やかに叩きのめす。的確に加えられる打撃は見事なものであり、程立は感嘆の声を漏らす。 「おお、これは結構なお点前で〜」 「や、それほどでもあるかなー。 まあ、実際これくらいできないと荒れた江南では生きていけなかったからねえ」 感慨深く呟く魯粛。片手間に数人の暴漢を叩きのめす。 「実際、本当に飢えた集団ならこうはいかないからねえ。流石に幾度も組み伏せられたよ。多勢に無勢ってね。 女でよかったと思うのはそんな時さ。殺されはしないからね」 きゃらきゃらと笑うその表情に暗さはない。修羅場をくぐるどころか、身を浸していた凄味がそこにはある。 「でもまあ、元気すぎるのも困るなあ」 雲霞の如く湧き出る不埒者にさしもの魯粛も苦笑する。どうしたものか、と。 可愛らしく小首を傾げて程立に視線で問うてくる。とは言え、程立にもここに至って名案なぞなく。 「ぐう」 「寝るなー!」 「おお、寝てました!」 実際どうしようもないのだ。ある程度の混乱は致し方ない。 ただ、自分がそこに巻き込まれるのは避けたかったのだが、そうも言っていられない。状況は加速度的に悪化していた。 そして混乱に立ち向かう魯粛とは違い、実際逃げるしか方策はないのではある。流石に圧倒的な数の暴力にそれすらも果たせそうにない。文武両道の魯粛と違って正真正銘無力であるので、いささかまずいことになったなあと思っていたのだが。 「噴(フン)!」 人とは、空を飛ぶものであったか。それも航続距離は凄そうだ。 「破!」 また一人、大空に飛び立った。まさか人の手によるものとは誰も思うまい。だが事実だ。 その異常事態をもたらした青年に程立は親しげに語りかける。 「いや、助かりました。それともお見事となお点前と言った方がよろしいのでしょうか?」 フン、と鼻で笑い張?は次々と不埒者を叩きのめしていく。その勢いに押されたか暴徒予備軍の不埒者たちは沈静化していく。わざわざ派手に吹き飛ばしたのはこの効果を狙ったものであろう。
490 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/15(火) 22:43:10.37 ID:1UTVWaR70 「その軽口が叩けるのであれば加勢の必要はなかったか」 「いえいえ、実に助かりました。危機一髪という奴でしたね〜」 呑気な程立の口調に張?は苦笑する。 「ですが、張?さんがここにいるということは」 「うむ。禁裏については片が付いた。万事滞りない」 それはなによりと程立は安堵の息を漏らす。万全たるべく動いてはいたが、実際に事が起こると、何が起こるか分からない。 「では?」 「うむ、張家の手勢は洛陽の混乱を収めるために動いている。私がここにいるのもその一環だ」 ふむ、と程立は頷く。恐らく民衆の暴動を防ぐべく、張家は奔走しているのであろう。その功績は大きいが、史書に記されることもないであろう影働きである。 「では、劉弁様はご無事で?」 「うむ。そうだな。だが、予想外の事態に混乱してはいるのだ」 張?が語るそれ。まさか、劉協と皇甫嵩が死んでいるなどとは。 程立は僅かに眉を寄せる。 「ほう、君が主体となっての排除劇ではなかったのか」 口を歪ませて張?は問う。 「いえいえ。劉協様と皇甫嵩さんの離間工作。それなりに布石は打っていましたが、まさかに……」 二虎競食の計とか色々考えていたのだが、仕掛ける前に結果が伴うとは。それも双方の退場という結果で。 「なんということでしょね〜」 くふ、と一声笑って程立は思考を進める。茫洋としたその表情からは、何も読み取ることはできない。 「洛外については、稟ちゃんが上手くやってくれたようですし、ここからは時間との戦いですかね〜」 実は程立と郭嘉は洛外においての諸侯軍への対応において意見が分かれていた。程立は袁家とその友好軍閥の武威を以って圧倒すべしと主張し、郭嘉はむしろ袁家単独で当たり、軽挙妄動する諸侯を炙り出し、殲滅すべしと主張していた。 そこで決を下したのは紀霊である。 人死には少ない方がいいというその言に郭嘉は大いに思うところはあったようであるが、一先(ひとま)ずはその方針に沿って動いてくれたようである。 「既に朝廷は紀霊殿が押さえた。軟禁されていた者も解放、或いは確保している」 ふむ、と程立は頷く。そして目線でさらなる報告を促す。 「ああ、無論董卓殿の身柄も確保しているとも」 にまり、と張?は歪んだ笑みを浮かべる。 「健気、であったな。いや、彼女を憐れんでいるのではない。それは彼女に失礼だろう。いや、立派なものであった」 狭い室内に監禁され、疲労の色が濃いながらもその瞳には力が宿って張?を見据えて貫く。静かで、それでいて真摯に響くその声。その声には自然と耳を傾けてしまう。 なるほど、董家は呂布の武威、張遼の神速、郭嘉の神算鬼謀。それらは枝葉末節であったのだと。 「惜しい、と思うのは感傷かな」 くふふ、と程立は笑う。 「まさか張?さんからそのようなお言葉が出るとは、ですね〜。ただまあ、袁家には必要ないかと〜」 穏やかな口調で程立は、ばっさりと切り捨てる。 「それに、二郎さんが決めたことを蒸し返しても致し方ありませんしね〜」 くふ、と軽く。軽く笑って程立は身を翻(ひるがえ)す。 きっとあの青年はやると決めたことは全部やって、それで勝手に傷ついているに違いない。 泣いているかもしれない。喚いているかもしれない。それでもやらねばならないことはやっているであろう。 だから、自分が。紀霊の軍師たる自分の出番である。そう程立は思う。 「後はお任せしましたので〜」 魯粛に言い捨てて禁裏に向かい歩き出す。 その歩みは、いつも通りであった。
491 :青ペン [sage]:2020/09/16(水) 00:29:42.96 ID:ht3ZMhX8o >>487 青ペン流タイトル講座 1)印象的なシーンをひとつ見つけます (今回は趙雲vs夏侯惇)→拳で語る 2)そこに至る経緯を探ります (今回は何故袁軍のみで洛陽を制圧保護したのか)→大義名分 3)組み合わせます ざっくりこんな感じ。 メインとなるシーンをひとつ見つけると楽しめます、はい。
492 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/16(水) 06:04:46.94 ID:gOPBOXyi0 ◆◆◆ 「ほいさ、任されたともー」 軽く応えながら、その責任の大きさよ。洛陽内を差配するも同様の権限に流石の魯粛がぶる、と身を振るわせる。 「って、張?さんもどっかにいっちゃうとか!」 まあ、程立の護衛と考えれば妥当ではある。あるのだが。 「何気に、めんどくさいことを押し付けられた気がしないでもないなあ」 まあ、信頼の証さとばかりに魯粛は思考を切り替える。 「ま、餅は餅屋と任されたんだから、見事やって見せましょう!ってね」 そう。洛陽の混乱が早期に治まったのは、魯粛の手腕に依るところが大きかったというのは定説であるし、事実でもあった。
493 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/16(水) 06:05:32.16 ID:gOPBOXyi0 ◆◆◆ 反董卓連合により――正確には紀霊により禁裏が制圧され、「正当なる皇帝」たる劉弁が無事保護されてより二日後。それまでは袁家のみが立ち入りを許されていたのだが、袁家に近しい諸侯も洛陽に入ることが許されている。 治安維持が名目であるが、慰撫を兼ねていることは明白である。人数にすれば万に満たないが、彼らは大いに羽を伸ばしている。無論、きちんと治安維持に努める者もいるのだが。 「はいはい、ちゃんと並んでねー。まだまだご飯はあるからねー!」 輝かんばかりの笑顔で声を張るのは劉備。 「あらあら、張りきっちゃって」 「なに、可愛いものじゃろうて」 その様子を温かく見守るのは黄忠と厳顔である。 「でも、中々できることじゃないわよね」 黄忠はそう言って目を細める。なんとなれば、劉備は乱れた洛陽。そこで困窮する民のために炊き出しを行っているのだ。それも、驚くことに自らの兵に宛がわれた兵糧を供出して、だ! 「そうさな。わが身のみを考える者ばかりの世情で、あのような娘もいる。中々に捨てたものではないな」 そしてその劉備の炊き出しに黄忠と厳顔は深く関わっている。黄忠は荊州より運搬してきた糧食の一部を融通し、厳顔は関係各所への根回しと、作業に当たる人員への指示統括で、だ。 「ええ、そうね。ほんと、そう思うわ」 そしてその劉備がご主人様と慕う青年について自然と語り合う。 「不思議な男の子、よね……」 「然り。然りよな。 皆が笑って暮らせる世を、か。劉備にしろ、北郷一刀にしろ、ああまで理想に向かう姿は眩しいものよな」 ふ、と笑い合う。 「禁裏までもが血に染まる。劉姓として思う所もあるでしょうにね……」 「ほう、思う所があるのは貴殿ではないのかな?」 黄忠は厳顔の問いに曖昧な笑みで応える。だが。 「でもね、ああまでまっすぐに求められたら、ちょっとは心が動かない?」 貴女たちの力が必要だと、愚直なほどに。 北郷一刀、そして劉備から誘われたのだ。道を同じくしないか、と。 「まあ、今更地位や名誉を求めようとは思わぬが、な……」 流石に、と言うか、だ。 「せめて太守くらいになってから言ってほしいものだが、な」 恐れを知らぬとはこのことであろう。何となれば黄忠も厳顔も皇族と言っていい程に由緒正しい劉家に仕えているのだからして、と厳顔は苦笑する。
494 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/16(水) 06:05:58.58 ID:gOPBOXyi0 「あら、でも、あの子、ね」 くすり、と黄忠は艶やかに笑う。 「あの錦馬超にも粉をかけたらしいわよ?」 「なんと!」 厳顔は驚愕する。まさかに、名門馬家の当主に? ……正直その場で切り捨てられてもおかしくはない所業だな、と厳顔は言葉を失う。 「それでね、まんざらでもなかったって話よ?」 「なんと」 わけがわからない。厳顔は内心頭を抱える。馬家を背負う小娘はもっとこう、短慮で狭量であったと思うのだが。だからこそ、韓遂さえいなければ主である劉焉は涼州すら手に収めることも容易であると思っていたのである。 「天運の相、か」 「何、それ?」 かつて主君から聞いたことがある。天に愛され、竜が如く雲を集めるという英雄の相。人呼んで天運の相。 「いや、なんでもない。 ……で、話題の北郷一刀は?」 劉備に給仕なぞさせてどうしているのか。 「さあ?何か気になることがあるとかないとか……」 可愛らしく小首を傾げる黄忠に厳顔は苦笑する。一体世の男どもはどうしてこのように魅力的な女を放っておくのか、と。 ……まあ、黄忠がその、厳顔の内心を知れば「お互い様」と苦笑したであろうが。 なんにしてもまあ、世はこともなし。まことに結構なことである。それは二人に共通した思いであった。
495 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/16(水) 06:06:34.77 ID:gOPBOXyi0 ◆◆◆ 「何も皆殺しにすることもないだろうに……」 北郷一刀は、呟く。 諸葛亮がもたらした情報。宦官を誅滅したというそれ。その非道、悪逆に彼は心を痛める。 なにも殺すことはないじゃないか、と。 諸葛亮にしてみれば、納得しかないのではあるのだが。 様々な逸話から察する紀霊の性質において、読み取れるのは激情。そして身内への愛情。 ならば、禁裏において武力を以って何進を排除した宦官。それを紀霊が放置するわけもないのである。 なんとなれば、彼が、否。袁家の幹部が溺愛する袁術が入内するのだ。気に入らぬからといって暗殺に走るような存在を、かの怨将軍が許すはずもない。まあ、それを進言して主の機嫌を損なう必要もない。これは自分と親友たる鳳統が把握していればいいことである。 そして、その、北郷一刀は何をしているかというと、である。 「鈴々、くれぐれも気を付けてな」 「大丈夫なのだ。お兄ちゃんはどっしりと構えていてくれたらいいのだ」 気になることがあると言って、張飛と諸葛亮を引き連れて洛陽を巡っていたのだ。いや、密かに慕う北郷一刀と触れ合う機会があるのはいいのだが、この時期にそれはどうなのだろうと思うのではあるが。あるのだが、自信に満ちた彼の言うことにはなぜか頷いてしまう自分がいるのだ。 ちなみに、この、混乱から立ち直ったばかりの洛陽に彼らが潜り込めたのは公孫賛の力添えあってのこと。袁家の助成にいち早く立ち、ことによれば馬家と矛を交える可能性すら飲み込んで至誠を尽くした彼女の、だ。 洛陽の困窮した民に炊き出しをしたいという劉備の願いは届き、そして。 「いや、確信はないんだけどさ」 それでも、必要であると断じたのだ。天の御使いたる北郷一刀が。ならば、と諸葛亮は思う。まあ、彼女の叡智をもってしても「涸れ井戸と箪笥は要チェックだもんな」などという北郷一刀の本意を把握しているとは言い難いのだが――。 「お兄ちゃん!あったのだ!これだと思うのだ!」 そして北郷一刀は、とある涸れ井戸から玉璽と七星刀を発見する。 ◆◆◆ 「こ、これが伝国の玉璽……」 流石に諸葛亮も目にするのは初めてである。そしてその重要性を把握しているのはこの場できっと自分だけであろう。四百年にわたって連綿と続く漢朝。その権威を担うのがこの玉璽なのだ。 触れたいような、触れたくないような。その、内心の逡巡を身体は裏切る。気づけば両手を伸ばして。 それを見た張飛が無造作に放り投げる。 「わ、わ!」 取り落しかけて諸葛亮は必死に受け止める。 「ひゃ、ひゃう……。 ご、ご主人様。玉璽に七星刀。いずれもお金では買えない、秘宝です。どうするおつもりなのでしゅか……。 あ、噛んじゃった」 はわわ、と狼狽える諸葛亮の様子に笑みを漏らしながらも北郷一刀は答える。 「そうだな。とんでもないお宝だ。漢朝にとっては特に、さ」 だから、さ、と北郷一刀は笑う。 「きっとさ、これだけの貴重なお宝だ。きっと月と詠を購えると思うんだよ」 「ご主人様……」 「流石お兄ちゃんなのだ!」 諸葛亮と張飛はそれぞれに反応する。そこに含まれる音響には差異があれども、共通するのは主への讃辞。 「早い方がいいでしょう。早速動きます。ええ、董卓さんや賈駆さん達はこのような……、このようなところで喪っていいわけがありません」 救わなくてはいけない。救えるかもしれない。救えるだろう。いや、救うのだ。 董卓を、賈駆を。呂布を、張遼を。 「細かいところは朱里に任せるから、さ」 頼んだ、と頭を下げる北郷一刀に諸葛亮は胸を熱く。 皆が笑える世を。きっと。
496 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/16(水) 06:07:02.37 ID:gOPBOXyi0 久々寝落ちしておりました 感想とかくだしあー
497 :青ペン [sage]:2020/09/17(木) 00:24:52.11 ID:dDhP3NEBo >>496 独断の行動が凶と出そうな気がするんだけどねぇ… 【使徒が知る術もなき鬼神の想い】といった感じかな…
498 :赤ペン [sage saga]:2020/09/18(金) 18:26:52.15 ID:GEKwW4RT0 乙でしたー >>489 >>正規の値で買った商品を転売しようとする者もいる。だがそれも徒花(あだばな)というものであろう、そう程立は思うのだ。 これは《枯れ木も山の賑わい》みたいな意味で使ったのかしら? ○正規の値で買った商品を転売しようとする者もいる。だがそれは徒花(あだばな)というものであろう、そう程立は思うのだ。 意味としては《どうせ無駄》みたいなものだからこうかな? ○正規の値で買った商品を転売しようとする者もいる。だが例え徒花(あだばな)であろうと咲くことは出来た、そう程立は思うのだ。 今まではそれすらできないほど疲弊してたから《これもまたよし》みたいな感じでこうかな? >>さしもの魯粛も苦笑する。どうしたものか、と。 可愛らしく小首を傾げて程立に視線で問うてくる。とは言え、程立にもここに至って名案なぞなく。 【どうしたものか、と。視線で問うてくる。】だとちょっとリズムが悪いかな ○さしもの魯粛も苦笑する。 どうしたものかと、可愛らしく小首を傾げて程立に視線で問うてくる。とは言え、程立にもここに至って名案なぞなく。 もしくは ○さしもの魯粛も苦笑して、可愛らしく小首を傾げて程立に視線で問うてくる。 それとも【苦笑しながら】の方が良いかな? どうしたものか、と。とは言え、程立にもここに至って名案なぞなく。 >>「いや、助かりました。それともお見事となお点前と言った方がよろしいのでしょうか?」 ケアレスミスですね ○「いや、助かりました。それともお見事なお手前と言った方がよろしいのでしょうか?」 【お点前】だとお茶の作法になるらしいので >>490 >>「なんということでしょね〜」 喋り言葉だし間違いではないですが ○「なんということでしょうね〜」 の方が良いと思います >>なるほど、董家は呂布の武威、張遼の神速、郭嘉の神算鬼謀。それらは枝葉末節であったのだと。 申し訳ないがNTRはNG ○なるほど、董家は呂布の武威、張遼の神速、賈駆の神算鬼謀。それらは枝葉末節であったのだと。 曹操からさんざん二郎がNTRしてる?先に唾つけただけだからセーフ >>492 >>洛陽内を差配するも同様の権限に流石の魯粛がぶる、と身を振るわせる。 凹凸が無いとわからグシャ ○洛陽内を差配するも同様の権限に流石の魯粛もぶる、と身を震わせる。 むしろ【流石の魯粛も、ぶるっと身を震わせる。】とか?擬音無しで【流石の魯粛も一度大きく体を震わせた。】とかかな >>494 >>だからこそ、韓遂さえいなければ主である劉焉は涼州すら手に収めることも容易であると思っていたのである。 馬騰さん亡き今、で考えてるのかもしれないけどそこには昔何進、馬騰、紀霊の繋がりがあったから迂闊な事すると大義名分振りかざされるぞ ○だからこそ、韓遂さえいなければ主である劉焉は涼州すら手中に収めることも容易であると思っていたのである。 慣用句としてはこうですね >>なんにしてもまあ、世はこともなし。まことに結構なことである。 つい先日まで戦争してたんだし禁裏は今も血まみれだろうし事ありまくりでは? ○なんにしてもまあ、戦は終わった。まことに結構なことである。 【怒号は聞こえず、徴兵される子供や、飢えて死ぬものもいない。】とか入れるのもありかな? >>495 >>そして、その、北郷一刀は何をしているかというと、である。 ちょっと【、】が多いかな ○そして、その北郷一刀は何をしているかというと、である。 まあちょっと憚られることをやってる感じを出すなら上の方が良いですが…ぶっちゃけ火事場泥棒と似たようなことだし >>密かに慕う北郷一刀と触れ合う機会があるのはいいのだが、この時期にそれはどうなのだろうと思うのではあるが。あるのだが、 【密かに】なの? ○密かに慕う北郷一刀と触れ合う機会があるのはいいのだが、この時期にそれはどうなのだろうと思うところもある。あるのだが、 【が、】を一つの文で2回使うと違和感があるのでここは1回否定しない方が良いかな >>ちなみに、この、混乱から立ち直ったばかりの洛陽に彼らが潜り込めたのは公孫賛の力添えあってのこと。 止めろ(迫真)何やってんだよ韓浩。そもそも初日の水関をどう落とす?の質問に反董卓連合は本当に正しいのか?と返したような輩に口添えしただけでもお前の株は下がり、その時に紀霊に会いに来たのが無位無官の風来坊で…っていう事の顛末は当然知ってるよな?報連相的に。袁家への恩と義理を考えたら恥ずかしくってとてもできることじゃねーぞ ○ちなみに、この混乱から立ち直ったばかりの洛陽に彼らが潜り込めたのは公孫賛の力添えあってのこと。 「前回私は二郎に桃香の面会をお願いしたつもりだった、それを勝手に私が勘違いしたというなら、なるほど私の不徳だろう。だからこそこれ以上私は彼らに恥知らずな真似はしたくないのだ」とか真摯に断れよ。恩人に無礼を働いた友人から口添え頼まれてもっかい泥塗られて更にまた力添えとかどんだけ恩人を軽く見てるんだよ >>袁家の助成にいち早く立ち、 これは経済的な援助ですね ○袁家の助勢にいち早く立ち、 肉体的な援助はこちらですね >>張?が語るそれ。まさか、劉協と皇甫嵩が死んでいるなどとは。 www描写無しに行間で死んでてさすがに草ですわ >>驚くことに自らの兵に宛がわれた兵糧を供出して、だ! そいつらは何を食うんだ?まさかこの後で袁家に事情説明してタカリに行くとか…他人の飯を使って人気取りとかしてるわけないと言い切れないのがこいつらの恐ろしいところ >>一体世の男どもはどうしてこのように魅力的な女を放っておくのか、と。 子連れだからじゃないっすかね?未亡人なのかシングルマザーなのか知らんけど >>彼女の叡智をもってしても「涸れ井戸と箪笥は要チェックだもんな」などという北郷一刀の本意を把握しているとは言い難いのだが――。 あ、アンサートーカーで…まあ知ってしまうとSAN値チェックですが。なんせご主人様がゲーム感覚で生きてるってことだからな(リアルでタンス漁るのが日常の可能性もあるけど) まさか公孫瓚前回一刀が紀霊に会いたいって言ったのを紹介してそれで終わりなわけないよね…100歩譲っても韓浩がそこに知らぬ存ぜぬするわけないし劉備を遠ざける理由ができたならきちんと報告するだろうし
499 :赤ペン [sage saga]:2020/09/18(金) 21:22:21.36 ID:GEKwW4RT0 今回はだいぶ地味様に辛辣な書き方をしてしまいましたが @昔公孫瓚の紹介で袁紹のもとを訪ねる。要件は前に公孫瓚が友誼の証として贈った剣を「もとは自分のものだから返せ」と、糧食の融通と引き抜き勧誘 A戦時中に≪反董卓連合盟主の袁紹が総てを預けたいわゆる全権代理人の≫紀霊への口添えを頼まれたがそれによって今までと何かが変わったところは無い 現代風に言えば大会社の社長が社運をかけたプロジェクトのプロジェクトリーダーに抜擢した専務に共同開発してる会社(規模は普通)の社長が新進気鋭の会社の古参社員(役職不明)を紹介したというワケワカメな状態…てっきり画期的な案でも出すのかと思ったら自分たちをプロジェクトの中心に使ってくれという…みたいな? B今回の件(表向き炊き出ししつつ裏で火事場泥棒) とかなりアレなんですよね。もちろんそれ以外の時にはいろいろと持ちつ持たれつしてるし洛陽防衛線で借りも作ってるけど 私が思うに公孫瓚ってかなり損な性分してると思うんですよ。自己評価が小さいというか、何かをしてもらったらそれ以上に返そうとしそうだったり、自分がやったことに対するお礼は最低限でよさそうだったり で、袁家はマンパワーが圧倒的だからぶっちゃけ義勇軍が力を貸しても袁家に対して恩返しにはならないわけで、今までに2回も迷惑かけたのと同じようなことをもう1回やるのかな? と疑問が生まれまして 100歩譲って公孫瓚が桃香への友情を重く見たとしても韓浩が袁家への恩義を説いて「どうしてもというなら自分たちが監督すべし」とか言ってきちんと力添えした責任を取らせないと(なおむしろやらかして公孫瓚と劉備の間に溝ができることを望む可能性 実際韓浩なら(、奴らならやらかす、袁家なら公孫を許してくれる)と踏んであえて監視網に穴開けそうなんだよなあ
500 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/22(火) 19:53:40.72 ID:3fRvTPE90 gotoしておりました。 浮世絵はやはりよいものだなあと思いながら。 あとciv6とFGOのイベントと充実したシルバーウィークでした。 >>497 >独断の行動が凶と出そうな気がするんだけどねぇ… 昨今は報連相が大事だということで、それはもちろんなのですが、 それはそれとして、独断専行も大事だったりしますよね。 結局結果が全てなんやなって(何かあったらしい) >>499 赤ペン先生いつもありがとうございますー! さて、色々ありがとうございますー。 そして、 >www描写無しに行間で死んでてさすがに草ですわ , -‐- 、 f r ⌒ ` 弋 、_ ≦ ≧  ̄ ミ 、 / ,′ ハ ヽ\ / ,.l ′ ./ / ! ト、 ', ', オ ,′ ./ | l ヽ / i! l /- 、! ム-‐ ∨ | l i! { | .,.ム ミ ', .,'≠ ‐ 、', | | !!!! . __', l 弋 (・) ` ', / ´ (・) .ノ ハ.リ__ Y三|.}ハ刈 ー‐ ´ ∨ ー ´| オ三W ',-‐ l从. //ハ i //ハ ハ / }‐-/ : : : : | 、 , |′: :/ ヽ≦l |.ヽ ⌒ ィ:} l≧.7 、- ―― ´: : | l: :|. ` . ー . ´. |:ハ .|、:`: . ―. .-. ァ ` 、 ―― ,゙オ l: i! . . . . . l': :| | ヽ ― -- 、 ´ ,′ \:| |: |‐- 、 , - ‐.l : | | / ', /:| |: l | : | |:`ヽ l | l: : | l: l l : l .l: : :l .| l ',ハ !:.', :. .:: l: :| l: : / ,′ ',. -―― ‐ 、. X i!: :| |: :ハ /_ / _. .| ハ 刈 !/: : ', D ,′ /ォ´/ / ォー―: ´ヽ:` 、 ` 、 : : ノlリ: : ο:} ,′ |`/ /:| || |:|. ',: : :Zヽ \ <:.:.:.:.:./ |: ¨: : |ノl,ノ:|. . ヽ :.:.:X会、ハ. 、 `ヽ′ , 乂ニニニ乂. . . ..`.ヽ_Y__∨: ヽ. ヽ ム _ / ハ ` ーヽ . . ≧-、 ___./__.', :\ /. -‐ 、`ヽ ', ー―――――: : : : : ; ̄: :ヽ.._/-‐: :´: ー-.^´ これはやっちまったやつですね。書いた記憶あってどっかにしまいこんでるのか? 両者の死に様については発掘もしくは執筆してお届け致します。 このご指摘はありがたいw そして地味様についてはね。そりゃストレスになるよなあというのが正直なところです。 色々と乱数処理したりしてみたのですが、カリスマピーチビームには勝てなかったよ。。。 頑張れ韓浩。 ということで一つ。
501 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/23(水) 06:25:56.08 ID:zQGkHpbR0 .. --- 、 . ´ ヽ / \ / / ヽ / / .i i .| │ ,' ,' /.. \|、 |i l/ | ',、\ l i イ´ / l .! | .,'| .l .| l │ | .l .| ./ l/ l / l ./ ヽ l | l あったよ!皇甫嵩のエピソード! _.', r | l./三三 |ノ 三三 ! / l ,'ヽ | !::::::ヽ| l |///////////|〈 | / 少し時を戻そう ヽ::::::::ヽ.| l U / l 'i ヽ ̄ .l |._ r ―--、 . ' | | l /:| l.:/l ― <i´ l l 〈::|:::::::/l |'| ヽ |,、\:!ヽ | | \:/.::| l へ\ l' .ヽ l::/ l l なのでちょっと勢いが落ちますがそこを挿入するとします 多分今夜
502 :赤ペン [sage saga]:2020/09/23(水) 11:59:58.34 ID:yOAsf52A0 劉協君は>>438で描写されてるんだけどねwこれからに想い馳せてると思ったら…だから笑っちまったわ
503 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/23(水) 21:59:26.50 ID:zQGkHpbR0 ,、r‐-――- 、 も , イ ヽ, ‐、 `ヽ`ヽ  ̄7´/ ム l\__ \ヽ ___ 今 う ,イ ,'^== \{ ==ヽ l iァ匕ノ l / " '‐'ー' "ト リ,r‐ァ"ヽ、 日 飲 7l八 ノ ∨ム'.|~ \ .//三|jーァ‐t―≠'//三、| \ \\ は ま. └――'┤/ハ /〈/ ̄`¨¨` ヽ 、 ヘ レΓ|V 人 `、 ヽ,ハ ね 入{ | /≧tz=、 ', W ,ィ 込 マ_t_x┘ ', } え. 〈=ィ´ ; \, \∧ |リ `' ヽ、 ^ ̄ ̄ ̄> l/ ° ~ー―‐''"´ / イイ感じに酩酊なので(やや強めのチューハイ350ml2本+500ml1本)節酒することにする! ここから焼酎が追い酒になるのをやめていきたいという熱い気持ち。 そしてやります。 >>439 の後に挿入するエピソードです。内容はネタバレというかやっちゃった案件なので皇甫嵩が死ぬお話ですね。 これは詫び石案件かもしれませんね。
504 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/23(水) 22:11:24.41 ID:zQGkHpbR0 「……始まったようだね」 風に乗って、喧噪――というには実態はもっと物騒なものだが――が耳に入る。 皇甫嵩は歩みを速める。起こっているであろう惨劇に巻き込まれてはたまらない。 向かう先は宮中の一角。かつて大将軍として辣腕を振るっていた、何進の別宅である。そこに、目的の人物はいた。 「ふむ、来客とは珍しい」 毛ほども動揺せずに華雄は皇甫嵩を迎える。 思えば軟禁生活も長いはずだ。だがその顔には生気――或いは覇気と言っていいもの――が満ちていて、流石の皇甫嵩が気圧されるほどである。 いや、だからこそだ。 だからこそ、このような逆境においても不屈。実に結構。もとよりその武。そして将としての才は確かなものである。あの馬家軍と遣り合って一歩も引かなかったのは――数の有利があったにせよ――伊達ではない。 「朝早くから済まないね。まだ寝ているかとも思っていたけども」 なにせまだ日が昇って間もない。軟禁生活であれば惰眠を貪(むさぼ)っていてもおかしくはない。 「フン、くだらん。あまり眠ると身体が鈍るからな」 事実、華雄はかつて何進に従っていた時と生活習慣を変えていない。そして覚醒しているその時間全てを鍛錬に費やしているのだ。 「まあ、元気そうで何よりさ。あ、これは差し入れってやつさ」 そう言って持参した酒を器に注ぐ。 なみなみと注がれたそれを華雄は一息で飲み干す。 「ふむ、五臓六腑に染み渡るとはこのことよな」 流石に軟禁生活で、酒なぞ呑めようはずもない。甘露とばかりに華雄はたちまち三度、杯を干す。 なに、毒ならば毒で構うものかとばかりに。 「して、今を時めく清流派の首魁が私に何の用だ」 「なに、簡単な話さ。 僕に従え、ということさ。 そうしたならば、君のこの境遇は終わる。 君の武は腐らせるには惜しい。あの何進すら信頼してその背を預けたんだ。 君も栄耀栄華の中枢にいたんだ。このままで終わるつもりはないだろう?」 にこり、と笑いながら空になった酒器に酒を注ぐ。それをまた一息に乾してなお、華雄は揺るがない。 「フン、口説き文句としては二流以下だな、皇甫嵩よ。 そして、貴様と心中する義理も義務もない」 その言に気を悪くした様子もなく皇甫嵩は言葉を続ける。 「そうでもないよ。割とね、あるさ。あるとも。 何進のような卑賤の輩が大将軍なぞという地位にあったのは間違いなく漢朝の汚点さ。 だが、それでも彼奴(きゃつ)は大したものさ。 今この漢朝が乱れているのは彼奴に飼い馴らされた官僚どもが、政権運営に協力していないというのが大きい」 皇甫嵩は肩をすくめる。 実際、やりにくいといったらないのだ。 「だから、君を従えるのには意味がある。何進の威を借るようで、腹立たしいがね。 政治という奴さ」 フン、と華雄は一つ鼻を鳴らす。 「知ったことか、と言いたいところだがな。私としてもこの状況は不本意極まりない。 まあ、それはそれとして、だ。 貴様が何をどうできるというのだ」 清流派とはいえ、実際権力なぞ何もないに等しい。だから自分にすら声をかけたのだろう、と華雄は指摘する。
505 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/23(水) 22:12:43.22 ID:zQGkHpbR0 「ふ、それは認識が大いに誤っているね。 聞こえているかな。いや、流石にこれは失礼かな。 聞こえるだろう、あの阿鼻叫喚が、煉獄が。 それをもたらしている袁家は、残念なことにね。漢朝の権力に興味がない、ときたものだ。そして、袁家の描いた絵図は天下三分。 即ち陳留王たる劉協、曹操率いる宦官。そして僕が率いる清流派。 だがね、既に前者二つは亡き者となっているのさ」 つまり。 「僕が、僕こそが新生漢王朝の、担い手となる! まあ、董卓が畏れ多くも相国なんて地位だったからね。 そうだね。丞相くらいは、妥当だろう」 だから、と囁く。 「光栄に思っていいんだよ?この僕が直々に声をかけているんだからね」 華雄は暫し考え込む。 さて、なんと答えたものか、と。 そして口を開く。 「なるほど、これよりの漢朝は貴様が動かす。私にはその軍事顧問となれ、と言うのだな」 そうだ、と皇甫嵩は厚遇を約束する。 「残念なことにね、僕の手元に武張った人材がいないのが実際でね。 まあ、主戦場は宮中さ。君には手間はかけさせないとも。 むしろ君がいることで旧何進派閥を糾合しやすくなることは明らかだからね。 軍権を預けよう。面倒だったら、好きなだけ棒を振っていてくれていいよ」 その言葉に華雄は苦笑する。そして答える。 「そうだな、貴殿の誘いはありがたいものだろう。武人としても、それ以外でも死んでいたような私にとっては救いの手だ。それは間違いない。 だが。いや、だからこそ断る。断らせてもらおうとも。 ……ほお、そんな顔もできるのか。 なに、貴様のような小才子に付き合ってられんというだけのことさ」 ばっさりと華雄はその誘いを断る。 「なん、だって……?」 理解できぬと言わんばかりの皇甫嵩に苦笑し、続ける。 「一つ、言っておこう。貴様はな。貴様が謗(そし)る何進に遠く及ばんよ」 くつくつ、と艶(あで)やかに笑う。 その意味に気付かぬ皇甫嵩ではない。低い言葉で。 「……聞き捨てならないね」 その表情は憮然。そして瞳に宿るのは炎。 だが、華雄はそんなことでは揺らがない。 「ああ、分からないだろうな。きっとそれだけ格が違ったのだろうさ。 皇甫嵩、貴様はな。背伸びしようが、逆立ちしようが何進には及ばんよ」 なんとなれば、地位や名声なぞあの男は歯牙にもかけていなかった。 いや、この上なく利用していたのだが。 いや、なるほど。 華雄は、至った。 「皇甫嵩よ、貴様は本当に、小賢しいだけさ。 国というものを背負う覚悟も気概もない小物だ」 思えば、何進はその権力を目的にしたことはなかった。 それは、あくまでも手段であった。そのためであった。 「だから、私は皇甫嵩、貴様に従わん。まあ、分かり易く言うとだ。 貴様は私の主となるに、不足、というやつだ。 何より品性が下劣極まる。もっと言うと、生理的に無理だ」
506 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/23(水) 22:13:12.43 ID:zQGkHpbR0 その言葉に皇甫嵩は激昂する。 「な!所詮は、先の見えぬ者ということか! 新たな漢朝の栄光、それを見ずに果てればいいさ」 吐き捨てる皇甫嵩に、苦笑する。 なんとも、陳腐なことよ。 それでいて華雄は四肢に広がる痺れに閉口する。 これは思ったよりも。 思考が、鈍っていくのを感じる。 「今なら、今この僕に忠誠を誓えば」 目の前で囀る馬鹿者。 黒幕気取りの、凡骨には報いが必要だろう。 鈍った思考がもたらした結論は、簡にして単。 そしてそれは華雄の在り方。 「ぐ?」 無造作に、流れるようにその首を掴む。そしてそのまま締め上げる。 「あ!」 やめないか。やめろ。 言葉にならない叫び。そして散る紅い飛沫(しぶき)。 とすり、ざくり。 貫かれ、切り裂かれていく自分の肉体。 視界が紅く染まっていく。 嗚呼、なるほどと華雄は切り裂かれ、刺されたことを更に認識する。 だがその痛みは、衝撃は、盛られた毒のせいであろうか。さほどでもない。 ひどく、遠いことのように感じられる。 それでも、一秒ごとに力は抜け、景色は白く修練されていく。 それがどうした。 この男を生かしてはおくものか。 ざくり。ごり。 また一つ傷口が増える。視界が白くぼやけていく。 いのちを もやせ―― 「貴様には分かるまいな。この私の、力。 貴様みたいな俗物に、分かる、もの!かよ」 まっかに もやせ 「ただでは死なんよ。貴様も連れて行く!貴様のような奴は!」 ごきり、と鈍い音が響き華雄の意識はそこで途絶える。 ◆◆◆ 華雄は五体から血を撒き散らしながらも満足げに笑っていた。 そして後世に大きな謎を投げかけることとなる。 なぜ皇甫嵩は華雄に殺されたのか。 なぜ華雄は死んだのか。 多くの歴史学者が様々な推論を立てることになるのだが。 一般的には、紀霊が将来の政敵を片付けたのであろう、というのが通説である。
507 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/23(水) 22:15:07.27 ID:zQGkHpbR0 本日ここまですー感想とかくだしあー いやあ、やっちまいましたね。 もはや題名案さえも浮かばない! ぼすけティ
508 :青ペン [sage]:2020/09/25(金) 00:28:20.71 ID:KGMWCyXOo >>507 まぁた難しいとこ丸投げ来たねぇ… 【清流濁流併せ飲み、流れるは濁りし血】 ってとこでまとめたいかな
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/09/25(金) 02:16:49.45 ID:eBoa8L/hO >>507 原作では見られない華雄さんの美しく強い死に様、好きです… 題案は 『心火燃やして徒華ぞ咲く』 華雄さんですからね、徒花は徒華で行きたいなとか
510 :赤ペン [sage saga]:2020/09/25(金) 18:20:04.31 ID:RS2Nv5g10 乙でしたー >>504 >>が満ちていて、流石の皇甫嵩が気圧されるほどである。 むしろ武人の持つ単純な気迫には耐性無さそうだよね ○が満ちていて、流石の皇甫嵩も気圧されるほどである。 戦争狂の朱儁とかは個人武力は大したことなくても耐性アリアリだろうけど >>505 >>「ふ、それは認識が大いに誤っているね。 間違いと言うほどではないですが ○「ふ、それは認識を大いに誤っているね。 もしくは【その認識は大いに誤っているね。】とかどうでしょう >>聞こえるだろう、あの阿鼻叫喚が、煉獄が。 煉獄ってキリスト教由来なんだよなあ… ○聞こえるだろう、あの阿鼻叫喚が、酸鼻の極みが。 【地獄絵図】だと音よりも映像っぽいし、【修羅場】、【陰惨たる光景】も…ここは死の臭いっぽくこれでどうだ >>その表情は憮然。そして瞳に宿るのは炎。 誤用がそのまま認められたとか聞いた覚えもあるような ○貼り付けた笑みに罅が入る。そして瞳に宿るのは炎。 もしくは【その顔から余裕が失われる】とか【紳士然とした表情が歪む】とかどうでしょう >>506 >>それでいて華雄は四肢に広がる痺れに閉口する。 【陳腐なことよ】にはかかってない感じがするので ○それにしても……と華雄は四肢に広がる痺れに閉口する。 皇甫嵩は大したことないけど、そいつの持ってきた毒は大したものだ。みたいな? >>それでも、一秒ごとに力は抜け、景色は白く修練されていく。 ケアレスミスかな? ○それでも、一秒ごとに力は抜け、景色は白く収斂されていく。 【まとまること】を意味するので白一色に染まっていく。的な意味ならこうですかね でも死んだ場所がもとは何進の別宅だからなあ…助平心出して結果として相手からの無理心中とかなかなかできないよね 解毒薬は持ってたんだろうけど勧誘に毒薬飲ませながらとかわけワカメだわwまあ仮にうまくやっても曹操相手にこいつじゃ小粒に過ぎるなw
511 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/09/25(金) 21:48:01.10 ID:w9Dus0f30 >>508 どもです。 流石青さん、そのセンスは一ノ瀬に響き渡るでぇ。。。 いやまじで。 清濁流流の対比はお見事でございます。 なるほどなあ。なるほどなあ。 ね、簡単でしょとばかりに言ってたやつ、むーりーw >>509 >原作では見られない華雄さんの美しく強い死に様、好きです… 何進ラスボス√では縦横無尽されてたのですが、こうなりました 魅力が少しでも伝われば幸いでございます >『心火燃やして徒華ぞ咲く』 コフゥ 素敵すぎるこれはいけません、、、 >>510 赤ペン先生いつもありがとうございますー! く、ケアレスミスやってもた! >でも死んだ場所がもとは何進の別宅だからなあ…助平心出して結果として相手からの無理心中とかなかなかできないよね 確かにw >解毒薬は持ってたんだろうけど勧誘に毒薬飲ませながらとかわけワカメだわw 万が一の脅迫路線ですね。それで屈服させたらまあ、たしかに華雄さんなら言を翻すことはないでせう >まあ仮にうまくやっても曹操相手にこいつじゃ小粒に過ぎるなw なおその真価を把握しているのは二郎ちゃんくらいな模様
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