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真・恋姫無双【凡将伝Re】4
- 411 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/07/27(月) 22:06:17.20 ID:z2f4tQkH0
- 「ああ、一刀か。久しいな。うん」
北郷一刀は馬超のその言葉に、その様子に内心ため息を大きく吐く。
だって。もっと、もっと。
この子は元気で、全身でその清冽な気を発していたのに。見ていられない。見ていられないほどに鬱屈としているのだ、あの錦馬超が。
だからこんなことを言う。
「翠、翠だよな?」
「は?あたしはあたしだ。何を言ってんだよ一刀」
その声も弱々しく感じる。北郷一刀の知る馬超ならば、そのような妄言あれば刹那の間もなく鉄拳制裁が来たはずなのだ。だから、らしくない。後ろに控える関羽すら違和感を覚えるほどである。
「無理するなよ」
そして張りつめていた糸はその一言で崩壊する。
「は?あたしがなにを無理してるって?なに?あたしのなにを知ってるのさ。何でそんなことを言うのさ。
いい加減なことを言うのだったら、一刀と言えどただじゃおかないぞ……?」
湧き起こる殺気は本気のもの。無言を貫いていた関羽が主を庇うべく前に出ようとするのを制して北郷一刀は言い募る。
「分かりはしない。
でもな。
翠がそんなんで馬騰さんが喜ぶのかな?」
その言葉に、名前に馬超は激昂する。
「ち、父上のことを!言うな!何も知らないくせに!」
反射的に出た槍を関羽が弾く。
それに一層激昂して言い募る。
「父上が、死んだんだぞ!あの父上が!それでなんの馬家軍だよ!
まだ、もっと!教えてほしいことがたくさんあった!あたしが馬家を継ぐに値するだけの武を持っているって、伝えたかった!全部、伝えられなかった!」
力任せの連撃。関羽は苦虫を噛み潰したような貌でそれを弾いていく。
「それでも、翠は今、生きているだろ!馬騰さんが今の翠を見てどう思うか考えろよ!
そんな翠、見てられないよ。なあ。翠……」
「なんだよ!なんなんだよ一刀!お前は一体なんなんだよ!」
手にした愛槍――銀閃を取り落して馬超はこれまで抑え込んでいた悲嘆を吹き出す。
嗚咽を漏らす。
その馬超に、北郷一刀は優しく声をかける。
「なあ、翠。馬騰さんは凄い人だった。俺なんかが言っても説得力がないと思うけどさ。
そんな俺でも分かるくらいに馬騰さんは凄かった」
その言葉に馬超はこくり、と頷く。
「だからさ、翠。馬騰さんの死にざま、ちゃんと、さ」
思えば、敬愛する父の死にざまを知っていなかったのだと馬超は愕然とする。
「そ、そりゃそうだけど……。でも、張遼は絶対に許さないからな!」
その、抗う声に北郷一刀は苦笑する。そんなこと一言も言っていないのに、と。
「いや、まあ、なんだ。話は聞こうよ、な?」
馬騰さんの最期を看取ったに違いないからさ、という言に馬超は無言で頷く。
暫しの沈黙。そして。
伝えられる言葉。最期の言葉。
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