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真・恋姫無双【凡将伝Re】4
- 424 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/08/05(水) 06:01:34.86 ID:o17giggl0
- 「何も二郎殿が手を汚すことはないでしょうに」
苦い声に苦笑する。
「怨将軍とか、英雄とか、そういうのは、いいのさ。
もとより身の丈に合ってなかったしな。だから、いいのさ。いいんだよ」
それに。
「そろそろ路線変更しようかなと思ってたとこだ。
そういうのは、もっとちゃんとした英雄が背負った方がボロが出ない。そして袁家、いやさ紀家には正真正銘の英傑がいるし」
一騎当千、趙子龍。
「天下にその名を轟かせるのは星の方が似つかわしい。そうだろう?」
「――貴方は!」
尚も言葉を重ねようとする稟ちゃんさん。
だが刹那の感情の爆発。その後に紡がれた言葉は別方向からのアプローチであった。
「では、譲られたその英雄の座。星はどう思うか。そして十全に槍を振るえるとお思いですか」
「う……」
流石である。そうきましたか。そして困る。
つまり宦官どもを皆殺しにするってのは、半ば俺の私怨と言ってもおかしくないからなあ。そこはまあ、怨将軍だから許してほしいな。
とか愚にもつかないことを考えていたのだが、思わぬところから助け舟が出た。ようそろ。
「稟よ。主をそう苛めるものではない。主には、いやさ男には譲れぬ思いがあるものだ」
そして助け舟を出してくれたのは星でした。いやなんで君ここにいるのん。
「ふ。そう不可思議な顔をすることもないでしょうに。まあ、種明かしをすると簡単ですがな。張郃どのから聞いたからですな。風からの伝言通り護衛を兼ねて控えさせていただいただけのこと。
まあ、主には言いたいこともあるのですが」
それでも、と。ニヤリ、と。
「天下一を目指すというのはこの身が発した志。そのために主はその身を挺してまでも飛将軍と渡り合う機会を作ってくださった。
――もっとも、それでも。それでも討ち取れなかったわが身には忸怩たる思いがある」
暫し視線を地にやり、改めてこちらを見やる。
「紀家軍の指揮、承りましたとも。
下駄をはかせていただいたとは言え、一騎当千のこの身。けして禁裏、いやさ洛陽に余人を近づけませぬとも」
「……すまんな。星」
「何をおっしゃるか。嬉しいのです。
主に受けた恩は計り知れない。ようやく。
ようやくこの身で、この武で返すことができるのです。喜んで果たしましょうとも。
造られた英雄大いに結構。
もとより流浪の、一介の風来坊のこの身。望外の栄光。
見事果たしてみせましょうとも」
そして。
「それに主よ。それがしが聞きたいのはそのような謝罪の言葉ではない。感謝を、鼓舞をこそほしいものです。
と、女からここまで言わせる御身は相当に罪作りですぞ?」
艶然と笑む星。強張っていた思考が動き出す。そうだな。悲壮ぶるのは俺らしくない。
きっとね。
「星、ありがとう。そして何人たりとも洛陽に立ち入らせるな。
――頼りにしてるよ」
「承った。なに、はねっかえりを押さえるだけの簡単なお仕事だろう?」
不敵で無敵。一騎当千な星に見送るしかない俺であった。
あ、微かに。微かに苦笑する稟ちゃんさんを見れたのもすごい収穫だなとかなんとか。
うん、ありがとな二人とも。
それはそれとして。
けじめはつけんとな。
まあ、地雷原での綱渡りではあるのだが、ね。
後始末が、はじまる。
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