40: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:38:34.61 ID:TXSil8FD0
志希「フレちゃんは悲しい時、辛い時、苦しい時、どんなときでも楽しさに変換して笑っていられる。……ねえ。キミはここ数日間誰かの前で笑った?」
「なんで数日間笑わなかっただけでらしくないなんて言われちゃうの? 誰だって気分が落ち込む時くらいあるはずだよ」
41: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:41:08.37 ID:TXSil8FD0
周子「って言われてもなあ……」
奏「というか貴女は本当に飛鳥なの?」
42: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:45:05.25 ID:TXSil8FD0
「へぇ、どうしてなの?」
志希「飛鳥ちゃんは面白いから」
43: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:46:36.12 ID:TXSil8FD0
志希「自分を殺してまで他人に成り切ろうとする必要なんてない。フレちゃんらしさなんてフレちゃんにしかわからないんだもん」
「いまさらそんなことを言われても遅いんだ。もう戻ってこれないところまで来ちゃったんだもん。だからアタシは自分の運命を受け入れた」
44: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:48:04.02 ID:TXSil8FD0
志希「フレちゃんはね、内面に働きかけたんじゃなくて外側に訴えかけたんだよ」
「一体、どうやって!」
志希「飛鳥ちゃんは、フレちゃんの体で飛鳥ちゃんの服を着て外に歩こうと考えた?」
45: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:49:08.34 ID:TXSil8FD0
その言葉を聞いた志希は頬を緩ませながら答えた。
志希「おかえり。飛鳥ちゃん」
46: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:50:28.33 ID:TXSil8FD0
志希「はぁ〜満足満足♪」
志希は両手の力を緩め、抱きしめるのをやめた。
47: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:52:12.76 ID:TXSil8FD0
【ライブステージ会場内スタッフ通路】
勢いでつい来てしまったけど大丈夫だろうか。特に通用口の警備員。容易に通してはくれないだろう。
48: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:53:55.85 ID:TXSil8FD0
【二宮飛鳥の楽屋前】
遂にここまで辿り着いた。ここからが正念場だ。
49: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:54:28.44 ID:TXSil8FD0
二宮飛鳥「……! ということはいずれはキミも!」
フレデリカ(飛鳥)「まぁそうなるだろうね」
二宮飛鳥「だからその前にレゾン・デートル(存在理由)を定義づけようという訳か。それは理解る」
50: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:55:37.87 ID:TXSil8FD0
【ライブステージ舞台袖】
舞台袖の下手側から二宮飛鳥のライブの様相をただ見守る。ボクの出番はまだもう少し後だ。
彼女は歌唱もパフォーマンスも完璧な二宮飛鳥だった。
51: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:56:23.82 ID:TXSil8FD0
そうしてまもなくステージ全体の照明が落とされ、青色のサイリウムだけが揺れる。
刹那にも永久にも感じられた静寂の後、エレキギターの音が静かになり始めた。
大型スピーカーから音の波が体をうちつけ、照明が一斉にボクを照らす。
聴き覚えのある、『共鳴世界の存在論』の始まり方。
52: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:57:24.60 ID:TXSil8FD0
1番の余韻を残したまま間奏に入る。
いつのまにか数多の瞳がボクを驚きに満ちた目線で捉えていた。
観客はこのハスキーボイスで彩られた宮本フレデリカを見てなにを思うだろうか。
慌ただしく空間を切り裂くスポットライトはやけに明るい。
53: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:58:23.84 ID:TXSil8FD0
フレデリカの見た景色は何色か。そんなことは、ボクに知る由もない。なぜならボクはフレデリカではないからだ。彼女にしか分からないだろう。
だけど、もしかしたら。
今、ボクが見ている景色と似ているのかもしれないね。
54: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:58:54.86 ID:TXSil8FD0
最後のフレーズを言った途端、悲鳴かと思うほどの歓声が沸きあがった。
良かった。ボクの魂はちゃんと届いたみたいだ。
喝采は未だやまず、ステージを揺らし続ける。
55: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:59:58.05 ID:TXSil8FD0
少し肌寒い冷房に、一定のリズムを保つ車輪の音。ボク達以外誰もいない静かな空間。
志希「おや、居眠り王子サマのお目覚めだ〜♪」
56: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 21:00:42.50 ID:TXSil8FD0
志希「あれ、抵抗しないの?」
飛鳥「たった数時間前に似たようなことを経験したからね」
57: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 21:02:54.16 ID:TXSil8FD0
これは蛇足の話だ。完結した物語に余計なエピソードを付け足すなんてナンセンスそのもの。だけどこれもまた必要なピースなのさ。
失踪旅はその後少しだけフラッと続け、気分で終わりを迎え、次の日の朝にはもう寮に戻っていた。
58: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 21:07:08.54 ID:TXSil8FD0
以上になります。長文でしたが、お付き合いありがとうございました。
使用楽曲:『共鳴世界の存在論』
歌:二宮飛鳥(青木志貴)
作詞:烏屋茶房
59:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 01:16:18.80 ID:zlyAdAqm0
面白かったです 乙
60:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 13:06:36.96 ID:m9WIxb4wo
さいこうにおっつ
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