55: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:59:58.05 ID:TXSil8FD0
少し肌寒い冷房に、一定のリズムを保つ車輪の音。ボク達以外誰もいない静かな空間。
志希「おや、居眠り王子サマのお目覚めだ〜♪」
志希がにやけながら顔を覗かせた。
志希「飛鳥ちゃん全然起きないから電車折り返しちゃったー」
ついさっきまでボクはライブステージを終えて力尽きたはずだ。もう一歩も動けないくらいに。それなのにどうしてこんなところで眠っていたのか。
飛鳥「ここは何処だ。ボクの名前は?」
それを聞いた志希はペルシャ猫のような瞳をまるまるさせて驚いている。
志希「ここは電車の中。キミは二宮飛鳥だよ」
今、ボクのことを指して二宮飛鳥といった!
慌てて体を起こして窓から外を見てみると既にセカイは深淵ともいえる黒に包まれ、河の水面には満月が揺らいでいた。
窓ガラスには明るい茶髪、青いエクステを付けた髪の持ち主が映りこんでいる。他の誰でもないボク自身の顔だ。
飛鳥「やった、やったぞ志希! ボクは元に戻ったんだ!」
志希「んんー、どういう哲学的な観点での話なのか志希ちゃんには分かりかねるにゃー」
飛鳥「だから、フレデリカの体から元に戻って」
依然として志希の頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいる。
かと思ったら、何かを思いついたような顔つきでボクの首筋をまさぐり始めた。
志希「わずかな体温上昇と……すんすん。ほのかな汗のにおい。飛鳥ちゃん、寝起きだねー」
寝ぼけているといいたいのか。ボクはついさっきまでフレデリカの体でライブを……していたはずなのに。
熱はまだ身体が覚えている。だけど、目の前の光景が現実ではないとは思えない。やはりあれは本当にボクが見た夢なんだろうか。
それでも、夢で終わらせたくない。ボクが見つけた答えを。
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