56: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 21:00:42.50 ID:TXSil8FD0
志希「あれ、抵抗しないの?」
飛鳥「たった数時間前に似たようなことを経験したからね」
志希「あたしの知ってる数時間前の飛鳥ちゃんは眠っていたんだけど」
飛鳥「ボクしか知らない経験をしたのさ」
志希「えー、なにそれなにそれー」
飛鳥「別世界線のダイバージェンス(分岐)へ、ボクのアイデンティティをめぐる旅に行っていたんだよ。答えを探しにね」
『まもなく終点──、お乗り換えは……』
志希「ありゃ、もう着いちゃった」
ボクと志希は電車を乗り換えるべく、財布を取り出し、運賃を用意して出口の前で待機する。
飛鳥「別の世界線でキミは『自分探しをやめた飛鳥ちゃんなんて面白くない』って言っていたよ」
志希「へぇ。それはキョーミ深いなー」
飛鳥「またゆっくり話してやるさ」
やがて車輪と枕木が刻むリズムはスローテンポになり、金属がひしめく音が鼓膜を震わせる。横方向に重力がかかり、一両編成の列車は止まった。
出口のドアが開き、ボク、続いて志希が運賃箱にお札を放り込む。
夜のプラットホームは一段とひんやりとしていた。電車の冷房とはちがう、スッキリとした冷たさ。新鮮な空気で肺を満たし、のびをする。
志希「それで? 飛鳥ちゃんは答えを見つけ出せたの?」
飛鳥「あぁ。そうだね」
ボクは振り向き、こう答えた。
飛鳥「ボクはアスカ。二宮飛鳥さ。ボクがそう信じる限りね」
(END)
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