50: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:55:37.87 ID:TXSil8FD0
【ライブステージ舞台袖】
舞台袖の下手側から二宮飛鳥のライブの様相をただ見守る。ボクの出番はまだもう少し後だ。
彼女は歌唱もパフォーマンスも完璧な二宮飛鳥だった。
どこか彼女に、二宮飛鳥ではない部分があるのかもしれない。という少しだけ抱いてしまった期待はもろく崩れ去ってしまった。
まぁ構わないさ。ボクはもう逃げないと決めたんだ。
一曲歌い終えた舞台上の二宮飛鳥はファンからの歓喜の声を浴びている。
二宮飛鳥「ありがとう。今の曲は『華蕾夢ミル狂詩曲 〜魂ノ導〜』だ。蘭子の持ち歌を僭越ながらこのボクが歌わせてもらったよ」
二宮飛鳥は会場の客に向かって解説をした。観客はそんな彼女を大きな拍手で迎え入れる。
二宮飛鳥「二宮飛鳥なのに神崎蘭子の唄を歌うなんて、と思うかい? だけど、ボクと蘭子は魂の契りを交わした運命共同体。お互いの良さを理解り合えているから偽物にはならない。そのカヴァーは誰かの感情を揺さぶるだろう。キミ達はどう感じる?」
ステージ上の二宮飛鳥がそう問いかけると『良かったー!』とか『最高ー!』とかそんな声が聞こえてくる。
二宮飛鳥「それは良かった。キミ達にこの理論が受け入れられてボクは嬉しいよ。次は『共鳴世界の存在論』なんだけどボクは今回この曲を歌わないからね」
今回歌わない、と彼女が言ったところで会場にどよめきが起こった。
えー、なんでー! という文句も聞こえてくる。二宮飛鳥のソロステージという触れ込みのライブだから仕方のないことだ。
二宮飛鳥「真実というのはメビウスの輪の如く変動性が高く、容易には観測できないモノだからさ。不器用なボクらはこうやって自らの出来ることで表現しなければならない」
二宮飛鳥は天を衝くように大きく左手を突き出した。
そして、舞台袖にいるボクに向かって振り下ろす。
二宮飛鳥「さぁ、証明しろ。このLIVEで、キミのその声で!」
その宣言を皮切りに大きな歓声が起きた。しかし、それはボクがステージに現れるまでだった。歓声は困惑の声に変わる。
この流れからしてギャラリーは蘭子を期待したんだろう。それがこんな金髪娘が出てくるのだからうろたえてもおかしくはない。
臆するな。ここまで来たらもう証明してみせるしかない。
……ボクは、二宮飛鳥だと。
フレデリカ(飛鳥)「さぁ、旋律を奏でてくれ。捻れ曲がった運命のカタストロフィに抗ってみせるさ」
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