51: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:56:23.82 ID:TXSil8FD0
そうしてまもなくステージ全体の照明が落とされ、青色のサイリウムだけが揺れる。
刹那にも永久にも感じられた静寂の後、エレキギターの音が静かになり始めた。
大型スピーカーから音の波が体をうちつけ、照明が一斉にボクを照らす。
聴き覚えのある、『共鳴世界の存在論』の始まり方。
フットライトがドラムの音に合わせて点滅を繰り返す。
大きく両手を広げて観客に向かって突き出し、右のかかとでリズムを刻んだ。
《壊れたラジオから聞こえてくる音は
まるでボクらの声だ》
声が出しにくい。
それもそうだ、宮本フレデリカの喉なのだから。
《ノイズの中埋もれ錆び付いた言葉を
解き明かしてくれよ》
だが、構わない。
《「存在証明なんて、本当はナンセンスなことさ。だけどそれを叫ぶことは意味のあることだと思うね。キミもそう思うだろう?」》
今までと同じように歌う。
それが、ボクがボク足らしめる証明に──
《誰にも届かない声が今
キミに聞こえたなら
ボクらは同じさ
孤独を抱えて響いて引き合う周波数》
少しずつ昂りを見せる音楽、融けるようなギターに体を預けて力を抜く。
そこから再びマイクを強く握り、倒れないように全身を奮い起こした。
《存在証明を、この悲鳴を、
或いは歌を
叫び続けるボクは此処にいる
"次のセカイ"〈シンセカイ〉の
鍵をそっとまわしたなら》
シーリングライトの光を浴びながらオーディエンスに向かって力強く手を伸ばす。
《さぁ、光の中へ、今》
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