48: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:53:55.85 ID:TXSil8FD0
【二宮飛鳥の楽屋前】
遂にここまで辿り着いた。ここからが正念場だ。
ドアノブに手をかけ扉を開ける。鉄製で少し冷たかった。
フレデリカ(飛鳥)「やあ。今日はいい天気だね。そうだな、空は青いし雲が綺麗だ」
二宮飛鳥「フレデリカ!? どうしてここに」
フレデリカ(飛鳥)「フレデリカ、か。確かにそうだな。W見た目はWね……」
二宮飛鳥「中身は違うとでも言いたいのかい?」
フレデリカ(飛鳥)「それはどうだろうね。ボクが叫んだところで外面的に観測されなければ意味がない」
二宮飛鳥の表情が意外な来訪者に対する驚きから目の前の人間を疑う、というものになった。
二宮飛鳥「……キミ、フレデリカじゃないな。何者なんだ?」
フレデリカ(飛鳥)「今はただの迷える子羊さ。それに、明言しなくてもキミはもう分かっているだろう」
二宮飛鳥「そんな……まさか、キミは!」
フレデリカ(飛鳥)「今日はWもう1人のボクWたるキミに頼みがあって来たんだ」
二宮飛鳥「頼み?」
フレデリカ(飛鳥)「今日のライブでボクに歌わせて欲しい」
ボクの願いを聞いた二宮飛鳥は驚いた表情をしながら、それがキミの選択なのか、と呟いている。
二宮飛鳥「残念ながらお断りだ。ボクが今日の為にどれだけの時間を割いてきたと思っている?」
フレデリカ(飛鳥)「奇遇だね。ボクも数日前までは同じ数だけのレッスンを受けていたよ」
二宮飛鳥「ボクの視点から言わせてもらうと、キミの中身がどうであれ外面はフレデリカにしか見えない」
フレデリカ(飛鳥)「そのくらい、重々承知済みさ」
二宮飛鳥「そんな人物がライブに立ったらどうなる? アイドルとしての二宮飛鳥を観に来たファンの期待を裏切ることになってしまうんだぞ!」
フレデリカ(飛鳥)「分かっている。これはボクの我儘なんだ」
二宮飛鳥「だったら!」
フレデリカ(飛鳥)「それでもボクは! 果たさなければならないんだ。存在証明を……」
二宮飛鳥「何故だ。どうしてキミはそこまで執着する?」
フレデリカ(飛鳥)「キミは昨日、目を覚ました時に公園で普段とは違う服を着ていただろう」
二宮飛鳥「どうしてそれを知っている」
フレデリカ(飛鳥)「あれはフレデリカの仕業さ」
二宮飛鳥「なに?」
フレデリカ(飛鳥)「キミの体の中にはかつて、彼女の魂が存在したんだ」
二宮飛鳥「けど、ボクはボクだ。フレデリカらしい部分なんてボクには……」
フレデリカ(飛鳥)「そうだね。今はこの世界にフレデリカは存在していない。キミの体の中にあった彼女の魂は二宮飛鳥という人格に飲み込まれてしまったのだから」
二宮飛鳥「そんな話、簡単には信じられないよ」
フレデリカ(飛鳥)「最初はいつも通りの天真爛漫なフレデリカだった。けど、最終的には皮肉的で、悲観的で……ああ、あれはまるでそう、ボクのかつての感情が流れ込んでいたみたいだった」
二宮飛鳥「パーソナリティが少しずつ書き換えられているとでも言うのか!?」
フレデリカ(飛鳥)「そうだよ。信じられないだろう?ボクも受け入れられなかったさ。哲学的なフレデリカなんてね。ココロが入れ替わった先の体に馴染んでいっているんだろう」
もう1人の二宮飛鳥はため息をつきながらこれがブルートファクトという奴か、と天を仰ぐ。かつては知っていた気がするこの言葉をボクは思い出すことができない。
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