53: ◆JDH1DmZBjFQa[saga]
2017/12/15(金) 20:58:23.84 ID:TXSil8FD0
フレデリカの見た景色は何色か。そんなことは、ボクに知る由もない。なぜならボクはフレデリカではないからだ。彼女にしか分からないだろう。
だけど、もしかしたら。
今、ボクが見ている景色と似ているのかもしれないね。
《嗚呼、許されるのなら今
確かめたい
ただ、ボクがボクであるその”証”》
激しく振りかざされるサイリウム。ファンの掛け声。数多のオーディエンスがボクの姿を見ている。動きを追っている。声を聴いている。ボクという存在を認知している。
《存在の理由を、この歌を、そしてキミを》
そうだ、ボクはここに存在している。外面はフレデリカだったとしてもボクがそう信じているから。
声と姿が違っていてもボクはボクだ。
そんな当たり前のことにどうして今まで気がつかなかったのだろう!
《叫び続ける》
ボクは歌う。自分自身を信じる為に。それがボクの存在理由。
《ボクは此処にいる》
ボクは、飛鳥、二宮飛鳥なんだ!
《"次のセカイ"〈シンセカイ〉の
鍵をそっとまわしたなら
さぁ、ボクと共に》
ボクを照らし出すスポットライトの暖かさ。
身体を芯から響かせるベースの重低音。
ドラムのビートに鼓動が跳ね、観測者たちの声援が血液となってボクの体中を駆け巡ってゆく。
掻き立てられるエモーションに、空すら飛んでしまえそうな高揚感。
《存在証明を》
こんな気持ちは此処じゃなければ味わうことが出来ない。
ステージに立っているからこそだ。
あぁ、楽しい。こんな純真な気持ちになれたのはいつ以来だろうか。
夢のような舞台がもうすぐで終わる。
それがとても寂しくてずっと手の中におさめたくなる。存在を確かめたくなる。
このライブが終わればまたボクはボクじゃなくなってしまうのではないだろうか。
《存在証明を》
そうなったとしても、叫んでやるさ。
ボクが此処に居ることを。
《存在証明を──》
何度だって、この歌を──……
《──さぁ、往こうか》
60Res/93.16 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20