1: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:32:09.61 ID:amKha4Y/0
明日から総選挙が始まります。
このSSはまゆの総選挙を応援するどころか、邪魔するものかもしれませんが、自分の考える佐久間まゆを表現したつもりです。
楽しんで頂ければ幸いです。
(あと、総選挙は安部菜々に投票お願いします)
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:32:51.94 ID:amKha4Y/0
煌びやかな服、そびえ立つお城のような建物、美しいアイドル。それらが集うここ、CGプロダクションでは数多くのアイドルたちが切磋琢磨し、己を高め合っていました。
そして今日はその集大成。一年目、自分がデビューしてまもなく始まった選挙結果は惨敗。表彰台に上がることはおろか、順位発表圏内ですらありませんでした。
しかし今年は違います。Pさんと一緒に一年努力し、去年とは違う確かな手応えを感じました。
3: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:34:31.55 ID:amKha4Y/0
「第6位 佐久間まゆさん」
ちひろさんのアナウンスから放たれた言葉はまゆの期待をぐしゃりと叩き潰しました。6位、高順位です。150人以上いる中の一桁なんですから素晴らしいと胸を誇っていいでしょう。でもだめなんです。1番じゃなきゃ……。
まゆ「皆さんの投票ありがとうございました。前回と比べて大躍進ということで、まゆ自身も驚いています。シンデレラガールにはなれませんでしたが、この結果には大変満足しています。本当にありがとうございました」
4: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:35:02.05 ID:amKha4Y/0
6位の席に座りながら圧倒的な隔たりを感じました。順位差以上にある力の差。その原動力となっているのは第一回シンデレラガール総選挙なのでしょう。彼女は一度、敗北しています。愛梨さんに次いでの2位でしたが、そこで満足できなかったのです。
でもまゆの1番は違うから。まゆの最優先は……。
右手の小指の赤い糸。深紅の絆はまゆから彼へと伸びています。
5: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:35:28.65 ID:amKha4Y/0
〜〜
まゆ「おめでとうございます蘭子ちゃん」
菜々「本当におめでとうございます! 蘭子ちゃん、握手してください!」
6: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:35:55.83 ID:amKha4Y/0
〜〜
CGプロの一室。Pさんとその担当アイドルの部屋を開け、2人で腰掛けました。
P「コーヒー入れてくる。飲むか?」
7: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:36:33.81 ID:amKha4Y/0
まゆ「それともう一つ」
こっちが本当の理由。まゆがアイドルをはじめた切っ掛けとなり、アイドルを続けた意味であり、アイドルを辞める決定打になったもの。
心臓が早鐘のように打ち、呼吸は乱れる。血が体内を駆け巡り、手に汗が滲む。目を閉じ、大きく息を吸い込み、長く吐き出す。大丈夫、緊張のほぐし方は今までに養ってきた。顔を上げ、Pさんに目を向ける。目を見て、はきはきと。
8: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:37:02.01 ID:amKha4Y/0
思ってもないことを言われたからか、まん丸に目を見開いたPさんは徐にカップを置き、まゆの目を見つめてきました。
P「……アイドルの恋愛が御法度だってのは知ってるよな?」
まゆ「だからこその決断です」
9: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:37:31.08 ID:amKha4Y/0
Pさんの意見はごもっともです。でもそういう言葉が聞きたいんじゃないんです。まゆはあなたがまゆをどう思っているか知りたいんです。
P「納得いってないって顔だな」
まゆ「わかってますよね?」
10: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:37:58.36 ID:amKha4Y/0
ゆっくりと瞼を上げたPさんは、私にこう告げました。
P「まゆ、お前は俺のために死ねるか?」
まゆ「…先ほど言ったことに嘘偽りはありません。まゆは、Pさんのためであれば何でもできます、何でもします。例え死ぬことだって…Pさんと一緒なら…」
11: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:38:25.12 ID:amKha4Y/0
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P「あ、千川。まゆは?」
ちひろ「一先ずは落ち着きを取り戻したと思います。明日はお休みですし、十分休養を取るよう伝えました。それと、明後日以降の仕事は出るとのことです」
12: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:38:56.86 ID:amKha4Y/0
半ば追いやるようにして部屋を出て貰う。どうしても一人になりたかった。でなければ千川に当たっていたかもしれない。まゆの世話をして貰って、叱って頂いたばかりなのに。
まゆの絶叫で忘れていた怒りがふつふつと思い出されてきた。それと同時に自分への怒りも湧いてきた。プロデューサーならあそこは怒るかもしれないが、怒ってはいけない場面だったと。それでも……。
P「ガラスの靴なんかって」
13: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:39:41.10 ID:amKha4Y/0
〜〜
P「……なんて?」
丸1日休んだ後だった。若干腫れの残る瞼を見れば、泣きはらしただろう類推はできるが、何をもってその結論に至ったのか、皆目見当もつかない。
14: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:40:08.99 ID:amKha4Y/0
ちひろ「和解、できたようですね」
P「わっ!? 千川っ!」
ちひろ「ごめんなさい。でもまゆちゃんに許可は貰いましたから」
15: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:40:35.15 ID:amKha4Y/0
〜〜
それから事はとんとん拍子に進んだ。あの夜を思い出し、俺はときたまぎくしゃくしていたが、まゆは全然気にしていないようで、俺も次第に意識しなくなっていった。
セルフプロデュースに関しても、最初は殆ど俺が裁いていた。だが、業務内容を覚えだしてからは少しずつ方向をシフトしていった。
16: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:41:01.84 ID:amKha4Y/0
しかし、その予想を外れ、まゆは16位で第三回総選挙を終えた。6位と比べれば無論物足りないが、それでも初の試みでは素晴らしい結果だと言えよう。
第四回では29位。下がってきた。でもまゆは満足していた。なぜなら彼女の戦略ははまっていたからだ。
彼女がプロデュースに携わるようになってからは、女性ファンを増やすことに注力していた。元々俺の策では男性ファンが殆どであった。それこそが、まゆに女心を理解していないと言わしめたのであろうが、ともかくまゆは女性ファンの扱いに長けていた。
17: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:41:29.01 ID:amKha4Y/0
「第6位 佐久間まゆさん」
18: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:41:55.34 ID:amKha4Y/0
まゆ「すみませんでした。ちょっと、感極まってしまって。もう大丈夫です」
どよついていた開場は一気に静かになった。それは、今のまゆがすごいから。上手く伝えられないが、すごい。
まゆ「以前6位という順位を頂いた時は、17の時でしたね。あれからもう4年と思うと、時の移ろいは早いものです」
19: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:42:21.06 ID:amKha4Y/0
〜〜
P「お疲れ様。引退の相談俺にはなしか」
まゆ「Pさん。すみません。ちひろさんにはもう言っていたんですけれど」
20: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:42:47.15 ID:amKha4Y/0
〜〜
「プロデューサー、仕事行ってくるね」
「あ、一人だけ気むずかしい方がいるから、それだけ気をつけて」
21: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:43:13.75 ID:amKha4Y/0
まゆ「わかりましたか?」
不意に近づけられた顔にドキリとする。楽しそうに笑うまゆ。当時の幼さはなりを潜め、大人びた妖艶さを醸し出す。
P「もしかして……」
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