12: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:38:56.86 ID:amKha4Y/0
半ば追いやるようにして部屋を出て貰う。どうしても一人になりたかった。でなければ千川に当たっていたかもしれない。まゆの世話をして貰って、叱って頂いたばかりなのに。
まゆの絶叫で忘れていた怒りがふつふつと思い出されてきた。それと同時に自分への怒りも湧いてきた。プロデューサーならあそこは怒るかもしれないが、怒ってはいけない場面だったと。それでも……。
P「ガラスの靴なんかって」
多くのアイドルが望んで、己を磨き上げ、夢に見るそれをガラスの靴なんかよばわり。だったらこの一年は何だったんだ。俺はお前を本気でシンデレラガールにするつもりでいたのに! あいつも、それを望んでいると思っていたのに!
P「……俺が、悪いんだよな」
あいつにアイドルとしての楽しさを教えてやれなかった。シンデレラガールを目指す価値を理解させられなかった。階段の先にある景色の尊さを伝えきれなかった。
分かっていると思っていた。それが間違いだったのだろうか。レッスンに真剣で、仕事にも真摯に取り組み、歌もダンスも納得いくまで極めようとしていたからこそ、俺もあいつのために頑張れた。それはまやかしだったのだろうか。
違う。まゆだってトップを目指していることは違いなかった。アイドルを楽しんでいたし、結果が出れば喜んでいた。
P「譲れないもの……」
俺と同じ、譲れないもの。それは誰にだってある。俺とあいつでは違っただけだ。それを考慮に入れず、俺は感情のままに……。
P「やらかしたなあ。流石にアイドル続けてくれないよなあ」
仙台で初めて会ったときに見えた執念。それは手に入れたいものを命に代えてでも手に入れようとする情念とでも言うのだろうか。確かに、たかが恋愛のために親元を離れ、アイドルになるなど、並大抵のことではない。
……それがシンデレラガールに向けば、一位だって夢じゃなかっただろうに。
P「もったいない。が、これも運命か」
すごく残念だ。アイドルの才能が、恋愛で埋もれていくなんて。
32Res/40.56 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20