P「まゆ、お前は俺のために死ねるか?」
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18: ◆66FsS2TZ4lNJ[saga]
2018/04/09(月) 10:41:55.34 ID:amKha4Y/0
まゆ「すみませんでした。ちょっと、感極まってしまって。もう大丈夫です」

 どよついていた開場は一気に静かになった。それは、今のまゆがすごいから。上手く伝えられないが、すごい。

まゆ「以前6位という順位を頂いた時は、17の時でしたね。あれからもう4年と思うと、時の移ろいは早いものです」

 4万弱の観衆が一様に耳を傾けている。それだけ、まゆの発するオーラが異様なのだ。でもどこかで感じたこれはいつだ? 歴代のシンデレラガールたちでもここまでのものは……っ! まさか!

まゆ「以前は子供でした。成人していないとかそういうことではなく、精神的に未熟、と言った方が正しいかもしれません。大局観が身についていなかったのです」

 そうか、だからこそ俺は……。

まゆ「物事を俯瞰してみる能力。それには知識、時間、信頼、そして仲間が必要です。どれもまゆには足りなかった」

まゆ「知っている方もいらっしゃると思いますが、まゆは現在自分で自分のプロデュースを行う、言わばセルフプロデュースを行っています」

まゆ「そう、人をプロデュースするためには、大局観は必要不可欠です。だからこそ、まゆは苦しみました。勝手が分からず、多くの方に迷惑をかけたこともあります」

まゆ「それでも、自分の策が功を奏し、今ここで評価される喜びは何事にも代えがたい。…とても素晴らしく、かけがえのない、この感情を得られたのは皆様のおかげです」

まゆ「っ! 満足したとは言いません、言えません! まゆは、アイドルを極めたとは思えません。でも、十分やり遂げられたと思います」

 薄々感づいていたヤツもいるだろうが、これで大方把握しただろう。

まゆ「まゆは、次のライブを持って、アイドルを引退させていただきます」

 人によっては悲鳴を上げたくなることだろう。それでも、今はまゆから目が離せない。耳を傾けてしまう。何人たりとも邪魔を出来ない。

まゆ「誠に身勝手なことだと思います。ですが、自分をプロデュースして気づいたことは、他の方々が導くアイドルを見て、自分ならこうする、こうしたいという欲求を持ってしまったんです」

まゆ「今まで応援してくださったファンの皆様には感謝の念でいっぱいです。だからこそ、まゆは最後までやり抜きます。それまで、着いてきてくれると、嬉しいです。…ありがとうございました!」

 総選挙で引退発表というのは珍しくない。だが、これほどまで綺麗なスピーチができたやつはいなかったんじゃないか。

 まゆも初めこそ涙を流し、嗚咽を漏らしていた。しかし、一度落ち着いた後は、殆ど声が震えなかった。目尻に涙を溜め、感情を今にも吐き出しそうだったのに。

 だからこそ周りも固唾を呑んで見守るしかなかった。あまりにも美しく、神々しかった。壇上のまゆはシンデレラガールに勝るとも劣らなかった。……少なくとも俺にはそう見えた。



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