12: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:30:40.83 ID:S7yVE8bX0
○
簡単にシャワーで足を流したあとは、車に戻って汗を拭いてから着替えた。
午前のうちに着替えのストックを使ってしまうとは思っていなかったので、このペースでいけばどこかで適当な服を購入しなければならないかもしれない。
13: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:31:26.80 ID:S7yVE8bX0
車へと戻り、二人同時に一箱ずつ開封する。
結果は互いに空振りで並んでいるものはどれもスタンダードな形のものだった。
「出ないじゃん」
14: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:32:33.33 ID:S7yVE8bX0
その数分後に戻ってきた彼の手にはピノはなく、紙コップが握られていた。
「なにそれ」
「あったかいお茶」
15: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:33:13.06 ID:S7yVE8bX0
○
「失礼な店員だよ、全く」
ぷんすか怒りながらも、どこか愉快そうに言ってプロデューサーは機械的な動作でピノを口へと放り込んでいく。
16: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:34:00.79 ID:S7yVE8bX0
○
ピノをかなりの数を食べてわかったことは二つ。
17: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:34:39.40 ID:S7yVE8bX0
○
足を組んで座ったまま寝落ちしてしまっていたせいか、おかげか。
ぴりりと痺れる爪先の感覚で私は目を覚ました。まだぼんやりとした意識の中、周囲を見渡してみる。
18: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:35:16.42 ID:S7yVE8bX0
○
彼が寝ているうちに、と着替えが行える付近の施設を探して、私はジャージへの換装を終える。
19: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:35:59.35 ID:S7yVE8bX0
「どれにする?」
満面の笑みでおにぎりをもぐもぐとしている彼が背後から、私に訊ねる。
ので、「んー。これは? プロデューサー、できる?」とグローブとボールを持って、彼に見せてみた。
20: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:37:06.89 ID:S7yVE8bX0
○
「九回裏、抑え込まれていたおしぶ打線が最後の意地を見せました。クリーンナップが鮮やかに出塁し、本日初めて訪れたチャンスらしいチャンス! 満塁で迎えますは主砲、渋谷選手です。さぁアウトカウントは二つ、試合は彼女に委ねられました!」
21: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:37:40.03 ID:S7yVE8bX0
プロデューサーは本当に打たれるとは思っていなかったようで、目を白黒とさせていた。
「はい。私の勝ち」
「いや、えー? 野球できたの?」
22: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:38:56.62 ID:S7yVE8bX0
○
それから、ボールはすぐに見つかったものの、よほど負けたことが悔しかったのか「野球はもう終わりです」と彼は私を散歩に誘う。
23: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:39:45.76 ID:S7yVE8bX0
○
その後、最短距離で東京へと舞い戻り、私は自宅への帰還を果たす。
もう既に半日近く彼と遊んでいたと思うと、一日の過ぎ去る速度に驚いてしまう。
24: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:40:12.79 ID:S7yVE8bX0
けれども、母はそんな私の思いなど察しているかのように笑って「気にしないの。凛が生まれる前は二人でやってたんだから」と言った。
「それに、まだ何日かお盆休みもらってるんでしょう? 凛の気が済まない、っていうなら空いてる日に手伝ってくれたらいいわよ」
「うん。その日は頑張るから」
25: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:41:53.23 ID:S7yVE8bX0
○
結局、私とプロデューサーが再集合することができたのは、空が薄ぼんやりとしてきた頃だった。
日中あれだけ猛威をふるっていた太陽は影も形もなく、代わりにぽつりぽつりと星が瞬いている。
26: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:45:14.78 ID:S7yVE8bX0
「なにそれ」
「ああ、えっと、これはクーラーボックス」
「それはわかるけど、なんで?」
「良いものが入ってる」
27: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:50:54.96 ID:S7yVE8bX0
「あ」
「え」
間の抜けた声が重なる。
28: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:54:39.44 ID:S7yVE8bX0
「結婚指輪渡すみたいにピノ渡す人、初めて見た」
差し出された箱からピックを取り出して、中央に鎮座しているピノをぷすりと刺す。
午前中に食べたそれよりも、すんなりとピックが通るのを感じて、溶けかけているのだと気付いた。
29: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:58:17.54 ID:S7yVE8bX0
「ほらね。溶けてたでしょ」
投げた声が届いているかどうかは、どうでもよかった。
30: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:58:47.77 ID:S7yVE8bX0
おわり
31: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/08/10(月) 00:02:29.68 ID:OwtFEWgK0
といったところで、本日8月10日は渋谷凛さんのお誕生日です。
何度目かにはなりますが、実はこのトリップの者と同一人物だったりします。
さて!
渋谷凛さん、お誕生日おめでとうございます!
32:名無しNIPPER[sage]
2020/08/10(月) 03:01:38.52 ID:+YRRg2XDO
乙でしたー
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