22: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2020/08/09(日) 23:38:56.62 ID:S7yVE8bX0
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それから、ボールはすぐに見つかったものの、よほど負けたことが悔しかったのか「野球はもう終わりです」と彼は私を散歩に誘う。
全て私の希望通りにするというルールはどこへ行ったのか、と思わないでもなかったが、断る理由もないので二つ返事で了承した。
炎天下と呼ぶにふさわしい気温と陽射しだが、少年少女は蝉時雨の中で元気に駆け回っている。
そんな、穏やかな光景を眺めながら、のんびりと公園内を歩いて、ぐるりと一周した後に私達は車に戻るのだった。
そうして戻った車内は、ほんの一時間と少しの間にむわりとした熱気が充満していた。
「あっついなぁ」
「ね。汗だくになっちゃった」
散歩の道中で購入したペットボトルのスポーツドリンクを一息にごくごくと飲み干す。
ついさっき買ったばかりだというのに、早くも日光によりぬるくなってしまっていたが、喉が水分を欲していることもあって気にならなかった。
「さて、次は?」
「汗、流したいけど……無理だよね」
「んー。そうだなぁ、じゃあ、一回解散するか」
「やっぱそうなっちゃうよね」
「流石に、スーパー銭湯とか連れてくわけにはなぁ」
「あ、いいこと思いついた」
「こういうときの凛は結構突拍子もないことを言うんだよなぁ」
「どっかの誰かに影響されてね」
「将来のためにも友達は選んだほうがいいぞ」
「じゃあ、今日で一緒に遊ぶのは最後だね」
「うそうそうそ。嘘です」
「冗談はさておき、荷物とかレンタカーとか、もう全部戻してさ、花火大会行かない?」
「やってるの?」
「やってるでしょ。日本には四十七個も県があるんだから」
「……そういうことか」
「だめ?」
「んー。間に合うかどうかが賭けになりそうだな、と」
「あー。そっか」
「まぁ、賭けの方が燃える気もするけど」
「ふふ、いいね。それ」
「よし。やるだけやってみるか」
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