54:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:48:17.28 ID:qe4+sBJv0
ゆっくりと眼を開ける。
しなやかに伸びた睫毛を夏の風が撫でる。
徐に上体を起こし、いつも綺麗に整えているブロンドの髪をかき上げて、マリーは昼寝をしていたことに気づいた。
55:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:48:46.91 ID:qe4+sBJv0
*
56:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:49:31.83 ID:qe4+sBJv0
今日の不思議な現象を理解できずに考え込むヨハネの遥か頭上、徐々に高度を下げ始めた太陽を掠めるように何かが飛んだ。
それはゆっくりとヨハネの前に降り立つ。
「ごきげんよう、ヨハネ。」
57:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:50:27.34 ID:qe4+sBJv0
滔々と語るマリーは、ようやくそこで一息ついた。
マリーはこちらと目を合わせようとしてくれない。
様々な感情が頭の中で渦巻く。
58:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:51:06.74 ID:qe4+sBJv0
「ヨハネ。もう二度とあの子に近づかないこと。これはあの子を、この山を守るための上からの命令です。」
そんなヨハネに対して、マリーは冷ややかに言い放った。
「そんな……!」
59:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:52:08.58 ID:qe4+sBJv0
「あなたが仲良くなった女の子はすでに死んでいるはずの命だった。」
ヨハネは思わず耳を覆う。
それでも指の隙間から、容赦なくマリーによる「現実」が耳に流れ込む。
60:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:54:10.72 ID:qe4+sBJv0
「ヨハネ……」
目の前のマリーは大きく目を見開いている。その眼には、凛とした煌めきも怒りの色も無かった。
ただ、少しだけ悲しそうに揺らいでいた。
61:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:56:43.24 ID:qe4+sBJv0
ふと、近くの茂みでかさりと音が鳴る。
「花丸!」
音の正体はヨハネが一番会いたかった人だった、が──。
62:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:57:26.68 ID:qe4+sBJv0
自分が殺した。
自分は最愛の人のかけがえのない人を殺したのだ。
花丸を守りたい、という自分のエゴが殺した。
63:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:58:02.57 ID:qe4+sBJv0
64:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:59:04.63 ID:qe4+sBJv0
いや──
65:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:59:56.88 ID:qe4+sBJv0
花丸の背中を優しく撫でてあげる。
目の前でこんもりと盛り上がった土は、墓と呼ぶにはあまりにも簡素だった。
こんな幼子が大事な家族を亡くして、平気でいられるわけがない。
66:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 22:01:08.90 ID:qe4+sBJv0
怖くて顔を上げることができない。
「私、知ってたずら。」
「えっ?」
67:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 22:03:03.75 ID:qe4+sBJv0
──────
────
──
68:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 22:03:56.87 ID:qe4+sBJv0
「だから、自分のことを悪魔なんて言わないで。」
花丸はヨハネの腰のあたりにぎゅっと抱き着いた。
「ヨハネちゃんは私の天使だよ。」
69:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 22:06:02.27 ID:qe4+sBJv0
「ヨハネちゃんが先に寝ちゃってるずら。」
くすくす笑いながら、花丸はよろよろと立ち上がると、ヨハネの寝床だった大樹に手を伸ばす。
「こんなに綺麗に取っておいてくれたんだ。」
70:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 22:07:15.21 ID:qe4+sBJv0
71:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 22:08:23.11 ID:qe4+sBJv0
『──きゃっ!びっくりしましたわ!』
『──……あなたはいったい誰ですの?』
72:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 22:11:13.50 ID:qe4+sBJv0
茂みの中に隠れて、私の名前を叫ぶあの子の声を全て背に受けて。
私は、ヨハネのようにはなれなかった。
そして、教会の鐘が聴こえる最中、今日と同じような便箋が私の元に──。
73:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 22:12:03.48 ID:qe4+sBJv0
マリーは徐に立ち上がる。
さらに立派になった翼はどこか冷たさを内包している気がした。
そのまま頭上の赤い星に向かって、凄まじい勢いで羽ばたき始める。
74:名無しNIPPER[saga sage]
2020/07/12(日) 22:14:12.15 ID:qe4+sBJv0
終わりでございます。お目汚し失礼いたしました。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。
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