70:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 22:07:15.21 ID:qe4+sBJv0
満天の星空を見上げて、ふっと息を吐く。
今頃、ニンゲン達は二重星が現れたと騒いでいる頃だろう。
寄り添うように白い二つの星が細々と煌めいているなか、夜風にブロンドの髪を靡かせ、マリーは物思いに耽っていた。
手に一枚の紙を握り、足元には便箋の破片が乱雑に散らばっている。
『ヨハネ殿が従わなかった場合、即刻その場で貴殿が討ち取る事。』
笑い飛ばすように、手紙の内容を虚ろな目で読み上げる。
(そんなことできるわけないじゃない。)
文章の続きは激しく握りつぶされていて読めない。
(私にできることは見てみぬふりをすることだけだった。)
「あの子、今頃怒っているかしら。それとも、もうとっくに愛想つかされてるかしら。」
誰に語り掛けるわけでもなく、ぼそっと呟く。
(誰かを見捨てることで、位が上がる。)
先程、輝き始めた新星を仰ぎ見て、足元に散らばっているもう一枚の手紙を摘まみ上げる。
そこには『能天使昇級の知らせ』と書かれていた。
(私の方がよっぽど悪魔だわ。)
新星の下で煌々と輝く赤い星を見つめる。
(思えば、あのときもそうだった。)
頭の中に1年前の情景が浮かび上がる。
丁度、この辺りで休んでいた時だった。
黒髪を振り乱したあの子が、私に声をかけてきたんだっけ。
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