60:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:54:10.72 ID:qe4+sBJv0
「ヨハネ……」
目の前のマリーは大きく目を見開いている。その眼には、凛とした煌めきも怒りの色も無かった。
ただ、少しだけ悲しそうに揺らいでいた。
少しの時間が流れ、マリーはゆっくりと後ろに下がり始めた。
「……私は言うことは言ったし、もう帰るわ。」
「あの、マリー。少し言い過ぎたわ。」
とても小さく見えるマリーの背中に向かって、ヨハネはおずおずと声をかける。
「…………」
マリーは口を噤んだまま、こっちを見ない。
「……確かに私にあなたの気持ちは分かっていないわね。」
こちらを向かないまま、マリーは続ける。
「ヒートアップしてごめんなさい。まあ、忠告だけは出来て良かったわ。」
それ以上は何も言わずに、マリーは茜色の空へ吸い込まれていくように飛んでいった。
ただの延命治療。悪魔の所業。私はアクマ。
残されたヨハネの頭の中を、自責の言葉が飛び交う。
夜通しヨハネは少し冷たくなった地面に蹲っていた。
いつの間にかさっき沈んだ太陽はもう反対側の山から顔を出そうとしていた。
(花丸に会いたい。)
急に不安感がヨハネを襲う。花丸はまだ生きているのか──。
いや。生きていたとして、私はもう花丸に会う資格なんてあるのだろうか。
花丸にとっての私は──
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