高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「9月5日のその後に」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:38:07.64 ID:w/xsIxLY0
――おしゃれなカフェ――

抹茶ラテをかき混ぜる音が規則的に聞こえる、午後6時過ぎ。

かすかな夕暮れの色を残し、浅い夜が広がる外の様子を、加蓮ちゃんは何かを探しているような目で見ていました。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:38:42.40 ID:w/xsIxLY0
レンアイカフェテラスシリーズ特別編です。

<過去作一覧>
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:39:11.96 ID:w/xsIxLY0
かち、かち、と時計の音が聞こえます。
緩やかな時間を教えてくれるカフェの音も、今日だけは、今日という日が終わるまでのカウントダウンをしているように聞こえてしまいます。

「……加蓮ちゃん」
「……、」
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:39:42.75 ID:w/xsIxLY0
加蓮ちゃんが、主役の日――9月5日。
今日は、朝から事務所で誕生日パーティーをやって、同じ事務所のみなさんがいっぱい集まってくれて……。
クラッカーを鳴らしたり、加蓮ちゃんにお祝いの言葉を言ったり、色とりどりにラッピングされた大小さまざまな箱を渡してあげたり。
少ししてからは、ただのパーティーになってしまって。大人のみなさんは、お昼なのにお酒を飲んでしまっていたりしました。酔い潰れてしまっている人もいましたっけ……。
「ちょっと抜け出したら、いつ気付かれると思う?」なんて、加蓮ちゃんがイタズラっぽく言ったのは、確か3時になるちょっと前。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:40:12.51 ID:w/xsIxLY0
「加蓮ちゃん」
「何?」
「加蓮ちゃん、途中から不思議そうな顔をしていましたよね……」
「……やっぱり気付いてた?」
「なんとなく。たぶん……他には気づいていた人、そんなにはいないと思いますよ?」
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:40:42.41 ID:w/xsIxLY0
「誕生日さ。……楽しみだったんだよね」

空の上にいる誰かへのような言葉を、向かい側の私が受け止める。

「平静を装ったフリしてたけど。実は毎日ワクワクしてて」
以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:41:42.26 ID:w/xsIxLY0
>>6 2行目を修正させてください。
誤:空の上にいる誰かへのような言葉を
正:空の向こうにいる誰かへのような言葉を


以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:42:12.18 ID:w/xsIxLY0
「藍子は知ってるでしょ? 昔の私が、誰からも見られていなかったこと」
「……」
「周囲の人間は私のこと、ただの子供とか、患者としてしか見てくれなくて。"北条加蓮"として見てくれる人なんて、世界のどこにもいなかった。きっと……私のお母さんとお父さんも」
「……」
「……アイドルになってから、Pさんが私を育ててくれて、藍子が私の目を見続けてくれて。たくさんのファンが、あたたかい声で私を迎え入れてくれた」
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:42:43.08 ID:w/xsIxLY0
「……受け入れることが、できませんか?」
「ううん」
「みんな愛されるようになった自分のこと、嫌ですか?」
「……そんなことないよ。でも、やっぱり変だな、って――」
「それなら、よかったっ」
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:43:42.79 ID:w/xsIxLY0
気持ちが落ち着いてから、加蓮ちゃんは大きく大きく息を吐きました。

「変わってしまった私、か」
「はい。だって、私も加蓮ちゃんもまだ――」

以下略 AAS



11:※第32話[sage saga]
2019/09/05(木) 18:44:12.75 ID:w/xsIxLY0
「ねえ、加蓮ちゃん」

ずっとずっと前に言った1つの言葉が、思い出の底から浮かび上がってきます。
その時は、なんだか嫌な気持ちが生まれてしまって、言い淀んだ言葉――
ううん。嫌ってだけではなかったハズ。
以下略 AAS



12:※第32話[sage saga]
2019/09/05(木) 18:44:42.47 ID:w/xsIxLY0
「……藍子、ずっと前にも言ってくれたよね。それ」
「覚えていたんですか?」
「うん。……でもその時は、愛している人、とまでは言ってくれなかったかな」
「ふふ。どうでしたっけ。たぶん?」
「昔の加蓮ちゃんは愛されなかった訳だ?」
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:45:17.25 ID:w/xsIxLY0
かけたい言葉が次々と浮かんで、罪悪感を上塗りしていきます。

「加蓮ちゃん」
「何?」
「愛される自分に、慣れましょうっ」
以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:46:12.68 ID:w/xsIxLY0
「イヤリングだ……。これ、つけやすいし結構お手軽なヤツだよね」
「きっと、加蓮ちゃんが気遣わないように選んでくれたんですね♪」
「っと。どう、藍子。似合う?」
「すっごく似合いますっ」
「こういうのつけると、またヘアメイクしたくなるね。今日はもうやらないけど……」
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:46:42.33 ID:w/xsIxLY0
「……こうして話す前は、藍子のことが嫌いで。ちょっと前は、藍子がずるいって思ってた」

足を組み直して、加蓮ちゃんがぽつりと呟きました。

「へ?」
以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:47:11.94 ID:w/xsIxLY0
変わってしまった自分に戸惑いながらも、なりたい自分を見つけて、変わろうとしている加蓮ちゃん。
今も、離しながらときどき目を伏せて、これでいいのかな、って悩むように、唇を曲げるだけの笑みを浮かべています。
加蓮ちゃんは……昔のことがあるからこそ、自分、っていう存在がすっごく大きくて、だからこそ変化への違和感も大きくなってしまうのではないでしょうか。
もし、私で良ければ。
思いっきり背中を押してあげて、そして向かい合ってほしい。
以下略 AAS



17:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:47:42.56 ID:w/xsIxLY0
「♪」
「え、何その嬉しそうな顔?」
「えへへ……。加蓮ちゃんのその考え、とってもいいと思いますよっ」
「そっか。うん。……店員さんにお礼を言った時の反応が……その……割と結構嬉しくて」
「うんうんっ」
以下略 AAS



18:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:48:12.45 ID:w/xsIxLY0
「ってことで、藍子の言う"慣れる"為に何からすればいいか分からないけど……。まずはお礼から言ってみよっかなって。あーでもやっぱり照れくさいから藍子がいる時だけ! いや、藍子がいる時の方が照れくさくなるのかな……?」
「誰かに言いたくなったら、いつでも呼んでくださいね。すぐ駆けつけちゃいますからっ」
「ったく。相変わらず藍子は。……じ、じゃあさ」
「はいっ」
「そのー……。とりあえず帰って……お母さんとお父さんに、言ってみる。……隣にいてくれる?」
以下略 AAS



19:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:48:42.22 ID:w/xsIxLY0
せっかくの誕生日の夜ですから、加蓮ちゃんも、晩ご飯はお母さんやお父さんと一緒に食べた方がいいんじゃないかな?
……さっき、隣にいてほしい、って言われましたけれど、これ私お邪魔なんじゃ?

「……期待を持たせて突き放すんだ。へぇー?」

以下略 AAS



20:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:49:12.73 ID:w/xsIxLY0
「……あー、と」

それから数分が経って。店員さんから小袋入りクッキーを受け取って、会計も済ませちゃってから。
ぽんっ、ぽんっ、と言葉を軽くしていた加蓮ちゃんが、急に立ち止まりました。

以下略 AAS



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