高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「9月5日のその後に」
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10:名無しNIPPER[sage saga]
2019/09/05(木) 18:43:42.79 ID:w/xsIxLY0
気持ちが落ち着いてから、加蓮ちゃんは大きく大きく息を吐きました。

「変わってしまった私、か」
「はい。だって、私も加蓮ちゃんもまだ――」

こうしていると忘れてしまいそうになります。私たちはまだ子どもなんだってこと。アイドルをやっているのと、加蓮ちゃんがすごく大人っぽいからかもしれません。
今のおふざけや、いつもの冗談でさえ、素の加蓮ちゃんというよりも、本当はもっと大人の加蓮ちゃんが子どもを演じているような、そんな風にさえ錯覚してしまいます。
加蓮ちゃんもまた、自分が子どもなんだって思い出したのでしょうか。
あははっ、と。破顔して。
テーブルの上で両手を枕の形にして、顎を軽く乗せてから、窓から外の、星のない空を見上げます。
私に、目を見せないようにして。

「ちっちゃい頃は、こんな私なんて……って、何度も思ったのにさ。変わったら変わったで、変な感じなんだね」

背中を丸め、身じろぎ1つ取らない姿は、まるで殻の中に閉じこもっているみたい。

私は思わず手を伸ばしていました。
今は、くくることなく降ろして、何の髪型にもしていない――何も形成していない、そのままの加蓮ちゃんの髪に、触れて、撫でて。
冷たさと……ほんの少しのあたたかさが、指先を昇ってきます。

……ときどき、分からなくなってしまいそう。

すごく大人っぽい加蓮ちゃんだけれど、本当はまだ子ども――
ううん。ちいさい頃の自分が、内側に眠っている。そういうことなのでしょうか。
撫で続けていると、加蓮ちゃんがぎゅっと腕に力を入れて、よりいっそう丸くなってしまいました。
頭のてっぺんをつついて、手を離します。のろのろと顔を上げる加蓮ちゃんの目は、何か遠い幻影を見ているようでした。


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