8:名無しNIPPER[saga]
2019/08/18(日) 23:55:51.96 ID:Q++LUeiVO
昨日の最後の仕事のせいか、翌朝は目が覚めるのが遅かった。既に時計の針は11時を回っていて、太陽の光が布団から出るように急かしてくる。
欠伸をしながら身支度をしていると、ドアホンが鳴った。ユズさんが「おはよう、お姫様」とモニター越しに挨拶をしていて、それを確認した私はドアを開場して彼女を招き入れた。
「おはよう、ユズさん」
9:名無しNIPPER[saga]
2019/08/19(月) 00:06:09.97 ID:wMUcUiBSO
彼女が甲斐甲斐しく食事の準備をしてくれている間に、私もメイクを終了させた。よし、と満足をしてメイクボックスの箱を閉じると、ユズさんから「ナイスタイミング!」と声をかけられた。
「さ、食べましょ」
今日のサンドイッチはたまごサンドとBLTという定番のものだった。私たちの部屋にはそれぞれキッチンも備えられているけれど、自炊をしている人たちがどれほどいるのかは分からない。私だって、ユズさんがこうしてお茶を淹れてくれる以外にはキッチンを使ったことがない。
10:名無しNIPPER[saga]
2019/08/19(月) 00:12:35.11 ID:wMUcUiBSO
ひとしきりそれをやってしまうと、満足したのか「そうじゃなくて!」と話を転換させる。
「私たちだよ? 麗しい美女だよ? なのに恋の話の一つや二つ……あっても良いじゃない」
「ユズさんはオーナーのこと、好きなんでしょ?」
11:名無しNIPPER[saga]
2019/08/19(月) 00:19:52.33 ID:wMUcUiBSO
「オーナーとは違うの?」
「オーナーには何ていうか……好きだけど辛い、でもやめられない! っていう感じかな。ほら、太るって分かってても夜中に甘いもの食べたくなっちゃう感じっていうか」
昨夜を思い出すような喩えに少し焦りつつも、それには納得してしまった。ダメだと分かったうえで、それでもやめられないらしい。とはいえ、それを人に対して抱くことが恋愛感情であるというのなら、やはり私にはそれが欠けているらしい。
12:名無しNIPPER[saga]
2019/08/19(月) 00:21:12.18 ID:wMUcUiBSO
とりあえず今日の更新はここまでです。
前作があまりに長すぎたので、今作はできるだけ中編程度に収めたいなという願望。。
>>5
>>6
13:名無しNIPPER[saga]
2019/08/19(月) 08:16:45.42 ID:NQ1K5SrnO
それに、恋ってどんな感情か分からないもん。
かっこいい、優しい、いい人。それだけでは恋になり得ないなら、何を以て恋になるのだろうか。
「恋ってよく、わかんない」
14:名無しNIPPER[saga]
2019/08/19(月) 18:31:41.94 ID:NFiIwucU0
ユズさんはそう言ったけれど、そんな人に出会える気配はどこにもない。
それからも連日連夜、見知らぬ男に抱かれる、抱かれる。お互いに恋慕や愛情なんてものはない。欲を満たすために、仕事を果たすために裸になって絡み合う。
会う度に「可愛いね」「綺麗だね」と声をかけられるのも、私からのサービス向上を期待してのものでしかない。私はどうやら綺麗らしく、他の女の子より優先して男を回される。そして、そんな男達はこぞって私の容姿を賞賛する。ハルさんの方がよっぽど美人だと思うのに。
15:名無しNIPPER
2019/08/19(月) 19:34:41.60 ID:NFiIwucU0
>>14
ハルさん→ユズさん
の間違いです。。
16:名無しNIPPER[saga]
2019/08/19(月) 20:02:25.05 ID:NFiIwucU0
彼が部屋に入ると、私はいつも通り腕を組もうと彼の横に並ぶ。そっと彼の袖に触れた。
「あ……いや、そういうのじゃなくて」
そういうのじゃない、というのがどういうのじゃないのか分からないけれど、腕を組みたくはないらしい。
17:名無しNIPPER[saga]
2019/08/19(月) 23:28:56.61 ID:NFiIwucU0
彼はそれを受け取って口に含むと、結構な量を一度に飲み干した。酔っ払ってしまうのではと私が心配してしまうくらいには、勢いよく。
ぷはぁ、とまるで演技のようにわざとらしく息を漏らして、彼は缶をテーブルの上に置いた。
そのタイミングで、私は彼の前に跪く。
18:名無しNIPPER
2019/08/19(月) 23:36:31.79 ID:NFiIwucU0
「そうだよ。アイアム、ユアゲスト。私は、あなたの、お客さんです」
わざとふざけた素振りで彼は言った。
「それじゃなんで嫌がるの?」
19:名無しNIPPER[saga]
2019/08/19(月) 23:49:10.73 ID:NFiIwucU0
「したいわけじゃ……ないけど」
「じゃ、良いじゃん」
そして彼は再びビールの缶を手に取り、ぐっと煽って飲み進めた。どこか無理をしているように見えてしまうのは気のせいだろうか。
20:名無しNIPPER[saga]
2019/08/20(火) 00:05:09.04 ID:MEC1zLhn0
「なるほどタルト……どんなのが好きとかあるの?」
奉仕をしようとした時よりも嬉しそうに、彼は問いを重ねてきた。
タルトについてなら、いくらでも語ることができる。理想の生地感、甘さ、フルーツタルトなら何が良いか。
21:名無しNIPPER[saga]
2019/08/20(火) 00:14:50.50 ID:MEC1zLhn0
「本当にしないの?」
脱ぐ気配すらなく、ただ私の話を聞く彼に、心配になって問うてみた。
たぶん、してもしなくても彼がオーナーに支払うお金は変わらない。そしてそれは、間違いなく高価であるはずなのだ。
22:名無しNIPPER[saga]
2019/08/20(火) 00:15:50.85 ID:MEC1zLhn0
今日の更新はここまでです。
本格的に話を動かしていきます。
23:名無しNIPPER[sage]
2019/08/20(火) 13:10:03.71 ID:PkdnkLwlo
あつおつ
24:名無しNIPPER[saga]
2019/08/20(火) 19:41:06.38 ID:6vvZN4lBO
「珍しい人だね」
翌朝、起きて早々にユズさんの部屋を訪ねて報告をした。
「まどかを見て手を出さないなんて、不能なんじゃないの」
25:名無しNIPPER
2019/08/20(火) 19:42:15.07 ID:6vvZN4lBO
>>23
ありがとうございます。
コメント頂けるのが一番執筆意欲に繋がります……!
26:名無しNIPPER
2019/08/24(土) 00:57:23.01 ID:1gO4UVyBO
ユズさんに煽られはしても、一度来たお客さんにまた会えるとは限らない。
彼が来てくれたら良いな、とは思いつつも、少なくともそれは近い未来だとは思っていなかった。お金だってバカにならないだろうし。
だから、一週間後に彼が来たときは驚いた。
27:名無しNIPPER[saga]
2019/08/24(土) 12:41:03.55 ID:1gO4UVyBO
「あ、これ、まどかちゃんに持って来たんだ。一緒に食べようよ」
そう言って、幾分大きな紙袋を渡された。袋の中を覗いてみると、小さな紙箱がいくつか入っていたけれど、重さはあまりない。
「これって……」
28:名無しNIPPER
2019/10/22(火) 23:41:37.15 ID:alVkC+dyO
「コーヒー屋さんなの?」
「それ、どこまで本気で言ってます?」
相変わらず、今日も行為をするつもりはないのだろうか。別に、それ自体は嫌いじゃないから求められても構わないのに。
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