27:名無しNIPPER[saga]
2019/08/24(土) 12:41:03.55 ID:1gO4UVyBO
「あ、これ、まどかちゃんに持って来たんだ。一緒に食べようよ」
そう言って、幾分大きな紙袋を渡された。袋の中を覗いてみると、小さな紙箱がいくつか入っていたけれど、重さはあまりない。
「これって……」
期待する目で彼を見ると、頬を掻いて照れ臭そうに言った。
「うん、タルトなんだけどさ。どこのが良いか分からないし、秘書の子たちにおすすめを聞いて手当たり次第」
「やったー! ありがとう!」
やっぱり、やっぱり!
タルトがいっぱいということも嬉しいけれど、彼が私のことを覚えてくれていたことが何より嬉しい。
「あ、おかけになってお待ちください! お飲み物は? ビールですか?」
「や、タルト食べるし……コーヒーある?」
「はーい! ホットですか? アイスですか?」
ユズさんが持ってきてくれたコーヒーメーカーのスイッチを入れて、豆を見ながら彼に問う。
「アイスで。ていうかすごいね、本格的だ」
彼はソファに腰掛けることなく、こちらに近づいて来て私の様子を眺める。ミルで豆を挽くところを見て、彼は感嘆していた。
「ペットボトルとか缶コーヒーじゃないんだ」
「ここ、どこだと思ってます?」
そこんじょそこらの風俗店じゃないんですよ、とは言えなかった。ここ以外のことは知らないけれど、ここじゃみんなそうしていると聞く。ここで飲むコーヒーは、もしかしたら日本で一番高いコーヒーかもしれない。
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