春を売る、そして恋を知る
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21:名無しNIPPER[saga]
2019/08/20(火) 00:14:50.50 ID:MEC1zLhn0
「本当にしないの?」

脱ぐ気配すらなく、ただ私の話を聞く彼に、心配になって問うてみた。

たぶん、してもしなくても彼がオーナーに支払うお金は変わらない。そしてそれは、間違いなく高価であるはずなのだ。

そのうちの一部が私のお給料になるというのであれば、私も彼を満足させたうえで対価を受け取りたい。

「うん、話してる方が楽しいし」

私の最後の足掻きもそんな風に返されると、もう抵抗をすることはできなかった。

結局、彼をドアの向こうに案内するまで、私と彼は触れあうことがなかった。

「楽しかったよ」

「こちらこそ楽しかったです。えーと……」

見送りにまで来て、彼は自分の名前を名乗ってすらいなかったことを思い出したらしい。

「ハル。ハルって呼んで」

「うん、ハルさんだね。ありがとう、ハルさん」

本当なら、ここで別れを惜しむキスが正しい手順なんだけど。求められてないような気がして、小さく手を振った。

それに応じて手を振り返す彼は何だか可愛くて、少し素の笑顔が零れてしまった。


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