【モバマス】水曜日の午後には、温かいお茶を淹れて
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41:名無しNIPPER[sage]
2018/12/14(金) 00:15:43.01 ID:y1b69VCDO


親御さんが何かあるのか……

そして特大の地雷を踏み抜く佐藤か……
以下略 AAS



42: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/12/16(日) 22:16:40.89 ID:/MDiOILR0
5.Gloriosa
 プロデューサーさんを通さずに、はぁとさんはお仕事を見つけてきたと言った。

「来週打ち合わせでー、ネット配信ラジオ番組のコーナーのアシスタント☆ はぁと、ぜーったいここでディレクターにイイとこ見せて、先のお仕事に繋げっぞ!」

以下略 AAS



43: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/16(日) 22:18:43.84 ID:/MDiOILR0
「そういえば、はぁとさんも報告があるって言ってましたよね?」

 美穂ちゃんがはぁとさんにそう言うのと同時に、プロデューサーさんがはぁとさんを見た。私は部屋の中に緊張が走ったような気がした。

「そう、実はー、はぁと、自分でお仕事ゲットしたんだぞ☆ 褒めて褒めて? ほらぁ、プロデューサー☆」
以下略 AAS



44: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/16(日) 22:22:38.07 ID:/MDiOILR0
 結局それから私たちは、特別何をするでもなく、一時間近く落ち着かないままでプロデューサーさんを待って時間を過ごした。はぁとさんは不機嫌そうな顔で黙ってしまい、マキノちゃんはときどきスマートフォンを操作しながらなにやら考え事をしていた。私は美穂ちゃんとくるみちゃんとおしゃべりをしていたけれど、どこかぎこちない。
 やがて扉が開き、プロデューサーさんが戻って来た。表情は険しいままで、額には汗がにじみ、後ろにはちひろさんを連れていた。

「戻りました。皆さん、お呼び立てしたのにお待たせして申しわけない」

以下略 AAS



45: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/16(日) 22:24:46.29 ID:/MDiOILR0
「それなら!」はぁとさんは机を手で叩く。「それこそ子供じゃないんだから、最初に言えよ!」

 プロデューサーさんは首を横に振った。

「佐藤さんが実績を積むことに焦っているとわかっていました。その状態で体幹の崩れを伝え、私やトレーナーの前だけで良いように見せられてしまっては、意味がない」
以下略 AAS



46: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/16(日) 22:27:51.71 ID:/MDiOILR0
「美穂ちゃん、事務室の扉を開けて、固定して。マキノちゃんと一緒に、外に出て救急車をここまで誘導してください!」

「わかりました!」

 美穂ちゃんは言われた通りにすると、マキノちゃんと一緒に外に飛び出していく。
以下略 AAS



47: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/16(日) 22:30:33.56 ID:/MDiOILR0
「冬のプロダクションのフェスで発表する予定で進められていました」

 それは、私たちのユニットのために書かれた歌だった。
 苦しい夏を越え、秋を経て冬を耐え、次の春に咲く、花たちの歌。

以下略 AAS



48: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/16(日) 22:33:22.79 ID:/MDiOILR0
 小さな音が鳴った。
 それは連続して、不規則に。音の出所を探す。
 はぁとさんだった。はぁとさんの歯が、震えでかちかちと鳴っていた。
 はぁとさんは自分の両肩を抱えて、凍えるみたいにぎゅっと身を小さくして震えていた。

以下略 AAS



49: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/16(日) 22:34:11.76 ID:/MDiOILR0
 はぁとさんはいつもの口調に戻っていた。私たちも思わず笑顔になる。
 私にはなんだか、はぁとさんが今までで一番輝いているように見えた。
 両の足でまっすぐ立つはぁとさんは、今までに見たどんなはぁとさんよりも、美しかった。

「新曲上等だっつーの! あのプロデューサーの言う通り、全員であの曲スウィーティーに完成させて、フェスでファンの皆のドギモ抜いてやんよ☆」
以下略 AAS



50: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/12/16(日) 22:38:25.26 ID:/MDiOILR0
次回が最終回です。12/19(水曜)に投稿予定です。


51:名無しNIPPER[sage]
2018/12/17(月) 05:14:01.26 ID:ErK6iUEDO
ハッシュハッシュクルーザー乙


癌か何かかしら……公演の最中で亡くなるのだけは勘弁やで


52: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/12/19(水) 20:16:14.98 ID:MnCJ5f3U0
6.Camellia sinensis

 時は流れ、十二月、ある水曜日の午後。
 私は長い廊下を歩く。廊下のいちばん奥の扉の前には、ちひろさんが立っていた。

以下略 AAS



53: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/19(水) 20:18:04.80 ID:MnCJ5f3U0
「……御足労を……ありがとうございます、相葉さん、ええ、今日は、何曜日ですか……?」

「今日は、えっと、水曜日です、今日の午後、ちょうど、みんなで打ち合わせをして、そのあと私が代表でお見舞いに」

「そうでしたか。……水曜日……」
以下略 AAS



54: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/19(水) 20:19:26.66 ID:MnCJ5f3U0
「用意ができました」ちひろさんがお盆を手に入ってくる「急須と湯のみ、ケトルをお借りしました。お茶は先日のお見舞品でいただいたものです」

「ありがとうございます」

 プロデューサーさんは嬉しそうな声をあげる。
以下略 AAS



55: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/19(水) 20:20:32.43 ID:MnCJ5f3U0
「そう、だったんですか」

 私の声は少し暗くなった。やっぱり、私たちは、あぶれてしまったお荷物だったんだろうか。

「落ち込む必要はありません。オーディションやスカウトで見いだされたなら、貴方たちは確実に輝くための才を持っているということです。たまたま、巡り合わせがよくなかっただけのことですよ。……ですので、そういう事情なら、その四人を一時的に任せてくれないか、と無理を言って、私は皆さんと共に歩むことにしたのですよ」
以下略 AAS



56: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/19(水) 20:23:16.86 ID:MnCJ5f3U0
 あっという間に時間は過ぎゆき、プロダクションの冬のフェスの当日が訪れた。私たちユニットの五人はほかのアイドルの皆と一緒に円陣を組み、最初の曲を全員で歌った。そのあとのプログラム、私たちの新曲のお披露目では、フェスの全体衣装に加えて、それぞれがお花と葉のアクセサリーをどこかに身に着けてステージに臨んだ。


「……みんな、今までで一番綺麗に咲こうね」

以下略 AAS



57: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/19(水) 20:24:39.56 ID:MnCJ5f3U0
---

 私達ユニットのメンバーはお通夜とお葬式に出席し、それから先は、ちひろさんから納骨や、そのほか様々のことが終わったことを教えてもらった。プロデューサーさんともう会えないという実感が現実味を帯び、そしてそのことが当たり前の日常と同化したころ、次の春がやってきた。
 木々は新しい葉をつけ、花を咲かせる。別れがあり出会いがあり、新しいことが始まる季節。慌ただしいけれど、うきうきすることも多い季節。
 私たちは、次のイベントに向けたユニット活動に加えて、個々人の活動も活発になり、忙しい日々を送っていた。
以下略 AAS



58: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/19(水) 20:25:54.91 ID:MnCJ5f3U0
 私たちのプロデューサーさんの遺品は、形に残らない。
 私たちとプロデューサーさんが居た場所も、もうない。
 私たちのユニットの活動のどこにも、プロデューサーさんの名前は残っていない。プロデューサーさんが私たちをプロデュースしてくれたことを知っているのは、私たちしかいない。
 プロデュースの証として残っているのは、私たちというアイドルそのものだけ。

以下略 AAS



59: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/12/19(水) 20:31:16.06 ID:MnCJ5f3U0
おつきあいいただき誠にありがとうございました。
楽しんでいただけたならば幸いです。

関連作品「先輩プロデューサーが過労で倒れた」もよろしければお楽しみください。
時間軸を共有しております。
以下略 AAS



60:名無しNIPPER[sage]
2018/12/19(水) 21:46:26.29 ID:MmLorwpDO


寂しいけど、いいお話でした


61:名無しNIPPER[sage]
2018/12/20(木) 00:05:00.64 ID:XjQbmwWFo
乙乙
倒れたPってあの先輩Pだったのか
今回もすごく良かった


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