【モバマス】水曜日の午後には、温かいお茶を淹れて
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55: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/19(水) 20:20:32.43 ID:MnCJ5f3U0
「そう、だったんですか」

 私の声は少し暗くなった。やっぱり、私たちは、あぶれてしまったお荷物だったんだろうか。

「落ち込む必要はありません。オーディションやスカウトで見いだされたなら、貴方たちは確実に輝くための才を持っているということです。たまたま、巡り合わせがよくなかっただけのことですよ。……ですので、そういう事情なら、その四人を一時的に任せてくれないか、と無理を言って、私は皆さんと共に歩むことにしたのですよ」

「ありがとうございます」

「こちらこそ、ありがとうございます。駐車場の花は趣味で育てていたものでしたが、あそこまでしっかりと愛でてくれたのは相葉さんだけです。出来れば、これからも世話をお願いしたい」

 そんな、と私は言いかけて、飲みこんだ。

「……花は咲けば、やがて必ず枯れます」プロデューサーさんは自分の手のひらに視線を向ける。「私という人間が咲いていた時期は、もうはるか過去に過ぎているんです。誰にでも訪れる老いがやってきて、最後は土に還ります。その土を糧として、今を咲くべき人が咲く。そうあるべきです。相葉さん、今はあなたたちの時代です。顔をあげて、前に進んでください」

「はい、でも、でも……」

 私は両手で顔を覆った。
 もっとたくさん時間があったなら。
 もっとたくさんお話ができていれば。
 もっとたくさん学ぶことができていれば。
 そう思ってしまうことを、今くらいは許してほしい。

「見舞いは非常にありがたいが、大事な時期に私に時間を使うことはありません。あなたたちの晴れ舞台のために、全力を尽くしてください。私はそうしてもらえるのが一番嬉しい」

 私はしばらくうつむいて、それから、笑顔で顔をあげた。

「はいっ! 最高のイベントにできるように、頑張ります! それで、フェスが終わったら……! っ、皆で、もう一度、かならず伺いますっ……!」

 私が言うと、プロデューサーさんは穏やかにもう一度、ありがとうございますと言って、ゆっくりと目を閉じ、そのまま穏やかに寝息を立てはじめた。
 私は立ち上がり、コートを着てマフラーを巻くと、病室の扉を静かに開けて、入口の前に立っていたちひろさんに挨拶をして、その場を後にした。
 病院の外に出る。濡れた頬に冬の風はとても冷たかった。
 それでも私は、顔をあげて、笑顔で前へと歩いた。


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