1: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/26(月) 09:38:12.33 ID:EWHuDVZJ0
*ヤンデレ注意
*人によっては不快な表現、設定を含むので注意
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2: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/26(月) 09:50:10.74 ID:EWHuDVZJ0
とある梅雨の日。 窓の外から窺える外の景色はひどい曇天模様で、雨の量も尋常ではない。
一般的に考えて、この季節を好きだと答える人間は中々居ないだろう。ジメジメしていて、雨天の涼しさはまるで無く、夜になっても初夏の蒸し暑さが拭えない。
正直、今も手放しに好きだとは肯定し難い。
3: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/26(月) 10:32:54.63 ID:EWHuDVZJ0
「……まったく。そんな大荷物で来るって知ってたら車で迎えに行ったぞ?」
「うふふ、ごめんなさい。でもこの雨じゃ外食へ出かけるのも大変ですし、折角だからまゆの手料理を振る舞おうと思って……つい」
そう言って、玄関で出迎えた少女は赤色のリュックサックを中から取り出したタオルで拭き始める。
4:全知全能の神未来を知る金髪王子様の須賀京太郎様
2017/06/26(月) 10:42:00.71 ID:jt/XC88V0
昨日大雨でしたねで何時千川ちひろは全身脱毛体験を行うの
バナナとキシリトール旨い
俺様今日から晩御飯以外食べない主義に変えたンゴ
5: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/26(月) 11:05:37.26 ID:EWHuDVZJ0
ドライヤーとアイロンを駆使してまゆの濡れた衣服を乾かしながら、頭を整理する。
なお、流石に替えの下着類はビニール袋に入れて用意していたようなのでそこまで変態じみた絵面にはなっていない。お父さんの気持ちになるですよ。
先刻運命的に出逢ったという表現をしたが、正にその通りとしか言えない。今日は……まゆと初めて出逢った日ではなかった。
6: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/26(月) 11:32:28.44 ID:EWHuDVZJ0
その、彼女の瞳に……惹かれた。
だからまゆの手を取った。担当アイドルとして、プロデュースし続けることを誓った。
それからその関係は始まった。
7: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/26(月) 12:26:29.33 ID:EWHuDVZJ0
暫く経って、風呂から上がり。
差し出された乾いた衣類を身に纏って、まゆは昼食を作るためにキッチンに立った。
頭の中にインプットされたレシピを自在に操って、手際よく調理していくその姿は流石と言うほかない。
8: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/26(月) 15:56:55.46 ID:EWHuDVZJ0
「思えば……ここまで、色んなことがありましたよね」
脳裏に焼きついた記憶の数々。忘れることのない、運命の出逢いから始まったアイドルとして生まれ変わったまゆと歩んだ軌跡。
「……ああ、そうだな」
9: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/26(月) 16:38:46.15 ID:EWHuDVZJ0
その質問に続けるように、まゆは左手のひらを此方側へ向けてきた。
……実際に彼女が指し示している箇所は、手のひらのもう少し下。
そこには、傷があった。他の誰でもない、まゆ自身がつけた傷が。
それはこの世界に抵抗した証。少女が辛くて、弱くて、どうしようもなく優しかったからこそついた傷痕。
10: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/26(月) 17:16:54.11 ID:EWHuDVZJ0
「怖いんです。もし、これが治ったら……まゆがまゆでいられなくなるみたいで……。まゆと貴方の思い出までもが、『無かったこと』にされてしまいそうで……」
"嫌なこと"として処理するのは簡単だ。
"黒歴史"は忘れろなんて忠言は最もだ。
でも、果たしてそんな言葉で終わらせてしまって良いのか。
11: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/26(月) 23:40:59.28 ID:EWHuDVZJ0
─────端的に言うのならば、
佐久間まゆは落ち着いた。
それは、プロデューサーからの確かな愛を感じたのもあり、彼女自身の研究の成果でもある。
12: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/27(火) 00:52:31.15 ID:HIV0unwe0
「う……ふふ……ああ、まゆは本当に、いけない子ですね……」
血が流れる。不規則に枝分かれしながら、下へとポタポタと落ちていく。包丁が切ったのは左手首──ではなく。左手の小指の側面だった。
「指の怪我だって嘯いて。事あるごとに貴方への隠し味として切って混ぜたりして。それでも……それが嬉しくて。痛みさえ、愛しいんです」
13: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/27(火) 21:48:49.97 ID:HIV0unwe0
******
私は──佐久間まゆは、よく周囲から「いい子」だと言われ続けてきた。
真面目に勉強に取り組み、規則は破らず品行方正で、家事の手伝いだって早くから始めたし、表だった人間関係の不和も起こさなかった。
14: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/27(火) 23:01:05.32 ID:HIV0unwe0
『いつかは終わりが来ると知っているから、一分一秒が素晴らしく、当たり前の日々は何より美しい』と誰かが謳った。
私はそうは思わない。だって、認めたくない。受け入れられない。この愛おしい毎日が、いずれ消え去ってしまう運命だなんて。
『永遠』じゃないと嫌なのだ。まゆは終焉なんて望んでいない。この世すべてに抗ってでも、私は永遠を手に入れたい。掴み取りたい。
15: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/27(火) 23:53:16.85 ID:HIV0unwe0
……傷口が塞がった後も、暫くまゆの指を口で抱き留めていた。流れ出たまゆの血液で喉を潤した。
血は鉄の錆び付いた味と言うが、まゆの血の味はそんなに悪いものでもなかった。寧ろ、美味しく感じられる程だった。
傍から見たら、吸血鬼などと揶揄されるのかもしれない。少なくとも血を舐めるという行為は、常識から逸脱しているのだろう。
16: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/28(水) 00:31:48.23 ID:jrlvIJl/0
「ん…………、はっ、ぁ───」
吸い付くだけでは物足りず、まゆは舌で傷口を撫で始める。さらさらした茶色の髪が乱れているのも気にせずに、甘美な声を奏でる。
───ゾクゾクする。言い知れぬ感覚が、脳を、全身を支配してくる。
滅多なことだからか、単純にまゆが上手いのか。
17: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/28(水) 13:19:09.52 ID:tToQ/3mUO
「あ……傷口、塞がっちゃいましたね」
まゆからの一言で意識が現実へと引き戻される。
…………一体どのくらいの間、そうしていたのか。
気付いた時には窓の外には暗闇が広がり、夏と言えどもすっかり夜の景色を映し出すのに十分な時刻となっていた。
18: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/28(水) 16:21:32.49 ID:jrlvIJl/0
右腕をまゆの背中へと回す。
小さなその身体を片腕で抱き締める。
それに呼応して、まゆも両手でしがみついてくる。
最早、お互いが互い無しでは生きていられないほどに依存しきっていることを表すかのように。
19: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/28(水) 16:27:36.73 ID:jrlvIJl/0
終わりです。
「ヤンデレ」って言われたらどうしても外向的ヤンデレのイメージが先行してるけど、
内向的ヤンデレもいいぞ。ってことを伝えたかった
20:名無しNIPPER[sage]
2017/06/29(木) 10:55:50.06 ID:eIpLoZkFO
素晴らしい
二人揃っての歪み愛がたまらん
21: ◆OYYLqQ7UAs[sage]
2017/06/29(木) 11:52:48.58 ID:TsCMlMCZo
乙
共依存ヤンデレとか大好きすぎてヤバイ
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