12: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/27(火) 00:52:31.15 ID:HIV0unwe0
「う……ふふ……ああ、まゆは本当に、いけない子ですね……」
血が流れる。不規則に枝分かれしながら、下へとポタポタと落ちていく。包丁が切ったのは左手首──ではなく。左手の小指の側面だった。
「指の怪我だって嘯いて。事あるごとに貴方への隠し味として切って混ぜたりして。それでも……それが嬉しくて。痛みさえ、愛しいんです」
遠目からも分かる。まゆの瞳からハイライトが消え去っていることに。それと同時に、まゆはとても幸せそうな表情をしているのだということも。
彼女がとても大切にしているモノ。特別なカンケイ。それを守るために、自分はどうすればいいか。
答えを出す。ここが、行動すべき場所だと思ったから。
「まゆ…………」
「えっ、ひゃぁ……ぁっ……?」
まゆの小指を拐って、迷いなく自分の口へと運ぶ。
決して性的なアレではなく、唾液で止血をするという一種の医療行為である……と、自分に言い聞かせる。
それでも、なんだか脳から変な物質が分泌されてる心地がした。変な気分だった。だが、悪くはない。
傷口を下で舐める度にまゆの血液を味覚が感じ取り、まゆの口から甘い矯声が漏れる。
……奇異なことをしている自覚はある。
だが、これが二人にとって相応しい道だと思えたから。
傷口に蓋がなされ流血が止まるまで、ずっとそうしていた。
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