3: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/26(月) 10:32:54.63 ID:EWHuDVZJ0
「……まったく。そんな大荷物で来るって知ってたら車で迎えに行ったぞ?」
「うふふ、ごめんなさい。でもこの雨じゃ外食へ出かけるのも大変ですし、折角だからまゆの手料理を振る舞おうと思って……つい」
そう言って、玄関で出迎えた少女は赤色のリュックサックを中から取り出したタオルで拭き始める。
ちらっと見えたリュックサックの中はパンパンだ。近くのスーパーで買ったらしき食材が、所狭しと収納されていた。
傘を避け、風によって横から差し込まれた雨粒にやられたのだろう。リュックの上部はほとんど濡れていなかったが、背面はずぶ濡れと言っていい状態だった。
「まゆも大分びしょびしょじゃないか。そのまま放置して……風邪をひかれたりでもしたら困る。すぐに風呂を用意するから温まってくれ」
「え、そんな……悪いですよ。ただでさえ今日は、まゆのワガママでこうして二人っきりの時間を作ってもらったのに……」
そう。アイドルであるまゆ……その担当プロデューサーである自分は彼女の要望に応え、綿密に二人の予定を調整して、この休日を作り出したのである。とは言え、
「……そんなニヤけ顔で言われても全然説得力がないぞ。いいから入ってこい。その間に衣服は乾かしておくからさ」
「はーい♪うふ、プロデューサーさんならそう言ってくれるって知ってましたよ♪」
満面の笑顔で風呂場へと向かうまゆは、だが途中で何を思い付いたのか意味深に振り返って。
「雨と汗の混じったまゆの匂い……嗅いじゃっても、いいんですよ?」
いつもの小悪魔的な台詞を残して踵を返した。
ははは、こやつめ。そう思いながら雑念を抱き始めた頭を壁にSparking。
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