15: ◆tADl8swv.6[sage saga]
2017/06/27(火) 23:53:16.85 ID:HIV0unwe0
……傷口が塞がった後も、暫くまゆの指を口で抱き留めていた。流れ出たまゆの血液で喉を潤した。
血は鉄の錆び付いた味と言うが、まゆの血の味はそんなに悪いものでもなかった。寧ろ、美味しく感じられる程だった。
傍から見たら、吸血鬼などと揶揄されるのかもしれない。少なくとも血を舐めるという行為は、常識から逸脱しているのだろう。
だが、ふと思った。「彼女に与えられるだけで良いのか」と。
ふと視線をやれば、そこには少女の血を吸った牙が鎮座していた。
無造作に手を伸ばす。獣の手綱を握った。そして、
「つっ…………」
脇目もふらずに牙は自分の左手の側面の肉を食い破った。……少し深く抉りすぎたか。
打撲傷のような痛みに襲われ、思わず腕が落ちる。
「プロデューサーさん!?その……それは……」
「まゆ……ほら、いいぞ」
「………っ」
まゆは一瞬、欲望に満ち充ちた目になったがすぐに正気を取り戻し、躊躇いを見せていた。目を泳がせて、理性と感情の隙間で喘いでいる。近いようで遠い一歩を踏み出さないでいる。
「まゆ……いいのか?」
まゆの元へと左手を差し出す。そうしている間にも、生命の滴たる赤い体液は垂れ落ちていく。やがて床の染みと同化する───その前に。
まゆが、自分の手を掴んで引き寄せた。
「あ…………ん……」
先程までの迷いが完全に拭えたわけではないらしい。まゆの目はまだ理性を宿している。けれど、とても嬉しそうに、幸せそうに……少女は血を啜り出した。
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