123: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 20:35:33.52 ID:nY0iWbpOO
「あ、あのっ、芳乃さん! その、私も肩に乗せてください!」
小さなぴにゃ達は卯月の鳴き真似で盆踊りを踊り、襲いかかるぴにゃも藍子にスナイプされている。多少余裕が出来てきたからか分からないが悠貴は能天気にもそんなことを言い出した。
「たかいたかーい」
124: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 20:37:59.13 ID:nY0iWbpOO
「悠貴! みんなを連れて避難するんだ!」
このままだとみんなが巻き込まれてしまう。俺以外で車を動かせられるのは悠貴だけ。もう法律がどうとか言ってる場合じゃない。彼女にみんなを託すことに決めた。
「ええ!? でもプロデューサーさんと芳乃さんがっ!」
125: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 20:39:46.83 ID:nY0iWbpOO
「美穂! ……えっ?」
ぜぇはぁ息が切れながらもなんとか城の頂上まで辿り着いた俺を待っていたのは、眠り続ける美穂達だった。
「美穂が……たくさん?」
126: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 20:47:59.33 ID:nY0iWbpOO
「くそっ……!」
「ほう。なるほどあの娘……ふふふ、はははは!これも何かの縁なんだろうな。まさか60年前の雪辱を今晴らせようとは!」
夢邪鬼は何かを言っているが俺の耳には入ってこない。
127: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 20:49:57.07 ID:nY0iWbpOO
「どうしてだって顔してるな、夢邪鬼。さっきも言っただろ、一度キチンと人をプロデュースしてみろって。人間ってのは表に見える一面だけじゃないんだ。弱かったり強かったり、正しかったり間違ったり……昨日見た姿と今日見た姿、明日見る姿が違っても……全部その人を作り出す要素なんだ! 間違いなんてない、丸ごと本当なんだ!」
美穂は強い。そして弱い。それは両立し得ないように見えて、表裏一体だ。
「俺たちは間違えてしまった。だけど、夢の世界に甘えるほど……弱くはないんだよ」
128: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 20:51:31.19 ID:nY0iWbpOO
「でも何回も繰り返される日々を過ごして、やっと分かりました。私たちはどんなに苦しく大変な明日が待っていたとしても、甘えちゃダメなんです。力強く進まなくちゃいけないんです。昨日よりも今日、今日よりも明日。もっともっと素敵な日にしたい。だからもう、ネヴァーランドは必要ありません。夢邪鬼さん……今まで、お疲れ様でした。そして、ありがとうございました」
もう一度、夢邪鬼に頭を下げる。歪んでしまった夢すらも慈しむように、感謝するように。本当に、この子は強いんだ。
「ああ、畜生。どうして君は……彼女と同じ顔で同じことを言うんだ……」
「えっ?」
夢邪鬼の顔から憎悪が消える。泣きそうで、笑いそうな顔は例えるならば、自分を振った相手を応援するように見えた。そうか、あいつも……俺と同じだったんだな。初めて同じ顔のあいつの事が理解できた気がした。
129: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 20:58:03.80 ID:nY0iWbpOO
俺たちの目の前に美味しそうなケーキが現れる。きっと世界中の美味しいを詰め込んだ素敵な味がするのだろう。だけど、俺たちには過ぎたものだ。
「そん時はそん時、考えるよ」
そうかい、と一言残して夢邪鬼は消えた。同時に城の外で戦っていた巨大芳乃VS巨大鈴帆も決着がついたらしい。巨大鈴帆は天使の着ぐるみで天に召されていく。
130: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 21:09:04.62 ID:nY0iWbpOO
続きは23時ごろから、もうすぐ終わります
131:>>129蝋燭はは→蝋燭はですね ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 23:11:57.72 ID:nY0iWbpOO
再開します
132: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 23:14:08.22 ID:nY0iWbpOO
「……ーさん、プロデューサーさんっ!」
「はっ!」
「星空の下で寝たら風邪ひいちゃいますよ」
133: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 23:15:26.83 ID:nY0iWbpOO
「プロデューサーさん?」
「このクマは2匹で1セットだったんだ。だから……そのっ」
アメリカに行って夢を叶えようと思う。そう言うだけなのに、次の言葉が紡げない。言ってしまえば全てが終わってしまう、そんな気すらしていた。結局、美穂が心配なんじゃない。俺が美穂から離れられないーー。
134: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 23:16:45.73 ID:nY0iWbpOO
「そっか、アメリカ行っちゃうんだ。プロデューサーさんが嫉妬しそう。あの人もアメリカに行きたいって言ってたし」
「インフルエンザで休んでなければ、先輩に話が行ってたかもね」
「気にすることないよ。あの人なら事務所に頼らなくても自力でアメリカくらい行っちゃうからさ」
135: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 23:17:47.44 ID:nY0iWbpOO
「やっ」
「これはこれは! 美穂殿のプロデューサー殿! 本日もトレーニング日和でありますね!」
加蓮を送った後、モールによってちょっとした買い物をしてきた俺はレッスンルームで筋トレをしていた亜季を捕まえる。
136: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 23:18:55.11 ID:nY0iWbpOO
「のわっ!」
「わっ! すみません資料を見たまま歩いてて」
「いや、俺も考え事してたからあいこだ……おや、見ない顔だなぁ」
137: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 23:19:40.95 ID:nY0iWbpOO
「お疲れ様、って何見てるんだ?」
事務所のリフレッシュルームに入ると藍子のカメラを悠貴と肇の3人で見ているようだった。
「あっ、プロデューサーさんっ! 良いところに」
138: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 23:21:51.93 ID:nY0iWbpOO
「そなたー、そなたー」
撫で撫で、撫で撫で。
「どうしてわたくしの頭を撫でてるのでしてー?」
139: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 23:22:29.93 ID:nY0iWbpOO
「プロデューサーさん、アメリカ行っちゃうんですね」
「1年だけの予定だけどね。でも、向こうでの活動が認められたら……もっと長くなるかもしれない」
お昼ご飯を食べようとするとちょうど食堂に向かうピンクチェックスクールの3人と鉢合わせる。昨日の今日ってこととあって、美穂はやや俺の顔を見るのが恥ずかしそうだ。
140: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 23:24:13.54 ID:nY0iWbpOO
『おばあちゃんへ、お変わりなくお元気に過ごしていますか? この前は野菜を送ってくれてありがとう。新鮮な野菜のおかげで、この冬は風邪をひかないで過ごせそうです。本当にありがとう。最近はアイドル活動の合間合間に英語と家事も勉強するようになりました。いつかの未来、大切な人のそばにいるために、私は頑張っています。近々その人と一緒に実家に一度帰ろうと思います。もちろん、この手紙のことは内緒でね。これからもっと寒気なってくるけど、身体に気を付けてね。美穂より』
141: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 23:25:38.04 ID:nY0iWbpOO
「おや……」
封筒の中に一枚の写真が同封されていることに気付いた。大きなケーキと一緒に笑顔で写っている。孫娘のアイドル仲間と隣にいる男性はプロデューサーだったか。なるほど、いい顔つきをしているじゃないか。美穂が想いを寄せるのもよくわかる。
ただ私の気を引いたのは彼ではなく一緒に写っている2人の女の子だ。法螺貝を持った和装の女の子と小豆色の作務衣の少女――。2人を見た時、いつか見た夢の世界の大冒険を思い出した。だって2人とも、おばあさんとおじいさんに顔つきがよく似ているから。
142: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 23:26:53.90 ID:nY0iWbpOO
以上になります。久しぶりに速報で投下したのでトリップ忘れて新しく作りました。
美穂ちゃんの誕生日を自分なりに祝うことができました、お付き合い下さった方ありがとうございました。
143: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 23:27:56.29 ID:nY0iWbpOO
以上になります。久しぶりに速報で投下したのでトリップ忘れて新しく作りました。
美穂ちゃんの誕生日を自分なりに祝うことができました、お付き合い下さった方ありがとうございました。
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