モバP「藤原肇とおちょこがふたつ」
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1:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:22:39.52 ID:n8reEq6Z0


はじめに俺は未練を言う。藤原肇に対する未練だ。

うわあ男の未練なんざ聞きたかねえや、とお思いだろう。

でも言う。6レスほど言う。


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2:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:24:20.45 ID:n8reEq6Z0

ここに二つのおちょこがある。いずれも備前焼のおちょこだ。
それぞれの名を太郎坊・次郎坊という。なぜ名前がついているのか。これには当然理由がある。

備前焼は普通絵付けはしない、つまり意図的に模様を入れることはしないのである。
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:26:25.72 ID:n8reEq6Z0

ググってみると五枚の花弁を持つ紫色の花らしい。
花言葉は「謙虚」だの「小さな幸せ」だの「誠実」だのと出てくる。
毎回思うことだが花言葉は一つに統一してほしい。ややこくてかなわん。

以下略 AAS



4:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:27:49.99 ID:n8reEq6Z0

といっても肇は(そのころは)未成年だったので、おちょこは無用の長物でしかない。

なので二つとも差し上げますよ、ということで両方とも俺がもらい受けることにした。
いいのか? と問うたが、その方が"二人"とも喜ぶと思います。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:29:08.34 ID:n8reEq6Z0

断っておくがアイドル藤原肇は順調だった。その点が問題だったわけではない。

とくにご年輩の方々からの支持はすさまじいものがあった。
地方巡業、ロケなんかに行くと手を合わせて拝みはじめるご婦人が現れるような始末で、
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:32:15.45 ID:n8reEq6Z0

うちの事務所のアイドルに限ってはそんなことはなかったが、
ほかの事務所となるとてんでだめで、肇自身がおとなしい性格であることもあいまって、
あれよあれよという間に彼女らのターゲットにされてしまった。

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:34:51.04 ID:n8reEq6Z0

あれから何年もたった。結局俺は同じ事務所にいる。
ただもうプロデューサーはやめて、内勤に異動した。
新たにアイドルを受け持つ気力がなくなったためだ。

以下略 AAS



8:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:35:22.11 ID:n8reEq6Z0

6レス。起。



9:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:36:49.83 ID:n8reEq6Z0

そんな日々でも俺には満足だったのかもしれない。
たらればを繰り返して、ありもしないifを追っていればよかったのだから。
非生産的で後ろ向きな、無味乾燥な平和を生きていればそれでよかった。

以下略 AAS



10:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:38:58.87 ID:n8reEq6Z0

先ほどとはうってかわって俺の動作は緩慢になった。諦観は人をスローモーションにする。
追いつかないと知ったとき、人は走るのを止めてとぼとぼと歩き始めるのである。

ぽたぽたと垂れていく酒を無視して、俺は次郎坊を拾い上げた。
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:39:58.98 ID:n8reEq6Z0

「太郎坊」、幸田露伴の短編にそういうものがある。
タイトルに惹かれて読んだのはこれもまた最近のことである。
境遇が似ているのでぐいぐい引き込まれて最後まで読んだ。結末も当然存じ上げている。

以下略 AAS



12:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:40:39.47 ID:n8reEq6Z0

―――
――



13:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:42:58.80 ID:n8reEq6Z0


国立新美術館。

「新進気鋭のアーティストたちが送る驚異の技巧工芸展」。
以下略 AAS



14:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:45:27.51 ID:n8reEq6Z0

彼女はどれだけ成長したことだろう。俺のいない間に何を知り何を学んできたのだろう。
彼女は何を生み出してきたのだろう。彼女の作品は何を訴えかけてくるのだろう。

女性の思い出は上書き可能らしい。であるならば俺のことなどとうに忘れているのだろうか。
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:47:34.51 ID:n8reEq6Z0


「――。」

驚愕。
以下略 AAS



16:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:49:34.17 ID:n8reEq6Z0

「このおちょこには、元となる試作品があるんです」

「その、"ぷろとたいぷ"っていうんでしょうか」

以下略 AAS



17:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:51:18.64 ID:n8reEq6Z0


「今は……とある人に差し上げました」

一拍。
以下略 AAS



18:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:53:11.82 ID:n8reEq6Z0

「ちょっと」「おい」「押すなや」

すまねえ。すまねえ。通してくれ。

以下略 AAS



19:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:54:46.56 ID:n8reEq6Z0

すかさず学芸員さんが飛んできた。本職のSPばりのスピーディーな動きだ。
今度はさすがに容赦がない。俺はずるずると警備員さんに引き渡された。

両腕を掴まれてまるっきり犯罪者のていでスタッフルームに連れて行かれる。
以下略 AAS



20:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:56:47.71 ID:n8reEq6Z0


「……お久しぶりです。"プロデューサーさん"」

懐かしい響きに胸が熱くなった。
以下略 AAS



21:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:57:44.75 ID:n8reEq6Z0


―――
――

以下略 AAS



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