モバP「藤原肇とおちょこがふたつ」
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9:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:36:49.83 ID:n8reEq6Z0

そんな日々でも俺には満足だったのかもしれない。
たらればを繰り返して、ありもしないifを追っていればよかったのだから。
非生産的で後ろ向きな、無味乾燥な平和を生きていればそれでよかった。

が、つい最近のことだ。変化は唐突に訪れた。

飲み会の後、したたかに酔っぱらって帰ってきた俺は、
それでも物足らんと言わんばかりに乱暴に四合瓶を取り出して、
どぶどぶととっくりを満たしはじめた。

そしていつものように太郎坊・次郎坊を置いて、"二人分"の杯をついだ。
しかし、すでにべろべろに回っていたので体は全く言うことを聞かなかった。

手元がおぼつかないままとっくりを傾けると、予想を超えて瀑布のように酒が落ちてきた。
あわてて戻したが時すでに遅く、気づいたときには次郎坊の許容量を超えて"酒たまり"が周囲に広がっていた。

「こんなに飲めないですよ」

言われた気がした。しかし俺には聞こえていなかった。
拭こうとしてティッシュに手を伸ばした瞬間、ころころという音が聞こえてきた。

ころころ?

目を向けると次郎坊が倒れて、カーブを描きながらテーブルの縁へと転がっていくのが見えた。
反射的にかがんで手を伸ばす。手を伸ばしたが、すでに心のどこかで悟っていたのかもしれない。
もう間に合わないんだってことを。

がちゃん。

音を立てて次郎坊は垂直に落下した。



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