10:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:38:58.87 ID:n8reEq6Z0
先ほどとはうってかわって俺の動作は緩慢になった。諦観は人をスローモーションにする。
追いつかないと知ったとき、人は走るのを止めてとぼとぼと歩き始めるのである。
ぽたぽたと垂れていく酒を無視して、俺は次郎坊を拾い上げた。
思えばよくここまでもってくれたものである。後悔より先に、感慨がわいてきた。
俺の愚痴も嫌がらずにいつも聞いてくれた。悔恨の情を小さな体で一身に受け止めてくれたよな。
まったくお前は藤原肇のおちょこだったよ。そして俺はとんだおっちょこちょいだった。
全てを断ち切るには、ちょうどいいタイミングだったのかもな。
そう思いながらターンテーブルさながらに次郎坊を見回してみた。
こんなにまじまじ見るのも久しぶりだ。やはりごつごつして土器土器している。
……? 何もない?
割れてない。欠けてない。ひびもない。傷ひとつ無い。
あんなにしたたかに打ち付けたのに? ひどい仕打ちを受けたのに?
底を見てみる。確かにスミレの花が咲いていた。
太郎坊と瓜二つのきれいな花が。
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