10:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:38:58.87 ID:n8reEq6Z0
先ほどとはうってかわって俺の動作は緩慢になった。諦観は人をスローモーションにする。
追いつかないと知ったとき、人は走るのを止めてとぼとぼと歩き始めるのである。
ぽたぽたと垂れていく酒を無視して、俺は次郎坊を拾い上げた。
11:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:39:58.98 ID:n8reEq6Z0
「太郎坊」、幸田露伴の短編にそういうものがある。
タイトルに惹かれて読んだのはこれもまた最近のことである。
境遇が似ているのでぐいぐい引き込まれて最後まで読んだ。結末も当然存じ上げている。
12:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:40:39.47 ID:n8reEq6Z0
―――
――
13:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:42:58.80 ID:n8reEq6Z0
国立新美術館。
「新進気鋭のアーティストたちが送る驚異の技巧工芸展」。
14:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:45:27.51 ID:n8reEq6Z0
彼女はどれだけ成長したことだろう。俺のいない間に何を知り何を学んできたのだろう。
彼女は何を生み出してきたのだろう。彼女の作品は何を訴えかけてくるのだろう。
女性の思い出は上書き可能らしい。であるならば俺のことなどとうに忘れているのだろうか。
15:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:47:34.51 ID:n8reEq6Z0
「――。」
驚愕。
16:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:49:34.17 ID:n8reEq6Z0
「このおちょこには、元となる試作品があるんです」
「その、"ぷろとたいぷ"っていうんでしょうか」
17:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:51:18.64 ID:n8reEq6Z0
「今は……とある人に差し上げました」
一拍。
18:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:53:11.82 ID:n8reEq6Z0
「ちょっと」「おい」「押すなや」
すまねえ。すまねえ。通してくれ。
19:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:54:46.56 ID:n8reEq6Z0
すかさず学芸員さんが飛んできた。本職のSPばりのスピーディーな動きだ。
今度はさすがに容赦がない。俺はずるずると警備員さんに引き渡された。
両腕を掴まれてまるっきり犯罪者のていでスタッフルームに連れて行かれる。
20:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:56:47.71 ID:n8reEq6Z0
「……お久しぶりです。"プロデューサーさん"」
懐かしい響きに胸が熱くなった。
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