モバP「藤原肇とおちょこがふたつ」
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19:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:54:46.56 ID:n8reEq6Z0

すかさず学芸員さんが飛んできた。本職のSPばりのスピーディーな動きだ。
今度はさすがに容赦がない。俺はずるずると警備員さんに引き渡された。

両腕を掴まれてまるっきり犯罪者のていでスタッフルームに連れて行かれる。
衆目に晒されるとはまさにこのこと。とてつもなく恥ずかしい。

俺はスタッフルームの一室。四畳半くらい小部屋の中に押し込められた。

「困るんだよねえ」

はい。そうですよね。
ほんとうすいませんでした。俺は何度も何度も頭を下げた。

「まあちょっとここにいて。今責任者呼んでくるから」

はい。なんだろ。出禁にでもなるのだろうか。まあそれも仕方のないことか。
気になるのはそんなことじゃなくて、肇に俺の意思がちゃんと伝わっていたかどうかだ。

伝わっていたならいい。俺にももう未練はない。
太郎坊も次郎坊も彼女の実家に送り返してあげるべきだろう。
それが"二人"にとって一番の幸せというものだ。

でも、もし伝わっていなかったらどうだろう。
俺は明日からまた前を向いて生きていけるだろうか。
うじうじと未練たらしいポンコツに逆戻りするんじゃないだろうか。

不安と危惧、疑念と混迷の中に俺はただ一人ぽつんと取り残された。

そのとき、ガチャッとドアノブが回されて、一人の女性が入ってきた。

臙脂色の作務衣に、薄く化粧をしただけの質素な格好。
少し垂れ気味のそれでも大きく輝く瞳。


"責任者"では、なさそうだった。



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