13:名無しNIPPER[saga]
2017/12/01(金) 20:42:58.80 ID:n8reEq6Z0
国立新美術館。
「新進気鋭のアーティストたちが送る驚異の技巧工芸展」。
俺の姿はそこにあった。目的は二つ。
ひとつは肇の作品が出品されているからだ。
彼女は陶芸の世界でもその才覚を遺憾なく発揮し、ついには展示会が催されるまで有名になっていた。
元アイドルの肩書きでのし上がっただけで、実力自体は伴っていないなどと嫉む声もあったが、
彼女は反論ひとつせず、ただただ作品を世に出すことでその回答とした。
こうした姿勢が功を奏したのか、次第に批判はなりを潜めていき、正当な評価が下されるようになった。
その結果が今日この日というわけだ。
素直にすごいと思った。彼女の作品をこの目で見てみたい。
いや、見なくてはならない。これが第一の目的だった。
もうひとつの目的、それは今日が特別な日だったからだ。
今日は職人その人が、自分の作品を解説してくれるという特別デーだったのだ。
つまり藤原肇本人に、何年かぶりに会える絶好の機会というわけだ。
遠巻きから一目見るだけなら、事務所も許してくれるだろう。
入場を待つ行列が進むにつれ、俺の緊張は増していった。
さすがに一世を風味した元アイドルが来るとあって、行列は延々と美術館の外、曲がり角にまで及んでいた。
この様子だと肇の姿なんてロクに見えないかもしれない。
しかしそれでも一回、一回だけでも。何かが俺をそうせき立てていた。
思いとは裏腹に、行列は遅々として進まなかった。
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