白菊ほたる「プロデューサーさんは呪われました」
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1: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 16:18:37.94 ID:eRMrD4p40
いったいこれで何回目だろうか。
まさか今回は雨水をぶっかけられることになるとは……。
びしょびしょになったスーツの重さを感じながらそんなことを考える。
「……すみません。また私のせいでプロデューサーさんにご迷惑を……」
「…………いや、気にしなくていいよ」
「……ごめんなさい」
まぁ、車がはねた水から担当アイドルを守れた、と考えればプロデューサーとして恰好もつくというものだ。あはははは…………。
ため息を堪えるのが精いっぱいだった。
「やっぱり……」
担当しているアイドルの少女――白菊ほたるの吸い込まれそうな黒い瞳と目があう。
「プロデューサーさんは呪われてしまったみたいです」
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2: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 16:21:22.12 ID:eRMrD4p40
♦
俺がこのアイドル事務所に勤めることになってもうすぐ十年になる。
別にアイドルが好きだったわけではない。
3: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 16:25:10.56 ID:eRMrD4p40
彼女との出会いは今から1カ月前に遡る。
白菊ほたる。
4: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 16:29:05.89 ID:eRMrD4p40
そんな呑気な考えをあざ笑うかのように、白菊ほたるはその不幸ぶりをいかんなく発揮していった。
トレーナーさんが急に風邪をひいてレッスンができなくなったり、一緒に営業に行こうとすると車のタイヤがパンクしていたため、大慌てでタクシーを拾わなければならなくなったり。
5: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 16:34:37.98 ID:eRMrD4p40
♦
芸能活動を1年続けていただけはあり、基本的なことはしっかりできていた。
華奢な見た目に反して体力もあったし、ボーカル・ダンス・ビジュアルなどのレッスンも、トレーナーさんがニコニコで報告してくるほどにはよくできている。
6: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 16:38:48.89 ID:eRMrD4p40
「なあ、ほたるはどうしてアイドルになったんだ?」
ずっと疑問に思っていたことだ。この気の弱さのくせに、事務所が3回もつぶれるといったハードな体験をしながら、なぜアイドルをやろうと思い続けているのか。
7: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 16:43:19.40 ID:eRMrD4p40
♦
スタジオ内がざわついている。
アイドルたちがトークをする番組。
8: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 16:50:32.28 ID:eRMrD4p40
「ほんとにあんたがいるとロクなことが起きないわね」
振り向くと、スラリと背の高い少女がこちらをにらんでいた。 ほたると同じく出演予定だったアイドルだ。
9: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 16:56:00.11 ID:eRMrD4p40
♦
時刻は 18 時を過ぎている。
トレーナーさんと今後の打ち合わせをしようと思っていたのだが、事務処理にだいぶ手間取ってしまい、予定よりもだいぶ遅くなってしまった。
10: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 17:03:23.02 ID:eRMrD4p40
「プロデューサーはお仕事はできますけど、おもしろみのない人ですね。まるでマニュアル通りに動くロボットみたいです」
かつて担当していたアイドルにそう言われたことを思い出す。もう就業時間が過ぎたからと彼女のレッスンに付き合ってほしいという話を断ったときだった。
それから仲もギクシャクして、俺は彼女の担当を外れることになった。
11: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 17:05:26.06 ID:eRMrD4p40
♦
不幸は突然やってくる。
12: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 17:09:45.52 ID:eRMrD4p40
「ほたる!! 怪我はないか!!」
あまりの事態に呆然としていたが、慌ててほたるに駆け寄る。
13: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 17:15:48.56 ID:eRMrD4p40
「そういえば、なんであのとき植木鉢が降ってくるってわかったんだ?」
なぜ知っていたかのようにあのタイミングで、植木鉢落下を予測できたのか。その答えが気になってしかたなかった。
14: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 17:19:05.37 ID:eRMrD4p40
♦
ポジティブシンキングが功を奏したのか、あれからほたるは着実に結果を出していき、ついに B ランクアイドルにまで昇格した。 番組出演などの仕事も増え、ファンもだんだん増えてきており、いまや注目のアイドルの一人、といっても過言ではない存在になりつつある。
不幸に遭う回数も以前より減ってきて、ほたるが笑っている姿を見ることも多くなった。
15: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 17:21:44.23 ID:eRMrD4p40
「君、今朝発売された週刊誌を見たかね」
「週刊誌ですか? いえ読んでいませんが……」
16: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 17:24:11.01 ID:eRMrD4p40
「それともう一つ。白菊くんの記事を書きたいというオファーが来てね、それを受けてもらおうと思っている」
「……このタイミングで、ですか?」
17: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 17:27:59.66 ID:eRMrD4p40
♦
――週刊誌に書かれていることは本当ですか!
18: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 17:32:53.53 ID:eRMrD4p40
♦
「彼女を担当しているとき、はじめの頃は代わりたいと愚痴をこぼしていたこともあったらしいね」
19: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 17:35:47.14 ID:eRMrD4p40
「いやです」
20: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 17:42:41.76 ID:eRMrD4p40
♦
「明日も朝早いからな。しっかり睡眠とっておけよ」
21: ◆eU2UNg43MI[saga]
2017/07/15(土) 17:45:45.81 ID:eRMrD4p40
♦
「本日はよろしくお願いしますね〜」
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