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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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674 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/08(月) 22:29:08.23 ID:SYKaUEsN0
「なんとも主らしいと言えばらしいな。しかし、だ。あの技の数々は主が編み出したものか?」

「いえ、私が聞いたところによると」

――五輪の書。かの黄帝が記したという武術の真髄を記したと言う書。始皇帝の焚書を奇跡的に逃れた稀書。

「ただ、残念なことに書庫の不審火で喪われてしまったとのことです。ですから二郎様も、あやふやなところがあるとおっしゃってました」

「ふむ。神農の書といい、紀家の書庫が焼けてしまったのは惜しいことだな。健在ならば気の扱いについても、なにか指南書があったやもしれんのにな」

嘆息する趙雲に楽進は問う。

「そう言えば華佗殿に師事なさっているのでしたか」

是、と趙雲は頷く。

「まあ、今のところは瞑想して気の巡りを強めること以上はできんが。
 硬気功だったか?全身に気を巡らせればそれができるということだが」

今は虫刺されを気にせずにて済む程度だな、と苦笑する。
楽進からしたらそれでも驚くべき成果なのだが。

「そう言えば貴殿も華佗殿に師事していたろう?
治癒、だったな」

「はい。生憎と相性がよくないようで、どうにも習得に手間取ってはいますが……」

心底無念そうに楽進は呟く。

「だが、まるっきり効果がないということはないのだろう?」

はい、と言って楽進は静かに気を練り上げる。先ほどとは真逆の、静かな気。溢れんばかりであったそれを内包し、整える。
無言で趙雲に手をかざし、無言で眉間に皺を寄せる。

「ふむ。温かいな」

趙雲の正直な感想である。

「今の私ではこれが精いっぱいです」

額に汗を浮かべ、息を弾ませながら楽進が応える。

「ふむ。ちなみに効果としてはどれほどのものなのだ?」

これは純粋な好奇心。いや、相性が最悪という彼女がどの程度の成果を上げているか。それは趙雲にとっても指針となるのだからして。

「はい。肩こりには効くそうです」

「は?」

「肩こりにはよく効くと、真桜が」

ああ、と趙雲は納得してしまう。
李典。彼女の体躯はそれほど立派なものではない。だが、その胸部装甲は圧倒的である。趙雲とて自らのそれに自信を持っているのではあるが、李典のそれは次元が違う。

「まあ、その、なんだ。道は遠そうだな」

「ええ」

笑い合う二人。

そして彼女らは地道を厭わない。そしてその目線は高く上げたままに。
きっと人は自分のためだけではこんなにも頑張れない。そして、共犯者の笑みを交わす。

千里の道、なにするものぞとばかりに。
675 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/08(月) 22:30:33.29 ID:SYKaUEsN0
本日ここまですー感想とかくだしあー

タイトル案は「千里の道も一歩から」
うむ、ふつうだ。
タイトル案募集しまくりんぐですよ本当に!
ぼすけてー

こっからどんどこいきたいとこですね

しかし神農書に五輪の書
紀家の書庫は宝箱やー!
676 :赤ペン [sage saga]:2021/03/10(水) 15:08:03.84 ID:Rn98zfGD0
乙でしたー
>>672
>>負けないまでも、と言わないのは彼女なりの矜持というものであろう。 これは実際は無手でやりあえば負けると思ってるけど、そうは言わないのがってことかな?(勝てんな、だけなら素直に負けを認めた感じだけどそこに負けないまでも、と言えば引き分けにはできる。という負け犬の遠吠えみたいなことは思ってるけど言わない?)
○負ける、と言わないのは彼女なりの矜持というものであろう。     武人として、というかまあ単純に負けず嫌いもあるかもだけど端から負けを認めるのは矜持に反する(本気でやれば十中八九負けるかもだけどいざその時は何が何でも万が一でも拾ってやると思ってる?)
○負けないまでも、と言う呟きは彼女なりの矜持というものであろう。  絶対に勝てないような相手(例えば呂布とか)と戦うことになってもお互いに勝つ気で戦うぞ、と(ただし気恥ずかしいので大声はちょっと…)みたいな?
>>674
>>今は虫刺されを気にせずにて済む程度だな、と苦笑する。 これは刺された跡が痒くならないということ?それとも虫に刺されない程度には硬くできるようになったってこと?
○今は虫刺されを気にせずに済む程度だな、と苦笑する。  刺されないことなら【今は虫刺されに煩わされずに済む】とかどうでしょう

>>典韋が孫尚香と共に、袁術の護衛という名目で後宮に張り付いている現状がある。 さらっと孫家が朝廷での立ち位置得ててw実益はともかく権威としては悪くない(なお実益は袁家からもらえる)とか強かだわ
>>俺の殺人技は百八まであるぞ、と。 波動球かよ!?王子オリジナルと王家の三大とツープラトンを足せばそのぐらいになりそう
某努力家「武術の伝承とはすなわち、模倣から始めるのだ」暗闇の中を只進むのは無理でもか細い光でも光明があれば進める。(なお陽炎の可能性)
武人たちは学びあうことでより高みへ行くようで…その横で凡人はルート検索とか必要な物資調達してそう
紀家の書庫…人間の骨格とか内蔵の図が掛かれた解体親書とか地球は丸いと書かれた世界地図とかありそう(こなみかん
677 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/10(水) 21:10:06.10 ID:ABnJikA30
>>676
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

>これは実際は無手でやりあえば負けると思ってるけど、そうは言わないのがってことかな?(勝てんな、だけなら素直に負けを認めた感じだけどそこに負けないまでも、と言えば引き分けにはできる。という負け犬の遠吠えみたいなことは思ってるけど言わない?)
負けないまでも、勝ち目が見えない(精一杯の強がり)
くらいのニュアンスなので、ご検討くださいませ。

>これは刺された跡が痒くならないということ?それとも虫に刺されない程度には硬くできるようになったってこと?
後者の方ですね。
それでもすごいです感じ。

>さらっと孫家が朝廷での立ち位置得ててw実益はともかく権威としては悪くない(なお実益は袁家からもらえる)とか強かだわ
ここらへんを読み取っていただけるとすごく嬉しいやつなのです。

>波動球かよ!?
今となっては昔のネタではありますがw

>紀家の書庫…人間の骨格とか内蔵の図が掛かれた解体親書とか地球は丸いと書かれた世界地図とかありそう(こなみかん
オーパーツ的な知識を出すなら紀家の書庫が起源となるのですよねw
まあ、古代で中華と印度と羅馬はおかしいくらいに文明だったので、そういうことなんでしょう(適当)
678 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/10(水) 21:51:10.18 ID:ABnJikA30
「おや珍しい。これは明日からの天は、慈雨間違いなしですね〜」

三公の筆頭たる司徒。その執務室は俺の戦場。そこに踏み入った俺にかけられたのは、腹心たるメイン軍師の無慈悲な言葉だった。やったぜ。

「ああ、最近埃っぽいし、そろそろ一雨ほしいとこだかんな」

軽口で答えて、どしりと司徒の席に座る。むむむ、しっくりこない。
何とも言えない、すわりの悪さを置いておいて報告書に目を通したりしなかったり。
生暖かい風の視線なんてまるで気にならない。暫しの沈黙。多分これ以上どちらも黙ってたら、どちらかが口を開くのであろうなあという微妙な間。その時。

「あー、疲れた。まったくやってらんないわね。って二郎じゃない珍しい」

やれやれ、といった風に登場したのは劉璋ちゃんである。

時は暫し遡る。

――劉璋ちゃんが俺に面会を求めてきたときには柄にもなく緊張したものだ。なんとなれば彼女のご母堂を――皇族にもかかわらず――強制的に隠居させたからして。
てっきりそれに対する文句というか弾劾の言葉を頂くのだろうと思っていたのだが。
もたらされたのは意外な言葉であった。

「へ?仕事がしたい?」

「そう。だから適当な役職を見繕ってほしいの」

「そりゃ構わんが……」

丁度人事案をあれこれ考えてたところだからタイミングもジャストではあったのだけんども。

「まあね。お母様の処遇については思う所がないわけでもないわよ。
でもまあ、仕方ないわ。
私だって馬鹿じゃないのよ?お母様がどんな動きをしていたかくらいは理解しているわ」

もにょもにょと言葉を濁して、その沙汰については納得してくれていたみたいだった。
いや、実際あれで韓遂まで呼応されてたら、結構面倒くさいことになってた。
涼州はともかく益州まで出兵とかやってられんしなー。
まあ、それはともかく、だ。

「皇族でございとふんぞり返っとくのは?」

実際、宮中に健在な皇族って今上陛下を除けば劉璋ちゃんくらいなのだ。
いくらでもちやほやされる夢の生活も可能なのだからして。
お気楽な俺の言葉に軽く苦笑。
679 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/10(水) 21:51:36.57 ID:ABnJikA30
「流石にそれは、ね。そこまで図々しくないわよ。
弁君……今上陛下に半ば弓引いたような立場だもの。
だったらきっちりと汚名は返上しないとね」

なんとも真面目なことである。劉璋ちゃん自身は軟禁されとっただけというのに……。

「まあ、それはいいとして何で俺のとこに?」

「そ。それは!」

口ごもる劉璋ちゃん。どことなく頬が赤らんでいるようにも見える。
ああ、なるほどな。今上陛下への直訴は立場上いかにもまずい。だからと言って事実上の最高権力者たる麗羽様ともコネがないし……。
三公で言えば白蓮は地方の軍閥出身だし華琳はまあ、宦官の系譜さ。なるほど選択の余地はなかったりする。まあ、きな臭い動きも七乃からは聞いているんだがね。

「清流派を率いるみたいな話も聞いたんだけど」

旗印を喪った清流派。その首魁に据えようという動きは割と活発で。立場としてはありえるなーと。それらをぶっちゃけトークで聞いてみたんだが。

「あのね。訳も分からずに派閥の領袖になって、よ?私は一体何ができると言うのよ。
結局お神輿になって利用されて、それだけでしょう?
 だからね。私はね。実務に携わりたいの。
皇族でございとふんぞりかえりたくないのよ。
 私がちやほやされるというのはつまり、漢朝が健在だからでしょう?その根幹を駄目にしたくない。いいえ、別に清流派にそれほど含むところがあるわけじゃないのよ。
 でもね。きっと私は何も知らない。だから派閥の領袖に相応しい判断なんてできはしない。ただの傀儡になるしかないの。
私は、皇族よ。皇族なの。でも、董卓や宦官の暴走を止めることはできなかった。
 皇族というのが尊重されるのは、それだけ重い責を担っているからでしょう?」

そう言ってくしゃり、と顔を歪めた。

「私はね。嫌なの。
もう、自分が足手まといだなんて、嫌なの。
だから、二郎にお願いするの。二郎なら、その、ね。信じられる、から――」

なんとも嬉しい評価である。
とはいえ、だ。劉璋ちゃんというのは実に劇物。扱いには苦慮するというか、だな。

「ん――。俺の部下的な地位でも文句は言わない?
 正直、劉璋ちゃんが自覚しているよりも君の血筋、立場というのは厄介でね」

俺ごときの下風に立てるかと断られるとかもしれないと思っていたのだ。

「ええ、構わないわよ」

即答である。
苦渋の決断どころか、どこか嬉しそうな表情。解せぬ。
そんなこんなで劉璋ちゃんは中書令として、司徒府の内に入ったのである。ちなみに中書令は地位としては三公に次ぐくらい。
んでもって立場はまあ、政調会長?色々と、どこにでも首をつっこめるという汎用性の高い役職である。

んでもって現在に至るわけなんだが。
ぶっちゃけ司徒府において一番働いているのが劉璋ちゃんという嬉しい誤算。
その権限と血筋と俺のバックボーンを活かして、ずんずんとなんにでも首を突っ込み、納得いかんことには、無垢なる怒りをぶつける。
んで、官僚とかのその場しのぎの言い訳は過去の記録を確認したり、蔡邑さん――現在は太師として今上陛下と美羽様、あとたまにシャオと流琉を教育している――に裏を取ったり、八面六臂の大活躍である。
蔡邑さんも、あれで何進の下で実務をこなしていたからなあ。古典とか前例への理解では他の追随を許さないし。

ちなみに、思い立ったが吉日とばかりにとっこーする劉璋ちゃん。宮中において他に劉姓がいないということで破格の扱いを受けている。
非公式な場では、今上帝からは「叔母上」と呼ばれ、「弁君」と返すくらいである。多分、劉姓であるという以上に、だ。簡にして単な気性も今上陛下からしたら気安く、心強いからこその扱いなのだろう。
そして、それが故に宮中でも特異な立場を築きつつあるのだ劉璋ちゃんは。具体的に言うと、「劉皇叔」という尊称が定着しつつある。
うん、なんだそれ。マジかよと思ったものだが。いやまあ、今上帝に叔母上扱いされてたらむべなるかな。
ともあれ、それにより宮中のパワーバランスがよくわからんことになってたりするんだよね。俺→劉璋ちゃん→陛下→俺以下ループみたいな。
だがこれは俺にとっても好都合である。権力のよくわからんスパイラル。それはいい。そこに麗羽様や美羽様が巻き込まれないのだからして。
まあ、実際漢朝に巣食う守旧派が標的にするのは俺しかいなくなる。いや、よかったよー。いくら七乃が頑張っているとはいえ、だ。陰謀の直接的な標的から麗羽様と美羽様は除外したかったからなー。

とかなんとか過去に思いを馳せてメイン軍師たる風と劉璋ちゃんの冷たい視線をやり過ごそうとする俺である。うん、おしごとしてないのは自覚しているのだよ。
ちら、と視線をやると劉璋ちゃんが苦笑している。あ、目が合った。

「やあねえ。今更二郎があちこちふらついてることを、どうこう言わないわよ」

「へ?」

なんとも意外なお言葉である。
680 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/10(水) 21:52:33.56 ID:ABnJikA30
「だって、そうやって二郎がふらふらしてるからこそ、私はここにいられるんだから、ね?」

「お、おう……」

そういや、そうだっけか。

「それを言われると風も弱いですね〜。まさに二郎さんに拾われた身ですからね〜」

まあ、劉璋ちゃんほどに極限状態――まさかの皇族行き倒れ疑惑――よりはマシだったけどな。

「え、そうなの?」

そこに食いつくのですか劉皇叔さま。

「はい〜。賊に襲われてあわや!という時に颯爽と登場したのが二郎さんなのですよ〜。風の心はその時に奪われてしまったと言っても過言ではありませんね〜」

おい。おい。

「そうなの?そうよね。二郎って、そういうとこ、あるわよね。
ほんと、いつもはこんなに平然としてるのに、いざっていう時は頼もしいっていうか……」

なんか、とっても居づらいので、とっととこの場からはおさらばだぜ!

世はすべてこともなし。
そんなこんなで年も暮れていったのである。
681 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/10(水) 21:53:10.94 ID:ABnJikA30
本日ここまですー感想とかくだしあー
題名はもっと欲しいんやで

どんどこいくぜ
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 12:16:46.52 ID:sWcaUaZw0
乙でしたー
>>負けないまでも、勝ち目が見えない(精一杯の強がり) それなら【負ける、とは言わないのは】で勝てない(負けるとは言っていない)みたいな強がり感が出るかな?
>>678
>>強制的に隠居させたからして。    ちょっと違和感が
〇強制的に隠居させたのだからして。 の方が良いと思います
>>679
>>「あのね。訳も分からずに派閥の領袖になって、よ?私は一体何ができると言うのよ。    喋り言葉だからこれでも良いのかもしれませんが
〇「あのね。訳も分からずに派閥の領袖になったとして、よ?私は一体何ができると言うのよ。 もしくは【なっても、ね?】とかどうでしょう
>>俺ごときの下風に立てるかと断られるとかもしれないと思っていたのだ。 劉璋ちゃんが下で侍ってくっころプレイするだって?
〇俺ごときの下風に立てるかと断られるかもしれないと思っていたのだ。  もしくは【断られるとも思っていたのだ。】かな?
>>んでもって現在に至るわけなんだが。   上の文でも【んでもって】を使ってるのでちょっと言い替えて
〇そんなこんなで現在に至るわけなんだが。 とかどうでしょう
>>680
>>いつもはこんなに平然としてるのに、いざっていう時は頼もしいっていうか……」   【平然としてる】は悪い印象がないので
〇いつもはこんなにのんびりとしてるのに、いざっていう時は頼もしいっていうか……」 もしくは【ぼんやりと】とかどうでしょう

>>俺→劉璋ちゃん→陛下→俺以下ループみたいな。 でもそれ陛下が基本「よきにはからえ」だから実質のトップ(命令者)は…これは魔O(この文章は不適切と判断されました
女の子二人による出会い(なれそめ)トークとかかなり居心地悪そうww
血筋その他で考えればやんごとなきとすら言える劉璋ちゃんが成金の地方からの成り上がりにお仕事的には逆らえない立場…か出会いのあれと合わせてはかどってそう
683 :青ペン [sage]:2021/03/17(水) 23:48:30.93 ID:JkW6pKjAo
>>681
んむー。
殿中無双〜劉の血を継ぐ者〜
でいかがっしょい。
684 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/22(月) 22:27:28.26 ID:hWhhQ3/u0
色々あってどんどこいけませんでした
敗北宣言はやるとして、どんどこいきたい

>>682
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

>女の子二人による出会い(なれそめ)トークとかかなり居心地悪そうw
羞恥心!羞恥心!
とりま、逃げますよねw

>血筋その他で考えればやんごとなきとすら言える劉璋ちゃんが成金の地方からの成り上がりにお仕事的には逆らえない立場…か出会いのあれと合わせてはかどってそう
この視点。大事にしないとですね。
※認識外でした
685 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/23(火) 21:16:42.16 ID:bzWH2Hg30
「へえ、じゃあ翠は無事涼州の州牧様になれるのか」

「ああ、おかげさまでな。ようやく父上の跡を継げる。そう、ようやく、だ」

よかったなと北郷一刀は馬超を祝福する。いや、実に妥当な人事ではある。だが、なにせ涼州には韓遂という梟雄が居座っており、安定とは程遠い。

「大変そうだなあ」

北郷一刀としてはそう言わざるを得ない。
そしてその声にその場の全員が苦い笑いを漏らす。

「一刀だって大変だろう?幽州は涼州と同じく漢の北壁。
匈奴の相手は大変だぞ?」

しみじみと語る馬超。言動が危うくても、歴戦の猛将である。その武威、武勲はこの場の誰よりも大きい。

「ああ、そう言えば公孫賛殿の配下となるのだったわね。重責、大変ね。
でも義勇軍からしたら大出世じゃない。ここはおめでとうと言わせてもらうわね」

にこり、とほほ笑むのは黄忠。皇族筋の劉表に仕え、今回の反董卓連合においては兵数よりも兵站で貢献をしている。
彼女の主たる劉表は僻地とも言える益州――劉焉が聞けば柳眉を逆立てるであろうが――に赴任することになっている。

「紫苑も大変だなあ。娘さんもまだ幼いのに益州とは」

益州は半ば未開の地。匈奴とは異なるが南蛮勢力が跋扈し治安も落ち着かず、未だ知られない疫病も数多くあるというのが、この時代の認識である。

「そうなのよねえ。正直迷っているわ。ごめんなさいね、桔梗の前で」

「なに、子を思う親の心。気にすることはなかろうて。実際、過ごしやすいとは言い難いからな」

肩をすくめる厳顔である。
実際、過ごしやすいかと言われれば、だ。それに成都へ向かう道ですら未整備だ。
それはまあ、天然の要害たる益州の地の利を劉焉が十全に活かすために街道整備に慎重だからだったという面もある。だが、実際道を切り開くのも容易にはいかないくらいの地理条件なのではある。

「だったら、さ。うちにこないか?
いや、翠は流石に駄目だろうけどさ。紫苑と桔梗が来てくれたら、俺も心強いし」

実際、黄忠と厳顔という人材は得難い。軍務、政務に通じており、未だ若い自分たちにとって有益この上ない。
未熟ゆえの先達との軋轢を防いでくれるだろう。そんな諸葛亮の言葉を思い出しながら。
いつになく真剣な彼の目線に、柄にもなく頬が上気するのを自覚しながら黄忠は考える。悪くはない、と。

「そうねえ……。考えてもいいかしら、ね」

「本当か!紫苑が来てくれるなら千人力だ。桔梗はどうだ?」

「そうさのう……。実に魅力的な誘いではあるが、乗る訳にもいかん」

「なんでさ!」

その勢いに厳顔は苦笑する。全く、可愛いではないか。心が揺れるではないか……。

「わしは劉焉様の臣よ。じゃから行けんよ、行くわけにはいかん。
劉焉様を隠居に追いやった袁家のそのまた配下には行けん。それではあまりにも劉焉様がみじめというものじゃろう……」

だから自分も隠居する、と厳顔は笑う。

「親はなくとも子は育つ、とまでは言わんがな。
劉璋殿が益州の牧となる日を待つとするさ。いや、待つだけじゃがの」

呵呵大笑して厳顔は北郷一刀に向き合う。

「なに、そのような顔をするでない。お主の誘いは嬉しかったぞ?
じゃがまあ、通すべき筋があるというだけじゃ。お主の言っておったこと、忘れているわけではない。
 皆が笑って過ごせる世を。実に素晴らしいとは思うぞ?」

「だったら、さ」

「まあ、一刀もそこまでにしようよ。
私だって一刀の、桃香の築く世は見てみたいさ。でも、それなりにしがらみってのもあるのさ」

苦笑がちに馬超が割って入る。半ば自分が加われぬ詫びをこそ滲ませて。

「まあ、気が向いてほしいもんだ。
いつだって歓迎するよ」

その言葉に三者三様の表情を浮かべる。
くすり、と艶然たる黄忠。
むむむ、と苦悩する厳顔。
たはは、と苦笑する馬超。

――後日、黄忠は劉備一行に加わることとなる。

◆◆◆
686 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/23(火) 21:17:08.43 ID:bzWH2Hg30


呆然。茫然。その表情を浮かべる呂布に北郷一刀はかける言葉を見出すことは出来ない。
できるのはただ寄り添うことだけ。

「みんな……」

平坦な口調。それでもそこに込められた悲哀。それに気づかぬほど鈍感ではない。

「恋……」

ここはかつて呂布が屋敷としていた敷地。そこには古今東西の百獣が肩を寄せ合っていたのだが。

「みんな、どこ……」

辛うじて残っていたのは、ぴすぴすと鼻を鳴らしてぺろぺろと呂布の手を舐めるセキトのみであったのだ。
もとより、どこかしこから拾ってきた禽獣猛獣鳥獣家禽を養ってきたのは一重に呂布ただ一人の愛情であり、それが途絶えたからには。

「どこ……、みんな……」

呂布の悲嘆はどこにも届かない。嘆き、悲哀。それらの慟哭はただ虚空に吸い込まれていく。

「恋、ごめんな」

だが、傍らにある北郷一刀は詫びる。心から、詫びる。

「恋の家族、助けられなかった」

ふるふる、と呂布は首を横に振る。

「ご主人様のせいじゃ、ない……」

「それでも、救えなかった。救えたかもしれなかったのに、なにもできなかった!」

激昂する北郷一刀。その思いは呂布の心にしっかりと届いていた。

「ありがとう。あの子たちがどうなったかは恋には分からない。でも、ありがとう。
 きっとあの子たちのことなんて、誰も気にしなかったんだと思う。だから、ありがとう」

そして、その激情を呂布は好ましく思う。

「恋!そんな顔をするなよ。俺のとこに来いよ、セキトと一緒にさ!」

自分が、大好きな人に必要とされるということは、こんなにも嬉しいことなのかと呂布は思う。
いや、きっとそれは感傷。自分はあんなにも大好きな人たちと一緒に歩んでいたのではないか。

「だめ。ご主人様とは一緒にいけない……」

呂布は悲しげに、それでもきっぱりと。

「なんでだよ!」

「二郎に、言われた……。恋が誰かに頼ったら、それが迷惑になるって……。
 二郎は詠と一緒で、いつも正しい……。だから、ご主人様に迷惑がかかる」

北郷一刀の怒り、それを嬉しく思うこと。それとは別に、呂布は悟るのだ。自分が彼の配下になれば、とても困ったことになるだろう、と。

「だから、行けない。恋はちんきゅーと、セキトと。それで、いい」

呂布に残された家族はそれだけ、なのだと北郷一刀も悟る。

「でも、それでもさ。恋は大事な人だもの。困ったら、いつでも頼ってくれ」

「うん……」

そうして、その約束が大きな影響を持つことを、この時点では誰も知らない。

◆◆◆
687 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/23(火) 21:19:17.89 ID:bzWH2Hg30


さて、無事に年が明けた。
年越しには麺類だろうと凪にリクエスト出したり(あっさり希望が通った)、鐘を108回鳴らすとかいう意味不明なイベントにも皆快く付き合ってくれました。煩悩退散!
んで、年始の挨拶を今上陛下と美羽様にしたんだけどね。流石に三公の挨拶の時はしゃっきりされてたんだけど、さ。陛下。いい感じに舟をこいでらっしゃったなあ……。
うむ、その図太さたるや。……まあいいや。
俺が向かったのは新年会的などんちゃん騒ぎだからして。
いやあ、呑んだ呑んだ。お仕事もしたぜ?
一応三公の身で、こんな宴席に出てるのは俺だけだからして。表敬訪問というか、ご挨拶とかは何人相手したかとかはまるで覚えていない。多分横にいた風が把握してるだろう。それはともかく。

「あー、美味しい……」

凪の作ってくれた粥が実に美味しいのである。白粥なんだが、塩加減とかが絶妙なのです。
ずび、とその粥をすする。うーむ、この幸せ。とか思っていたら。

「何だ、二郎よ。随分疲れてるみたいじゃないか」

そう言って笑うのは華佗である。

「うっせえ。これでも気疲れとかすることもあるんだよ。この一杯のために生きてるって感じでこう、な」

頭脳とかまるで働いていない俺の台詞だから、説得力とか仕事していないというのは認識している。その場のノリで適当な言であるのだよ。まあ、そんなこと先刻ご承知だろうけどね。

「まあ、それについては何も言わんさ。実際世話になってるしな。ただまあ、これを飲んでみてくれ」

華佗が俺の盃に酒を注ぐ。

「そりゃ華佗の酒は飲まんわけにはいかんけどさあ、って苦っ!」

苦いだけではない。香りもなんかこう、漢方というか、不可思議な感じで。

「悪鬼を屠り、魂を蘇生させる。そういう酒なのだが……」

「不味い!もう一杯!」

屠蘇散というやつだな。新年だからって阿呆みたいに呑むのを防ぐにはいいだろうな。

「量を飲むものではないとしても、これは強烈だな」

正直口の中がこう、苦味とかでうにゃー、となる。

「へー、二郎がそんな顔するんだ。シャオも試してみようかなー」

うずくまる俺の背に抱きついて、そんなことを言う。というか、いたんかい。
いいぜ、これが美味しいと思うのならば、まずはそのふざけた幻想がぶち壊されるぞ。多分。
そして予想通りの反応である。

「なにこれ信じらんない。これって人が飲むものじゃないよー」

「えー?そうですか?私は結構いけると思うんですけれども」

ってマジかよ流琉。

「流琉ってこういうのもいけるんだ。でもこれが美味しいとか思わないでね。こんな味付けの料理とかシャオは食べたくないし」

「いえ、流石にこれが一般受けしないというのは分かりますけど、そこまでかなあ」

どうやら本当に人によるらしい。本業料理人の流琉であるから、聞き入るしかないんだよね。

「ま、二郎が口移ししてくれるなら甘露になると思うんだけどなー」

ちらり、とこちらに寄越す視線には年不相応な艶が含まれており。
688 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/23(火) 21:19:46.70 ID:bzWH2Hg30
「そういうの、人前で言うなって」

「ごめーん。最近ご無沙汰だったからね。うん。二人っきりの閨でお願いするねー」

ぽかり、と拳がシャオの脳天に振るわれる。

「そこまでです。美羽様との話題にするのはよくっても、二郎様がお困りです」

「やだー、流琉ってばひどーい」

きゃいのきゃいのと、なんだかんだ言って仲がよさそうでなによりである。
689 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/23(火) 21:20:12.89 ID:bzWH2Hg30
◆◆◆

「百薬の長。それでも飲み過ぎれば百害あって一利なし。そういうことだろ?」

ここまで香りがきつければ、新たに飲もうとは思えないからして。

「ふむ。実際、な。煎じた生薬は実際疲れた身体にはいいものではあるのだぞ」

「それは分かる。五斗米道の秘中の秘。それが惜しげもなく注がれてる。それくらいは分かるさ」

しらんけど。

「なに、そこまでたいしたことじゃない。一度漢中に戻らねばならんしな。
ここまで世話になった礼と思ってくれ」

「まあ、凪や星にも気ってやつの指導もしてくれてたみたいだしな。
ほんとに、ありがとな」

「いや、拙いながらも伝えることは伝えた。後は彼女らの意思だろうさ」

「それなら安心できるな。俺と違って才能と向上心に溢れてるからな」

実際、努力し続けることも才能のうちだとおもうのだよなー、とか思うのである。

「おや、主よ。才能の一言で片づけてほしくないのだがな」

おっとここで星のエントリーだ!ここまで大人しくしていたのに。
いや別に星の努力を見てないわけではないけどね。

どこか拗ねたような星が可愛くて尻を一揉みしてやる。うむ。
こら、と睨まれてもなあ。可愛いだけだぞ。

「いちゃつくのもそれくらいにしてくれよな。それ以上やるならおいらは帰るぞ」

「やだなあ、張紘。そりゃもう、ごめんなさいだよ。なあ、星?」

「無論だとも。
最近構ってくれなかった主にじゃれついていただけで、他意はない。うむ」

「それはともかく。趙雲さんよ、あんたの叙事詩(サーガ)。どうしたいかって希望はあるのかい?」
690 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/23(火) 21:20:38.80 ID:bzWH2Hg30
張紘の問いかけにニヤリ、と星は極上の笑みを漏らす。うむ。安心できん。
意外と星ってば、はっちゃけるからなあ。

「ふむ。腹案はある」

すちゃり、と懐から取り出したのは、蝶の仮面?

「これこのように、だ。仮面を纏ったならば。
 法で裁けぬ巨悪。それを糾すは正体不明の華蝶仮面。
 華麗、その一言がその存在を象徴するのだ――」

「却下」

びしり、とポーズを決めた星に無慈悲な俺の声が響くのだよ。

「なんと――!」

なんと?!じゃないっつの。

「あのなあ、法で裁けぬとか言うなよ、お前さん、執金吾だろうが。自分の職責を貶めてどうするんだってばよ」

「むむむ」

「なにがむむむだ。
却下だ却下。法で裁けぬ悪とかはもちっと治安が上向いてからだな。今はまだ漢朝の法治を讃えねばならんさ」

それでも、星は不満げである。
理屈は分かってるはずなのに、と。

「こんなに、恰好いいのに……」

「怒るぞ!」

何か知らんけど蝶々的なマスクは没収である。はい、没収!
涙目で星はあれこれと訴えかけてきたけど知らん。

「無体な……」

はいはい、きっちり仕事してからそういうことは言いましょうねと。
しかし思うんだけどさ、この、蝶をかたどった仮面を装備してその素性が誤魔化せるとか本気で思ってたのかねえ。いや、まさかな。まさかに。

俺は手元でその、蝶をかたどった仮面を弄びながら大きくため息を吐いた。

あれ、俺って結構真面目にお仕事しているんだろうか。
くそ!なんて時代だ!

のんびりスローライフが最終目的だと心に誓う俺なのであった。
691 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/23(火) 21:21:04.90 ID:bzWH2Hg30
本日ここまですー感想とかくだしあー
いや、ちょっと最近忙しいし転勤ですよ
頑張るぞいっと。
692 :赤ペン [sage saga]:2021/03/29(月) 17:42:39.05 ID:ZgG4PTTr0
乙でしたー
>>686
>>呂布に残された家族はそれだけ、なのだと北郷一刀も悟る。         【、】の位置に違和感が
○呂布に残された家族はそれだけ、たったのそれだけなのだと北郷一刀も悟る。 さりげなく一刀君SAGEを含ませてみる。というか今回の反董卓連合の発端はお前が何進さん暗殺したからだからな?それさえなければどうにか軟着陸できたのに…悔い改めて
>>689
>>「ふむ。実際、な。煎じた生薬は実際疲れた身体にはいいものではあるのだぞ」   【実際】を2回入れるのを回避して…
○「ふむ。実際、な。煎じた生薬というのは疲れた身体にはいいものではあるのだぞ」 生のままが良かったり炒るのが良かったり、煎じ方を知ってないとだけどね
>>690
>>それでも、星は不満げである。
理屈は分かってるはずなのに、と。 これだと星が思ってる感じですが…理屈は二郎の方が通ってるよね
○それでも、星は不満げである。
理屈は分かってるはずなのだ、が。 (二郎の言う)理屈は分かってる【が(でもロマンを優先したい)】からこの後の文「こんなに格好いいのに」に繋がる感じかな?

>>自分が、大好きな人に必要とされるということは、こんなにも嬉しいことなのかと呂布は思う。 この言い方だと今までそうなったことは無い、という風に読み取れるんですが…董卓たちは【大好きな人】じゃなかったのか【必要とされたことがない】のか…刹那で忘れたのか
>>「そこまでです。美羽様との話題にするのはよくっても、二郎様がお困りです」 待って?閨で誘うあれこれっぽいことを美羽様との話題にしてるの?いやまあ彼女も今や立派な人妻だから問題ない…のか?
それにしても劉表さんに辞表叩きつけるのは構わんが誰がそのことを説明しに未開の地益州まで行くんだ?まさか手紙一枚で済ませるような不義理かますんだろうか…上司(劉備)の上司(公孫瓚)の上司(袁紹)に丸投げすればいいか一つ借りだぜ(後々徳政令発布の予定を立てつつ)
693 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/02(金) 22:12:58.05 ID:J5b+k8cP0
正直ウマ娘にはまってて、バクシンss書きたい欲
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/04/02(金) 22:15:57.65 ID:WsbxWQJyo
乙したー
ウマ娘ええよなぁ

安寧の日々を求めているのに、なぁ?
695 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/02(金) 22:25:22.09 ID:J5b+k8cP0
お世話になっているバクシンバクシン雨バクシンやりたいですね
実際、FGOメインだったですがウマ娘8でFGO2ですわw

バクシンバクシンやりたい
696 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/02(金) 22:26:25.99 ID:J5b+k8cP0
まあ、まずは本作やってからの話ですけどね!!!
やります
697 :赤ペン [sage saga]:2021/04/03(土) 09:17:06.57 ID:RaO/+HuR0
3年かけて迷走せずにしっかりとブラッシュアップしたサイゲのすさまじさよ
698 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/13(火) 16:30:06.25 ID:c70hgjM00
てす
699 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/13(火) 16:41:24.92 ID:c70hgjM00
「忙しそうだねー」

ぎろり。むしろ殺意すら込められた視線が返答だった。
おお、こわやこわや……。

「なんだー、華琳はいないのかー。先触れは出してたのに、困ったものだなー」

仮にも俺は三公の筆頭だぞー。ぷんぷん。もっとあがめろー、うやまえー。
だが接待は勘弁な。華琳になにされるか分かったもんじゃない。
華琳がなにしてくるか分かったもんじゃない。
つまりここは逆境、華琳のとこですよ。体当たりレポが今始まるところですよ。

まあね、間違っても女子は派遣できんしね。
男子も魅了されて抱き込まれる未来が見えますのでね、俺が特攻するしかないってことですね。なお、攻防ともに効きそうなスキルは持ってない模様。仕方ないね。
なーに、書類仕事は風ちゃんにお願いしてきたしね、何もこわくないね。
などと思っていた俺にネコミミの言がやってくる!
相変わらずとげとげしい!
でも、ギザギザ心根(ハート)よりは、うっせーうっせー、と言われた方が実際安心ではないだろうか。
名馬を盗まれた訳でもないしね。校舎には硝子なんてないしね。

閑話休題。

「あんたね……。
あんたのせいでしょうが!」

えー。

「これはしたり。と言わざるをえないな。司徒たる俺が司空たる華琳に面会を申し出る。
うむ。なにもおかしなことはないな」

むしろこれに異論とかあったら責任問題ですよ。

「その華琳様の時間を著しく拘束するだけのことをしてるって自覚があると、今分かったわ」

「さて、なんのことやら。それともなにか?
華琳は司空の職責に耐えないと。貴様(ネコミミ)はそう言うのかい?」

にひひと笑う俺である。実際楽しい。
そしてネコミミさんは今にも飛びかからんばかりに殺意を込めてにじり寄ってくる。
フシャー!という擬音がふさわしい激昂ぶり。いやあ、時に落ち着けよ。
700 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/13(火) 16:41:51.15 ID:c70hgjM00

「あんた、ねえ……。
いい加減にしなさいよ。本当に……」

まあ、ネコミミの言うことも一理あるのである。彼女の言う通り、華琳の多忙さは俺の仕業、とうか仕込みも一因だからして。
ぶっちゃけ、麗羽様に歯向いそうな官僚たちを処分したのだよ。あくまで合法的にだけどね。
麗羽様が大将軍となり、俺を筆頭として三公が組閣された。それについて面白くない勢力は当然存在するわけで。
まあ、それでも職責を果たすならばそれでよかろうと思っていたが、意図的なサボタージュやら妨害工作やらなんやらが出てきたわけで。
いや、当然予想してましたけどね?風ちゃんとか稟ちゃんさんがね。
そしてまあ、要職に在(あ)って、害なす存在を一気に処分したわけですよ。リストラってやつですね。
いやね?別に全員司徒たる俺の職権で罷免してやってもよかったんだけどね。驚くべきことに皆さま脛(すね)に傷持つ身だったようで。いや、びっくりですよ。
はい、七乃が一晩でやってくれました。いや、長いこと仕込んでたんだろうなあと思います。フフ、怖い。
怖い。

「いえいえ、これくらい美羽様のためならお安い御用ですよー」

ルンルンと鼻歌混じりに、ですよ。笑顔とは本来なんちゃら。
反袁家的な官僚やら士大夫どもの罪状のリストを手渡す七乃は控え目に言って上機嫌でありましたのですよ。

そんなこんなで、である。七乃のおかげで合法的に麗羽様の顕在的、潜在的な政敵は一掃されたのでありました。
いやあ、大仕事でした。俺以外のね。
特に清流派と名乗る士大夫たちからな!あいつら、何が清流派だか。それが恒常化されていたとはいえ、汚職やらなんやら十分濁ってるだろう……。
いや、何割かは冤罪でも驚かんけどね。それにしたって物証なりをきちんと捏造してるんだろうなあ、七乃って。
うん、ご機嫌取りにもうちょっとがんばらんといかんな。

閑話休題。

そんなわけで、だ。古今東西の政治犯が華琳とこに送られてるわけである。
更には執金吾として治安活動に――何だか知らんけど鬱憤を払うように――いそしむ星もどんどこ犯罪者、それも官憲と繋がってそうな奴を検挙しまくってるのだ。
いやあ、部下が頑張ってるって見てて楽しいですね。
任命責任、やったぜ。

うん、華琳たちが忙しいのは俺の、俺たちのせいだな。
ただでさえ、組織を掌握せんといかんのに送り込む案件。うむ。華琳とかネコミミをもってしてもオーバーワークになるのも致し方なし。けけけ。

さらに、だ。

「倉庫、足りないなら紹介するよ?」

俺のその言葉にネコミミが硬直する。

「あんた……」

影響力を持つ士大夫をどんどこしょっぴいたら、だ。何が起こるかというと、陳情工作である。まあ、袖の下とか賄賂とか時候の挨拶とか好きに言えばいいと思うけどね。
そこいらへんをさばくのも大変なんだろうなあと思う俺である。誰の賄賂を受け取って量刑を勘案してとか俺ならやってられないね。
まあ、三公。大人気の役職にはそれくらいの役得があるということである。それで私財を積み重ねまくったら司徒たる俺が普通に罷免するだけなんだけどね。いや、それが分からぬ華琳じゃあないと思うけんども。いや、華琳なら分からぬように隠蔽するか……?取り込むべき人材とそうでないカス。それの選別くらいはやってのけるだろう。
三公の一角とはいえ、俺と白蓮が麗羽様の派閥であるのは明らか。そして華琳は麗羽様の風下に立つことをよしとはせんだろう。そうなれば、だ。

「あの華琳が、だ。俺との約束をうっちゃって仕事に専念する。いや、職務に熱心なのはいいことさ。
しかし、内職をされては困るんだよね」

まあ、反袁家勢力を糾合してくれたらめっけもんなんだがね。

「それくらいにしてほしいものね、二郎」

軽やかな、鈴の音を思わせる声。
轟く雷鳴を思わせる声。つまり。

「やあ、華琳。
遅かったじゃないか……」

さて、ここからが本番だ……。
701 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/13(火) 16:43:20.94 ID:c70hgjM00
◆◆◆

「あら。二郎指定の時刻ぴったりのはずなのだけれども。まあ、二郎はそんなこと気にしないから問題ないわね」

いけしゃあしゃあとのたまう。ここいらへんの面の皮の厚さは、はは。
流石である。

「さて、大層忙しそうじゃあないか」

さてと、華琳がオーバーワークとか滅多にない。と言うか、意図的に華琳の業務を破綻させようとしてたんだが。
ちなみにこれは七乃と風の入れ知恵である。
こわやこわや……。

「ええ、忙しいわね。そして二郎を待たせてしまったのも確かなようね。ごめんなさいね。いつも約束の時間に遅れてきてたじゃない?春蘭や桂花がいつもおかんむりだったのよ?」

ええと、そんなこともあったかもしれない。割と時間にルーズだったかもしれない、なあ。

「曹家の文武の要を宥めるの、大変だったのよ?
 でも、それは過ぎたこと。結果として二郎を待たせてしまったのは事実よ。だからね」

ちゅ。

「これで、いいわね」

え。え?

「華琳様!そのような下賤な!汚らしい男にその唇を許されるなぞ!」

ネコミミの奏でる騒音。いや、役得と言っていいのかなあ、これ。背筋が寒くなるんですけど。

「さて、二郎。遅れて悪かったわね」

欠片(かけら)も悪かったと思っていない口調で華琳がそう言う。

「お、おう」

「ああ、安心なさいな。二郎が心配することは何もないのよ?そりゃあね。
各方面からの陳情やらなんやらでちょっと手間はとられたのだけれども。
それくらい捌けなくて何が司空か、よね」

「あ、はい」

なんだろう。一言ごとに追い詰められていく感じ。

「まあ、二郎が危惧するように。
 或(ある)いは期待するようにね。彼らを手駒にするというのも考えたのよ?」

「華琳様!?」

ネコミミの悲鳴じみた叫びを華琳は手を上げて制する。

「今、この時点で麗羽と敵対しようとは思わないわ。それどころでもないしね。
私と麗羽が争えば中華は焦土となるでしょう?」

「いや、俺としてはどこから突っ込めばいいか困るくらいなんだが」

つくづく自己評価の高いことだ。忌々しいのはその自己評価よりも俺は華琳を評価しているってことか。

「端的に言うわよ。私は、二郎が用意してくれた来客。その相手を春蘭に任せたわ」

なん……だと……。
702 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/13(火) 16:43:49.21 ID:c70hgjM00
はい。
復活のとき(掲示板的な意味で)
本日ここまですー感想とかくだしあー
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/04/13(火) 23:04:47.14 ID:RwIXM0Iyo
乙したー
速報死んでてヒヤッとしたでござる・・・

ネコミミがイキイキしててかわいいね()
704 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/14(水) 05:54:25.02 ID:01J4wgx30
どもです!
ここが死ぬのは希によくあったんですよね
最近はなかったんですがw
705 :赤ペン [sage saga]:2021/04/15(木) 14:27:02.73 ID:4yQboo920
乙でしたー。しばらくここが死んでたと思ったら今度はやる夫シェルターが?どうなってるのやら
>>700
>>華琳の多忙さは俺の仕業、とうか仕込みも一因だからして。  でも彼女ならこの逆境をばねにして一皮剥けそうな安心感がある
○華琳の多忙さは俺の仕業、というか仕込みも一因だからして。 これ【も】ってことは表でも裏でも無茶振りしてるってことかな
>>意図的なサボタージュやら妨害工作やらなんやらが出てきたわけで。 【コトバンクより】労働者の争議行為の一。労働者が団結して仕事の能率を落とし、使用者側に損害を与えて紛争の解決を迫ること。怠業。サボ。
○サボタージュやら妨害工作やらなんやらが出てきたわけで。     意味合い的に意図しないサボタージュは無いようなので…それにしても禁裏を大虐殺したと噂の奴が近くにいるのによくやるわ
>>特に清流派と名乗る士大夫たちからな! まずは清流派からキレイキレイしたってことかな?【特にこいつらからな】
○特に清流派と名乗る士大夫たちがな!  清流派の割合が多かった。とかの意味ならこうかな?【特にこいつらがな】
>>何だか知らんけど鬱憤を払うように  一応理由は分かるじゃろ…そこまでの事か?とは思うけど
○何だか知らんけど鬱憤を晴らすように 【気晴らし】とかのように鬱憤は晴らすものですね

>>なお、攻防ともに効きそうなスキルは持ってない模様。仕方ないね。 ウン、ソウダネ。うっかり華琳を殺しそうになったことが何度かあった気がするけど殺してないしね
>>うん、ご機嫌取りにもうちょっとがんばらんといかんな。 精力的に力を合わせるんですね、分かります
>>まあ、反袁家勢力を糾合してくれたらめっけもんなんだがね。 【曹操】を知ってて本人と出会ってその凄さを感じたうえでそう思えるのが凄いわ…そんなんだから華琳に目を付けられるんだぞ
まあこんな「仕事に溺れて溺死しろ」と言わんばかりの無茶振りされたら二郎が何をしようとしてるのか、あるいは何をさせようとしてるのかは察するか
そのうえで「麗羽と敵対するのはまたあとで」と宣言するとか…この子二郎をゲットするために麗羽様もゲットしようとしてない?
そして最後の爆弾投下…まさに一刀両断の闊達か。これはキャパオーバーしそうになった時に清涼な暴風ですっきりしたな?d姉がいなけりゃそれでもやり切っただろうけど濁りに足を取られただろうに
曹操は何というか清濁併せ呑む度量はあるけどそれはそれとして飲み干すのと消化するのに時間がかかりそうなイメージ、そして今回はその濁部分をd姉が肥溜めにぶち込む感
706 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/15(木) 20:22:39.18 ID:JOGJy0o10
>>705
赤ペン先生いつもありがとうございますー!
結構長いこと繋がらなかったイメージですね
シェルターが落ちてるのか。なんでしょね。年度替わりかな?

> ウン、ソウダネ。うっかり華琳を殺しそうになったことが何度かあった気がするけど殺してないしね
殺そうとしても素直に死んでくれないんだよなあw
むしろサイヤ人的に超復活しそうで困りますw

> 【曹操】を知ってて本人と出会ってその凄さを感じたうえでそう思えるのが凄いわ…そんなんだから華琳に目を付けられるんだぞ
今なら、今なら勝ち確定…のはずw
だからこそ、はおーもやらんわけですがw

>まあこんな「仕事に溺れて溺死しろ」と言わんばかりの無茶振りされたら二郎が何をしようとしてるのか、あるいは何をさせようとしてるのかは察するか
「へえ、そういうこと・・・」
こわや、こわや・・・

>そのうえで「麗羽と敵対するのはまたあとで」と宣言するとか…この子二郎をゲットするために麗羽様もゲットしようとしてない?
どっちか片方ゲットしたら、もう片方も付いてくるバリューセットですねw

>そして最後の爆弾投下…まさに一刀両断の闊達か。これはキャパオーバーしそうになった時に清涼な暴風ですっきりしたな?d姉がいなけりゃそれでもやり切っただろうけど濁りに足を取られただろうに
なんだかんだで、d姉は曹家の大黒柱なんだなって

>曹操は何というか清濁併せ呑む度量はあるけどそれはそれとして飲み干すのと消化するのに時間がかかりそうなイメージ、そして今回はその濁部分をd姉が肥溜めにぶち込む感
割と理想家なところありますものね
そしてd姉のやらかし(?)はご期待くださいませませ。
707 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/15(木) 21:39:40.31 ID:JOGJy0o10
怒髪衝天。
今の夏候惇を表現するならばその一言で全てが語られるであろう。そのように夏侯淵は思う。
怒気が一秒ごとに高まり、収斂されていく。そして爆発する。実に自然なことである。

「ふざけるな!」

怒りの鉄槌を振り下ろす。頑丈な樫の木で造られていた卓が、轟音と共に一撃で真っ二つになる。
そして、その怒気の発露に当然反応する者もいる。
驚きすくむ者、そして、その者達の随伴者――護衛――に至っては。

「そこっ!」

夏侯淵が放ったのは何の変哲もない銅銭だ。ごくごくありふれているものである。それが懐に、或いは髪留めに手を伸ばした輩を撃つ。

――指弾。かつて曹家に長期逗留していた、どこぞの青年が酒の席で戯れに語ったそれを夏侯淵は見事に実戦レベルにまで会得していた。
例え質量の小さい銅銭のようなものでもまともに直撃を受ければ、骨にひびが入るくらいには、だ。
当然その直撃を受けたならば。

カラン、と複数の刀子が落ち、響く。

そしていよいよ荒ぶる魂。

「貴様ら!薄汚い取引を持ち掛けるばかりか、華琳様との会談に暗器を仕込むなぞ!言語道断!
 貴様らには死ですら生ぬるい!季衣!七星餓狼を持て!」

はい、と駆け出す少女を見送り、夏侯淵は笑みを深める。

「ああ、そこで腰を抜かしている方々。失禁しないだけ貴君らは立派さ。
何せ貴君らは中華で五指に入る武人の怒気を受けたのだからして。
 だがその報いは受けんといかん。なに、そんなに震えることはない。これで姉者は優しくてな。
つまりこうだ。猶予は与えたぞ?」

にこり、と夏侯淵は極上の笑みを浮かべる。――この状況においてはこの上なく迫力があるのであるが、さっさと立ち去れという言外の意味。蜘蛛の子を散らすようなそれ。
夏侯淵はその様子を見ながら。

「姉者、あれでよかったのか?」

眼前に誰もいなくなり、問う。
その問いには憤然と。だが、きちんと応える。

「ふざけるなよ、ということだな。あのような奴らににどうして気を遣うことがあろうものかよ」

夏侯淵は苦笑する。それでこそ我が愛する姉である、と。

「だがな、姉者。あれはあれで利用価値もあったろうに」

多くは清流派。その影響力は無視できるものではない。なんとなれば、これまで宦官や、何進率いる汚職官僚の邪知暴虐に抗ってきた(とされる)のは彼等なのだからして。

「知ったことか!
 華琳様に面会するのに暗器を仕込むなぞ言語道断よ!」

「それは、そうだが……」

夏侯淵のその言葉に夏候惇は笑う。朗らかに、曇りなく。

「秋蘭。華琳様がこの場を任せられたのは私だ。
だから何も問題はない。ないとも。
変な腹芸が必要ならばあの陰険な軍師気取りが任じられただろうからな。
 だから、これでいいのだとも」

晴れやかに笑う夏候惇。ふむ、と夏侯淵は納得する。した。
主君たる曹操が確かに夏候惇に腹芸をもってして士大夫どもを取り込むことを期待するとは思えない。
708 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/15(木) 21:40:06.52 ID:JOGJy0o10
「そう言えばその陰険なのは、二郎の相手をしているのだったか」

その声に夏候惇は柳眉を軽く逆立てる。

「うむ。いやさ、久方ぶりに二郎と語り合いたかったのだがな」

「おや、姉者はそこまで二郎に執心だったかな?」

「茶化すなよ、秋蘭。
二郎はそう、私と違ってどちらもいけるクチだ。
だからあの陰険(ネコミミ)が相手しているのだろうよ」

つまり、手練手管を以って取り込むべきはあちらだと判断しているということか。
夏侯淵は納得する。納得したのだが。

「しかしあれは果たして取り込めるようなものかな」

これは夏侯淵の本音である。過去幾度も、だ。冗談交じりにとは言え主君たる曹操の誘惑をにべもなく断った紀霊。彼がなびくというのは夏侯淵にとっては想像しがたい。

「無理に決まっているだろう」

あっさりと否定する夏候惇。

「私を含めて桂花や秋蘭もそうだがな。
誰に粉をかけられても論外だろう?それと同じことだ」

だったら余計に、と夏侯淵は首をかしげる。

「なに、二郎は本質では単純な男さ。あれを味方につけるのに一番いいのはな。
褥(しとね)を共にし、子の数人も孕むことさ」

からからと笑う夏候惇に流石の夏侯淵が絶句する。

「姉者。それは飛躍しすぎではないか?それに孕むと言っても、だ」

沈着冷静を以って知られる夏侯淵である。彼女の慌てように夏候惇は呵呵大笑する。

「なに、私は二郎を気に入っているからな。
苦ではない。それに、名門たる夏候家の跡継ぎ、考えぬではなかろう?」

「そうは言うがな、姉者。
二郎は、だ。
あいつは、ただ肌を重ねた女にそこまで甘くなるとは思わん。
 賈駆だって、だ」

「無論そうさ。心底敵対するならばいくらでも命のやり取りをするだろうよな。
賈駆は、そこまでいってしまったからな。あれは、そう。哀れな女よ。
 忠誠、友情、それに恋慕を天秤にかけるなぞ、正気の沙汰ではない。
 まあ、それはそれ、これはこれだ。
仮に私が二郎の子を産んだとて、華琳様と遣り合うのに一片の迷いもないさ。
二郎もそうだろう。その後、きっと二郎は苦悶するだろうがな」

かんらかんらと笑う夏候惇に、夏侯淵は問う。

「これは純粋な好奇心なのだが、その場合、姉者はどうなのだ?」

その問いにふむ、と夏候惇は考え込み。

「そんなもの、その時になってみんと分からん!」

それでこそだ、と夏侯淵もつられて笑う。

「そうだな。姉者の言う通りだ。ああ、その通りだ」

くつくつ、と。
その笑いは久方ぶりに本心から、腹から生じた笑いである。

夏侯淵としても、対峙するにも共闘するにも楽しそうなのだ。
少なくとも、彼と対峙するならばあの趙子龍が出張ってくるだろう。自分たち夏侯姉妹を単独で相手をして、負けないまでも勝ち目が見えなかったのは呂布を除けば彼女のみ。

「いかんな、姉者の熱にあてられたようだ。二郎と遣り合うのが楽しそうだと思ってしまった」

「ふふ、いいことだ。或いは秋蘭と矛を交えることになるかもしれんしな」

「おお、こわいこわい。精々姉者の言う陰険軍師に懇願しておこう。そのようなことがないように、な」

笑い合う彼女ら。
その無垢さを見れば、話題の男も考えを改める一助としていたかもしれない。
709 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/15(木) 21:41:06.69 ID:JOGJy0o10
本日ここまですー感想とかくだしあー

やっぱ姉者やねん!


ゴールデンウィークまでに形にしたいs
710 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/16(金) 18:05:18.07 ID:EMArqvQw0
ゴルシ
711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/04/16(金) 18:27:57.07 ID:2UriX1CTo
乙したー
姉者さん正しく忠臣ですなぁ

ても二郎ちゃんとの子供とか火種不可避じゃないかな・・・・・・?
712 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/17(土) 21:28:00.88 ID:ovSjB6Co0
>>711
どもです!

>姉者さん正しく忠臣ですなぁ
ぶれないですねw

>ても二郎ちゃんとの子供とか火種不可避じゃないかな・・・・・・?
色々と荒れそうではありますw
姉者がいけると思ったらいけるんじゃないかなあ・・・?
713 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/17(土) 21:29:38.40 ID:ovSjB6Co0
「やだなにこれ、すっごい美味しいんだけど!」

口にした料理。それは流琉と凪が腕を振るったという超豪華なものだ。
本当は超高級料亭とかでもよかったんだけど、そういう堅苦しいのは苦手ということでとある宿――と言っても結構高級なそれ――を借り切っての接待である。
無論そんな無茶を通せるということは母流龍九商会の息のかかった宿であり、従業員も全て信頼できる者である。と張紘が言ってたから大丈夫に違いない。
まあ、考えてみれば馬家は名門。そのご令嬢が高級料亭が苦手とかどうなんだろうと思うんだが。まあ、料理を次々とたいらげてく蒲公英――残念ながら翠は所用があるということで蒲公英のみの接待となっている――の所作にはごく自然な上品さがあり、馬騰さんの薫陶を思わせる。

「ふ……、流琉も凪も超一流の料理人だからな。つか、俺も二人の合作料理とかあんま食ったことないからそれ貰うな」

「あー!ひどいー!そこのお肉、楽しみにとってたのにー!じゃあ、そこのお魚の、目玉はいただき!」

「何と言う邪知暴虐。これは!宣戦布告!せずにはいられない!」

ちなみに、だ。料理を巡る戦い。
六勝五敗三引き分け。

ふ、大勝利である(迫真)。

「いやいやいや。
 蒲公英の七勝六敗一引き分けだからね」

「なん、……だと……!」

「という訳で戦利品としてこの杏仁豆腐は頂いちゃう!」

にひひ、と笑ってデザートの杏仁豆腐をかっさらって。

「んー!おいしいー!」

いや、蒲公英のこの表情を見れるならば、だ。見れたならば色々どうでもいい気がする。これも天性の愛嬌というやつだろうね。

「でもね、二郎様、ありがとうね」

デザートを腹に納めてから蒲公英がそんなことを言う。

「ん?」

「お姉さまに、馬家を継がせてくださって、ありがとうございました」

深々と、頭を下げる蒲公英。

「ん」

まあ、確かに涼州の安堵は最初期にしたけれども、それは余人をもって代えがたいというか、馬騰さんにもお世話になったというか。

「本来、董卓一味は涼州を預かる馬家によって掣肘すべきだった。
その責を果たせなかったことは苦渋の極みなんだよ。まして、それを討つのも馬家の務めのはずだった。
 うん、だからね。馬家は二郎様にとっても大きい借りが出来たんだよ。なかなか返せないような、ね。
 それを返すのは蒲公英の役目なんだよ」

「気にするな、とは言わんけどな。
 だがな、貸し借りとかそういうのはどうでもいいのさ」

ご指導ご鞭撻いただきたかった。素直にそう思わせる方だった。馬騰さんは。
714 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/17(土) 21:30:39.17 ID:ovSjB6Co0
「ちぇー、身体で返せとか言われると思ってたのになー。二郎様のけちー」

「いや、色々おかしいだろうそれ」

そんなこと言ったら馬騰さんが化けて出てきそうである。こわや、こわや……。

「あのな、涼州をきちんと治めるのが親孝行になるのだろうし、そのための援(たす)けは惜しまんよ」

「正論すぎるよ?もうちょっとこう、蒲公英が可愛いから攫ってやろう。その代りに涼州の面倒をみてやろう、がはははーとかの展開とかないの?」

「ないわー。ほんと、ないわー。そりゃ蒲公英は可愛いけどさ、それが理由で便宜を図ったらいかんだろ」

宦官どもとは違うのだよ、宦官どもとは!

「えへ、そっかー。そうなんだー。じゃあしょうがないよね。うん、それだったらしょうがないなー」

なんか急に上機嫌な蒲公英は置いておこう。

「えへへ、涼州に帰るだけでなく過分に糧食も貰っちゃったし、これは蒲公英は覚悟を決めるしかないよねー。ないよねー。うん、覚悟完了!
 あ、大事なことだから二回言ったんだけど?」

諸侯軍に対する糧食の支給は先日打ち切った。とは言え、恣意的な運用というのはいくらでもできるものである。
んで、馬家には数か月分以上の、ちょっと過剰なほどの糧食を支給してある。それに対する謝辞であろう。

「馬家は西方の、匈奴に対する壁だからな」

ここが崩れるとえらいことになるのである。だから、本気で頼りにしているのだ。そして。

「んでもって韓遂の相手、任せた」

今回の始末でも韓遂は処断できずに不安要素なままであるのだ。劉焉は隠居に追い込んだんだがなあ。

「うわーん!泣いてやるー!韓遂さんの相手ってどうせ蒲公英がするんでしょ!やだー!
 はあ、詠ねえさまがいた時は楽と言うかお任せっきりだったんだけど……ってやば!」

じくり、と苦いモノがこみ上げる。ちくり、と胸が痛む。

「ん、そだな……」

確かに詠ちゃんがいたならば、涼州は安泰だっただろう。あの、梟雄たる韓遂を向こうにして鼻歌混じりで領地運営をしてのける手腕は見事の一言。そして。

「洛陽は、さ。ほんとに見事に治まってたんだわ」

張紘、魯粛、そしてメイン軍師たる風からの報告。

「あんなにさ。あんなに追い詰められてて、さ。
 それでも。それでもきちんとやるべきことはやってたんだよ」

だからこそ宦官どもを許すことはできなかった。

「二郎様、ごめんなさい……」

「いや、いいんだ。もし、それこそ詠ちゃんが存命ならば涼州は安泰。だったら蒲公英を州牧として翠を太尉にできた。
 馬家の、だ。名門馬家の後継ならば実に妥当。現状の白蓮みたいに異論も湧かん。補佐に月をつければそれで済むしな。いや、月はむしろ司徒か司空だな。そしたら俺が楽できるし」

これは妄想。だが、ひょっとしたらありえたかもしらん未来だ。
くそ!なんて時代だ!
言っとくけどな!華琳に権力持たせるとか結構苦渋の決断だったんだからな!マジで!
715 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/17(土) 21:31:05.74 ID:ovSjB6Co0
「たはは、その台詞はお姉さまに聞かせないでね。お姉さまってば本当にお仕事しようとしないんだもの」

「む?俺も本気で仕事しないぞ?」

「それは袁家の官僚組織が整備されてるからでしょ?うちはそうじゃないんだよ……」

たはーと言った風にがっくしと。

「ん。じゃあ翠は今も書類に追われているのか?」

だったら俺とのアポを放り出しても仕方ない。いやさ。それならば天晴れ天下御免である。

「えーと」

対する蒲公英の表情は冴えない。

「なんだ男か」

「え?なんで分かるの?」

マジか。いやいやいや、あの翠が男とって、ありえんだろう。
しかしこれは大問題ですよ?あの翠が逢引とか、私、気になります!

「ええと、蒲公英の推測だから、ね?」

「よいではないか、よいではないか。あの翠が一体どんな男に引っ掛かったんだね?」

我ながらうさんくさい口上なんだが、蒲公英の答えに俺は凍りつく。

「多分、なんだけどね?一刀さん、と思うんだよ」

「なん……、だと……」

マジか、マジなのか。
そんな俺の表情を見たのか、蒲公英がフォローしてくる。

「いやでもね?ほら、一刀さんも桃香さまもいい人たちじゃない!
 うん、たんぽぽ、二郎様がそんな顔することないと思うんだけどなー!
 いや、そりゃあ二郎様とのお約束をすっぽかしたのはアレだけど、ほら、そこは若気の至りってことでひとつ!」

「蒲公英よ、一体何をそんなに慌ててるのかな?」

「いやいやいやいや。だって二郎様目が笑ってないもの。やだなー蒲公英もっとこう、にこやかな二郎様が好きだなーって思うんだよ。
 ほんと二郎様のその、無表情な顔とか見てたら辛いって言うか!」

ん。少し頭を冷やそう。確かにここで蒲公英に当たっても意味はない。八つ当たりにしかならん。
なにより、メンタルのタフさ加減では定評のある蒲公英がマジ泣き寸前ってのがなんかこう、後ろめたい。

「怒ってないよ?別に怒ってないよ!俺を怒らせたら大したもんだよ!
ほら、蒲公英!怒ってないから!」

「ほんとに……?」

「あー、怒ってないとも。平常心!平常心そのものさ!」

「……。
そっかー、よかったー。よかったよ」

「少なくとも俺個人の感傷、感情で馬家の当主に対して何か思うことはない。ありえない。
 馬騰さんにはお世話になったし、な」
716 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/17(土) 21:32:18.73 ID:ovSjB6Co0
「やっぱ怒ってるじゃない!」

「怒ってはいない。怒ってはいないぞ?苛立ちはあるが、な。聞く気はあるか?」

「ええと、分かっていると思うの。ほんと、お姉さまがごめんなさい。二郎様とのお約束をないがしろにするとか、本来ありえないのは蒲公英分かってる。
 ほんと。ごめんなさい。馬家と袁家が、ううん。袁家主導のこの流れに異議を唱えるようなものだもの」

「まあ、だからかも知らんがな。翠は反骨の気風。袁家が差配するこの漢朝、反感あってもおかしくはないかもしれん」

「それはあるかもしれない。んー。そこまでお姉さまを分かってる二郎様にはお姉さまをモノにしてほしいなあ。あ、勿論たんぽぽでもいんだよ?」

「そこで茶化すな」

茶化してるわけじゃないもん、とか言うのは無視する。

「翠の反骨、それはいい。それは気骨というものさ。
 だが、その判断を人に委ねるならば話は別さ」

「ん。……でも。
でもね?一刀さんも桃香様もいい人たちだよ?」

その言葉が俺を切り裂く。

「ああ、きっと俺よりいい人たちなんだろうさ」

「やだ、たんぽぽ別にそういうつもりでいったんじゃ……」

あたふたと慌てる蒲公英がなんかとても可愛らしく思える。

「勘違いするなよ、蒲公英。お前はそこを勘違いしてはいけない立場なんだぞ」

「へ?」

「言っておくがな、為政者に人格は必要ないと知れ。為政者は更に結果で人格を語られるもの。人格者だから世が治まるのではない。世が治まるのであればそれはその為政者は人格者となる。
 分かるな?」

こくり、と蒲公英は頷く。

「でも、認めたくないなんだよ。それを言うならば、叔父様よりも韓遂さんの方が涼州の為政者として相応しかったってことになるかもしれないじゃない」

なるほど。と言うか。

「そこは論点がずれてるな。翠と蒲公英。二人の想い。それだけで馬騰さんは州牧として望めないほどの方だったさ」

「うう、その物言いはずるいー!そんなこと言われたら、頑張るしかないし!」

うう、と涙目の蒲公英である。
こいつ、俺と同じくサボりたがりだが、俺より純情かつ真面目だからなあ……。

「なに、蒲公英一人くらいどうとでもしてやるから、さ」

まあ、翠はいつか暴走しそうだし、馬家の武威を思えば抱き込んでおいて損はないと言い訳する。
いや、俺はこの可愛い子がかなーり気に入ってる。多分、きっと、だ。姐さんも気に入ったはずだしな。

「そんときゃ、黙って俺に付いてこい!」

俺は、俺が好きな人たちと幸せになりたいんだ。
それを、言語化した方がいいんだろうなあと思いながら。

そんなこんなで夜は更けていきました。ということで一つ。
はい。
717 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/17(土) 21:33:15.02 ID:ovSjB6Co0
本日ここまですー感想とかくだしあー

題名、なんだろうな。
「馬家懇親会」?いまいちだ。
浮かばないので助けていただいたら嬉しいやつです。
718 :赤ペン [sage saga]:2021/04/19(月) 15:45:58.27 ID:Nsz0pjb10
乙でしたー
>>708
>>からからと笑う夏候惇に流石の夏侯淵が絶句する。 まあ一度味方認定したらトロ甘になりそうよね、それでも最後の一線とか絶対に守るものとかは間違えたりしないけど
○からからと笑う夏候惇に流石の夏侯淵も絶句する。 これは夏侯惇があけっぴろげな事を言うのはいつものことだけどそれでも想定以上だったという事かしら?
>>715
>>たはーと言った風にがっくしと。    これは溜息ついてるのか苦笑してるのか
○たはーと遠くに目をやり、がっくしと。 もしくは【疲労困憊と言った風にがっくしと】とか【羨ましいとばかりにがっくしと】とかどうでしょう

この自分に求められてるものを分かってて脳筋してるのが最高にかっこいいね、これには曹操もにっこり。d姉との間に子供かあ…できたらいろいろな重しになりそうだからこそ二郎側から躱しそう
馬家の姉ちゃんはさあ…約束しないならまだしも約束すっぽかすとか脳みそたりてる?恋愛脳になって脳の大部分のリソース使い切ってない?
恩人に砂掛けるような奴は助けた亀に海に突き落とされても仕方ないんだよ、キビ団子をあげた犬に手をかまれて、鶴を助けたらその日の晩にやってきた美人さんに美人局されちゃうよ?
というか蒲公英の推測ってことは一刀と天秤にかけてあっちを取ったのでもなく恋煩いして体調不良()で欠席したのか?ヤバいですね!
馬家二の姫が覚悟を決めたかな?叔父様が治めてた涼州をそのままに守ってくれようとしてる凡人とせっかく受け継いだのに恋愛脳で現を抜かす姉さま…これには一刀もにっこり
719 :青ペン [sage]:2021/04/19(月) 16:05:34.52 ID:DL3LDQZGo
>>717
まったムズいシチュだねぃ

『凡将と戯れるは西涼の華』
とでもしとこかー?
720 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/19(月) 21:07:11.03 ID:pLNR6mbv0
>>718
赤ペン先生いつもありがとうございますー!
やったぜ!

>この自分に求められてるものを分かってて脳筋してるのが最高にかっこいいね、これには曹操もにっこり。d姉との間に子供かあ…できたらいろいろな重しになりそうだからこそ二郎側から躱しそう
姉者は地頭よさそうなんですよね・・・。変にはおーに粉かけないだけで冷静にあれこれ対応してくれる印象です。
そらはおーも重用するよねって感じです。逆に重用するのは、粘膜関係だからじゃないと思うのですよ。

>馬家の姉ちゃんはさあ…約束しないならまだしも約束すっぽかすとか脳みそたりてる?恋愛脳になって脳の大部分のリソース使い切ってない?
ほんと同じ脳筋でどうしてこうなった
原作の原作が影響しているのかなあ
キャラとしては大好きなのですけどねw

>というか蒲公英の推測ってことは一刀と天秤にかけてあっちを取ったのでもなく恋煩いして体調不良()で欠席したのか?ヤバいですね!
蒲公英は取り繕ってますがやばいです!いや、やばいやろ。。。

蒲公英の苦難はそれとなく始まったな感ありますね(適当)


>>719
どもです!
やったぜ!ありがとうございますー!

>『凡将と戯れるは西涼の華』
これはよきですね。流石です。仮採用あざます!
721 :赤ペン [sage saga]:2021/04/21(水) 10:11:05.37 ID:YqNSjTTD0
個人的には【言った風に】よりも【言わんばかりに】が好み
最近やってるアニメでスローライフがしたいって言ってる主人公が色んな厄介ごとを持ち込まれるというか家に厄介な人がやってくるのがあったんだけど
何であいつ引越ししないのかしら
722 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/22(木) 21:34:10.89 ID:4UkduHyo0
>>721
>最近やってるアニメでスローライフがしたいって言ってる主人公が色んな厄介ごとを持ち込まれるというか家に厄介な人がやってくるのがあったんだけど
気軽に引っ越し出来ない層に共感してもらうため、とか?
ご近所は選べないですからねえw
723 :赤ペン [sage saga]:2021/04/27(火) 18:19:53.80 ID:SrARA4X30
なんか最近超不安定…不安定じゃない
ご近所じゃないんだよ、そこに住んでる有名人(主人公)に会うために遠方からわざわざ訪ねてくるんだよ…(なおどこそこの職業、という通り名なので住みかと恰好を変えれば大分ましになると思われる
しかも主人公は世界最強クラスだからその気になればどこだろうと生きていけるスペックはあるんだ(生活力は知らんが
724 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/27(火) 18:24:00.28 ID:YZSQvDDu0
>>723
興味出たので教えてくだしあ
チェックします
725 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/27(火) 19:31:37.98 ID:YZSQvDDu0
ふにょり、という擬音が一番ふさわしいだろうか。
だが、それは内包されたポテンシャルを表現しきってはいない。柔らかでいて、なおかつ圧倒的な質感。たわわに実った豊穣。その、人の世を明るく照らす希望を象徴するようなそれ。
人はパンのみに生きるに非ず。そう、物質的な豊かさのみならず、精神の豊かさすら満たしそうな、そんな神の存在を確信してしまうほどに完成され、未だ進化の可能性をも内包する存在がある。
人は生きるために五つの知覚を備えている。そのうちの一つ。触覚のみでここまでの幸福感を味わうことができるとは――。

「あなたが神か」

そう独白したのもやむをえないところである。人、それを現実逃避と言う。

「……貴方は一体何を言っているのですか」

その、状況としては、だ。俺が関羽を押し倒しておっぱいをわしづかみにしているという、なんだそれ。うん、神は死んだ。そしてこれは俺も死んだかもわからんね。

◆◆◆
726 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/27(火) 19:33:55.06 ID:YZSQvDDu0
「いや、正直すまんかった」

「いえ、公道を走っていたのは私の方ですから。ならば激突の件については私に非があるかと」

神妙ながらも微妙に含むところのあるような表情でそんな口上を述べるのは関羽だ。
うん、そうなんだ。洛陽の十字路を曲がったとこで、全力疾走してきた関羽と正面衝突して、だ。なぜか俺の両手は関羽の双丘に。それなんてエロゲ?な展開に頭が沸騰しそうだった俺である。
ただ、その相手が関羽という武の巨人――別に巨乳の人という意味ではない――である以上、六文銭を意識するのは致し方ない。いや、それすらも現実逃避であったのだが。
幸いにも、不幸な事故ということで関羽も納得してくれた。いや、やばかった。あそこで揉みしだいていたら、いかなる言い訳も通用しなかったであろうからに。
頑張ったな、俺。誰か褒めて。

「しかし、なんであんなに走ってたの?」

なんでも、老婆から荷物をかっぱらったごろつきを追っていたらしい。なんとも義侠心のあることである。ご丁寧にと言うか流石と言うか、そのごろつきの特徴まで観察していたのは流石である。

「まあ、しかしだ。そこまでその犯人の人相風体を把握しているならば後は官憲の仕事だろうよ」

「む、ですが……」

「なに、餅は餅屋、さ。どうせ初犯じゃないだろうしな」

微妙に納得していない風であるが。

「何だ、そんなに信用ならんかね、官が」

「はい。はっきり言って、ここのところの世の乱れ。それは官の不徳故でしょう。例え犯人の特徴を伝えても、検挙に至らない。そう、思ったのは事実です」

政治不信。ここに極まれりだね。

「だったら、犯人を捕縛して官吏に突き出してもまともな処罰は望めないなあ。
それとも、私刑(リンチ)でもするかい?」

「む……。それは……。
いえ、正直そこまで考えてませんでした」

「まあまあ、義を見てせざるは勇無きなり、だそうですし〜」

それまで黙っていた風が口を挟んでくる。ほんとはメイン軍師たる風と二人での会食の予定だったのだ。

「そろそろお料理も来ると思いますし、あまりここで深刻になる必要もないかと〜」

そう、ここは超のつく高級料亭。
あれだ、翠と蒲公英の接待に押さえてた枠を消化しに来る途中で至福のおっぱいを堪能したというわけだ。ほいで、事故(セクハラ)のお礼――お詫びと人数合わせを兼ねてご招待したわけだ。

「いや、私はこれで失礼しようかと。
このような歓待を受けるいわれもないと思いますし」

戸惑う関羽である。キョドり具合が割と可愛い。
ちなみにここまで関羽を誘導というか、連行したのも風である。言葉巧みに誘い込むその手練手管に全俺が戦慄した。ほんま、風を敵にしたらあかんでぇ……。

「おやおや。本気ですか〜?このような機会、望んで得られるものではないですよ?
 三公の筆頭たる方と、このような場で会える。
 そのことの意味、軽く考えすぎではないですか〜?」

「紀霊殿の地位は、認識しています。だが、その地位におもねると思われるのは不本意ですね。
 あくまで私の主君は桃香様でありますし」

それを聞いた風がくすくす、と風が笑う。

「本気でそうおっしゃいますか?いや、正気ですか、とお聞きするべきでしたかね〜」

ころころと鈴を転がすような声で……それ、挑発だよね。
ほら。ほらほらー。
怖い人が、視線だけで人が死ぬようなそんな目つきになりそうですよ。

「何が、言いたいのですか……?」
727 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/27(火) 19:35:04.23 ID:YZSQvDDu0
殺気すら纏う関羽の言葉を受けても、風は動じたりしない。当たり前だよね。そんな繊細さなんてないに決まってるもの。

「おやおやー。本気でお分かりでない。これはびっくりなのですね〜。
 二郎さんに言わせると、あっと驚くだめごろう、なのです〜」

「ためごろうだよ!」

「おお、間違えました!」

ちがう、わざとだ!

「いや、わけがわからないのですが……」

気勢を削がれたのだろうか。それでも関羽が戸惑いながらも問いかけてくる。

「おやおや、これは嘆かわしいですねえ。三公の長たる二郎さん。その方とお話できる機会の価値をお分かりでないと。
 いやしくも漢朝の一端を担うべき方の自覚、識見いかがなものかと。これはその上司の程度も知れますね〜」

くふ、と含み笑いの風に関羽は激昂する。

「私のことはいい。だが桃香様を愚弄するのは許さん!」

その、殺気と変わりないほどの怒気を受けても、風にはまさに柳に風。

「さてさて、許してもらえないとのことですが、どうするのですかね〜。手討ちですかねえ。こわや、こわや……」

ここで思い出したかのように俺を見てにこりと笑い――いや、可愛いんだけどね――、とてとてと俺に駆けより、陰に隠れる。っておい。

「風は二郎様の臣ですので、生殺与奪の一切は二郎様にお任せしてるのですよ。
風を討ち取りたいのであれば、二郎様を通してくださいね〜。
無論、二郎様の命であれば風はいつでも応じますので」

そう言いながら、きゅ、と抱きついてくる風。あざとい!実にあざとい!キュンとするじゃんか!マジ俺チョロい!
つか、風は俺のメイン軍師なんだからそんなことするわけないじゃん。と、口を開こうとすると。

「――いえ、失礼をしたのは私ですね。できればご寛恕願いたい」

そう言って頭を下げる関羽に流石の風もびっくりどっきりであるようだ。

「いえ、程立殿の言、いささか耳に痛かったのは事実ですが、感じ入りました。武と文、道は違えどもその心根は同源。そして頭が冷えたのも事実です。
 そして私はもっと視野を広げなければならないと思いました」

だから、問わせてくださいと関羽は頭を下げる。

「紀霊殿は、どうも桃香様、そしてご主人様に辛く当たっている、と思うのですが」

ほお。
728 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/27(火) 19:35:32.30 ID:YZSQvDDu0
目線で口を開こうとした風を抑えて、俺が応えてやる。

「言ってる意味が分からんね。正直、妥当か、むしろ甘めだと思っているが」

「本気で、そうおっしゃるか」

「あ?
俺の言を聞かないなら、これ以上の問答は不要だな」

帰るぞ風、と言おうとしたのだが。

「まあまあ、二郎さん、時に落ち着いてくださいませ〜。関羽さんも力を抜いてくださいな」

「んなこと言ったって、さあ……」

「くふふ、ここは風にお任せ願いたいのですよ〜」

メイン軍師にそう言われてはいかんともしがたい。
フン、と拗ねてそっぽを向いてやる。

「さて、関羽さん。貴女(あなた)は一体どうしたら満足されるのでしょうかね?」

くふ、と柔らかい笑みを内包したまま風が問う。

「決まっている。桃香様、それにご主人様が正当に評価されることだ」

胸を張り。高らかに、誇らしげに関羽は宣言した。実に見事な胸部装甲である。李白か芭蕉がこの光景を詩歌にしたものを聞いてみたい。
問題は、この時代の詩才については華琳が図抜けていることか。などと思いながら風の切り返しを楽しみにしていたのだが。

「ぐう」
729 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/27(火) 19:36:04.24 ID:YZSQvDDu0
まさかのいびきである。
ダン!と卓を関羽が力任せに叩く。よく壊れなかったな、と思うほどの勢いである。

「おお!寝てました!」

これは確定的にわざとなんだろうなあ……。

「貴女は!真面目に人の言うことを聞く気があるのか!
自分から問うておいて!」

あー、これ関羽さん本気で怒ってますわー。
でも風ちゃんたら、毛ほどにも痛痒を感じていないみたいですわー。

「いえいえ、風は真面目ですよ?あまりにも眠たいことを関羽さんがおっしゃるので、睡魔に身を委ねただけです〜。
 だって風や二郎さんは、そのような実体のない売込みにはうんざりしているのですよ。
 目立った武勲、功績のない貴女たちに報いる必要はないのですね〜」

「話にならなん!桃香様のような方に相応に報わないなぞ、正気とは思えん!」

にまり、と僅かに風の口元が歪んだ。

「これはしたり、ですね〜。課せられた職責。それを放り出すような人材。
言っておきますが、白蓮さんの強い援護と推挙がなければ幽州のいち官吏となることもできなかったのですよ」

くすくす、と心底おかしげな風。さしもの関羽も言葉を失う。

「ええ、先ほど官吏が信用できないとおっしゃいましたが、さて。
与えられた職責を放り出す官吏。これほど貴女の言う、信用できない官吏に当てはまる条件もないかと〜」

その言葉に反論しようとする関羽を目線一つで制止して言を連ねる。

「そして、貴女が信用できないとおっしゃった官吏。その中で治安を担うのは星ちゃんなのですよ。
 星ちゃんが信用できないとおっしゃる。
いやあ、泣く子も黙る執金吾、鬼の趙子龍。
洛陽の治安を一身に担う星ちゃんの声望を貶めたいのか、それとも妬ましいのか判断に困るところではありますね〜」

楽しんでそうだなと思ったのだが、眠たげな表情はむしろ苦みを含んでいて。
730 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/27(火) 19:36:40.62 ID:YZSQvDDu0
「論点をずらさないでいただきたい!」

「ずらしてなんかいませんよ?
結局は貴女が心酔している方を優遇しろと言っているだけです。
いやいや、まだしも宦官の方がマシじゃないですかね?
対価を用意するだけ」

対して貴女たちは恫喝だけでしょう?

「な!宦官以下だと言うか!」

激発したならば俺じゃあ関羽は止められないって知ってるくせに、風よ!
いや、それが狙いか?それは、それは許さんぞ?

「のっぴょっぴょーん!」

かいしんのいちげき!シリアスさんは死んでしまった!

「な、なにを……」

ここは勢いでたたみかける!

「関羽。貴様の忠誠はいい。だがな、それは何に対してだ。それを考えろ。
 劉備に対してか、北郷一刀に対してか、その思想に対してか。
 それとも、漢朝に対してか、な。
 正直、ね。お前さんの忠義、ブレすぎだと思うよ。いやさ、絞れていない、か。 
 何が大事か、考えてみろ。それができないとは言わせん。そんな奴が白蓮の下に就くなぞ許せん。
 いいか。白蓮は中華で十三席しかない州牧となるのだ。なったんだ。
 それに対して貴様らの価値は何だ。旧友以上の価値を俺に示してみろ。それならばいくらでも報いてやろう」

せめて、だ。せめて雷薄がいたならば白蓮の補佐に付けた。韓浩にはない武威。問答無用のそれがあった。いや、それを言うならば、もっとふさわしい人材もいた。白蓮の生真面目さ、韓浩の狷介さも優しく笑って、包んでくれるような人が、いた。いたんだよ。いたのだ。

くそ、未練か、後悔か。どうにも後ろ向きな思考になってしまう。くそう。

「はいはいー。とんとんしましょうねー。とんとーん」

ぺち、と頬に走る冷たい感覚が俺を現実に引き戻す。引き戻してくれる。

「風、すまんな」

「風は二郎さんの軍師ですから〜」

くふふ、と笑ってしなだれかかる風の身体をきゅ、と抱きしめる。
肉付きの薄いこの身体で、頑張ってくれてるのだなあと痛感する。

「まあ、なんだ。俺は釣った魚には全力で餌をやるからな。欲しいものあったら言ってね。
 そして、だ。
 んー。いや、なんでもない。
主従ともに息災で、な」

たはは、と。ひらひらと手を振って詫びる。

「む、色々と反応に困るのですが」

「知るかい。困って困れよ。それがお前さんに必要なことと思うし、な」

そしてぐぬぬ、と唸る関羽である。

まあ、色々堪能したからこれでヨシ!としよう。

「くふ。忠義。それは思考回路を麻痺させるものかもしれないと風は思ったのですよ。
 関羽さん、どう思います?」

容赦ない。流石風は容赦ない。

その問いには明確に応えずに去る関羽。その悄然とした様子を見て思う。

――もうちょっと苛めたらよかったかなあ。わりとそそるやん!
いや俺にそんな趣味はなかったはずなんだけどね。
ないってば。
731 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/27(火) 19:37:06.72 ID:YZSQvDDu0
本日ここまですー感想とかくだしあー

関羽との語らいとかなんとか
題名を募集しまくりんぐですよ本当に!
732 :青ペン [sage]:2021/04/28(水) 08:27:54.46 ID:EC+7tbDpo
>>731
そうなぁ…。
武人と軍師の禅問答〜汝が忠義は何処を向くや
733 :赤ペン [sage saga]:2021/04/28(水) 17:43:54.43 ID:lB/rRXVx0
乙でしたー >>724【スライム倒して300年知らないうちにレベルMAXになってました】ですね…私はそろそろ切ろうかと思ってますが
>>725
>>だが、それは内包されたポテンシャルを表現しきってはいない。 【ポテンシャル】だと【まだ眠ってる才能】とか成長性のようなニュアンスがあるので
○だが、それは内包された真価を表現しきってはいない。     もしくは【価値】、【スペック】、【値打ち】、【あり方】とか?
>>726
>>「いえ、公道を走っていたのは私の方ですから。  公道とか私道の概念ってあるの?というか仮に私道だろうと十字路でぶつかるようなスピード出しちゃいかんでしょ
○「いえ、道を走っていたのは私の方ですから。  ついでに(人生の)道を間違えてますよHAHAHA。それとも【いえ、ぶつかったのは】とかどうでしょう
>>検挙に至らない。そう、思ったのは事実です」 間違いと言うほどではないですがこの【そう、】に違和感が
○検挙に至らない。そう思ったのは事実です」  もしくは【そう思ったのは、事実です」】だと不信感に重みが出るかな?
>>730
>>「のっぴょっぴょーん!」

かいしんのいちげき!シリアスさんは死んでしまった! ごめん…ちょっと意味が分からない。空気を変えて話題も変えるならありだけどこの後真面目に話が続くと温度差で風邪ひいてコロナと間違われて白い目で見られそう
○「風。お前が俺だけじゃなく親友たる星まで愚弄されたと憤るのは分かるが言い過ぎだ。俺を止めたお前を今度は俺が止めるとか漫才じゃねえんだぞ」

心底疲れる。と深いため息とともに風の頭に手を置けばするりとその手を頬に誘導し、雰囲気を甘いものに一変させる……そのあまりの変わり様に流石の関羽も理解が追い付かないようだ。――ここだ。 風ちゃんなら二郎が明確に止める行動をとればそっち方向に180度逆走して慣性を置き去りにできると信じて
実際関羽もさっきまでの自分の言動が星を貶してた、だから程立が怒ってる、と言われたら剣は抜かんだろうし――その後の頭なでなでからのほっぺたすりすり?俺の趣味だよ言わせんな恥ずかしい
>>「知るかい。困って困れよ。それがお前さんに必要なことと思うし、な」 困ることが必要な事…まあそれでもいいか?
○「知るかい。困って悩めよ。それがお前さんに必要なことと思うし、な」 悩め若人。とか言ったのは誰だっけ?悩んで自分で答えを出すのが必要かなあ


>>「あなたが神か」 関聖帝君「とんでもねぇ!あたしゃ神様だよ」こうですかわかりません
>>無論、二郎様の命であれば風はいつでも応じますので」 多分ここで関羽の腑に落ちたんだろうね、自分が二郎を愚弄すること言ってたことを(なお星を信頼できないと言ったことには気づいていなかった模様)。それに対して風が「私の主を馬鹿にするお前の主の程度が知れる」って言ったうえに「自分は主の生殺与奪の権は主の物だ」と言い切られたらそりゃあ、ねえ
さっきまでバチバチに、というか一触即発だった相手が急にピンクな空気まき散らしてメス顔しだしたら普通はついていけない、うぶなねんねじゃなおの事よ…
あともしも>>「のっぴょっぴょーん!」 で行くならこの後の話>>「関羽。貴様の忠誠はいい。 の部分をもっと立て板に水な勢いで言ってほしいです
>>「関羽。忠誠はいい、それはいいのよ。でもね、それは何に対してだっつー話よ。それを考えて?
 劉備?北郷一刀?その考え方?
 それとも、漢朝に対して?
 正直、ね。お前さんの忠義、ブレッブレじゃん。いや、びしっと決まってない感じ?何が一番大事かがさぁ。
 それが決められないとか言うなよ。そんな奴が白蓮の下に就くなんて許さんからな。
 いいか。白蓮は中華で十三席しかない州牧になるんだ。なったんだよ。
 それに対して貴様らの価値は何だよ。旧友だからって白蓮に頼りっぱなしにしか見えないのさ。ちゃんと見せてくれたらいくらでも報いてやれるんだぜ」
こんな感じで
734 :赤ペン [sage]:2021/04/28(水) 19:10:39.82 ID:lB/rRXVx0
あ、いや【それを考えて?】より【その辺分かってる?】の方がらしいか
そういえば二郎ちゃんの忠誠は袁家と袁紹と袁術のどこに向いてるのか…袁紹を仰ぎ見て袁術を庇護してる感はあるけど
735 :赤ペン [sage saga]:2021/04/29(木) 12:47:21.91 ID:L85lqpaS0
そういえばこの時代って漫才あるんだろうか?まあいいか、前に張遼と邪魔すんなら帰って―のコントやってたし
736 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/29(木) 21:23:59.06 ID:LUKBNKgH0
>>732
どもです!

いい感じですね。ちょっといじるかもしれません。

>>733
赤ペン先生いつもありがとうございますー!
スライム、チェックしてないので見に行ってみます。ご紹介ありがとうございますー!

>「あなたが神か」 関聖帝君「とんでもねぇ!あたしゃ神様だよ」こうですかわかりません
やってみたいw
実装してみたいw

今回は色々と感想返しできない感じで検討案件ありがとうございました。

>そういえばこの時代って漫才あるんだろうか?まあいいか、前に張遼と邪魔すんなら帰って―のコントやってたし
アイドル活動もあるのでね。。。
あれ、帰ってんかって真桜案件じゃなかったっすけ(自信なし
737 :赤ペン [sage saga]:2021/04/30(金) 10:31:59.74 ID:JYGo89ON0
本当だ。親友が惚れてる男のことを〜でやってたわ
おいは恥ずかしか!
738 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/30(金) 12:33:54.84 ID:/9uO/TSS0
>>737
リカームばい!
(先行入力)
739 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/04/30(金) 14:18:40.51 ID:/9uO/TSS0
山の神緊急搬送
緊急オペ
虫垂炎?
740 :赤ペン [sage saga]:2021/05/01(土) 09:00:37.75 ID:Wa8NLcjv0
赤ペンの姿か?これが…生き恥
山神さん大丈夫ですかねえ、病床が埋まってて一般も受け入れできないみたいなところもあると聞きますが
741 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/01(土) 09:12:56.83 ID:i39+ocLz0
>>740
まだパンデミックじゃないから潜り込めました
オペして予後です
申し訳ないが今のうちにやっとかんと受け入れもできんことになるかもしれない
正直変異株の強さはマジやばいみたいなので、
万全でも感染しそうという危機感はあります
742 :赤ペン [sage]:2021/05/05(水) 21:19:26.17 ID:Nh+YxJeK0
あ、ありのまま起こったことを話すぜ
俺は恥ずかしさに悶えていたと思ったら気づいたらリカームを掛けられていた
生きてはおられんごっとか合掌ばいなんてちゃちなものじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ
743 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/06(木) 22:50:06.73 ID:zEkwrGa/0
>>742
ザ・ワールドすらを越えてキング・クリムゾン!

そして時は加速する!

というわけで今日はやります
744 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/06(木) 22:53:54.45 ID:zEkwrGa/0
「いやあ、やっぱり凪の作る料理は美味いわ」

しみじみと李典が口にした台詞。それに全力で于禁が同意する。

「ほんとなのー。ますます腕に磨きがかかってる感じなのー」

赤くないし、辛くないもの。と于禁は内心で呟く。いや、それを除いても腕に磨きがかかっているというのは嘘ではない。

「そ、そんなことはない。まだまだだ、と自覚している」

楽進の言葉は謙遜ではない。まあ、比較対象が典韋であることを考えると比較基準がおかしいのだが。
とはいえ、年少とは言え料理の腕も、武も典韋に一歩どころではない差をつけられていると楽進は思っている。
前者はやはり専門の料理店である程度修行し、下地が違うと言える。後者については完全に肉体的な性能(スペック)の差ではある。だが、どちらにおいても現時点の話であり、日々研鑽を惜しまぬ楽進の未来は明るいであろう。それにどちらも常人レベルを逸脱しているのではある。
そして、料理については。

「どっちもすごく美味しいよ?あとはまあ、業務用と家庭用の違いかな?」

と某青年はコメントしている。そう評された二人はそれぞれに奮起したものだが。

「にしても真桜、最近ますます忙しそうだな」

「せやねん。最近な、いよいよ兵装が一新されそうでな?その内容で侃侃諤諤(けんけんがくがく)なんよー。鎖帷子(くさりかたびら)か板金鎧(プレートメイル)かで揉めとってなー」

李典の漏らした言葉に楽進が柳眉を逆立てる。

「おい、それは機密じゃないのか!?」

それに李典はひらひらと手を振る。

「かまへん、かまへん。二人ともそんなん漏らせへんやろし、漏れても困らんしな」

「そうなの?次期兵装の内容なんて結構な利権の塊だと思うのー」

その言に李典は苦笑する。

「どっちもなー。
母流龍九商会の工房以外に作れんのや」

無論、一点ものであれば話は別である。が、数万に及ぶ兵卒に供給しようとなれば。

「なんとも、まあ。流石は真桜、といったところか?」

楽進は嘆息する。そう言えば昔から楽進の技術――という言葉では表現できない――は自分たちを大きく助けてくれたものである。

「ちゃうねん、ちゃうねん。そらな、うちかて母流龍九商会技術部部長としての矜持はあるし、それに相応しい腕も持っとると自負しとる」

だが、と楽進は語る。

「技術開発っちゅうやつはな、確信的な閃きも必要やねんけどな、それだけやったらあかんねん。
 ほんまに大事なんはな、地道にコツコツと続けて基礎を積み重ねることやねん。それが一番大事やねん。
うち一人やったらほんまたいしたことはでけへん」
745 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/06(木) 22:54:20.37 ID:zEkwrGa/0
その言葉に楽進も于禁も大きく頷く。

「確かにそうなのー。沙和がいくら色々と意匠をこらしてもお針子さんがいなければ、それを縫えなければ意味はないのー」

デザインの革新的なその発想で于禁は母流龍九商会の服飾部で優遇されている。阿蘇阿蘇への掲載も多い。
だが、実際に型紙から縫製するのは無論于禁ではないのだ。

「せやねん。金型一つ作るんでも、部品同士のすり合わせするんでもな。これがうち一人やったら……一生終わらんわ。全身覆う板金鎧とかどんだけの部品いるねん!頭おかしいんちゃうか!ってな。」

ここで某青年の布石が活きる。
似非産業革命を目指した彼がもたらしたものはフォード式流れ作業的なものであった。一つの製品の工程を分解し、それ専門の工員を育成するという未来の発想。
無論、当初は「安かろう、悪かろう」だった製品も、だ。数年も経てば工員の習熟度でそれなりの品質になる。そう、工程が10あって習熟に20年かかるならば10の専門工員に任せれば2年で熟練工員の出来上がりだ。極論ではあるが。
……無論それほど単純なものではないが、規模は力である。そんな感じで母流龍九商会はこの時代ではありでないほどの生産効率を実現している。そこいらへんについては帳簿と戦いながら人員のバランス、習熟度。そして荒っぽい工員をまとめ上げた人物の貢献が大きい。いや、その人物がいなければここまではならなかった。一言で言うならば。

「張紘、パねェ」

まあ、そういうことである。

無論、現場を叱咤激励し、二徹三徹当たり前で陣頭指揮に当たっていた李典の功績も大きい。身を削るそれは自分の探究心もあるだろう。だが。

「ほんなこと言ってもな、二郎はんのためやもん」

その言葉に于禁は驚愕する。

「そらな、好き勝手に研究できるのは嬉しいし、楽しいで?でもな。やっぱ嬉しいのんは、うちらの考えた製品を、な?皆が使ってくれてたら、な?
それってとっても素敵やん?」

使われてナンボ。かつては諦めていたその思い。
そして舞い戻るのは。

「まあ、それもこれも二郎はんのおかげやねんけどな」

楽進はこの上なく理解している。彼の援助がなければ、細々と一点ものの自己満足の品を作るしかなかったであろうことを。

「そうだな。真桜の言うことはすごく分かる。私も、自分が考えた食材の組み合わせ。それが軍の献立に採用された時は本当にうれしかった」

大人数……軍規模のレシピは典韋の独壇場である。彼女はその腕前もさることながら、紀家軍秘伝のレシピを会得しているというのも大きい。
だが、いや、だからこそ。そこに一つでも足跡を残すことが出来た時、楽進は感涙にむせび泣いたものだ。これで意外と楽進は負けず嫌いなのだ。いや、向上心があると言った方がいいかもしれない。ちなみに某青年にはないものである。

「何より、二郎様の為になると確信できたからな!」

ドヤ顔の楽進に于禁は内心苦笑する。だって彼女は今現在彼氏募集中なのだからして。

「凪はほんまがんばっとったもんなあ。料理屋借り切っての味覚調査とか普通自腹でやらへんで?いやあ、愛やね、愛!」

「そ、そこまでするの?!」

応えるのは顔を真っ赤に染め上げた楽進である。

「そ、その、だ。なんだ。そう。少しでも、二郎様の負担が減れば、と思って、だ。
 いやほら、戦陣での食事は不味いというのが相場だろう?そしたら、二郎様の軍。そこのご飯が美味しかったら、少しでも士気が上がるかな、って思って、だ。無論、典韋殿がいるから最低限の味は保障されているけれども、それでも私も、だ」

「真桜ちゃん、沙和げっぷがでそうなのー」
746 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/06(木) 22:55:11.15 ID:zEkwrGa/0
苦笑する李典。尚も語る楽進。于禁は思う。ああ、これが恋の力かと。そういったこととは縁遠かった二人がこうまで、と。そしてその思いは自らに。

「まあな、ほんま二郎はんは罪な男やで。なあ、凪?」

「い、いや。私は、だ。私のような武骨者が果たして二郎様に相応しいか。
 それでも、お傍にいたい。そう思うのは罪なのだろうか……」

深刻そうな楽進の様子に于禁はちょっと待て、と声を荒げる。

「凪ちゃん!待ってほしいの!
二郎さんなんて優良物件を掴んどいてその弱音は万死に値するの!家格よし!人格よし!
そこにきて凪ちゃんへの寵愛よし!これ以上何を望むのかと問いたいの!」

昂ぶる于禁の言の葉に楽進は圧倒されていた。

「凪ちゃんの言うことはいちいち贅沢なの。だっていつもの凪ちゃんならば自分を研鑽する方に思考が向くはずでしょ?
それがこんなに!そんなに!」

言い募るうちに于禁は思う。これでは。
ふと、黙り込んだ于禁を見て李典が茶化す。

「なんや、沙和。えらい熱心やなあ。
さては二郎はんに懸想しとるんとちゃうか?」

「違うもん!
 ……でも、沙和にも縁談あるけど、比べちゃうもん。
 二郎様と比べちゃうもん。だって、それは仕方ないでしょ!
 仕方ないじゃない!凪ちゃんも、真桜ちゃんも幸せそうでさ!
 置いてかれた沙和は羨ましいな、って思うしかないじゃないの!
 持ち掛けられる縁談!相手を比べるのが二郎様で!だったら頷けないって当たり前でしょ!」

びすびす、と泣き出した于禁をよしよしと抱きかかえながら李典は楽進に目線を送る。

「真桜、そこからは私が。
 沙和。二郎様はその、なんだ。素晴らしいお方だ。だったら、その身を、心を委ねないか?」

おずおず、といった楽進の言葉に李典がかぶせる。

「正直、沙和はしっかりしてるようでアレやからな。ええ加減な男に引っ掛かるくらいなら、と思うんよ。
 あれでええ加減ちゃうよ?きちんと、その……可愛がってくれるんよ。
 せやない!せやなくて!」

くすり、と于禁は笑う。艶やかに。

「もう、真桜ちゃんと凪ちゃんがいつもそんなに言ってるから、他の人なんて眼中になくなるのは当然なの」

于禁が頷く前に李典は笑う。

「いや、助かったわ。沙和、ほんま助かったかもしれん。うちと凪の二人やったら連戦連敗やったからな!
 うちら三羽烏の連携あらば、一矢報いてお釣りがくるやろうて……」

なお、ツインシュートは完封されていたが、トリプラーについては効果抜群であった模様である。
747 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/06(木) 22:56:05.83 ID:zEkwrGa/0
本日ここまですー感想とかくだしあー

題名案はなんだろな
「三羽烏の語らい」
うん、微妙ですね、いい案よろしくお願いします。

お盆くらいにはあっちでやれるかなあ。
748 :青ペン [sage]:2021/05/10(月) 11:56:03.48 ID:OphIVA6Ko
>>747
何を悩む必要あろかいな
こんなん【女三人寄れば姦しい、況んや恋話をや】で解決やん
749 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/11(火) 05:49:51.50 ID:UNqK5XH40
>>748
その手があったか!
750 :赤ペン [sage saga]:2021/05/12(水) 17:05:52.42 ID:ldIv6hvw0
乙でしたー
>>744
>>それにどちらも常人レベルを逸脱しているのではある。 ちょっと言い回しも変えてみるか
○それにどちらも既に常人の域を凌駕しているのだ。   【逸脱】はニュアンスとして好ましくない外れ方って感じなので【凌駕】とかどうでしょう
>>と某青年はコメントしている。 などと容疑者は供述しており、我ら独り身友の会によるシケイの執行が待たれる
○と某青年は述べている。    もしくは【との言が某青年から発せられた。】とか……むしろ【とは爆発すべき某将軍ののたまいである】とするべきか(懊悩
>>745
>>デザインの革新的なその発想で于禁は 上で言ってるように【意匠】で良いと思うけど
○趣向を凝らした革新的な発想で于禁は カタカナ警察としてはこんな感じでどうでしょう
>>似非産業革命を目指した彼がもたらしたものはフォード式流れ作業的なものであった。 固有名詞は卑怯だろうorz
○似非産業革命を目指した彼がもたらしたものは標準化、規格化、細分化による、未来における大量生産を可能としたオーパーツ(場違いな工芸品)ならぬ【場違いな工芸】であった。
>>そこいらへんについては帳簿と戦いながら人員のバランス、習熟度。 多分概要を聞いた方は「言いたいことは分かるが言ってることが分からない」な顔になっただろうな
○そこいらへんについては帳簿と戦いながら人員の質、量の平均化。  多分突出した個性はいらんと言いつつ上手くできた人を褒めちぎって全体を高レベルにまとめたりしたんだろうな…パねえわ
>>軍規模のレシピは典韋の独壇場である。彼女はその腕前もさることながら、紀家軍秘伝のレシピを会得しているというのも大きい。 もう【料理法】とか【製法】でいいじゃん…良いじゃん
○軍規模の料理は典韋の独壇場である。彼女はその腕前もさることながら、紀家軍秘伝の調理法を会得しているというのも大きい。  【レシピは典韋の独壇場】だと料理法を独占して隠してるような感じだけど彼らなら広めて研鑽しそうな気もする…そこんところどうなんでしょう?
>>746
>>だっていつもの凪ちゃんならば自分を研鑽する方に思考が向くはずでしょ? 別時空の鬼軍曹が憑依った?
○だっていつもの凪ちゃんなら自分を研鑽する方に思考が向くはずでしょ?  もしくは【凪ちゃんだったら】とか?喋り言葉としてはちょっと変かと思うけどわざとかしら?
>>なお、ツインシュートは完封されていたが、トリプラーについては テニヌなら一人でも三人でコンビネーションできるからヘーキヘーキ
○なお、二段構えは完封されていたが、三位一体については     双璧とか阿吽というほどじゃなさそうだから言い換えが難しい…とりあえず【隙を生じぬ(隙が無いとは言っていない)二段構え】は破られるもの

>>赤くないし、辛くないもの。 赤い、けど辛くないとか言う情念を隠し味にした愛情料理という電波を受信した
青ペンさんはやっぱりセンスあるなあ>>恋話…セやろか?むしろ猥だn(黒ずんでいて読めない
メタ視点で言えばエロゲ世界な事もあって必ずしも1対1であるべし、とはなっていない(もともと一夫一婦制が浸透する前は云々、戦争で男の死傷率がかんぬん)から男に受け入れられるだけの懐(いろいろな意味で)があれば産めよ増やせよ地に満ちよでいけいけGOGOなんだなあ
特に恋姫世界だと彼女たちのような選ばれし存在が種を残そうと思える男って多くないだろうし
751 :青ペン [sage]:2021/05/12(水) 23:33:51.22 ID:0w/0mtw/o
>>750
【あなたが思うより健全です】とでも返しておけばいいかな?
一応ココR板じゃないし、ね。
752 :赤ペン [sage saga]:2021/05/13(木) 13:25:25.49 ID:r4aEHrNI0
私は間違い探しのようなものだから知識があればやろうと思えばできることだけど
青ペンさんの軽妙でしゃれっ気のある題名のセンスは本当に脱帽ものだね
ところでフォード式流れ作業の大量制作で思ったんだけど阿蘇阿蘇の本ってもしかして活版印刷してたりする?
まあだとしても前にぶらり諸国漫遊してた時に袁紹様の絵姿を本に乗せるのってどうやったのかを考えると…版画でも使ったのかな
753 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/13(木) 19:01:02.10 ID:sJwL2LYb0
>>752
原作恋姫でのアソアソが謎なので謎です
量産して流通されるなら版画させたいとこですけどねー
ひょっとしたらタブレットかもしれない
754 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/14(金) 22:05:50.73 ID:BERfwGvm0
終わりの始まりを始めないといけないんだけど
覚悟が決まらないというか、どんだけのクオリティを出せるかにびびっている
その当時のベストと勝負して勝つしないんだけど、気合いの噴射が足りない
絶対今の方がこなれた文章は書けるがあの当時の疾走感を抱きしめて

明日はやります
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 23:50:25.01 ID:mvLpPVdNo
頑張ってくだしあ〜
楽しみにしております
756 :赤ペン [sage saga]:2021/05/15(土) 14:34:21.06 ID:cH10FTcf0
明日流行ります?(難聴
757 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/15(土) 15:14:39.22 ID:JSqAUlv+0
何が流行るんだろうw
758 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/15(土) 22:16:46.98 ID:JSqAUlv+0
「ふむ。
本日はここまでとする」

うず高く積みあがった書類の山。その中央で韓浩は、ぱん、と手を叩いて解散を告げる。

「しかし、今日持ち込まれた案件すら処理できておりません!」

文官たちの悲痛な声が上がるが、ぴくりとも表情筋に仕事をさせずに韓浩は応える。

「ここで夜通し作業しても貴方たちが疲弊するだけ。
どうせ明日もまた案件の山ができあがる。故に休むのも仕事の内」

さっさと帰れとばかりに手を振る韓浩に文官たちは不承不承に席を立つ。納得したとは思えない顔ばかりだ。それでいい。
明日以降はより一層の精勤が期待できると韓浩は軽く頷く。

「ふう」

すっかり冷めてしまった茶をぐびりとすする。来客用の高級な茶葉ではない。
かつて紀家軍にいたころに散々味わっていた安物である。その安っぽい味と香りにどこか安らぎを覚えつつ韓浩は脱力(リラックス)していく。
このように幽州の諸業務が滞っているのは別に韓浩が無能だからではない。無論配下の文官たちがサボタージュをしているわけでもないし未熟なわけでもない。なんとなれば袁家が州牧だったころからその面子はほぼ変わっていないのだからして。
ならば何故にこのように未決済の案件が増えたか。それは単に業務が増加したのだ。

「飽和攻撃。悪くない手」

ずび、と音を立てて再び茶を啜る。
そう、これはまぎれもない攻撃であると韓浩は理解している。あらゆる部門から上げられる報告書、稟議書、告発、意見書。かつてないほどに活発に幽州の行政組織は仕事を果たしていると言っていいだろう。

「しかし、厄介極まる」

ふう、と息を吐き、大きく伸びをする。文官の誰よりも書類の決裁をしていたのは間違いなく彼女である。韓浩の処理能力は沮授や張紘をすら凌いでいるかもしれないほどのものだ。
それでも積み重なった書類がなかなか減らないのには理由がある。いや、理由と言ってもたいしたものではない。印だけ捺(お)して済まない案件が多いこと、そして微妙に書類に不備があることが理由だ。
故に韓浩をはじめとする文官団の処理能力は飽和してしまっている。恐らく処理済みの書類にも不備がいくらもあるに違いない。
そしてそれにつけこんで地歩を増しているのが劉備一派である。少なからず予算、人事に侵食している形跡がある。

「流石は伏竜に鳳雛といったところか」

水鏡女学院きっての俊英。一人でも得れば天下に届くというのは伊達ではない。
その俊才二人が仕掛けてきた簡にして単なる攻撃。恐るべしと言っていいだろう。軍権こそ厳密に精査して侵食を許していないが、近頃は露骨に食指を動かしているようである。
まあ、この守勢もあとひと月もすれば収まるであろう。この窮状――と言っていいかはわからないが――について韓浩は隠し立てなく主たる公孫賛に報告している。併せて伝手を使って人材を某所より借り受けることについてまで認可を得ている。
そして某所の長たる青年からは魯粛、虞翻、于禁、秦松という人材の派遣があることが通達されている。
無論、旧主家たる袁家。その筋から人材を借りるというのはいかにも体面がよろしくない。まるで公孫賛は幽州を支えることができないということの証左のようで。
だが、公孫賛は極めて実務家であり、韓浩に対しての信頼も厚い。

「韓浩がそう言うならそうなんだろう。任せた」

絶大な信頼。その価値を韓浩は理解している。だからこそ最善手を選ぶ。自分の立場などはこの際どうでもいいのだ。
そして内心感謝する。紀霊の選んだ人材はいずれも珠玉。魯粛、虞翻がいれば公務は問題ない。于禁がいれば軍制も捗り、秦松は民政に長じている。韓浩の懸念がそれだけで晴れるというものだ。
実際、破格の援助と言っていいだろう。それだけ幽州の価値が大きいということ。そして公孫賛を大事に思っているということなのだろう。
だから、それまで潰れるわけにはいかない。そうして韓浩は決意も新たにする。紀家軍にて、今は亡き梁剛、雷薄に叩きこまれたその精神。諦めないこと、足掻くこと、泥臭くあること。

「無事是名馬とはよく言ったもの」

それを体現しているのが紀霊である。彼にかかる負荷は実際尋常ではない。それを上手く散らしているのは見事、と言ってもいい。
まあ、とは言え、である。通常業務を四方八方に丸投げする彼のやり方に対して思う所がないわけではないのだけれども、それを言うのは野暮というものであろう。

「ええやん、二郎に書類整理とか向いてへんしな。つうか、うちもアンタにまかせっきりやったし」

くつくつ、と笑いを含んだ声が聞こえた、気がする。懐かしい声。
脳内再生余裕という奴である。むしろ疲れからくる幻聴だろうか。それはそれで口元が緩みそうになる。まあ、実際かつての紀家軍の軍務は韓浩が一手に引き受けていたのだからして。
綻びそうになる頬を誤魔化すように茶を飲み干す。そう言えば雷薄は上品な喫茶では足りないとばかりに白湯(さゆ)をどんぶりに注いで飲み干していたものだ。まあ、その中身が度々酒精になっていたのはご愛敬というものである。
いけないな、とばかりに頭を軽く振り、韓浩は緩んでいた表情を引き締める。今の彼女は幽州の州牧代理。その信頼に応えねばならないのだ。

決意を新たにする韓浩に来客が告げられる。微かに眉をひそめながらも韓浩はそれに相対する。即ち、劉備一派に。
759 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/15(土) 22:17:13.82 ID:JSqAUlv+0
◆◆◆

「では、韓浩殿が桃香様のご意見を握りつぶしていたという解釈でよろしいですか」

諸葛亮の、挑発めいたその言葉にあえて頷く。

「そう。重要案件については公孫賛殿に許可を得る必要がある。そして公孫賛殿に報告するまでもない些末な案件は私が判断している」

それがなにか?と問う韓浩。

「そっかー。じゃあ白蓮ちゃんは知らなかっただけなんだね。よかった!」

「よかったならば重畳。ではこれで失礼する」

軽く頷き席を立とうとする韓浩に制止の声がかけられる。

「ちょっと、ちょっと待ってよ。
そうじゃないの!白蓮ちゃんにきちんと伝えてほしいんだけども」

「その必要があると私が認識すればそうする」

ぴしゃり、と。
流石の劉備が口ごもる。それを見て諸葛亮は口を開く。

「これはしたり、です。韓浩さんにどれほど権限があるか知りませんが、最近の政務の滞りを見るにつけ、その。公孫賛さんの信頼に応えられているかは一考の余地があると思うのですが」

くす、と内心で韓浩は笑う。そのような嫌味、皮肉、あてこすりは懐かしさを越えていっそ新鮮ですらある。

「ふむ。
私は幽州の州牧代理として公孫賛殿から全権委任を受けている。これは警告である。それ以上幽州の政治について語るのであれば、当方にそれ相応の準備がある」

「そんな建前ばかり言って、もう!」

「韓浩さんが手元で色々と握りつぶしているというのは分かっています。独断、過ぎませんか?」

激昂する劉備を諸葛亮が宥めつつも切り込む。
そして韓浩は顔色一つ変えない。

「言った通り、私の判断は公孫賛殿の判断と知れ。そしてこれ以上は時間の無駄」

「おや、これは専横にもほどがありますね」

くすくす、と笑う諸葛亮。その自信はどこから来るのだろうかと韓浩は内心首をかしげる。

「お伝えしたいことは北方の守り。それを担うのは貴女には荷が重い。そして桃香様は既に成果を上げられました。
ああ、白蓮さんのお手柄にしてもいいのですよ?
 つまりです。
 北方の脅威たる匈奴。桃香様は七度その長を捕えて七度解き放ちました。
 匈奴の恭順。対話による融和。貴女ごときが何を断じることができましょうか」
760 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/15(土) 22:17:41.36 ID:JSqAUlv+0
ふむ、と韓浩は暫し考え込む。……このような見え透いた挑発に乗る韓浩ではない。気になるのはその目的は何か、だ。一体何から目を逸らさせたいのか。
全盛期から程遠いとは言え匈奴の戦力は侮りがたい。
いや、それ以前に、だ。匈奴を討つに足る兵を与えたことはなかった。だというのに。七度に渡り討ち破るなぞ、白馬義従を公孫賛が率いても至難の業であろう。
更に腹立たしいのは、だ。今はまだそのような余裕がないのだが、対匈奴の戦略もぶちこわしにされたということである。基本、いくつもある部族。そこで対立する部族に援助を与えて相争わせるという絵図が崩れてしまったことになる。援助が漢朝から行ったと分からないように、母流龍九商会から黒山賊を経由するという手間暇かけた計画がぶちこわしである。
とは言え、まずは目の前の雑務に集中せねばなるまい。

「匈奴の長。それを討つほどの戦力を預けた記憶はない」

韓浩の言に諸葛亮はくすり、と笑う。

その笑みに韓浩は特に感慨もなく思考を巡らす。
軍権を自分の知らぬところで行使した?それはない。派兵には糧食、資金、武具が必要。その物資の動きは確認していない。圧倒的な書類の奔流においてもそれだけは見逃さない。他の政務が滞ってもそこだけは逃さない。
民間の協力者?母流龍九商会や黒山賊が見逃すわけがない。

「匈奴。埒外の蛮族と言えど、桃香様の大徳に触れ、感じるところがあったようです」

「成程」

つるんだか。そう韓浩は結論づける。七擒七放、なんとも華々しく盛ったことだ。おそらくは匈奴の有力部族に乗り込み口説き落としたのであろう。わざわざ討ち破った後に下したというのは、民に納得感を与えるためであろうか。
そして、だ。匈奴を従えた声望も厄介だがそれよりも厄介なのは、匈奴の騎馬軍が劉備の影響下におかれたということである。

「最早看過できない」

韓浩は結論づける。ここでけじめをつけねばなるまい、と。そしてここまでの暴走を許したのは自分の失策でもある。とは言え。
ちら、と周りを窺い、内心ため息を。
恐らくここで劉備を捕縛、処断するにしろ配下が従わない可能性は大いにある。そうなれば主の権威までが貶められてしまうであろう。

「韓浩さんはちょっと頭が固いかな、って思う。白蓮ちゃんと一度お話させてよ。そしたらきっと分かってくれるから。
 お話したら、きっと分かってくれるもん。だって私と白蓮ちゃんは親友なんだもん」

その言に韓浩は戦慄する。いや、恐怖を感じたと言ってもいいかもしれない。劉備は本気でそう言っているのだ。そしてそうなると思っているのだ。
いや、なるほど。あの青年が言い含めてきた懸念はこうか。このことか。
精神を落ち着かせるのに数秒、意識を切り替えるのに数瞬。そして刹那にて覚悟を決める。

「親友と言うが、非常に疑問を抱く。親友とは互恵関係にあるもの」

脳裏に描くのは共に笑い、泣き、互いに尊敬しあい、助け合っていた梨園の兄弟たち。彼等の在り様こそが正しく親友というものではないかと韓浩は思うのだ。

「貴女は一方的に主に頼り、奪うだけ。人、それを寄生虫と言う」

ちら、と後ろに付き従う関羽に視線をやる。気まずげに眼を逸らすその様子。なるほど、と。確か彼女は劉備に盲目的な忠誠を誓っていたはず。そこに楔を打ち込んだのはきっと彼だろう。
なれば、やることは決まった。

「違うよ!私だって白蓮ちゃんにいっぱい恩返ししてるもん!私はそんなに優秀じゃないけど、朱里ちゃんや雛里ちゃんはとってもすごいし、鈴々ちゃんや愛紗ちゃんだってすごいんだから!」

この人は本気でそう思っているのだろうな、と韓浩は思う。

「貴女は主の部下。忠誠を尽くすのは当然。勘違いも甚だしい」

きっと自分の言葉は彼女に届かない。そして、彼女の大徳とやらは凄まじく場を支配している。兵に捕縛を命じても動かない公算は高い。いや、この場に伏流鳳雛がいるということはもはや流れは決まっているのだろう。
だが、そうはさせない。させてなるものか。

「劉備、貴女は生まれてくるべきではなかった。貴女は争いと災厄を撒き散らす。
 そのような貴方を親友と錯覚しているのが主の不幸。その幻想、この手で打ち砕かせてもらう」

ちゃきり、と音を立てて韓浩は腰にあった剣を抜き放つ。この場で佩刀しているのは韓浩のみで。

「貴様っ!やらせはしない!」

徒手空拳であろうとも関羽の武威に疑いの余地はない。韓浩が武装していても届くわけもない。それは確定的に明らかなこと。
劉備の前に立ちはだかる関羽に一瞥。そして韓浩の口元は僅かに緩んでいた。
761 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/15(土) 22:18:27.89 ID:JSqAUlv+0
◆◆◆

悪くない人生だった、と韓浩は思う。

――韓浩の一番古い記憶は激痛を伴うものである。
炎で照らされ、男にのしかられ、腰を振られる。そんなものが一番古い記憶である。
激痛に助けを求めようと横を見れば、母親がありえない角度の首で。そして同じく男がその身体の上で腰を振っている。それが匈奴なのか、只の野盗だったのか、今となっては昔のことである。

そして当時では実にありふれた光景である。

自分は幸運であったと韓浩は思う。
男は殺され、女子供は犯され、攫われ、売られるのが世の定め。そこを救われたのだ。
そして、重ねて自分は幸運であったと韓浩は思う。

身よりのない女子など、身体を売るくらいしか生計を建てる手段はなかったであろう。
計数処理が得意であったことが活きて、紀家軍にもぐりこむことができたのだ。多くの出会いがあり、別れがあった。
そしてまた、繰り返すのだ。さよならだけが人生さ、とはこのことか。なるほど、たった今。腑に落ちた。

「ここまでの専横を許したのはわが身の不徳、無能故。だが、毒婦を親友と誤認する主の認識については諌めるものである。我が身と血をもって――」

どすり、と鈍い音。吹き出る血潮。喉にその剣を貫いて、更に首を切り裂く。
ごぼ、と口から血を吐きながら更に言の葉を紡ごうとする。

「む……、い……!」

場を沈黙が支配し。
そして韓浩の死に顔は満足そうな笑みを浮かべていた。
762 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/15(土) 22:21:53.05 ID:JSqAUlv+0
本日ここまですー感想とかくだしあー

題名は「諫死」なんだろうけど、題名でネタバレしたくないでござるよ
何かいいやつくだしあー

ちなみに紀家軍幹部はどうあがいてもほぼ死ぬイベントてんこ盛りだったの陳蘭ちゃんが生きてるのが奇跡。
当初案ではオリキャラは全員死ぬはずだったすね
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 09:33:00.83 ID:jc1X/t0ao
乙したー
やっぱり退場だあああああああああ

でも、何より二郎と地味様動かすにはコレが効果テキメンなのよねぇ

話が通じないなら戦争しか無いのだ
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/16(日) 16:20:40.42 ID:LMZMxIiXO
このシーン来たかぁぁ…韓浩ぉ…
それが最善手なのは分かるけど死んでほしくなかったよ…


題案はやっぱりネタバレ気味だけど
「主よ、吾が血潮で紅蓮に染まり給え」
とか

主が白蓮なので、我が血を持って赤く染まりて二度と桃色には染まらぬように、みたいな感じで
血潮にすれば流血より熱血感がでるかなぁ、という希望的観測
765 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/16(日) 17:51:14.80 ID:Q8ay1APT0
>>763
どもです!

>やっぱり退場だあああああああああ
>でも、何より二郎と地味様動かすにはコレが効果テキメンなのよねぇ
むしろ地味様はこれがないとカリスマピーチビームに丸め込まれるまであるのですよね
そこを理解しているからこその韓浩の選択です。
一応というか、幾度も面接したんですがこれ以外の選択肢はないそうです

>>764
どもです!

>このシーン来たかぁぁ…韓浩ぉ…
旧作からのおつきあいですねありがとうございます。
割とお話の組み替えとか試みたんですが韓浩は納得してくれませんでした

>それが最善手なのは分かるけど死んでほしくなかったよ…
地味様との絡みは無限に書けるやつなので、本当に惜しい子を亡くしたな、と。
でも本人は納得というか満足して逝ってしまいました。

>「主よ、吾が血潮で紅蓮に染まり給え」
>主が白蓮なので、我が血を持って赤く染まりて二度と桃色には染まらぬように、みたいな感じで
>血潮にすれば流血より熱血感がでるかなぁ、という希望的観測
これは熱い。
地味様が白くてカリスマピーチビームさんが桃色ならば赤いというのは意味合いが出てきそうです。
これをベースに考えるかな・・・
この視点はありがたいやつですありがとうございますー!
766 :青ペン [sage]:2021/05/17(月) 08:40:11.09 ID:Dxy/V3eVo
そうねぇ…。
大義亡き動きは幽州の水面に石を投げた
とでもしましょか。

血まみれの話はタイトルとしては隠したいけど
けど劉備陣営が動いたことは何らかの形で表現したいし
って感じで
767 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/17(月) 21:01:52.98 ID:oIp2Be710
>>766
どもです!

>大義亡き動きは幽州の水面に石を投げた
ほむん
相変わらずのクオリティで妬ましいやで
青ペン先生の脳みそ食べたら語彙が増えるのだろうか

>血まみれの話はタイトルとしては隠したいけど
いっそ紅蓮の炎的な感じにしてやった方が逆にええかもしらんですね

白と桃色と紅で分かる人には分かるやつ
まあ、韓浩の真名なんてないんですけどね!!!
768 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/17(月) 22:33:11.75 ID:oIp2Be710
その報せはある晴れた日の昼下がりに届いた。

「母流龍九商会の使い……?なんだろう」

「知らんがな」

どう思う?って言われても俺にも見当がつくはずもない。
それに本来母流龍九商会からの使いがこの場に来ることが出来るはずもないのだ。なんとなれば、だ。太尉たる白蓮と司徒たる俺。三公の二人が歓談している最中に注進あるなぞ。
つまり、非常の時ということなのだろう。

「いや、すいやせんね。雲の上のお人のご歓談の邪魔をするつもりはなかったんですがねぇ」

にひ、と笑いながら通されたのは小汚い、隻腕の男。
いや、こいつは見覚えがある。入隊間もない紀家軍で俺と陳蘭の世話を焼いてくれた……。

「この書状を、ね。昔馴染みに届けてほしいって言われたんでさ。そいじゃ、そういうことで」

淀みない動きでその場を去る。何か言おうと思ったんだけど、何も思いつかなかった。
まあ、それはともかくだ。

「んで、どったの?」

軽く白蓮に尋ねた。が、だ。その顔を青褪めさせて。

「おい!」

ただ事ではないと声を荒げると無言で書を寄越してくれる。
ん、これは――。

「この書面を見ているということは私の命はないものと思っていただきたい」

そんな物騒な言葉で始まるそれ。それは正に韓浩の遺言と言っていい物であった。
まとめると二点。この書面が目に入る時は自分は生きてはいないだろうと言うこと。そして、それは劉備の暴走を留められなかった時であろうということ。看過できぬそれを止められなかったことを淡々と詫びるその文面は。
いかにもあの鉄面皮で真面目で冗談が通じなくて俺より古参で軍務に精通していて姐さんのお気に入りで雷薄とも仲が良くて古馴染みの幹部の生き残りで魯粛と並んで洗濯板で。

「おい、おい。これはないだろう。冗談にしてもタチが悪いぜ……」

思わずそんなことを言ってしまう。

「そ、そうだよな?悪い冗談だよな?なあ、二郎、そうだよな。
 韓浩にしてはがんばったんじゃあないか?これは盛大に笑ってやらんといかんと思う、よ?」

ぬるく、笑い合おうとしていた俺たちに急報が。

曰く。

韓浩、乱心、自害。穴を埋めるべく劉備が州牧代になる旨承認の書面。

「嘘、だろ……?」

茫然自失と言っていい。それも致し方ないと思う。俺だって詠ちゃんの死には平静でいられなかったもの。未だにたちなおってはいないもの。
だから、目を真っ赤に泣き腫らして俺の前で頭を下げる白蓮は凄いと思う。

「二郎、済まない!ほんとうに、すまない!二郎の信頼を無にしてしまった。
 でも、だ。未だに桃香が、って思う。何かの間違いじゃないかって思う。
 だから、だと思う。韓浩が自害したのはそんな私に喝を入れるためなんだろうって」

「だって、あいつが、韓浩が自害なんてするはずないだろう!それくらい私にだって分かる!
 ――だから、けじめは私がつける。つけさせてくれ」

「だが断る」

そう。あの劉備陣営相手なんだ。白蓮には悪いが全力でいく。全俺でいく。

「俺が出る。彼奴らの描く理想。その幻想を……まずはぶち殺す」

俺なりの宣戦布告である。
769 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/05/17(月) 22:34:44.09 ID:oIp2Be710
本日ここまですー感想とかくだしあー

前話については「紅蓮の炎」
こっちは「炎(ほむら)たつ」

それでいこうとなったのです。


ここまでまとめて、いよいよ最終章かなー
770 :青ペン [sage]:2021/05/18(火) 05:02:12.16 ID:ENdGaA2Ko
>>769
一応前の案を承けて
【投げ込まれし石は逆鱗を貫く】
と絡めてみようなか
771 :青ペン [sage]:2021/05/18(火) 05:10:03.99 ID:ENdGaA2Ko
>>770
韓浩ちゃんはいうなれば
【袁と公孫をつなぐ橋】。
だったのにそれを叩き落として
自分達で橋かけたから使ってね
ってそりゃじろーさんもキレるよ。
しかもあの子が生前唯一押し通した我が儘が
公孫の元にとどまる
だったはずだから…
じろーさんが怒髪衝天するのは宜なるかな。

772 :赤ペン [sage saga]:2021/05/18(火) 17:34:01.97 ID:koZvZ1aN0
乙でしたー
>>758
>>無論配下の文官たちがサボタージュをしているわけでもないし未熟なわけでもない。 ある意味公孫瓚の配下がサボタージュ(と言うのも烏滸がましい行い)をした結果ではあるが
○無論配下の文官たちが怠けているわけでもないし未熟なわけでもない。       それともあいついまだに「私たち友達(対等)だよね」とか言ってるのかな
>>759
>>流石の劉備が口ごもる。 いっそ縫い付ければ平和にならねえかなあ
○流石の劉備も口ごもる。 というか糞みたいな案件とか微に入り細を穿つ小事を大量に持ち込んだんだろうけどよくもまあかき集めたもんだわ
>>760
>>あの青年が言い含めてきた懸念はこうか。このことか。 間違いと言うほどではないですが
○あの青年が言い含めてきた懸念はこれか。このことか。 の方が良いと思います
>>韓浩が武装していても届くわけもない。それは確定的に明らかなこと。                     シリアスシーンにネタを持ってくるのはやめよう(迫真
○韓浩が武装していても届くわけもない。それは論ずるまでも無く、見るまでも無く明らかなことで。だからこそ―― ちょっと盛ってみる、ネタで言うなら「コーラを飲んだらげっぷが出るような」とか「風の強い日に〜」とかも鉄板かね
>>761
>>炎で照らされ、男にのしかられ、腰を振られる。  のしをかられ?
○炎で照らされ、男にのしかかられ、腰を振られる。 【圧し掛かる(のしかかる)】の変化形なのでこうですね
>>身体を売るくらいしか生計を建てる手段はなかったであろう。 建設はちょっと違うので
○身体を売るくらいしか生計を立てる手段はなかったであろう。 多分《計画立案》で覚えると覚えやすいかも
>>紀家軍にもぐりこむことができたのだ。 間違いじゃないですけど、彼女の自己評価を考えるとむしろあってる気もしますけど
○紀家軍に身を置くことができたのだ。  【もぐりこむ】だとスパイっぽい気がして

実はもっと前から読んではいたのよ…胸が詰まって指の動きが荒れだったのをようやくちょっと回復して
いつだったか「私は幸せというものはよく分からないが不幸というものは知ってる」と言った彼女だけど公孫瓚との間にあったものは間違いなく幸せだったのだろうなと思うよ
それはそれとして6回も侵略されてたのを握りつぶしてた劉備陣営ぱねえっすね笑えない。お前ら本当にそんなに撃退してたんなら報告上げろや
773 :赤ペン [sage]:2021/05/18(火) 19:05:19.67 ID:koZvZ1aN0
さてと
>>769
>>それは正に韓浩の遺言と言っていい物であった。 間違いではないですが書状なので
〇それは正に韓浩の遺書と言っていい物であった。 でどうでしょう
>>「だが断る」 この後でイマジンブレイカーしてるし、こういう時は彼はいろんなものに肖って自分を奮い立たせようとしてるんだろうなって
〇「これは白蓮の部下の劉備の暴走で、それを止められなかった韓浩ももううちの部下じゃない…俺が手を出すのも口を出すのも専横というもので、そんなことはするべきじゃあない……だが断る」 元ネタでは相手の言うことに賛成しそうなふりをした後で【だが断る】なのでどれだけこの【だが断る】が自分勝手な我儘によるものなのかを逆説する感じが欲しいかなって

それにしても普通に考えれば鳴り物入り(笑)で引き抜きかけられた新人(笑)がNo2になれるわけないのに疑ってないあたりみんなCPBに脳が焼かれたんだなって
もし韓浩がガチの不慮の事故とか急病で逝去したとしても次の州牧代は公孫瓚の縁者かNo3やってた誰かがなるのが筋だろうがよ
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