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真・恋姫無双【凡将伝Re】4
- 674 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2021/03/08(月) 22:29:08.23 ID:SYKaUEsN0
- 「なんとも主らしいと言えばらしいな。しかし、だ。あの技の数々は主が編み出したものか?」
「いえ、私が聞いたところによると」
――五輪の書。かの黄帝が記したという武術の真髄を記したと言う書。始皇帝の焚書を奇跡的に逃れた稀書。
「ただ、残念なことに書庫の不審火で喪われてしまったとのことです。ですから二郎様も、あやふやなところがあるとおっしゃってました」
「ふむ。神農の書といい、紀家の書庫が焼けてしまったのは惜しいことだな。健在ならば気の扱いについても、なにか指南書があったやもしれんのにな」
嘆息する趙雲に楽進は問う。
「そう言えば華佗殿に師事なさっているのでしたか」
是、と趙雲は頷く。
「まあ、今のところは瞑想して気の巡りを強めること以上はできんが。
硬気功だったか?全身に気を巡らせればそれができるということだが」
今は虫刺されを気にせずにて済む程度だな、と苦笑する。
楽進からしたらそれでも驚くべき成果なのだが。
「そう言えば貴殿も華佗殿に師事していたろう?
治癒、だったな」
「はい。生憎と相性がよくないようで、どうにも習得に手間取ってはいますが……」
心底無念そうに楽進は呟く。
「だが、まるっきり効果がないということはないのだろう?」
はい、と言って楽進は静かに気を練り上げる。先ほどとは真逆の、静かな気。溢れんばかりであったそれを内包し、整える。
無言で趙雲に手をかざし、無言で眉間に皺を寄せる。
「ふむ。温かいな」
趙雲の正直な感想である。
「今の私ではこれが精いっぱいです」
額に汗を浮かべ、息を弾ませながら楽進が応える。
「ふむ。ちなみに効果としてはどれほどのものなのだ?」
これは純粋な好奇心。いや、相性が最悪という彼女がどの程度の成果を上げているか。それは趙雲にとっても指針となるのだからして。
「はい。肩こりには効くそうです」
「は?」
「肩こりにはよく効くと、真桜が」
ああ、と趙雲は納得してしまう。
李典。彼女の体躯はそれほど立派なものではない。だが、その胸部装甲は圧倒的である。趙雲とて自らのそれに自信を持っているのではあるが、李典のそれは次元が違う。
「まあ、その、なんだ。道は遠そうだな」
「ええ」
笑い合う二人。
そして彼女らは地道を厭わない。そしてその目線は高く上げたままに。
きっと人は自分のためだけではこんなにも頑張れない。そして、共犯者の笑みを交わす。
千里の道、なにするものぞとばかりに。
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