42: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:04:03.06 ID:nY0iWbpOO
「やっぱ美嘉も莉嘉もいないか」
城ヶ崎家も探索してみたけど真新しいものはない。姉妹の石像は当然ないし、強いて気づいたことと言えば美嘉の部屋にミニうえきちゃんが飾ってあったことくらいだ。
「お前は何か知らないのか?」
43: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:05:56.78 ID:nY0iWbpOO
「これ使いな」
「えぐっ……ありがとうございます……ごめんなさい、プロデューサーさんのハンカチ借りちゃって」
白いハンカチに涙が染みる。なに、ハンカチの方も俺に使われるよりも女の子に使ってもらった方が嬉しいに決まっているさ。
44: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:07:59.87 ID:nY0iWbpOO
「プ、プロデューサーさん……」
「美穂、俺はここにいるよ」
「えっ?」
45: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:08:27.62 ID:nY0iWbpOO
「……」
「……」
運転席と助手席に並んで座る俺と美穂は会話もなく、お互い顔を赤くしていた。我ながらよくもまぁあんな臭い台詞を吐いたものだ。気まずそうなオーラを出している俺たちを後部座席に座る加蓮はへー、ふーん、そうかぁ、と単語を発さず1人納得したようにニヤニヤしている。これは当分2人しておもちゃにされそうだ。
46: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:09:12.02 ID:nY0iWbpOO
「なあ卯月。何やってんの?」
「見ての通り、雪ぴにゃこら太です! 肇ちゃん、陶芸やってるから雪だるま作るのも上手なんですよ」
「幼き頃から大雪が降ると祖父に雪だるまの作り方を教えてもらったものです」
47: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:11:06.23 ID:nY0iWbpOO
「なんにせよ腹が減ってはなんとやら! 昨日のカレーがまだあります! 一晩寝かしたカレーは絶品でありますからね! 毎日が金曜日!」
カレーが嫌いな人はいない。亜季のランチはカレー宣言にみんな声をあげて喜ぶ。昔聞いたことがあるがカレーは出来立てよりも一晩寝かせた方が確かに美味しくなるらしく、科学的な根拠もあるそうだ。一度冷ましたカレーを温め直すことで熟成が進行して旨味が出るんだとか。
「でもプロデューサーさん。昨日今日で夏からいきなり冬になりましたけど……私たち、本当に一晩だけ寝てたんでしょうか?」
48: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:11:41.37 ID:nY0iWbpOO
「事務所の時計台がめちゃくちゃなテンポで時を刻んでいるのは、故障や演出なんかじゃなくて本当のこと、なのかもしれませんね」
「じゃあちょっと待った。食材はどうなるんだ!?」
藍子や亜季の話が正しいならば、あれだけ備蓄されていた食料も腐っているはずだ。
49: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:12:07.10 ID:nY0iWbpOO
「あのっ。せっかくのお鍋なんですし、みんなで好きな入ものを入れて鍋パーティーでもしませんか?」
「美穂……」
次から次へと襲いかかる信じられない情報に振り回されて辛くしんどいのは美穂だって同じなはずなのに。なんとかこの場を盛り上げようと頑張っているその姿に俺は安心すると同時に誇らしく思えた。熊本の女は強い、その矜持に偽りはない。
50: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:13:39.33 ID:nY0iWbpOO
「ふぅ……」
お腹いっぱい鍋を堪能した俺は1人外で眠気覚ましのコーヒーを飲んでいた。ブラックコーヒーなんて普段飲まないけど、眠気を飛ばしてくれそうなものはそれしかなかった。時間はわからないけどそろそろ今日が終わる頃合いだろう。
「おや、プロデューサー殿も同じ考えでありましたか」
51: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:14:12.49 ID:nY0iWbpOO
「藍子からカメラも借りてきた。逃げられたとしてます何か手がかりを撮れたら良いけど……」
「日付が変わるまでまだ時間がありそうですね。少し話でもして待ちましょう」
「そうだね。担当外ってこともあったから亜季とこうやって話す機会あんまなかったしな」
52: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:14:50.50 ID:nY0iWbpOO
「……サーさんっ! プロデューサーさんっ!」
「んん……」
「やった、目を覚ましましたっ!」
143Res/165.23 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20