小日向美穂「グッバイ、ネヴァーランド」
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44: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 01:07:59.87 ID:nY0iWbpOO
「プ、プロデューサーさん……」

「美穂、俺はここにいるよ」

「えっ?」

「卯月も響子も加蓮も……事務所に残っているみんなも、俺も。確かにここにいる。美穂だって同じだよ、身体の暖かさが何よりの証拠だ」

 俺も一度だけ考えたことがある。プロデューサーとして働いてアイドルを導いている俺が夢の世界の住人で、夢の中にいる無数の俺の方が本物なんじゃないかって。胡蝶の夢、とはまた違うけども……慣れない哲学的なことを考えたものだから、頭がこんがらがって翌日熱を出したっけか。美穂にとって大事なオーディションの日だったのに俺は寝込んで先輩プロデューサーに彼女のことを託した。結果は合格だったけど、願わくは俺も合格を知って美穂と一緒に喜びを分かち合いたかった。額を燃やすような熱と悔しく情けない気持ちが、紛れもなく現実にいるんだと教えてくれたんだ。

「俺は……絶対に美穂の前からいなくならない。約束する、だから美穂も俺の前からいなくならないでくれ」

 互いに抱きしめる腕の強さが増す。結局のところ、俺たちは寂しがり屋な生き物だ。だからこそ互いに手を取り合い心の隙間を埋め合う。

「嘘ついたら、辛子蓮根丸かじりですからね」

 本当は既に一つ嘘をついていた俺は、辛子蓮根にかじりつかなきゃダメなようだ。



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