いつかの月が君に微笑む
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5:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 21:57:16.93 ID:3RPf7FsGO
本当の意味で何も無いこの島に来る人なんて年に一人いるかいないかで、基本的に船に乗るのは島外で働く人たちか、家族を島に残した人たちくらいだ。純粋な島外民を対象に
するのであれば、民泊はあってもなくても変わらない。それでも唯一生き残っていた民泊も、経営していたうちのばあちゃんが一昨年に亡くなった。

昨年は誰も観光客が来なかった(俺が知らなかっただけかもしれないが)から関係はなかったけど、お客さんがもし来ればうちで預かろうというのがルールになっていた。

以下略 AAS



6:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 21:58:37.02 ID:3RPf7FsGO
ドキドキした気持ちであまり口が動かずに、彼女の問いかけにどうにか返事をするので精いっぱいだった。こんな時間に急にうちに泊まりに来て迷惑じゃないか、とか。島の全長とか、住民についてだとか。

つまらない男と思われないだろうか。島外の美女の彼女からすると、きっと俺は刺激も何もない、平凡な男に過ぎないのだろうけど。綺麗な女性に少しでも良く思われたいというのは、きっと誰もが頷いてくれる理論だ。

「尾関さんは、何で島に?」
以下略 AAS



7:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 21:59:25.05 ID:3RPf7FsGO
あまり聞きなれない言葉に、その意味を理解をするまで数秒かかった。

「はぁ」

質問をしたことを後悔して、反応に困った結果がこれだ。観光名所というわけでもないが、わざわざ自殺にうちの島を選ぶというのも、真意とも捉えづらく、しかしそんなに重篤な悩みがあるのなら冗談だろうと笑い飛ばすこともできない。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:01:13.66 ID:3RPf7FsGO
「あらぁ、別嬪さんを連れて帰って」

自宅について母親を玄関に呼ぶと、母は目を丸くして驚いた。女性から見ても、瑞穂はやはり美人に見えるらしい。

初めての来客に、母は慌ただしく対応をする。二階の角の俺の隣の部屋を使ってくれ、トイレはどこ、風呂はどこ、食事は何時と説明し、瑞穂は一々それに頷いて返す。夕食がまだだった彼女のために、簡単な食事を作るらしい。それまでに風呂を済ませてくれと、瑞穂の荷物を客間に運ぶと、そのまま俺は自室に戻った。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:03:15.01 ID:3RPf7FsGO
瑞穂を待つ間、一人で居間にいるのも何だか寂しくて、国営放送だけが映るテレビの電源を入れた。小難しいニュースが流れ始める。意味はあまり分からないが、とりあえずそのままにしてぼーっとしていると、居間の襖が開いた。

「良いお湯でした……凄い、ご馳走だ」

風呂からあがった瑞穂が、ラフな服装で入って来た。テーブルの上に並ぶものに目を丸くして驚いていると、母さんが台所から顔を出して「召し上がれ」と声をかけた。「ありがとうございます、いただきます」と礼儀正しく返し、座布団に座って手を合わせた。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:04:24.62 ID:3RPf7FsGO
「ご馳走様でした、美味しかったです。残しちゃってすみません」

「お粗末さまでした。張り切って出し過ぎちゃったね、ごめんなさいね」

母さんが食器を下げ始めて、俺もそれに倣う。立ちあがろうとした瑞穂には「お客さんがそんなことしないの」と窘めていた。
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:05:31.77 ID:3RPf7FsGO
「カズくんは、明日の予定は? 夏休みなんだよね?」

「今日の幽霊探しの報告を、明日当番のやつのところにしに行くけど。それだけかな」

「一緒に行っても良いかな? 暇があるなら、ついでに島の案内もしてほしいんだけど」
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:06:50.56 ID:3RPf7FsGO
「カズくん、朝だよ、朝ごはんだよ」

聞きなれない声が扉の方からして、目が覚めた。寝ぼけ眼でそちらを向くと、もうしっかりと外行きの格好をした瑞穂がそこに立っていた。

瞬間、昨日の夜の出来事を思い出して、ハッと目が覚めた。
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:07:59.49 ID:3RPf7FsGO
お寝坊さんだねと笑う彼女は、昨日の夜とはまた印象が変わった。月明かり、風呂上がりという状況とは違い、メイクをバッチリした彼女を明るい場所で見るのは初めてだったが、それはもう、言葉にできないような美人だった。

垢ぬけて感じるのは、島にいないようなサラサラで長い茶髪のせいだけではない。目鼻立ちはくっきりしていて、顔の大きさはりんごくらいのようにも見える。スラッと伸びた手足に、凪で折れてしまうんじゃないかと言うような華奢な体。

容姿端麗、眉目秀麗、美人薄命……最後は違うか。とにかく、容姿をほめたたえる言葉は彼女のためにあるというような美しさだった。
以下略 AAS



14:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:09:23.99 ID:3RPf7FsGO
「今日は何時くらいから出かける?」

「んー、昼ごはんが家にあるし……昼食べてからにしようか。島を回るだけなら、たぶんそれくらいでちょうど良いし」

「ん、了解。それまでは何するの?」
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 22:10:51.74 ID:3RPf7FsGO
そんな彼女に気を取られていたせいか、予定していたページの7割程度しか進むことは無かった。決してこれは言い訳ではない。仕方ないことだ。緊張するって、そりゃ。

宿題を片付けて、昨晩の残り物で昼ごはんを済ませると、いよいよ出発することになった。出る間際になってちょっと待ってと言われ、何事かと思うと、これでもかと言うほど隈なく日焼け止めを塗り始めた。そして、島では滅多に見ることの無い日傘を構えた。

とは言え、それで暑さを凌げるわけではない。
以下略 AAS



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